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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

どこへ続いてゆくとしても

2016-02-23 17:45:06 | 好きなもの・音楽や本

本を読み終えたばかりは、胸の中にいろんな感情が湧いては消える。

私にはいつでも「覚悟」が足りないのだ、と思ったり。
ああいうふうに、大切な人をないがしろにはできないよ、と思ったり。
自分の気持ちに嘘をついたままで、それは生きていると言えるのか、
と問いかけてみたり。

詩人は、会社勤めをやめ、妻に好きな女ができたと言い、家を出たら
それまでの20年では書けなかった詩が、またすらすらと書けるように
なったという。
こころが動くと、血が体をめぐるようになり、頭の、それまで使われず
休んでいた部分が活性化されるのだ、きっと。




「荒地」は、詩人の田村隆一、北村太郎、鮎川信夫らによって作られた同人誌の名前で、
ねじめ正一著の『荒地の恋』は、田村と田村の妻 明子、北村太郎との三角関係から
はじまる実名の小説。


はきはきとした物言いで、北村を魅了する明子はきっと私にこういうだろう。

どうせ、あなたみたいな若い人に、大人のイロコイがわかるはずはないのよ。

時代は昭和のど真ん中で、登場人物たちは、両親の年代よりもさらにすこし上なのだった。
だから私は、いつまでも小娘の気持ちで読んでいたけれど、途中でふと気が付いた。
明子が、田村の元を離れ北村と崖の下の小さなアパートに住み始めた時の年齢よりも、
今の私のほうが上じゃないかと。

50を越えた男女の、それも互いに伴侶持ちの、男女の恋の行く末が
パラダイスのはずはないと、想像するのは容易なことで、だから「荒地の恋」とは
これ以上の題名はないと思った。


誰に泣かれ、誰を裏切り、世捨て人のように暮らし、お金の心配をし続けても、
歩き出し、歩き続けなければいけない「荒地」。
そこにはどんな風が吹き、どんな夕陽を眺めることができるのか、平坦な道を歩いて
いるものにはわからない。

わかりたくもないという人も、迷い出るはずじゃなかったという人も、それぞれのみちを
ただ進んでいくしか方法はほかにない。
もちろん、わたしも。それがどこへ続いてゆくのか知っていても知らなくても。



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