みみずく医者の備忘録

名古屋市名東区の内科開業医です。日々の出来事や診察室でのエピソードなどを織り交ぜて綴ります。個人的なメモ代わりです。

帯状庖疹

2023-12-03 18:55:48 | 感染症
帯状庖疹
水痘・帯状庖疹ウイルスが原因で起こる皮膚疾患。一度水痘に罹ると体内にウイルスが潜伏し、免疫の機能が低下すると帯状庖疹として現れ、その後に水泡(水ぶくれ)化する。かゆみや強い痛みを感じ、焼けるような感覚やしびれを伴うこともある。
 
最近の研究では帯状庖疹が心血管疾患や脳卒中のリスクを高めることが指摘されている。2001年から18年の間に帯状庖疹と診断された4万人以上の患者を調べた報告では、心血管・脳血管疾患
の発症リスクは帯状庖疹にかかっていない人に比べ、帯状庖疹を発症した最初の年で19%高かった。
 
帯状庖疹に罹った後に抗ウイルス薬を施しても、患者の心血管・脳血管疾患の発症リスクを下げる効果はあまりなかった。これは、帯状庖疹に伴う心血管・脳血管疾患の発症を抑えるには予防が大事ということを意味している。

予防策として効果的なのは帯状庖疹ワクチンだ。特に高齢者や免疫が低下する人に推奨されており、ワクチンは帯状庖疹の発症リスクを大幅に減少させることができる。
ワクチンには生ワクチンと不活化ワクチンがある。生ワクチンは弱毒化された生ウイルスを用い、帯状庖疹の発症を約50%減少させることが示されている。ただ、免疫抑制剤を使用している一部の患者は接種できない。
 
不活化ワクチンは帯状庖疹の予防効果が高いとされる。帯状庖疹の発症リスクを90%以上減少させることが示されており、免疫が低下している人にも使用できる。ただし、生ワクチンより高価(自治体によっては助成金あり)で副反応の可能性もあるため、接種前には医師との相談が必要となる。

新型コロナウイルスのワクチンの接種後に帯状庖疹を発症しやすいという指摘が相次いだ。ただ、最近はコロナワクチンによって帯状庖疹が増えることはないとする大規模研究にもとづく論文もある。帯状庖疹は全身の健康に影響を及ぼす可能性があるため、ワクチン接種をぜひ検討したい。
 (近畿大学医学部皮膚科主任教授・大塚篤司 日経新聞・朝刊 2023.12.2)