報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「某ジブリの魔女も風邪でダウンしていた」

2017-11-29 19:31:50 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月5日23:00.天候:雨 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 クロ:「真夜中に テトリス興じる スラブ人……ニャ」
 エレーナ:「うるさいな」

 ホテルのフロント夜勤をやっているエレーナ。
 しかし、これが都心の巨大なホテルならまだしも、元はドヤ街だった場所にある小さなビジネスホテルでは、こんな真夜中に客の出入りがあるはずもない。
 ヒマなウクライナ人がテトリスをやってても問題は無いわけだ。
 勤勉な日本人的には、大いにアウトであるが。

 クロ:「あっ、読者の皆様。わっちはエレーナの使い魔で、黒猫のクロでありんす」
 エレーナ:「誰が自己紹介しろっつった。てか、読者は全員忘れてるよ」

 花魁言葉になっていることについては突っ込まないのか。
 因みにテトリスの発祥はロシアである為、テトリスはロシア語である。

 エレーナ:「つーか、猫がカウンターの上に上がんな」
 クロ:「招き猫のポーズで集客率アップ〜!」
 エレーナ:「いや、黒猫が招き猫のポーズやっても不気味なだけだから」

 と、そこへフロントの電話が鳴る。
 外線である。

 エレーナ:「おっと、電話だ」

 エレーナ、テトリスを中断する。
 コホンと咳払いして電話を取った。

 エレーナ:「お電話ありがとうございます。ワンスターホテル、フロント係のマーロンでございます」

 エレーナのフルネームはエレーナ・M・マーロンである。
 ウクライナでは珍しい名字である為、エレーナも実はマリアンナ同様、他国からの移民疑惑が持ち上がっている。

 クロ:(電話応対の時には声のトーンが上がるタイプ……ニャ)

 稲生:「すいません。僕、稲生と申しますが、エレーナさんをお願いできますか?」
 エレーナ:「いや、アタシだよ」
 稲生:「あれっ!?そうだったっけ!?」
 エレーナ:「アタシの名字、マーロンって言うの。よく覚えといて。マリアンナの名字は忘れていいから」
 稲生:「そ、そういうわけにはいかないよ……ハハハハ……。(やべっ!マリアさんの名字、ど忘れした!)」
 エレーナ:「今、微かに『ヤベッ』とか聞こえたけど?」
 稲生:「な、何でもないよ。それより、お願いがあるんだけど……」
 エレーナ:「何?……えっ、風邪薬?」
 稲生:「そうなんだ。さっき、市販の風邪薬は飲ませたんだけど、熱が高くなっちゃったんだ。エレーナの所の組は、魔法薬師のジャンルだろ?だったら、飲んだらたちどころに治る風邪薬って無いかな?」
 エレーナ:「たちどころってわけにはいかないけど、確かにそういう薬ならある」
 稲生:「そ、それを譲ってくれ!マリアさんの熱が39度に上がって大変なんだ!」
 エレーナ:「それ、本当にただの風邪?……まあ、いいわ。確かに、魔女がのこのこと病院に行くのもどうかと思うしね」
 稲生:「やっぱりマリアさん、人間としては『公式に死んだ』ことになっているから、保険も何も無いらしいんだ」
 エレーナ:「うちの先生とかも同じだよ。ていうか、魔女に人間の保険も年金も意味が無いんだけどね。だからケガは魔法で治して、病気は薬で治すわけ」
 稲生:「あとはポーリン組の薬に頼るしか……」

 因みにポーリン組に限らず、他にも魔法薬の研究・開発をしている組はある。
 だが稲生にとって、真っ先に泣きつける組がポーリン組だったようだ。

 エレーナ:「分かった分かった。こっちにもマリアンナには借りがあるから、取りあえず返しには行く」
 稲生:「ありがとう」
 エレーナ:「ついでに、あいつの借金も取り立てに行くからよろしく」
 稲生:「はあ!?」
 エレーナ:「今、どこにいるの?」
 稲生:「埼玉の僕の家だよ。今、地図をそっちにメールで送るから」
 エレーナ:「地理情報をオンラインで送るってのも、昔は魔法だったんだよねぇ……。ま、とにかく薬は見繕っておくから」
 稲生:「よろしくお願い。いつ来れる?」
 エレーナ:「取りあえずホテルの夜勤が明日10時で終わるから、それから向かうよ」
 稲生:「分かった。お願いするよ」

