日記から
・2015年5月30日(土)
斎藤孝の「戦間期の国際政治史」を読了。戦間期を一言でいえば、ヴェルサイユ体制の構築とその崩壊だが、この過程を根本的に規定したのはソ連、ボリシェヴイズムだと思う。ヨーロッパだけでなく、中国を含めたアジアの植民地解放運動に大きな影響を与えた。ナチスのファシズム体制はボリシェヴイズムに対するラディカルな反動とみなせる。ヒットラーの中南ヨーロッパへの領土拡張要求を、英仏が宥和政策によって容認したのも、ボリシェヴィズムに対する防波堤の役を期待したからだ。スターリンがこうした英仏への不信から、自己防衛を図って独ソ不可侵協定に走ったのも理由がある。日独伊の提携も防共協定を名とした。読んでいて不可解だったのは、スペイン内戦における英仏米のあいまいな対応。ドイツとイタリアが武器だけでなく兵士も派遣したのに、英仏は不干渉。ソ連も兵士は送らなかった。人民戦線政府は反ファシズムの象徴であるのに、なぜ見殺しにしたのか。各国がそれぞれの思惑で動き、スペインだけでなく、チェコもユーゴもギリシアも見捨てられた。ヒットラーは狂信的だったが、天才でもあった。ボリシェヴィズムに対する英仏指導者の警戒心を読み解き、出し抜いた。恐ろしい時代だった。
(了)