マオ猫日記
「リヨン気まま倶楽部」編集日記
 




(写真)東名高速道路(2008年撮影)。片側3車線以上あるが、その分、中央の車線(通行帯)に車が集中しやすい。

 先日、取得している普通自動車運転免許の更新のため、警察施設に行ってきましたが(制度改正により、普通免許が8トン限定の中型免許になったので驚きました。)、その際、警察施設で受けた講習の内容にやや違和感を覚えました。

 こうした講習では、よく、教本を参照しつつ最新の制度改正(今回の講習では、例えば中型免許の新設や聴覚障害者マークについての説明がありました。)や最近の事故例を解説。また、視聴覚教材(ビデオ)を使って、飲酒運転中や速度超過運転中に死亡ひき逃げ事件を起こしてしまった人の「末路」が紹介され、講習全体としてとにかく自動車運転の危険性について強調する内容になっています。それはそれとして否定はしないのですが(そして、個人的には、更新期間はもっと長くていいと思うのですが)、折角こうした講習制度を維持するのであれば、単に事故の防止のみならず、時代の流れに即して、もう少し運転のマナーや交通関係の法令順守について強調して欲しいと思いました

 私自身が日本に帰国して、レンタカーを運転したり街中を歩いたりした際に思ったことの第一が、「歩行者の保護の不十分さ。」でした
 たしかに、日本の場合、狭い国土にクルマと歩行者が集まり、路地裏などでは歩道が無い道路も多い訳ですが、であるならば余計に、免許取得時に教えられた歩行者優先、歩行者の保護について、更新時講習の際にもっと徹底すべきであるように思われるのです。実際、(交通整理のなされていない)横断歩道があり、かつ、そこに明らかに横断しようとしている歩行者がいても、日本の場合、たまたま心あるドライバーが止まってくれるまで横断ができず、むしろ横断歩道が無いかのような速度で通過していくクルマのほうが多いような気がします(ちなみに、道路交通法第38条には、自動車の歩行者・自転車に対する譲歩優先義務が規定されており、明らかに横断しようとする歩行者がいないとき以外は、必ず停止できるような速度に減速しなければならない、横断しようとする歩行者・自転車がいる場合は一時停止しなければならない、とされています。また、横断歩道の手前30メートルでは、追い越しが禁止になります。)。この点、例えばフランスでは、あの幅広く交通量の多いシャン・ゼリゼ大通り(往復10車線)ですら、交通整理のされていない(つまり信号の無い)横断歩道があり、そして歩行者がいるときは自動車は一時停止して横断させる等、歩行者優先原則がきちんと守られています。また、欧州各国の中でも(何故か)「運転が荒い」とされているベルギーでは、歩行者優先原則の遵守度が逆に上がり、例え速度違反をしていそうなほど速く走る車がやってきたとしても、歩行者が(信号の無い)横断歩道を横断していれば、その車は急ブレーキをかけて歩行者を優先させます(急ブレーキでの停車は、それはそれとして危険なのですが。)。

(写真)夏に観光客で賑わう「旧軽井沢銀座」(長野県北佐久郡軽井沢町)。歩行者天国のように見えるほど歩行者が多いが、実際は自動車の通行は禁止されていない、普通の県道(長野県道133号線)ので、地元の人や事情を知らない観光客の車が乗り入れてくる。

 歩行者保護はなにも横断歩道を横断中だけの話ではなくて、自動車は、例えば歩行者の横を通過するとき、安全な間隔を確保できない場合(道路交通法第18条)は徐行(すぐに停止できるような速度に減速)しなければなりませんし、身体障害者や高齢者がいるときも同様です。ところが、このマナー(というよりルール)も通常守られていないことが多く、狭い路地裏の道などで時速20キロ以上で歩行者の横を通過していく車のなんと多いこと。先月、ある鉄道駅近くの商店街(車1台がやっと通れる程度の幅員の道で、普通は地元の車を除いては利用する自動車が少ないため、ほとんど歩行者天国状態になっている)で、なんと通行中の車イスの高齢者が邪魔だったのか、クラクションを鳴らしてこの車イスをどかすということをやらかしたタクシー(会社名は敢えて挙げませんが、黄色い「日産セドリック クラシックSV」でした)を目撃しました。いかに乗客を乗せて営業中とはいえ、あまりにも横暴な運転ぶりに呆れ、よほどそのタクシーを止めて運転手に文句を言おうかと思ってしまいました。

(写真)フランス・パリのシャンゼリゼ大通りで、交通整理の無い横断歩道を渡る歩行者(2008年3月撮影)。

 1月29日に警察庁交通局交通企画課が公表した数値によると、平成20年(2008年)の交通事故死者(事故発生後24時間以内に死亡した人の数)は5155人と前年比589人減となり、1953年以来、実に54年ぶりに5000人台に減少しました(1953年当時は5544人。ちなみに最悪だったのは1970年の1万6765人。)。しかも、この間、自動車の保有台数は200万両以下から8000万両近く(2007年は7814両)に大幅に増加しており、車両数が増加しているにもかかわらず死者数が同等水準ということは、それだけ最近の交通事故における死亡危険性が大幅に低下したことを意味しています。他方で、これら5155人の死者数中、歩行中の事故で死亡した場合が1721人(対前年比11.4%減少)、乗車中の場合が1710人(同15.1%)となり、全体に占める歩行中死亡事故の割合が33.4%、乗車中の割合が33.2%と、はじめて「歩行中」が「乗車中」を上回ったそうです。換言すれば、いまや自動車に乗って死亡事故の被害にあう場合とほぼ同じ確率で歩行者の死亡事故が発生しており、それだけに、更新時講習においても、もっと歩行者保護の重要性を取り扱ったほうがよいように思われます。

(写真)ベルギー・ブリュッセルの横断歩道(王宮近く)。

 「キープレフトの原則」も、守られていないと感じるルールの一つで、道路交通法第18条、第20条に規定のあるれっきとした法的義務。特に守られていないのが第20条の規定で、車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、原則としては道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならないとされているにもかかわらず、3車線以上ある高速道路では、真ん中のレーンに車が集中(但し、同条第1項但し書きと施行政令では、例外的に真ん中のレーンを通行できる場合を規定している。)。一番右側のレーンは速度を上げて追い越していく車が通るので、ここに車が集中することはないのですが、何故か一番左側のレーンは、遅い車がいるのかガラガラ。しかし、高速道路上で安全な車間距離をとるためにも、真ん中の車両通行帯に集中するのは危険で、更新時講習の中で「キープレフトの原則」の周知徹底が望まれるところです。

 以上、色々と文句を書きましたが、警察当局の名誉のために付言すると、講習は別として、更新手続きそのものは驚くほどスピーディーで、無駄に待たされることもありませんでした。



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コメント
 
 
 
間違ったことをもっともらしく書かないでいただきたい (aaa)
2009-12-10 17:54:08
第二十条 車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。ただし、自動車(小型特殊自動車及び道路標識等によつて指定された自動車を除く。)は、当該道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)に三以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定めるところにより、その速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる。

片側三車線以上の場合には「最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる。」とかかれているので真ん中のレーンを走るのは違法ではない。
 
 
 
コメントを踏まえて (健(マオ猫日記))
2009-12-19 23:44:13
一部修正しました。

(20条の本則規定は「左による」となっており、ご指摘の規定はあくまでただし書である以上、立法者の意思としては原則論によるべきと考えます。)
 
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