犬の眼

『日記』卑しさから清浄なることまで

世界がほんの少し変わった。

2008-11-08 21:26:37 | Weblog

今回のアメリカ大統領選挙。
『初の黒人大統領誕生!』
という言葉が躍った

でもちょっと待って。
まず、まだ正式決定ではないんじゃないだろうか。
たしか12月に行われる“選挙人”による投票で最終決定となるのじゃなかったろうか。
今回は、その“選挙人”を獲得するための選挙だったはずだ。
そりゃあもちろん、オバマが当選するに決まってる。
するに決まってるけれど、まだ正式な決定じゃないのだ。
ところでだ。僕も詳しくは知らないのだけど、選ばれた“選挙人”とやらは、必ず、絶対に、自分の党の候補者に投票するんだろうか?
通常はそうするらしい。
しかし、アメリカには“ブラッドリー効果”なるものがあるという。
選挙の際、事前の調査で有利であった黒人候補が、実際の選挙になると敗北してしまうという事例があるというのだ。
アメリカ人、とくに白人は、本音を隠して表向きは優等生的な言動をする癖(?)があるようで、人種差別主義者と受け取られるのが嫌で、建前の申告をしたためにそのような結果を招くのだとう。
国民による投票では幸いそのような事態は起こらなかったが、もしも、最後の最後、土壇場で“選挙人”がブラッドリー効果に陥ってしまったら…?
そんなことはあり得ないんだろうか?
まあたしかに、これだけ大差がついてしまっているから、それをひっくり返すようなことは起きないと思うけれど…。
投票までの期間に、オバマをとんでもないスキャンダルが襲ったりしたら…?

…うーん、でも、限りなく100%に近い確率で大丈夫なんだろうね。
だからみんな微塵も疑うことなく「初の黒人大統領誕生!」と謳っているのだろうね。

ところで、「初の黒人大統領」っていう表現はどうなんだろうか?
まず、「黒人ってなんだ?」というところから始まっちゃうんだけど、オバマはよく知られてるとおり、“いわゆる”白人と“いわゆる”黒人との間に生まれたハーフだ。
ハーフでも黒人なのか。
そもそも、人種の定義自体がたいへん難しいことなのだそうで、単純に、白人、黒人、黄色人種、とは分けられないみたいだ。
白人だって、もともとはアフリカの黒人から分かれた人種で、それがヨーロッパに分布して、現在アメリカの白人が忌み嫌ってる中東の人たちも人種的には白人だっていう学説があったりして…、素人にとっては考えれば考えるほどこんがらがっちゃう分野の話なのだ。
でも、ご存じのように、アメリカには奴隷制度に始まる暗い差別の歴史がある。
…いや、僕にとってはこの“差別”という意味さえ掴みかねるシロモノなのである。
人種差別とはなんだ?
アメリカは、白人が人口の7割以上を占め、黒人(アフリカ系アメリカ人。カリブ系などのブラックピープルは別枠だそうだ)は15%に満たないらしい。
例えば、これが50:50の比率なら、差別ではなく“対立”なのではないか。マイノリティだから差別と表現されるのか?
でも、たしかアパルトヘイト時代の南アフリカ共和国では、少数の白人支配に対し、黒人ほか大多数の有色人種が虐げられていた。そして、それは“差別”という言葉で表現されていた。
こういった人種問題に関して使用される言葉はほかに“偏見”とか“蔑視”というものがある。
やはり、自分とは違った容姿、文化、宗教を持つ相手を、なかなか容認できないものなのだろうか…。
ひるがえって僕個人のことを考えるに、容姿、文化、宗教など関係なく、ただ他人であるだけでなかなか容認できないっていう体たらくなんだけど…。だからって何の罪もない他人に対し「せん滅してやれ」などとは思わないんだが。

