mardinho na Web

ブラジル音楽、その他私的な音楽体験を中心に

自民党が反韓・反「慰安婦」の英訳本を学者たちに送った動機は何なのか?

2015-11-27 15:27:24 | anti facism
自民党の一部政治家たちが、アメリカなどの歴史学者に対して呉善花『なぜ「反日韓国に未来はない」のか』と産経新聞社『歴史戦—朝日新聞が世界に巻いた「慰安婦」の嘘を討つ』の英訳本を多数送付していることが話題になっています。
モンタナ州立大学の山口智美氏によりますと、本の差出人は自民党の猪口邦子参議院議員となっているそうです。
本に添えられた猪口議員の署名による書状には、韓国等によっていかに歴史がねじ曲げられているかを明らかにしているのがこの2冊の本であり、ぜひ読んで欲しいと書いてあるそうです。
同じ本はオーストラリア国立大学のテッサ・モーリス=スズキ教授のところにも送られてきたようです。テッサ教授は誰とは名指ししていませんが、「自民党の有力メンバーから英語圏(主にアメリカ)の学者、ジャーナリスト、政治家に対して、求められていない贈り物が届いた」と言っています。テッサ教授の紹介によれば、呉善花氏の本は自分の出身国である韓国を貶め、日本による植民地支配を正当化する内容だそうです。また産経新聞社の本は河野談話を否定し、慰安婦の被害者として名乗りを上げた韓国の女性たちは金のために嘘の証言をしていると断定しているそうです。
まあ日本には昔から愛国党のような極右は常にいたわけで、そういう人たちが変な主張をすることはさほど驚くに値しません。しかし、今回の件が怖いのは、自民党の国際情報検討委員会という組織を挙げて反韓・反「慰安婦」のプロパガンダを繰り広げているらしいことです。安倍首相は村山談話や河野談話の立場の堅持を約束したばかりですが、その政権を支える与党から、河野談話を真っ向から否定する内容のメッセージが英語圏の各界に届けられています。こんなことが起きると、安倍政権の本音はやっぱり歴史修正主義だと思われてしまうでしょう。
本を受け取った山口氏は、書状がお粗末なので、よもや本当に猪口議員が出したのではあるまいと思って議員事務所に電話をかけたら、なんと本人を含めたチームで送付に取り組んでいるのだという回答でした。山口氏に対して猪口議員は、慰安婦問題に関して日本はアジア女性基金を設立するなど頑張ってきたと話されたそうです。私の理解によれば、日本政府としては日韓条約がある以上、元「慰安婦」が名乗り出ても政府補償はできかねるが、河野談話を受けて、民間からの償い金を元「慰安婦」に支払うためにアジア女性基金を設立しました。その基金を評価するということは猪口議員は河野談話を擁護する立場に立つということであって、送っている本の主張と矛盾しています。
テッサ氏が鋭く指摘するように、日本の一部における独善的な議論を反映したこの2冊の本を自民党議員が海外に発信することは、日本に対する理解を深めるどころか、安倍政権に対する疑念を深め、ひいては日本人一般が歴史修正主義に立っているかのような誤解を招くゆゆしき行動で、国益を大いに損ねていると思います。聡明な猪口議員がどうしてそのことに気づかず、こんな愚行に荷担してしまったのでしょう。
いったい何のためにこんなクズ本をアメリカ等に一生懸命発信しているのでしょう。
その理由として2つ考えられます。1つは山口氏も指摘していることですが、「日本(の右翼)の主張を対外発信した」ことを国内の右翼的な人たちにアピールしたいからかもしれません。彼らは韓国側の宣伝によってアメリカの知識人が慰安婦問題を誤解していると思いたがっていますから、自分たちの主張がアメリカに届いたことで溜飲を下げている側面はあるでしょう。もう一つは、あまり考えたくないことですが、アメリカの知識人たちに対する脅迫の意味もあるのかもしれません。どうやら今年5月にテッサ氏や山口氏を含む英語圏の日本学者多数が署名した「日本の歴史家を支持する声明」に署名した学者たちを中心に本が届けられたようです。この声明は、朝日「誤報」事件に続く歴史修正主義の総攻撃に対して日本の歴史学を守れと声を挙げたものですから、それに署名するような学者たちに歴史修正主義そのものであるこんなクズ本を届けても、反発を買うばかりであることは目に見えているでしょう。そんな人たちに敢えて送るのは「あんたの言動を我々は見ているよ」という警告なのではないでしょうか。誰かを罵倒し非難するビラや本が自宅に突然届いたら誰しもギクッとするでしょう。そういう効果を狙っているのではないでしょうか。

