読書日記と読書ノート 第三部(2013年6月~2015年6月) 吉野三郎

退職してから読書中心の生活をしています。読んだ本の感想を日記に記し、要点をノートに書いています。その紹介です。

248、植木千可子「平和のための戦争論」(ちくま新書)

2017-12-05 07:27:03 | 読書日記

日記から

・2015年5月20日(水)

「平和のための戦争論」を読み終わった。軍事力による戦争抑止が可能となる条件を、相手方との情報の共有、政治体制、軍事力のバランスなど、様々な面から探っている。しかし、結論は、歴史的に見て、軍事力による抑止が失敗して戦争になったケースはいくらでもあげられるが、抑止力が功を奏して平和が維持されたことを挙証することは不可能だということだ。ある意味では、一種の保険=安心料のようなもの、と言えるかもしれない。少なくとも、軍事力だけでは平和は保障されるものではない。著者は、対外的な軍事バランスに主眼を置いて論じているが、国内の政治的・社会的力学の考察が不十分だ。民主主義国家だから透明性が高いとか、権力に対する統制が効いていると即断することはできない。「法治国家」と言いながら、平気で憲法を無視する為政者が大手を振っているのだから。古関彰一は「平和憲法の深層」で、軍事力のバランスで平和を確保しようとする考えは冷戦時代の思考だという。冷戦後の世界は、国家対国家の正面戦争ではなく、テロや集団殺戮などが主で、こういう事態に対処するには軍よりも警察力の方がふさわしいと論じている。

 

(了)


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