引越し検討中

とある日、仕事を早く終えたアタシは実家に寄るか、もしくは早めにアパートに戻りネコと戯れるか検討した。
いつも独りで留守番してるネコと触れ合いたいのと、本当に大事なのはネコなのか家族なのかを考えて・・・実家に帰った。
他愛もない話をして、祖母の部屋へ行く。
祖母の部屋に行くと中々帰りづらいのが難点だが、家族と一緒に住んではいるものの、実質独り暮らし状態の祖母にとって話し相手（特に溺愛してるアタシ）は大事だろうと、付き合ってあげた。
やっぱり遅くなった。
帰ろうとしたら祖母がジュースをやると行って離れに取りに行った。
ここでまた痛恨の時間ロス。
祖母はこういうのが多い。
帰りにスーパーに寄ろうとしてたが、遅くなったので断念。
あまり遅いとネコがギャーギャー騒いで外まで聞こえちゃうから、なるべく早く帰りたかったんだよね。

でも、遅かった。
アパートの駐車場を出た瞬間からネコの鳴き声。いや喚き声がこっちまで聞こえてくる。
やべーと思いつつ祖母にもらった大量のジュースを持ってアパートの前に行くと・・・人がいた。
アタシは二階に住んでるんだけど、その人はアパートの前でじっと上を見ている・・・そう、アタシの部屋を。
明らかにその部屋から聞こえてくるネコのでかい声。
アタシはアパートを素通りし、携帯を手にした。
『Ｙ子、助けて～』
「ごめん、これから彼氏とご飯食べに行くから」
女の友情は（ry
とりあえず車の中に逃げ込んで、しばらく隠れてた。
すると向かいの駐車場（おそらく別の棟の人）からミニチュアダックスを抱きかかえた人が出てきた。
・・・野郎、アイツもペット飼ってやがる。
つい何日か前に犬の鳴き声はしたんだ。確かに。
コイツまで飼うようになったか。
やっぱり無断でペットを飼う人って多いのかなぁ。
それともアタシが飼ってるから飼っちゃったのかなぁ。
数分後、車を出たアタシ。もちろん音が出るジュースなんて車中に置きっぱなしだ。
見知らぬ人はいなくなっていた。
アタシは小走り＆忍び足でアパートの玄関を開けると、入った瞬間猫を抱きかかえ、口をふさいだ。
んぎゃー！んぎゃー！泣き喚くにゃんこ。
きっとお腹もすいてるし寂しかったんだろう。
アタシは部屋の明かりをつけずにカーテンを閉め、ネコにエサをやった。
ずっと息を潜めてた。
その日アタシの部屋の明かりが灯ることはなかった。

ここを出よう。
何度か危険な目に遭っては来たけど、そろそろ限界だ。
そう何度目か分からない決意を胸に抱き、アタシは風呂にも入らず就寝した。