みみずく医者の備忘録

名古屋市名東区の内科開業医です。日々の出来事や診察室でのエピソードなどを織り交ぜて綴ります。個人的なメモ代わりです。

コロナ重症化に関わる遺伝子特定 「DOCK2」 

2023-02-28 06:19:08 | COVID-19
コロナ重症化に関わる遺伝子特定
新型コロナウイルスに感染したとき、重症化しやすいのはどんな人か。
国内の患者のゲノム(全遺伝情報)と症状をもとに分析した結果を、慶応大などの研究グループが発表した。
免疫に関わる「DOCK2」という遺伝子が重症化に関わることが分かったという。
 
研究グループは、2020〜21年の第1〜3波で新型コロナに感染して重症化した65歳未満の440人分のゲノム情報と、一般的な日本人を代表するようにさまざまな地域から収集した約2400人分のゲノム情報を比べた。
すると、重症化した人では、免疫の機能に関わる遺伝子「DOCK2」の付近に特定の変異がある人が多かった。
 
この部分の変異は、日本人の1〜2割ほどの人にみられ、欧米人にはほとんどみられないという。
 
さらに、ハムスターに新型コロナを感染させる実験で、DOCK2と重症化の関連を検証。DOCK2のはたらきを抑える薬剤を投与したハムスターでは感染後に体重が落ちやすくなっていた。
感染後に死亡するハムスターもいた。

コメント
文脈からはDOCK2は、新型コロナウイルスに感染時において重症化抑制に作用するということになります。
また、DOCK2の「変異」すなわちDOCK2の低下・欠如は日本人に多いということから敷衍すれば、日本人は重症化しやすいということになってしまいます。
DOCK2遺伝子多型は日本人を含むアジア人に特有の重症化因子の可能性が示唆されていましたが、欧米などの他の人種では、別の重症化因子があると考えればいいのかもしれません。


薬剤を投与したハムスターの体内では、ウイルスを排除するためにはたらく免疫の仕組みが応答しにくくなっていることも確認。
このことが、重症化しやすさと関連するのではないかと考えられるという。
成果は2022年8月8日付で、科学誌ネイチヤーに発表された。
(朝日新聞・朝刊 2022.8.31)


参考
コロナ制圧タスクフォース」 COVID-19疾患感受性遺伝子DOCK2の重症化機序を解明 -アジア最大のバイオレポジトリーでCOVID-19の治療標的を発見-
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00185.html

タンパク質構造に立脚したDOCK2シグナル伝達機構の解明と創薬研究への応用
http://www.tanpaku.org/tp_medicine_pharmacology/mpa2.php

新型コロナの治療標的を発見 DOCK2が重症化のバイオマーカーに コロナ制圧タスクフォース
https://dm-rg.net/news/024ed46d-de74-46da-806a-4ace025abcd3

免疫関連蛋白質DOCK2は65歳未満のCOVID-19重症患者で発現が低い
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202208/576200.html

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