「良い日本人」と「悪い非日本人」をイメージづける偏見助長のマスコミ

2015-09-27 17:44:12 | anti facism
日本に住む外国籍の人、あるいは外国籍の人の血を引く人が犯罪を犯すと、テレビの報道では必ずその外国人性を強調して報道する。最近ペルー人の男性がかなり異常な連続殺人事件の容疑者として捕まった。名前や境遇から彼が日系人であることは明らかなのに、なぜか「日系」ということには触れず、枕詞のように「ペルー人の○○が」と外国籍であることをことわったうえで内容を伝えている。
にしゃんたさんというスリランカ出身の人がその問題を鋭く指摘している。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/nishantha/20150927-00049907/
ノーベル物理学賞をとった中村修二さんは米国籍を取得しているのに日本人として報道されている。王貞治氏は日本国籍を持たないのに国民栄誉賞が与えられ、日本人の鑑としてたたえられている。傑出した業績を挙げた人は無理してでも日本人だとみなし、犯罪の容疑者やスキャンダルの当事者が日本人と外国人の混血であったりした場合には必ずその外国人性の方を強調する。
ついでに言えば、日本人が外国で交通事故や殺人の被害にあって死んだ場合のほうが、国内で同じ目に合う場合よりも報道される蓋然性が高いようにも思える。
こうした報道は日本に住む外国出身の人たちや外国籍の人たち、混血の人たちを知らず知らずに傷つけている。にしゃんたさんのような勇気のある告発がもっともっと必要である。
またこうした報道姿勢は、ラグビーの日本代表に象徴されるように日本という国が外国人や外国出身者の助けを必要としているという現実から日本人の目をそらしている。日本人は人種と国籍を問わず人間を平等に見ることができなくなり、国際性をどんどん失って劣化する。
にしゃんたさんの記事の後のコメント欄に、つまらない屁理屈で反論しているオジサンたちは劣化した日本人の実例である。

ラグビー実況と大本営発表

2015-09-24 00:23:12 | anti facism
ラグビーのルールはよくわからないし、テレビで試合を見たこともない。
数日前にラグビーのワールドカップで日本代表が南アフリカ代表に勝利したことがテレビのニュースで大騒ぎになっている。史上最大の番狂わせらしい。
試合前の日本代表の世界ランキングは13位で、南アフリカは3位だったそうだ。サッカーでは13位が3位に勝つことは割によくあるが、ラグビーだと、日本が南アフリカに勝つのはサッカーでベトナム代表がブラジル代表に勝つような感じなのかもしれない。
この機会にラグビーのルールでも覚えようとテレビで日本代表VSスコットランド代表の試合を見てみた。画面の端にルールの解説がタイムリーに出たり、アナウンサーも時々ルールを解説してくれるので、初心者にはありがたい中継ではあった。
しかし、試合が進むにつれてだんだん聞くに堪えなくなってきた。前半をスコットランド12:日本7で終え、アナウンサーが「前半リードされるのは想定内です」と叫び、解説者が後半はスタミナのある日本に分がある、と応じる。後半に入ってアナウンサーが「スコットランドの足が止まってきました」と叫びだしたころから、単なる希望的観測にしか聞こえなくなり、ばかばかしくなったので副音声の英語に切り替えた。足が止まるどころか、そこから先スコットランドは5つもトライを決め、日本は一つとして決められなかった。明らかにスコットランドの選手のほうが切れのいい動きをしている。再び日本語に切り替えると、日本代表は中3日で戦っているから不利だとか、次につながる戦いだった、とか言っている。最後は言い訳と負け惜しみか。太平洋戦争中の大本営発表となんの違いがあろう。
私は少なくとも解説者には日本の応援団を務めるのではなく冷静な分析をしてほしかったが、日本の視聴者の多くは間違いであっても日本代表を誉めそやし、最後まで期待をつないでくれる解説を聞きたいのかもしれない。前半リードされたのは想定内だとか、スコットランドの足が止まっている、というのはいずれも誤った分析であったことが素人目にも明らかなのだが、それでも多くの視聴者はこのアナウンサーと解説者には分析力がない、とは思わず、二人がいう通り、日本代表は次につながるいい戦いをした、次のサモア戦は勝つだろう、と信じ込むのかもしれない。
私はラグビーのルールも知らない素人なので本来なんの発言権もないが、日本代表は主力のマフィー選手がけがで退場してしまったし、次のサモアはランキングではスコットランドより上らしいから、普通に考えれば次も余り勝ち目はないのではないか。

