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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

ゴーシュ

2007-10-03 17:41:23 | 好きな絵本

 秋に読みたい、音楽絵本‥

 オーケストラの本を紹介したあとには、ピアノにするか、チェロにするか
迷いましたが、やっぱりチェロが先かなあと思い、『セロひきのゴーシュ』
にしました。

 セロひきのゴーシュといえば、茂田井さんが絵を描いた

セロひきのゴーシュこの本が有名だと思いますが。

 

 私は、こちらを↓を選びました。

 セロひきのゴーシュ
      『セロひきのゴーシュ』
    宮沢賢治 作 ささめやゆき 絵

 
 お話は、私が紹介するまでもなく、よく知られていると思います。
 最初に、文章だけの本から入った場合と、絵本から知った場合では
ゴーシュに対するイメージの持ち方がずいぶん違うかなあと思いました。

 私は、お話のほうはうろ覚えで、ささめやゆきさんの描いたゴーシュを
読んだので、すごくすごく、ゴーシュのイメージと絵があっていると
感じているのですが、茂田井さんの描いた、やさしくて知的な感じすらする
ゴーシュを先に読んでいる方は、おなじひとつの話でも、受け止め方が
大きくちがってきているのかなあと想像しています。

 

 ささめやさんの、表紙に描かれているゴーシュは、すました顔で
一心にチェロを弾いていますが、その生活ぶりはなかなかの破天荒だし、
最初から「やさしくていい人」でもありません。
 演奏の合わせがうまくいかず、楽長に叱られ、きっとおなかもすいているし。
そんなところに、突然ねこが、ゴーシュの畑から持ってきたにちがいないトマトを
「これおみやげ」です、とかなんとか言って訪ねてくる‥
ゴーシュじゃなくったって「切れて」当然の展開なのですが。

 その「切れた」ときのゴーシュ、ささめやさんの絵はすごく迫力があるのです。
こわいです。ガラス窓を蹴破って、かっこうを外に出してあげた場面なんか
ぱりーんというガラスの音と、そのあとから入ってきたすきま風の音が
聞こえてきそうです。

 ねことの場面でも、たぬきとの場面でも、ねずみの親子とのときも
いつでもゴーシュは全力です。自分の音楽に向き合うとき同様、
すこしも手を抜きません。動物だからといって、適当にあしらったり
しないから、激しい感情が、怒りとなって表れてしまうし、逆に、動物から
学ぶべきところは、素直な気持ちで受け入れています。

  おしまいまでひいてしまうとたぬきの子はしばらく
  首をまげて考えました。
  それからやっと考えついたというようにいいました。
  「ゴーシュさんはこの二番目の糸をひくときはきたいに
  おくれるねえ。なんだかぼくがつまづくようになるよ。」

  ゴーシュははっとしました。たしかにその糸はどんなに
  手早くひいてもすこしたってからでないと音が出ないような
  気がゆうべからしていたのでした。

 
 ゴーシュの激しさは、音楽への情熱なのだと、読者である私たちに
ストレートに伝ってきます。だから、私はささめやゆきさんが描いた
(すごくこわい)ゴーシュが、イメージに一番近いゴーシュに思えたのだ
と思います。

 そしてこの本で、はじめて「セロひきのゴーシュ」っておもしろいと
思えたし、ゴーシュが好きになりました。






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8 コメント

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セロ (こもも)
2007-10-04 08:23:07
銀河鉄道を読んだあと、小林敏也さんの宮沢賢治を2冊借りてきていて、次は、どちらを読もう?と思っていました。
雪わたりとゴーシュ。どちらにしようか?と悩んでいたのですが、rucaさんの記事を読み(そのときは、さっと読むだけにしておきました)、即、ゴーシュに決定。
昨日の夜、早速、読み始め、今、じっくり記事を読みかえしています。朝っぱらから(笑)。
(娘は、まだ寝ているのですよ。昨晩は夜泣きが激しくて)
最近、息子くんの諸事情があって、読む時間が削られているので、まだ、かっこうが出てくる場面まで。
今、rucaの記事をじっくり読んで、ふうとタメイキをついてしまいました。
ああ、今夜がとても楽しみです。