話が逸れてしまったが、アメリカという国には、「一滴でも黒人の血が混じれば黒人」ということを唱える、頑なな考え方の人が存在するそうだ。
それにあてはめれば、オバマは黒人ということになる。
でも、日本のメディアまでが、黒人、黒人と表現することには、かなり違和感を覚える。
“アフリカ系アメリカ人”というのが妥当な表現なのだろうか?
ハーフでもアフリカ人の血が流れているのだから“アフリカ系”?
皮肉なことにアメリカの黒人のなかには、オバマがいわゆる「怒れる黒人」つまり奴隷を祖先に持ち、公民権運動で闘った黒人ではなく、白人を母に持つケニアからの留学生の子どもで、エリートコースを歩んできた人間であるため、自分たちの仲間とは認めないという一派も存在するらしい。

明確な根拠はないのだが、アメリカの白人は、その人の印象―しかも多分に外観的印象―によって人種を決定してるのではないか、という感じを受けた。
つまり、肌が黒ければ黒人だ。
ほかの事例では、同時多発テロ直後、ターバンを巻いているというだけでテロリスト扱いを受けたという人もいるらしい。
そもそも、ターバンはシーク教徒のもので、インド系の宗教の習慣だ。当時、アメリカの世論が敵視したイスラム教徒ではない。
(日本人はもっとひどくて、白人、黒人はみんなアメリカ人だと思ってる。とくに古い世代の人は)

オバマの場合、父親がイスラム教徒だったそうで、本人のミドルネームもフセインであり、また、インドネシアに住んでいた時期があったことも関係しているのか、彼自身もイスラム教徒ではないかという誤認もあったようだ。
これも、イスラム教に対する偏見、差別から起こった指摘だろう。

「黒人初の大統領」という表現にひっかかるのは、理由がもうひとつ。それがオバマ当選への過小評価となるからだ。
「黒人初」「初の黒人大統領」というだけじゃない。
「白人以外初の大統領」なのだ!
いままでの大統領は全員白人だった。
その慣例を打ち破ったのだ!
ちょっと調べてみたところ、たしかに、明確な有色人種の大統領はひとりもいなかった。肖像画で見る限りはそうだった。リンカーンなど髪が黒い人もいたが、髪が黒ければ有色人種というわけでもないだろう。
それどころか、歴史的にはアイルランド系であったり、ユダヤ系を疑われたというだけで問題視される場合もあったらしい。他にもオランダやドイツ、ギリシャの血をひく大統領も見られた。
僕はその分野に詳しくはないので、例えば名字を見れば何系の出身なのか分かる、というわけでもない。
これを正確に調べようと思ったら、たいへんな時間を費やすことになってしまう。
WASP(ワスプ)という言葉も最近はあまり言われないみたいだし、WASP以外の大統領はけっこういるようだ。とにかく、なんにしろ白人が大前提だったことだけはまぎれもない事実だろう。
それを考えると、僕だって、いや、世界中の誰だって、アメリカ合衆国の大統領に有色人種、しかもアフリカ系の人が選ばれるとは、二年前には夢にも思わなかったろう。
あんなにひどい、極右のブッシュ政権が二期にわたって承認された国だからなおさらだ。
僕がかつて憧れたアメリカは消滅し、恥も誇りもない国になりさがっていた。世界からも嘲笑され、呆れられる国に…。
その国が、今回ふたたび希望の輝きを見せたと思う。
まだまだアメリカの懐は広かった。ああいう若い才能が隠れており、そして表舞台に立つことが許されることに…。
(日本こそ、政治家は右翼系が多くを占め、それ以外の者が権力の座につくのは難しいのではないだろうか?)
もちろん、まだ正式に大統領に就任したわけでもなく、オバマは逆境の中これからが問われるわけだが、もう現段階ですでに、彼は歴史に偉大な足跡を記していると思う。
それが、人種の壁を越えたということだ。
もちろん、オバマの勝利はそういうものではない、と言う人も多い。
でも、扉を開いたのは事実だ。
有色人種が大統領に選ばれた、というだけですごいことなのだ。
アメリカは、一歩前進したと思う。
べつの言い方をすれば、一歩成長したと思う。
上から目線で悪いけども、少年期から青年期に差しかかった、とでも言おうか…。
そのきっかけはどうであれ(金融危機であれ)、独立から二百数十年を経て、やっとたどり着いた次なるステージだ。