海外派兵に熱心だが、難民受け入れはしないニッポン

2015-09-17 00:27:53 | anti facism
安保関連法案の参議院での採決が大詰めを迎えている。
野党的に言えば「戦争法案」、自民党の呼び方では「平和安全法制」が可決されると、日本はアメリカの戦う戦争のなかで日本の安全に影響する恐れがあるという申し訳が立つものにおつきあいすることになる。そうするのは、中国や北朝鮮が日本だけをターゲットにしてちょっかいを出してきた時に、アメリカがより確実に日本を助けてくれるようにするためだ。恩を売っておけば助けてくれる、というのは日本的にはわかる理屈である。ただ、靖国に参拝するなどしてケンカを売って、相手にケンカを買われた時に、果たしてアメリカは助けてくれるのか? 靖国参拝に「失望した」とコメントしたアメリカだから、アメリカにおつきあいしたからといって、日本がおとなしくしていないといざというときは助けてくれない、と考えるべきだろう。
ともあれ、「平和安全法制」は世界平和のためなんだ、と安倍首相は力説している。では日本は軍隊派遣以外に世界平和への貢献をどれだけしているのか。
いまシリアから多数の難民がバルカン半島を経てドイツと北欧に向かっている。
難民も大変だし、難民をいっぱい受け入れているドイツも大変だろうと思う。だが、ドイツを上回る経済規模を持つ日本にはなぜ来ないのだろうか。
本日みたNHK「持論公論」ではその理由を明らかにしていた。要するに日本は難民受け入れにきわめて冷たいのだ。シリアからの難民申請が63人からあり、実際に受け入れられたのはわずか3人だという。ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、オーストラリアなどが数万人単位でシリア難民の受け入れを表明したという。主要国のなかでシリア難民を受け入れていないのは日本、韓国、ロシアだけだ、と国連の機関から批判されている。GDPの大きさから言って、この中で最も責められるべきは日本であろう。
ドイツが難民受け入れに積極的なのはナチス時代に多数の難民を生み出す戦争を引き起こした反省から来ているという。日本(安倍政権)は侵略戦争で大勢の難民と死者を生んだことを反省しておらず、本音は敗戦国という汚辱を晴らして聖戦だったと認めさせたい。だから今も難民を受け入れず、黙って嵐のすぎるのを待っているのだろう。

ファシストの正体見たり

2015-06-30 23:44:35 | anti facism
作家の百田尚樹氏が自民党の勉強会で講演し、「沖縄の2紙はつぶさなければならない」とぶち上げ、自民党の議員たちも、自民党の意向に従わないマスコミは広告を締め上げてつぶそうと呼応した。
言論界が戦争賛美一色になって日本を破滅に追いやった戦前への反省から、戦後日本では自民党一党支配が続くなかでも、マスコミが反権力的であることに権力は寛容であった。
だが、第2次安倍政権は本気になってマスコミを締め上げにかかっている。従軍慰安婦に関する吉田証言の誤報を口実にした朝日新聞への攻撃に続き、「やらせ」問題を口実にしたNHKへの攻撃が行われた。そしてついに自民党の方針に従わない新聞をつぶすという議論が公然となされるまでになった。まさにファシストの本性見たりである。こういう連中をつぶさなければ、日本の先に待っているのは戦争と破滅であろう。

