フィギュアスケートの安藤美姫(トヨタ自動車)、織田信成(関大)を指導するニコライ・モロゾフ・コーチが読売新聞の単独インタビューに応じ、今季グランプリ(GP)シリーズでそれぞれ2勝しGPファイナル(12月、東京)に臨む2人の安定感の秘密を語った。一問一答は次の通り。(聞き手・結城和香子)
――安藤、織田ともにGP2勝。何が進歩したのか。
「序盤戦の2人の演技は決して良くはない。しかしそれでも勝てるのは、ミスが出ても引きずらず、他の部分でプラスの評価点を得るほど高い内容でまとめられるようになったからだ。以前の安藤なら、失敗したら心あらずの状態になったが、今季はスピンで最高難度のレベルを取り、ステップで情感を込めて滑ることが出来る。織田も、ミスしながら昨季世界王者のライサチェクを上回ったが、去年なら近くにも寄れなかったろう。失敗があっても崩れないという手応えは、大舞台に向けた自信になる」
――表現力にも磨きがかかった。
「夏の間、動きなどを徹底的に指導した。心で滑る演技、見る者の魂に響くような滑りを目指している。日本の選手には、文化的に苦手なのか、そのレベルの滑りが出来る人は少ない。安藤は、実は練習では10倍も良い演技が出来ているが、試合でその域に達していない。女子でそうした演技が出来た唯一の選手、クワン(ミシェル=米)のように、いつかなってくれたらと願っている。振り付けや曲も熟考した。織田は能力の高い選手だが、演技スタイルの幅は広くない。アイスショーでコメディーからタンゴまでいろいろなスタイルを試みた末、チャプリンを選んだ」
――新採点基準の下では、大技のジャンプに賭けるより、表現力や評価点で安定度を高める方が得策か。
「そうだ。ただ高難度ジャンプを跳ぶ能力は持つ必要があり、織田は4回転、安藤は3―3回転と4回転を、GPファイナルか全日本で試すことになるだろう。しかし能力を持つのと、大舞台で実際に跳ぶかはまた別。(トリノ五輪金の)荒川静香も、自分の最高難度を跳んだ結果ではないからね」