また、オバマは初めてのハワイ州出身の大統領になる。
アメリカがハワイ王朝をのっとり、そののち1959年に州としてから約50年。
ハワイにも人種間、民族間の苦い歴史があった。
そういう地からの大統領の誕生だ。

オバマは言った。
「黒人も白人も、ヒスパニックも、アジア人も、アメリカ先住民もない。あるのはアメリカ合衆国、それだけだ」
青いアメリカ、赤いアメリカもない、と言った。
人種や政党を超えて、ひとつになるべきだと言った。
感動的なスピーチだ。素晴らしいと思った。
世界中が明るくなるような気さえした。

オバマには、この期待を裏切らないでほしい。
アメリカだけではなく、世界が希望を寄せているのだ。
オバマの実体がどんなものか、僕は知らない。
でも、いまは期待している。
そして、アメリカはオバマの足を引っ張らないように…。
怖いのは暗殺だ。
僕はオバマが大統領でいるあいだ、ずっと心配しつづけるだろう。

オバマ当選の熱狂の中、ひとつ不愉快だったのは、福井県小浜市の「オバマ候補を勝手に応援する会」の活動だ。
ただ単に名前が同じ音だからというだけで、勝手に徒党を組み、騒いでいる。
そこになんの理念も信念もない。
人情として自分の故郷と同じ名のアメリカ大統領に親しみを感じることはよくわかるけども、あれはやり過ぎだ。
市長までがそれに乗り、町おこしとして利用している。
アメリカ合衆国の大統領を決するということは、世界の平和や経済、環境などに多大な影響を与えることだ。祭り気分で浮かれて騒ぎ、あまつさえTシャツなんかを売ったり、あわよくば儲けてやろうなんておかしい。
小浜市民としてのプライドもなにもない、子供じみた行為だと思う。

今日は、普段と違って、デリケートな種類の話題をとりあげた。
しかも文章が下手で冗長なもんだから、誤解を与えるかもしれない。
そうならないよう祈っております。

失業からすでに4ヶ月

2008-11-05 14:28:03 | Weblog
仕事が見つからない。
もう、4ヶ月以上、失業状態だ。
でも、見つからなくて当たり前だ、とも思う。
実績もない。転職も多い。歳も歳だ。

僕は仕事ができる人間ではないから…。
なんのスキルも持っていない。

それに、人間的にも欠陥が多い。
人とうまくやることができない。
人と接することのない仕事など、ほとんど皆無なのだし…。

僕は人と競争したり、争ったりすることが嫌いだ。
嫌いだし、苦手だ。
仕事というものは、多かれ少なかれ、そんな部分を持っている。
競争とまでいかなくとも、共同で何かやらなくてはいけない。
共同でやるなんて、掃除でも嫌だ。

いまわが家のトイレにカレンダーがかかっている。
雑誌の付録のカレンダーだ。
今月は、琵琶湖で小船を出し、ひとりぽつんと漁をする人の写真…。
ひと様を羨むことは失礼なのはわかっているが、無性にうらやましい。ひとりで仕事ができることがうらやましい。
当然そこには、漁という保証のない仕事のプレッシャーはあるだろうし、寒さなど肉体的な苦痛もある。それに、結局は商売であるから、卸すために人との接触も必ずある。
でも、トイレに入るたび、その写真に憧れを抱いて目を向けている。

仕事はなるべくやりたくない。
僕は怠惰な人間だ。
残念だけども、怠惰な人間だ。

まあ多くの怠惰な人間が思い描いた夢想かもしれないが、僕も鳥になりたい。
トビかなにかに…。
とりあえず食物連鎖の上位に立って、捕食される不安もなく、日々の糧さえ確保していればよいという生き方。
トビなら雑食だし、死肉も食べるんだから、おそらく難しい仕事じゃないだろう。
猫もいいが、人間に依存しすぎていることや、ほかにもいろいろ大変そうだ。

甘いなぁ…。
まったく覇気がないなぁ…。
これじゃあ採ってくれる会社なんかないだろうなぁ…。