ミスユニバース日本代表、宮本エリアナさん

2015-06-11 23:45:12 | anti facism
出張先でBBCをつけていたところ、ミスユニバース日本代表に選出された宮本エリアナさんを取り上げていた。
宮本エリアナさんはアフリカ系アメリカ人を父に、日本人を母に持つ。そうした彼女がミスユニバース日本代表に選ばれたことはきわめて画期的なことだと思うが、BBCの報道によればこのニュースは日本のメディアではほぼ黙殺され、日本のネット上では「彼女は日本代表に相応しくない」といった心無い声が渦巻いているという。日本では彼女のような人は「ハーフ」と呼ばれて差別されていると伝えていた。以前テレビで滝川クリステルとアンジェラ・アキの対談を見たが、二人とも日本で育ちながら「外人」とみなされてきたことへの悔しさや違和感を語っていた。現実の日本は、人種的、民族的に多様化する方向へ否応なく進んでいるのに、差別意識が不断に再生産されているのは残念なことである。
2020年の東京オリンピック招致成功の最大の功労者は滝川クリステルだったと思うが、多くの日本人は「外人も東京を応援してくれた」ぐらいにしか思っていないのではないだろうか。実は、彼女は日本の多様性をアピールするために抜擢されたのであり、だからこそIOC委員も安心して東京に投票したのだろう。それを単なる見せかけだけにしないよう、今から反差別の意識を高めていくべきだと思う。宮本エリアナさんは、日本での人種への偏見をなくすためにミスユニバース日本代表のコンテストに出場したのだという。彼女の勇気に心から拍手を贈りたい。

NHKの意図的誤訳

2015-04-29 23:55:40 | anti facism
安倍首相が訪米し、オバマ大統領と会談したりしている。
今朝(4月29日)のNHKニュースだったかと思うが、未明の会談の同時通訳に誤りがあったとして訂正を行った。
同時通訳だから完璧ではありえないと思うのだが、まあご丁寧なことであった。
ただ19時のNHKニュースで放映されたワシントン・ポストの論説委員長のインタビューでは、字幕で翻訳が出たのだが、はっきりとした誤訳が平然となされていて唖然としてしまった。論説委員長ははっきりと"women working as sex slaves"と言っていた。日本軍による南京大虐殺やアジアの女性を性奴隷として働かせたことに対して安倍首相が議会演説の際に謝罪すべきだと述べたのである。
ところが、字幕では「いわゆる従軍慰安婦」と書かれていた。だが、論説委員長は"so-called 'comfort women'"などと言っていないのである。「従軍慰安婦」の頭に「いわゆる」をつけることは、竹島の前に「島根県の」、尖閣諸島の前に「沖縄県の」とつけるのと同じく、いまの日本のマスコミにおけるpolitically correctな表現となっている。竹島と尖閣諸島については日本政府としての公式の立場がそういうことなのだからいいだろう。だが、「従軍慰安婦」については日本軍の関与を認めた河野談話が現在の日本政府の公式の立場であり、極右の連中が盛んに主張しているように、河野談話は撤回されていないのである。
ワシントン・ポストの論説委員長に、「あなたがsex slaveと発言したことをNHKは『いわゆる従軍慰安婦』と字幕をつけていましたよ」とチクってやりたい。次の論説で「第三者の発言を曲解してまで安倍政権に恭順の意を示すNHK」と論評されることであろう。

2017年の歴史教科書検定をめぐって(架空の出版社にて)

