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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

road to nowhere

2006-09-13 17:23:01 | 好きな絵本

 5月に買った本なのに、夏が来て、夏が去ってしまった今頃になって、ようやく
登場させることができました。お気に入りのあまり、大事にし過ぎてしまったかもしれません。

ここってインドかな?

『ここってインドかな?』

アヌシュカ・ラビシャンカール 文
アニータ・ロイトヴィラー 絵
角田光代 訳





 この絵本には、私の気持ちをぐいっと引き込むものが3つあります。

 まず、題名。
 Excuse me,is this India? を ここってインドかな? と、魅力的に
訳したのは
作家の角田光代さんです。

 次に、絵。
 絵は、全部パッチワークされたキルトの作品なんです。巻末の作者プロフィールによると、
絵のアニータさんは世界的に著名なキルト作家で、1999年にインドを訪れた時とても感銘を
受け、たくさんの布や織物のはぎれを集め、インド旅行の思い出として作品を作ったそうです。
 文章を読む前に、キルトの作品だけを見てページを繰っていくのも、とても素敵です。
使われている布の柄やその合わせ方、ステッチ、刺繍の入れ方などなど、見る度に
何かしらの発見があり、飽きることがありません。

 そして、何より私をひきつけたのは、テキスト終盤で、主人公の青ネズミちゃんに、
ひげの紳士が言うこの言葉。

 「どこにいるかなんてかんけいないさ、
 もんだいは、どこにいくかなんだから」
 
 
 ストーリーは、主人公の「わたし」が、アンナおばさんからもらったキルトにくるまって
眠ったら、青ネズミちゃんになって、飛行機に乗って、何処か知らないところを旅している
夢を見た‥というものです。
 アンナおばさんは、インド旅行から帰ってきて、そこで見た色々な景色を、キルトに縫いこんで
「わたし」にくれたんです。だから、青ネズミちゃんになった「わたし」が旅した場所も、
インドっぽいんです、とっても。でも、旅している青ネズミちゃんには、そこが何処なのか
わからなくって、会う人や、そこに居る動物に聞いてまわります。

 「あのね、ここは、なんていう国?」 とか

 「わたし どこにいるのかしら?」 とか

 「本当に知りたいの。
 わたしがどこからきて、
 どこへいこうとしているのか、おしえてちょうだい」

 
聞かれた人や動物たちは、好き勝手に、とても哲学的な(?)答えを返してくれるだけ。
青ネズミちゃんには、わけがわかりません。ひげの紳士の言葉も、そういうもののうちの
一つなのでした。

 角田光代さんは、訳者あとがきで、こんなふうに述べています。

 私はこれを訳しながら、ふと思いました。ひょっとしたら私たちの毎日は、
どこにいるのかわからない、青ネズミちゃんと同じなのではないか、と。
見知った場所で暮らす私たちは、ここがどこか、なんて問わずとも、しぜんに
暮らしています。けれど、「ここ」は、昨日とは同じではないような気がしませんか。
あるいは、昨日と違うのは、私たち自身かもしれません。



 どこにいるかなんてかんけいないさ、もんだいは、どこにいくかなんだから

 
私にとって、この言葉が引き出すイメージの行き着く先は、Road to Nowhere 
という歌なんです。

 Little Creatures
 Talking Headsの、↑ LITTLE CREATURESの9曲目に入っています。

 『ここってインドかな?』のストーリーから、何らかの繋がりがあるわけでもないし、
筋道だった説明もできないんです。
 ただ、「どこにいくかなんだから」のひとことが、歌の中にあるこの箇所に結びついて
いくのです。

We're on a road to nowhere
   Come on insaide
   Takin' that ride to nowhere
   We'll take that ride

   
僕らはどことも知れぬ所へ向かっている
   さあ 中へお入り
   当てのない旅に出かけよう
   行き先知れずの旅に (訳詞 山本安見)

 現実から逃避しているのでも、実生活を否定しているのでもないのですが、気がつくと、
気持ちは「どこかへ」向かっているような気がしてなりません。夢のような楽園が、どこかに
あるわけではないこと、もうようく知っているけれど。植物の蔓が、からまる物があれば
その高さまで、どんどん伸びていってしまうのと、似ているでしょうか‥? 
それとは違うかな(笑)。