最近、セロを習い始めた人が近くにいて、その音色を間近に聞かせてもらう機会が増えたのですが、セロって、本当に人間的な楽器で、ビックリしています。
ごうごうと怒ったり、唸ったり、ふうとタメイキをついたり、うっとりと鼻歌を歌ったり。
セロの音色に、すっかりまいっている、こももです♪

追伸:次の楽器はなんでしょうか?楽しみです♪♪
返信する
こももさんへ (ruca)
2007-10-04 16:48:33
こんにちは。今日はいいお天気で、暑くなりましたね。
久しぶりにTシャツ1枚になれて嬉しいです。

わたし、驚くくらい宮沢賢治を読まずに大きくなっていて
好きな話は「注文の多い料理店」だったんです。
それぐらいしかストーリーを覚えているものがなくって。
読んでみると、どれもいいなあと思うのに、いまだ
ちゃんと読んでみた本は少なくって。その少ない既読の
話は、どれもささめやさんの絵がついていて、なんか
私の中では「対」になりつつあります。

チェロはそんな人間的な楽器なのですねー。賢治さんも
セロを弾いていたんですよね?ちがったかな?
動物たちとの交流が、徐々にゴーシュの心をほぐして
いって、最後に素敵な音楽を奏でられるほどの豊かさを
もたらしてくれた、というのが読み取り方かなと思うの
ですが、なんかわけもわからずあたりちらして、
がむしゃらにチェロを弾いてって‥そんなんだけでも
おもしろいお話だなと思っています。読み取ったり、
学んだりしたくないなあって感じでしょうか‥。
返信する
おはなしと絵 (るる)
2007-10-09 10:33:35
たしかに、おはなしを読むときに挿絵って重要なポイントだと思います。最近もそんな話題を友達と話したばかりです。私も、おはなしの本を選ぼうとするとき、絵が、あんまり好みじゃなかったりすると、読む気がそがれてしまうことがあったり…逆に、絵に惹かれて選んでしまうこともあります。好きな画家さんが挿絵を担当されたがゆえに、出逢えたおはなしもあります。
私も、賢治は今小林さんのものを読み進めていますが、ささめやさんのもたくさんあるのかな?rucaさんの魅力的な記事で、ささめやさんのものにも興味がわきました。ありがとうございます!
返信する
ゴーシュ (新歌)
2007-10-09 22:41:03
今、こももさんのところにお邪魔してきたところです^^
我が家は茂田井さんのゴーシュです。
ささめやゆきさん、初めて聞くお名前ですが
rucaさんのレビューを拝見して、どうしても読んでみたくなりました!

有名なお話の挿絵は、本当に読者である私達に与える影響が大きいですね。
例えば我が家には『注文の多い料理店』があるのですが
パロル舎の小林敏也さんの絵です。
とても大好きで、素晴らしい絵本なのですが
最初に出会ったのがこの絵本でなくて良かった、と
私はひそかに思っています。
このおはなしに初めて出会ったのは学校の教科書でしたが
挿絵は無難なものでほのかに印象が残るのみ。

小林さんの絵本は斬新で、ドアの向こうの存在もある程度はっきりと
描かれていますので、これを最初に読んだら想像の余地もなく
またこの小林さんワールドが頭から離れないだろうな、と思います。
自分の中での『注文の多い料理店』の世界がある程度出来上がってから
出会ったからこそ「斬新な」絵本として楽しめているような気がします。

私にとっては新しいゴーシュになるであろう、ささめやさん版
探してみますね^^
返信する
るるさんへ (ruca)
2007-10-10 15:06:22
こんにちは。お返事おそくなりました。

