mardinho na Web

ブラジル音楽、その他私的な音楽体験を中心に

映画『蘇える金狼』

2016-01-29 23:26:23 | 前野曜子
『蘇える金狼』は1979年に公開された映画で、村川透が監督、松田優作が主演していた。当時一世を風靡していた角川映画の一本である。
松田優作が演じる主人公の朝倉は大企業の東洋油脂の経理部に勤める平社員。だが、実はボクシングがめっぽう強い。
朝倉は現金を運んでいた人から1億円を強奪し、殺してしまう。彼はその1億円を暴力団との死闘を経てヘロインと交換することに成功する。
そのヘロインを使って彼は東洋油脂の役員の愛人を籠絡。実はこの役員は社長らとぐるになって会社のカネを横領していた。闇の勢力がその情報をネタにカネをゆすりとろうと画策していたが、朝倉はそうした勢力を暴力で排除し、結局自ら社長や役員を脅して東洋油脂の大株主に収まる。そして社長令嬢と婚約し、会社をわがものとしてしまう。朝倉は得意の絶頂にあってカウンタックを乗り回していたが、最後は役員の愛人に刺されて死んでしまう。
この映画は「オレだっていつかビッグなことをやってやる」と息巻くチンピラの妄想をそのまま具象化したかのようだ。朝倉は素手の戦いでは絶対負けないし、銃の打ち合いになっても相手の打つ玉は当たらず、自分の玉は必ず当たる。彼は野望を実現するプロセスで無数の邪魔者をなんの感傷もなく殺してしまう。これだけ大勢の人を殺したり傷つけたりしたら警察がほおっておくはずがないなどと突っ込んではいけない。しょせんはチンピラの妄想なのだ。
昔の私ならこんな映画は鼻から軽蔑して見向きもしなかっただろう。
だが、30年以上経った今日見ると、自由に妄想を膨らませたようなストーリーに妙に惹かれる。
同じ時代に中国で高倉健主演の『君よ憤怒の河を渉れ』が公開されて、高倉健や中野良子が大人気を博すが、この映画も『蘇える金狼』並みに荒唐無稽だ。ただ、改革開放が始まったばかりの時代の中国人を歓喜させたのはまさにその自由さ、荒唐無稽さだったように思う。もし『蘇える金狼』も公開されていれば松田優作と風吹ジュンも中国で大スターになっただろう。
なおペドロ&カプリシャスの初代女性ボーカルだった前野曜子さんが主題歌を歌っているほか、劇中の挿入歌も何曲か歌っているようだ。


ペドロ&カプリシャス(前野曜子)「さようならの紅いバラ」

2011-10-07 12:30:26 | 前野曜子
先日テレビ東京で聴いたペドロ&カプリシャスのデビュー曲「別れの朝」に感動して、さっそく前野曜子さんが歌っていた時代の2ndアルバムを買ってしまった。

愛知県豊川市のグリーンウッド・レコーズという会社から、「前野曜子メモリアル・コレクション」と称して、前野曜子さんのペドロ&カプリシャス時代のアルバムやその後のソロ・アルバムがこれから次々とCD化されるらしい。9月に1stアルバム「別れの朝」と2ndアルバム「さようならの紅いバラ」が発売された。ちなみに「別れの朝」は両方に入っている。
「さようならの紅いバラ」をじっくり聴いてみる。
サウンドやアレンジの点では古さは否めないが、「いとしのネナ」や「夜のカーニバル」といったラテンの曲はそうでもない。ラテンは古くならない。
前野曜子さんの歌唱は「別れの朝」「この胸のときめきを」「さようならの紅いバラ」といった歌い上げる感じの曲で最も魅力が発揮される。少しハスキーで力強いが、噛むとポロポロ崩れそうな脆さも感じる。食べ物にたとえると、よいカビの香りがするブルーチーズといったところか。このような歌唱力は単に努力して勝ち得たものではなく、不健康な私生活とも無縁ではないのだろうな。1日にタバコ20本吸い、ウィスキーをボトル1本だか半本だか飲んでいたというおよそ歌手らしかぬ不摂生ぶりだったらしい。おそらくそれがたたって40歳という若すぎる年齢で亡くなってしまったのだろう。
曲によっては前野さんの魅力が十分に出ていないと感じるものもある。ソロになってから曲に恵まれていれば、もう少し違った人生があったのかもしれない。ともあれ私としてはつい数日前に初めて知ったのであり、この出会いに感謝したいと思う。

ペドロ&カプリシャス「別れの朝」

2011-10-04 00:16:36 | 前野曜子
1972~74年頃はテレビの歌謡番組を熱心に見ていた。
ペドロ&カプリシャスは「五番街のマリーへ」と、それを歌っていた高橋真梨子さんが印象的だったけれど、高橋さんがペドロ&カプリシャスの2代目ボーカリストである。1代目ボーカリストのことは見たことがあるようなないようなおぼろげな記憶しかない。
当時のヒット曲を並べたテレビ番組をぼんやり眺めていたら、ペドロ&カプリシャスの最初のヒット曲が「別れの朝」で、それを歌っていたのが前野曜子さんという人であったことを紹介していた。原曲はカンツォーネに違いないと思ったら、オーストリアの歌手が作った曲だとのこと。国境を接しているから当たらずとも遠からず?
それにしてもいい曲&いい歌だなあ。