2015-04-08 22:47:00 | anti facism
佐藤君(世界堂書院の編集者)「先生、この『日本軍の侵攻先には慰安所が設けられ、日本やアジアの女性たちがその意志に反して働かされていた』という文章まずいですよ。検定で必ず意見がつけられます。下手すると教科書全体が不合格になるかもしれません」
林先生(歴史学者。中世史が専門)「そうかまずいか。歴史学界の仲間たちはそう書いているんだけどなあ。まあ私は昭和史が専門じゃないから、仲間たちが正しいのか、文科省様が正しいのか判断できないなあ。面倒くさいからその文章ぜんぶ削ってしまったらどうだ」
佐藤君「いやそういうわけにも行きません。なにしろ今度文部科学大臣になった桃井わるこ大臣は『いわゆる慰安婦問題をめぐる韓国や中国の妄言に毅然と反論できる日本人を育だてるために正しい知識を教えるべきだ』と言ってますから、なんにも書かないわけにもいきません」
林先生「そこでいう『正しい知識』っていうのは、桃井さんとかが出している嫌韓・反中本に書いてあるようなことかい? 読んだことないから論評は控えておくけど、余り行儀のいい本のように思えないし、読みたくないな。ねえ、佐藤君のほうで検定に通りそうな文案作ってくれない?」
佐藤君「わかりました。実は社内で教科書検定対策で文案を作っております。読み上げますよ。
『日本軍の侵攻する先へ売春婦たちや斡旋業者が追いかけていった。日本人の売春婦たちは愛国の情に燃えて、朝鮮人やフィリピン人やオランダ人は単に儲けたいために慰安所を設けて兵士たちの相手をした。日本軍は彼女らの安全を図るために戦場から戦場への移動を手助けした。戦後何十年も経って、とつぜん「自分は意に反して慰安婦として働くことを強制された」とか「大勢の兵士の相手をさせられた」とか言いだす韓国やフィリピンの女性たちがいるが、それは補償金目当てのウソである』
これでどうでしょう?」
林先生「なんだか品がないなあ。日本の若者たちは外国の人たちに向かってこんな独善的な主張をしなければならないのかなあ。こんなこと書きたくないな。」
佐藤君「僕自身もこんなことを教科書で教えていると知られたら外国の人たちに日本国の品格を疑われると思います。でも教科書が検定で不合格になったらうちの会社つぶれてしまいます。阿部政権も5年目に入って、ついに念願かなってお友達の桃井さんを文部科学大臣にしたんですから、慰安婦についての『正しい知識』を教科書に書き込むことは阿部政権挙げての悲願だと当社では受け取っています。こんなことをやっていったいニッポン国はどうなるのか正直言って不安です。でもそれより職を失う不安のほうが大きいです。」
林先生「そりゃそうだろうな。」

国連拷問禁止委員会の勧告を無視したニッポンの教科書検定

2015-04-07 00:11:18 | anti facism
ニッポン国は2013年に国連の拷問禁止委員会という機構から2013年にその人権状況に関する結論的観察(Concluding observations,勧告みたいなもの)を受けている。
これは死刑制度から代用監獄(留置場)の制度など人権全般にかかわる様々な内容を含んでおり、おそらくどこの国でも多かれ少なかれ改善勧告を受けているのは間違いない。
日本に対する勧告の第19項は「軍による性奴隷制の犠牲者(victims of military sex slavery)」に充てられている。
そこでは国連拷問禁止委員会が日本政府が「慰安婦」問題について拷問等禁止条約で定められた義務を履行していないことについて「深く憂慮」していると書かれている。
そして性奴隷制の被害者に対する補償を求めるとともに、公衆にこの問題を教育すること、とりわけ歴史教科書においてこの問題を取り上げることで、日本が拷問等禁止条約違反を繰り返さないようにすることを求めている。
ところが、昨日発表された中学校の教科書検定の結果によれば、「慰安婦の強制連行を示す証拠は見つかっていない」という日本政府見解を書くように教科書会社に求められたとのこと。
おそらく河野談話を準備する過程で韓国で強制連行を示す証拠を探したが見つからなかった、という事実を指したのだと思うが、先ほど聞いたNHKの解説番組で、NHKの解説委員はそれをあろうことか「慰安婦の強制連行はなかったというのが日本政府見解」と説明していた。日本軍がオランダ人女性を強制連行して慰安婦として働かせたことはすでに裁判で認定されているところであり、強制連行が全くなかったと主張するのは無理がある。
さすがに文部科学省はもう少し慎重な検定意見を出したのだと推測するが、仮にNHK様が解説したように「慰安婦の強制連行はなかったという政府見解を書くよう日本政府が求め、教科書は唯々諾々と従った」というような形でこの事実が世界に知れ渡るとすると、「日本国は国連拷問禁止委員会の勧告にもかかわらず、それとはまったく逆の教育を国民に対して行っている大ウソつき国家」という評判を獲得することは間違いなく、それは日本国および日本人の信用を落とし、国益を大いに損ねるのではないか。日本の名誉を守ったつもりで実は名誉を毀損している笑えない事態である。
ちなみに、国連拷問禁止委員会があのような勧告を行うに際して韓国などから働きかけがあったことは想像に難くない。しかし委員会はチリ人を主席、アメリカ人、モロッコ人、グルジア人を副主席とする国際的な委員会である。素直に勧告に従ったほうが身のためではないのか?