絵本はもちろん大好きですが、すこしおはなしが長く
なり、そこに絵がつけれた幼年童話も大好きで、さらに
児童書も好きで、ファンタジーも好きなのですが。
ファンタジーの世界まで行くと、ほんのすこしの挿絵
でもそれが物語の雰囲気を左右したり、物語そのものを
表したりするようにもなりますよね。「指輪物語」なんか
特にそうだし、ハリーポッターの日本語版だって、各
チャプターの扉の絵がかなりのキーになっていたり。

宮沢賢治のように、お話が有名で、しかも昔の方と
なっていると、実に様々な挿絵があり、本の体裁が
あり、様式がありになってきて、「どれ」に出会った
かで、イメージを大きく左右するかなあと思います。
小林敏也さんの絵のゴーシュも今度読んでみたいと
思います。(ゴーシュばっかり読み比べるのもおもしろい
かも)ささめやゆきさんが、挿絵を描いているのは
ほかの出版社からのもので「ガドルフの百合」というのが
あります。素敵ですよ。
返信する
新歌さんへ (ruca)
2007-10-10 15:12:26
こんにちは。

小林敏也さんの絵の「注文の多い料理店」。ぜひとも
読んでみたくなりました。宮沢賢治の作品といえば
それしかしらなかった私は、最初にどこでその話を
知ったのかまったく覚えていませんが、どにかく、賢治
といえば、長い間それでした‥。

ささめやゆきさんは、文章もご自分で書いた絵本も数冊
ありますが、挿絵をほうが5倍くらい多いですね。
ささめやさんが描く絵って、どことなく多国籍というか
外国の匂いがして、それがやけに私の好みだったり
するのです。こももさんが「普通の人」といっている
ゴーシュも、ささめや画でみると、かなりの型破りに
みえますよ、きっと。
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ゴーシュ (jasumin)
2007-10-17 13:23:42
もう一度、うちのゴーシュを読んでみてからコメントを・・・
と思っていたら、こんなに遅くなってしまいました。

ゴーシュというより、宮沢賢治のお話をとても好きなつもりでいたのに
お話の数も多くて、読むたびに新鮮で、
ゴーシュだって、「へぇ~」って思っちゃいました。
私のゴーシュは、文庫本のゴーシュなのです。
父の書棚から勝手に持ってきたそれは、初版が昭和45年になっています。
紙の色は、ご想像通りのものすごいセピア色です。
ゴーシュって、物静かなおとなしいイメージを持っていたのですが
読み返してみると、なんのなんの。
トマトを持ってきた猫に「ばか」なんて言ってました(笑)
荒々しい感じ、しますね。音楽への情熱かぁ。

ことりさんで、ささめやさんのゴーシュは表紙だけ見たのです。
先月はことり便でシンシアライラントを2冊お願いしたので、
rucaさんがお好きですよっていうお話も伺っていたのですよ。
最近は、読みたい新しい本が増えてしまって、なかなか読み返すことが少なくなっていたので
とても楽しかったです。きっかけはrucaさん、ありがとうございました。
返信する
jasuminさんへ (ruca)
2007-10-18 10:06:14
おはようございます。丁寧なコメントをありがとう
ございます。

宮沢賢治の作品にはどれも馴染みが薄くって、そのせいか
なんか敷居が高いようにも感じられ、読んでるみる機会
もなかったのですが、この岩崎書店のシリーズは、全体
の装丁を和田誠さんが担当されていて、1冊ごとに、
挿絵を描かれる方は違っている、というのがおもしろく
これなら「入っていかれる」かも、と思ったのでした。
(でもまだ、和田さん挿絵の「注文の多い料理店」と
ささめやさんの「セロ弾き~」しか読んでないんだけど)
読んでみると、話の内容も、言葉自体もおもしろいので
これからも少しづつ、読んでいきたいと思っています。

先月のことり便のシンシア・ライアント、魅力的でした
ねえ~。jasuminさんが2冊、買われたことを知って
心が疼きましたよ。
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