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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

かなしさがそよっとやってくる

2007-03-28 11:42:44 | 好きな絵本

 そよそよとかぜがふいている

 この題名を見て以来、<1>そよそよとした風が吹いてくるのは、いつの季節なのか。
<2>その季節に合わせてこの本のことを書きたいと、いう二つのことを、ずっと頭の隅で
思っていたような気がします。

 そして、今日。 私が思う、そよそよとした風が、そよっと吹いています。
「そよそよとした風」は、私の中では、春のはじまりに吹く風のイメージです。


   そよそよとかぜがふいている
『そよそよとかぜがふいている』
    長新太 作


 私が買ったこの本には、黄色の帯が付いていて、それにはこう書かれています。
 
  ふしぎな ふしぎな 
  ネコのおはなし。
  長新太、待望の新作!

 
 昨年の夏に、四日市市のメリーゴーランドに行った時、長新太フェアをやっていて、
ウィンドウに飾られたたくさんの本の中に、この本もあったのでした。
 題名も魅力的でしたが、ピンク色の中に居る「鼻の長い赤ザル」から目を離すことが
できなかったのを、覚えています。

 赤いサルがやけに印象的だったので、お店の中で本を見つけ、帯を読んだとき
「え?どこにネコが??」と思いました。これはネコのお話なの‥?と。
 よーく見ると、赤いサル(この猿は本文中でテングザルであるということがわかります)の
後ろに、「手」らしきものが見えていますが、これがネコの手だとわかるのは、この本を
一度でも読んだことがある人だけだと思います。

 鼻がやけに長いテングザル。

 本物のテングザルがこんな鼻をしているのかどうか知りませんが、長新太さん、ご自分の
顔をマンガで描くとき、鼻がやけに大きいおっさん顔にしますよね?それを、何度も見て
いたせいか、なんだか、このテングザルが、長さんに思えてしまって。そして、あきらかに
何かから逃げようとしているサルの格好と、後ろから不気味に迫ってくる「手」らしきものが、
なんか不吉な感じに見えてしまって。
 それは、長新太さんがご病気で亡くなった後に、この絵をみたせいや、2004年発行で
晩年の作品だと知っているからだとわかっていても、この表紙にはタダナラヌモノを、
私は感じているのです。


 さて、肝心のお話の始まりのこんなふうです。 

   ネコ でてきた。
   ペッタン ペッタン


 
あ、やっぱりネコが主人公の話なんだ、とここでわかります。が、「ぺッタン ぺッタン」が
くせものです。

 異常なまでに手が大きいネコなんですね~。
 
 この異常にでかい手を使って、ネコが「あること」をするのですが、その「あること」をするために、
手が大きく生まれてきたのか、それとも「あること」が大好きで、大好きでそればっかり
していた結果、しだいに手が大きくなってしまったのでしょうか。私は、前者のほうだと
思っているのですが‥。 

 ぺッタンぺッタン状態で、ネコが歩いていくと、まずタヌキに「ばったり出会う」。
 突如、「あること」をタヌキにむかってしでかすネコ(かなり攻撃的)。
 次にライオン、カバ、ワニ、と次々に会い、テングザル、ゾウ、ヒョウ、そしてブタで
終わる「あること」。

 
 凄いですよ~、ネコの「あること」。

 最後にはわりと牧歌的?な雰囲気で、お話は終わるのですが、私的には心底からは
安心できない感じです(笑)。だって、ネコはあのぺッタン手のまま、誰かに「ばったり」
出会うことを望んでいるにちがいないのですから。

 ここで、またまたテングザルに話しを戻したいのですが。

 テングザルだけが、なぜ「テングザル」に限定されているのかなあと、思うのです。
 ライオン、カバ、ワニときたら、ただの「サル」でいいはずですよね。長さんは、テングザルが
特にお好きなのでしょうか?それともテングザルが描きたい気分だったのでしょうか?
(もしかしたら、私の深読み通り、ご自分をテングザルに重ねていたのでしょうか)
 しかも、他の動物は一頭づつなのに、テングザルだけ二匹描かれているのです。
見開きページの右側と左側に、膝をかかえたポーズで‥。



 ぺッタン手ネコの行動を、わはわは笑って、ああおもしろかったと本を閉じることが
できたらいいのですが、私は、何度読み返しても、テングザルが気になって、滲んだ
水彩絵の具の色が気になって、表紙絵の構図が見事だなあと思って、そして、最後に
ちょっと悲しい気持ちになってしまうのです。

 春風が吹くと、ほんとはすごく嬉しいのに、でもすこしだけ冬が終わってしまうことが
切なかったりするその気持ちと、一緒かもしれないし、それとはまったく別の種類の、
悲しさかもしれません。



 


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4 コメント

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あること (フラニー)
2007-03-29 15:27:01
昨日も今日も、ほんとうに暖かくて暑いくらいですね。
風も生暖かくって、自転車が気持ちいい!

長さんのこの絵本、読んだことがないのです。
この独特のピンクと赤の取り合わせ、長さん展に行くまで、ちょっぴり苦手だったのです(告白)
でも、これは心から湧き出る長さんの色なんだって知って、それからその色あわせの本もどんどん手にとるようになったんですよ。

「あること」って何だろう!?すごーく気になります(笑)
返信する
フラニーさんへ (ruca)
2007-03-29 15:41:38
こんにちは。
今日はもう「春のはじめ」を通り越して、「夏のはじまり」ですよね。あつい、あつい。

>ちょっぴり苦手だったのです(告白)

この気持ち、私もわかります(告白・笑)。
今でこそ長新太さんって凄い人だなあと心底思っていますが、娘が小さかった頃は、あんまり手にしなかったような‥娘も、激しい(?)色よりも、ぐりぐらのような穏やかな絵本を好んでいたので。

この絵本。メリーゴーランドへ行くまで見たことがありませんでした。(ちひろ美術館にあったのかもしれませんが、あのときはムニャムニャにやられていたので‥。)
でも、ことり文庫には12月から置いてあって。心の中で、こうめさんさすがって思っていたのです。


「あること」は凄いですよ~。長さんパワー炸裂してます。

ピクニックに欠かせないもの、というのが大ヒントです。
返信する
思い出しました~~~っ!! (まみいご)
2007-03-29 23:22:12
この表紙の色合い・・構図・・・
一度見たら 忘れられないのと同時に
どこかで出会っても とっても印象に残る表紙ですよね・・・♪
 こちらの記事を見て あっ!!
借りたことがある本だ~~!!
って思ったのですが 私は 肝心の 「あること」
が思い出せなくなっていました・・・。
(お恥ずかしい・・・)
そして rucaさんが この本から感じ取ったことを読んで 私はさらに 恥ずかしくなりました。
だって、私の この本を読んだときの感想を
書いた記事と比べたら・・・(笑)
恥ずかしくて トラックバックもできませんよ~~~!!
「あること」もばらしてしまうことにもなりますし・・・ 
まったく、私の感想は 小さい子供と 同じですっ 
あはあは・・・
返信する
まみいごさんへ (ruca)
2007-03-30 11:49:43
こんにちは。

コメント残してくれてありがとうございます。
へへ。気になって、まみいごさんとこで、
「そよそよと~」との記事探して、読んできました~。

もう1冊一緒の載せてある本は、知らなかったので、
また探してみようと思います。

長さんは、まみいごさんが書かれていたように、
子どもとは「ありえない~何これ???」って
読んでもらったほうが嬉しいし、きっとそれを
望んで、本を作ってらしたと思うのです。

自分でも深読みだったなあと、思っているのですが、
なにせ勝手にかなしみがそよっと来てしまったので‥。
返信する

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