 どこにいくかなんだから どことも知らない場所 

 それは、「まだまだ諦めていない」とか、「ドキドキを呼び起こしてくれるもの」と
同じ意味なのかもしれません、私の中では。
 road to nowhere はキーワードであり、総称とも言えるかもしれないなと思います。

 


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4 コメント

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偶然 (miyaco)
2006-09-14 20:59:39
先週、ちょうどTSUTAYAでTalking Headsのベスト(2枚組)を借りてきたばかりだったんですよ。アルバムとしての『LITTLE CREATURES』も大好きですが、「Road to Nowhere」はとくに好きです。でも、お恥ずかしながらきちんと歌詞を意識しながら聴いたことが無くて…。今回訳詞付きのCDを借りたので初めてじっくり歌詞を読みながら聴いてみました。



この曲を思い浮かべるような絵本なんて、いいな。

探してみようと思います♪
返信する
miyacoさんへ (ruca)
2006-09-15 16:27:05
こんにちは。



やっぱりmiyacoさんは、この曲知っていたのですね。すっごく嬉しいです。

コメント1となっているのを見た時に、95%miyacoさんに違いないと思っていました(笑)。

ちょうど2枚組を借りていたなんて、偶然ですね。私の夫も、私がこの記事を書いた日に、「stop making sense」のDVDを何の前触れもなく買ってきたんです。久しぶりにその映画見ましたが、やっぱりデビッド・バーンの歌声は私のベスト3に入ることを確認しました。



ROAD TO NOWHERE とってもいい曲ですよね。

miyacoさんが知っていてくれてほんとに嬉しい♪

なにを隠そうこの曲、結婚式の披露パーティの時の、入場の時に使ったのです。あのコーラスの部分が始まると扉が開いてって感じで。

私の結婚生活、始まりからしてROAD TO NOWHERE なんですよ、ちょっと笑えないかも。



それはそうと‥。『がきんちょ』大詰めですね。2学期になってからも娘は録画して見ているので、私もなにげにストーリーを追っています。最後はどうなるのでしょうね‥。

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こんにちは。 (こうめ)
2006-09-16 16:52:21
図書館のパソコンからの予約サービスって、

本当に便利ですよね。



わたしも、さっそく、

rucaさんのこの絵本を予約しました☆

すごく惹かれましたよー



わたしは、この曲を知らないけど、

そういうイメージの連鎖って、うらやましい!

しかも、ダンナサンやmiyacoさんの偶然にもぴったり

はまった感じで、ステキ。ステキ。

ひとごとながら、うれしくなりました

返信する
こうめさんへ (ruca)
2006-09-18 17:29:33
こんにちは。



ほんとに図書館便利になりましたよね~。

こうめさんに教えて頂いた『十月のみずうみ』はPCから

予約して、『~すぷらっしゅ』は、図書館の絵本のコーナーを

ぶらぶらしていて見つけました。あ、あの本だって。



それで気が着いたのですが、本を買う時も、同じような

状況だなって‥。

家に居たまま、アマゾンとかで、検索して、購入するのは

とっても便利だけど、でも、こだわりの本屋さんには、電車で

1時間かけても行ってみたくなる‥。

やはり、どっちかひとつには絞れないですね。



こうめさんが、これから始める本屋さんは、時間をかけて

「わざわざ行きたくなる」本屋さんになるだろうなって、

そう思っています。あるいは、近所にお住まいの方が

散歩の途中に、つい寄ってしまうようなお店かな。

だって、「イメージの連鎖って、うらやましい!」と

思ってくださる方がオーナーで、店主なんですものね。

きっと魅力的な、お店になると私もどきどきしています。



『ここってインドかな?』には、私の好きなものがぎっしり

詰まっている感じでした。同じくアートンから出ている

『マンゴーとバナナ』もよかったです。ただ、こっちは

どこへもイメージが繋がっていかなかったけど。

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