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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

こころのめをひらく

2009-09-08 11:28:38 | 好きな本
やっと、ポール・フライシュマンの『マインズ・アイ』を読むことができました。
種をまくひと』 『風をつむぐ少年』 ときて、やっとです。

フライシュマンという人は多才な方なのですね‥この3冊、設定も背景も文章形式も
何にも似ていないんです。


マインズ・アイ』は、(私はちょっと苦手な)戯曲形式ではなしが進んでいきます。
しかも、舞台は、療養ホームの部屋の中だけ。
話の中に入っていかれるかどうか不安もありましたが、エルヴァの言葉に
耳を貸し、傾けていくうちに(それは、自分がコートニーになったようでもあり)
エルヴァの提案通り、1910年に出版された旅行案内書を丹念に読みながら、
私も、イタリア旅行へ出かけている気分なのでした。

写真が少なく文章がなるたけ多い旅行案内書を選んで、それを辿りながら、
実際に列車の時刻を調べ、お金の計算もし、美術館の案内図に沿って
中を見てまわる…なんておもしろいことをエルヴァは思いついたのでしょう。
しかも行先は、早くに先立たれた夫と、一緒に行きたいとずっと願っていた
ナポリ、ローマ、フィレンツェ。

エルヴァ・長年教師をしていた88歳の老夫人。
コートニー・落馬事故で下半身麻痺になった16歳の少女。

エルヴァの夫も一緒の3人の旅は、閉じたままだったコートニーの心の扉を
ノックし、時に激しくどんどん叩き、すこし開いたかなと思ったのもつかの間
だったりもしたけれど、最後には、解き放たれた扉から涼しい風が
吹き込んできたラストでした。

想像力というのは、ほんとうに、生きていく力になります。



物語の中で、エルヴァがコートニーに語りかけたことは、私自身が忘れないように
したい言葉の数々でした。

  夜になると、あの人は木を彫ったり、削ったり、できた彫像に
  色をつけたり。そのそばでわたしが本を朗読して‥。お金は
  なかったけれど、満ち足りていましたね。思い出すだけで
  心が明るくなります。愛とはそういうものよ。幸せな子ども時代は
  大人になってからの人生を支えてくれます。〈中略〉
  年をとり、ひとりぼっちになっても、幸せな思い出が生きる
  支えになるんですよ。


  しっかりとした精神の部屋を作りなさい。その部屋が、
  社会復帰をするまでのあなたの住み処になります。
  精神の部屋は、そこに住む人に生きる力をくれるのよー



過去ログ→種をまく人
       風をつむぐ少年





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4 コメント

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こんばんは♪ (nao)
2009-09-08 21:04:18
 想像力は、、生きる力。そうですね~。昨日、ことり文庫さんで、、想像の、妄想の話をこうめさんにしたら「小学生??」と突っ込まれました。
 思い、願い、想像し、、、それは日々の楽しみでもありそれが明日の自分をつくっているといっても過言ではない気がします。
:::::::::::::::::::
そう、 Tシャツ感想の件、了解です♪
返信する
naoさんへ (ruca)
2009-09-09 11:07:54
おはようございます。

想像の世界って、ほんとにおもしろいですよね?
想像が妄想の世界へと発展していくと、ちょっと
こわい気もしますが・笑

頭の中で、思い描くことができなくなったら
偏狭で、自分勝手な人になっていくと思うので
小学生のときの想う気持ちは、みな大事にとって
おくべきだと思います。

VOICEの件、快諾ありがとうございます。
近日中に、載せさせていただきます。
返信する
こころのめ (琴子)
2009-09-09 23:15:21
このタイトルがだーい好きです。素敵なタイトルですよね。

『幸せな子ども時代は、大人になってからの人生を支える』
石井桃子さんも言われていたなーと、今ぼんやり
思い出しました!

最近、出会う本は、人の出会いとそこからの学びが多いものばかり。
素直で柔軟って、それだけで大きな恵みだなと感じます。
「種まく人」わたしも早く読みたいです!
返信する
琴子さんへ (ruca)
2009-09-10 15:47:57
こんにちは。
今日は素晴らしくいい天気ですね。

マインズ・アイ

やっと読むことができましたよ。
最初に、琴子さんのレビューを読んで、おもしろそうと
思い、けど、読むのなら、古い順にと思って
種をまく人、から読み始めたのだった気がしています。
戯曲形式はどうかな?と思っていたけど、途中からは
ぜんぜん気にならなくなったし。
エルヴァもコートニーも等身大というか、はっきりとした
ものの言い方が、なんかよかったです。

ゆうべから「ビーバー族のしるし」を読み始めました♪
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