シンポジウム 朝日新聞問題を通して考える「慰安婦」問題と日本社会・メディア(4月5日)

2015-04-06 12:18:43 | anti facism
4月5日、東京外国語大学にて「シンポジウム 朝日新聞問題を通して考える「慰安婦」問題と日本社会・メディアが開催され、500人収容の会場が満席になる盛況であった。
2014年8月、朝日新聞が慰安婦とする女性を済州島で多数連行したとする吉田清治氏の証言を伝えたことを誤報と認め、それを訂正した。
それをきっかけに週刊文春、週刊新潮、産経新聞、読売新聞らが一斉にまるで「慰安婦」の存在自体が虚偽であったと主張するかのような大キャンペーンを繰り広げている。
国際的には、韓国、中国のみならず、アメリカや国連の場などでも旧日本軍が韓国・朝鮮人の女性、オランダ人女性、フィリピン人女性などを本人の意志に反して日本兵相手の性奴隷として働かせたことは歴史的事実とみなされており、国連では日本政府に対してその問題に向き合い、歴史教科書にも書き込むようにとの勧告がなされている。一片の誤報をもって慰安婦全体が否定されたと主張するのは右派、ファシストが得意とする論法だとはいえ、発行部数の多い新聞や週刊誌までがそんなことを言っているのは国際的には異様に見える現象であり、ナチスによるホロコーストがあったことを否定するのと同断の歴史修正主義、否定主義(negationism)とみなされている。外国の友人に対しては「まあ自由な社会にはいろんな主張の人がいますから」と受け流すしかないが、日本国内では笑って済まされる事態ではなくなってきている。リベラリズムの牙城だった朝日新聞は、安倍首相を筆頭とする右派勢力の激しいプレッシャーによって牙を抜かれつつある。吉田証言とは無関係で、韓国で名乗りを上げた元慰安婦に関する記事を書いた植村隆記者が右派メディアの血祭りに上げられ、彼は内定していた大学への就職を断念させられ、彼が非常勤講師を勤めている大学にも執拗な業務妨害が繰り返されている。朝日新聞と植村記者はスケープゴートであり、(きわめて狭く解釈された)「国益」に反する言論を行うものはこうなるのだ、という見せしめにされている。良心ある人はこういう動きに反対していかなくてはならない。

集会の最後に主催者を代表して大森典子弁護士が、「慰安婦否定の先にあるのは戦争のできる国家作りだ」といった趣旨のことをおっしゃった。今の流れの延長線上にはたしかにそういうことがあるのかもしれないが、週刊文春や産経新聞、ネトウヨの皆さんにそんな深謀遠慮があるようには思えない。単に「日本の悪口が言われてくやしい」「日本の汚辱を雪ぎたい」といった負け惜しみの感情に流されているにすぎない。日本にはもともと否定主義の底流があったが、それは1980年代までは一笑に付される程度のものだった。その残り火に油を注ぐ格好となったのが韓国と中国における「反日」の高まりであろう。日本と、韓国・中国の経済力の差が大きい間は、日本も自分の過去を反省する余裕があったが、韓国・中国が力をつけ、日本に対して遠慮しなくなると、「なまじ自己反省の姿勢を見せるとそこにつけ込まれて『国益』を損なう」といった見方が生まれた。1980年代には朝日のみならず産経や読売も吉田証言や慰安婦問題をさかんに報じていたのに今になって手のひらを返して朝日を責め立てるのは、大きく言えば韓国・中国に比べて日本の国力が相対的に下がってきたことと深く関係しているだろう。
しかし、シンポジウムで発表された数量的分析からわかったことだが、海外メディアにおける慰安婦問題への注目は安倍晋三氏が歴史修正主義言説を弄するたびに高まっている。安倍は一方ではアベノミクスによって大幅な円安を引き起こし、日本経済の相対的規模縮小を推し進め、他方で慰安婦問題では日本の言論の異様さに世界の注目をかき立て、日本の孤立を推し進めている。
この先に展望できる「美しい国、ニッポン」というのはどんな国か? 集団的自衛権を行使して、アメリカと一緒になって世界へ自衛隊を送り込む日本というより、国際的孤立のなかで、核兵器を頼みとして「オレをバカにするなよー」とすごんでいる独居老人のような国しか見えてこないのだが・・・。