[同日同時刻 天候:雨 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 稲生:「取りあえず、エレーナに連絡が取れました」
 イリーナ:「ありがとう。これで少しは安心ね」
 稲生:「そうですか」
 イリーナ:「取りあえず夜の分と明日の朝の分は、市販の風邪薬で持たせましょう。あとはエレーナが持って来てくれる薬次第ね」
 稲生:「それにしても、びっくりました。まさか、マリアさんが……あ、いや、前にも倒れたことがあったか……」
 イリーナ:「あれは心労もあったんだろうけどね。今回はただの風邪でしょう」
 稲生:「その割には熱が39度は高くないですか?」
 イリーナ:「これ以上高くなったら、いいわ。アタシがポーリンの所に行ってくる」
 稲生:「ポーリン先生の所へ?」
 イリーナ:「ええ。ま、私の予知ではマリアの熱はこれ以上上がらないはずだけど……」
 稲生:「魔女宅の主人公でさえ風邪でダウンしましたから、マリアさんがそれで倒れること自体は……ですけど、やっぱり心配です」
 イリーナ:「しょうがないわ。実際に病気になっていない私達では、あのコの為に薬を用意してあげることしかできない。あとは、あのコ自身の戦いよ」
 稲生:「はい……」
 イリーナ:「なぁに、心配無いって。『病は気から』って言うでしょう?逆にマリア、安心して気が抜けているから風邪なんか引いたりするのよ」
 稲生:「えっ?えっ?」
 イリーナ:「迫害を受けていた人間時代は、風邪すら引けなかったでしょうよ……!」
 稲生:「!!!」

[11月5日24:00.天候:雨 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 マモン:「はい、ご苦労さまです。交替します。ゆっくり仮眠を取って来てください」

 エレーナも今やマスター(一人前)である。
 階級はマリアと同じローマスターであるが、マリアの後で登用されたわけだから、本来はそこで先輩・後輩の差ができる。
 組によっては同級であっても、なったタイミングで先輩・後輩の上下関係が発生する所もある。
 で、エレーナは七つの大罪の悪魔、強欲の悪魔マモンと契約した。
 マモンはマリアンナが契約している七つの大罪の悪魔、怠惰の悪魔ベルフェゴールと同じく、タキシードに蝶ネクタイの姿をしていた。
 もちろんこれは、エレーナのホテルで一緒に働くという意味での恰好である。
 ベルフェゴールがイギリス人のマリアンナに合わせ、英国紳士の恰好をしているのとは少し違う。

 エレーナ:「ああ。あとはよろしく」
 クロ:「よろしくですニャ」
 エレーナ:「オマエ、さっきまで寝てたんだから一緒に店番してろ」
 クロ:「ンニャッ!?」
 マモン:「猫は自由気ままでいいですねぇ……」
 エレーナ:「全く……」

 エレーナはエレベーターキーを操作して、エレベーターを地下階に行けるようにした。
 表向きは機械室や倉庫があるフロアということになっており、普段は不停止扱いになっている。
 B1Fのボタンを押してもランプが点灯しないし、この1階から下のボタンを押しても点灯しない。
 そこで切替スイッチの役割を果たす小さな鍵の出番である。
 エレーナは最初、稼働していない客室を使っていたが、このホテルが盛況になってくるとそうもいかなくなり、地下の機械室に居室を作ってそこで寝泊まりするようにした。
 表向きはスタッフの仮眠室・休憩室・シャワー室ということになっているが、実際はエレーナ専用居室である(スタッフ休憩室自体は元から別にある為)。

 エレーナ:「フーム……」

 エレベーターが地下1階に着くと、その先は真っ暗だった。
 ま、誰もいない機械室や倉庫が普段から明るいわけがない。
 エレベーターの横に照明スイッチがある。
 そしてまたエレベーター操作盤に鍵を差し込んで、中からはB1階のボタンを押しても反応しないようにした。
 こっちからは外側の上のボタンを押せば、エレベーターはやってくる。

 エレーナ:(寝る前にざっと薬を見繕っておくか。後でバタバタするよりはいい)

 エレーナはそう考えると、居室の横にある自分の物置のドアを開けた。
 そこには大きな薬箱が入っていた。
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“大魔道師の弟子” 「マリア、ダウン」

2017-11-29 15:20:36 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月5日21:34.天候:雨 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

 列車が南下するに従って、窓に当たる雨粒の量が多くなる。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、大宮です。上越新幹線、北陸新幹線、高崎線、埼京線、京浜東北線……〕

 稲生:「ん……?おっ、もう大宮か。マリアさん、マリアさん」

 稲生が隣に座るマリアの肩を揺すった。

 マリア:「んっ……」
 稲生:「もうすぐ降りますよ」

 稲生は、すぐ後ろに座るイリーナも起こそうとした。

 稲生:「先生、先生……」
 イリーナ:「あいよ。アタシゃ起きてるよ〜」

 キキィ!(想定外のATCブレーキで列車が大きく揺れた)

 稲生:「わっ!とっとっ……!」

〔「……尚、本日は大宮駅改良工事に伴い、列車の到着ホームが変更されております。この列車も14番線到着のところ、本日に限りまして15番線に到着致します。お出口は変わりまして、右側となります。到着ホームにご注意ください。……」〕

 ガクン!(想定外のポイント通過で、また列車が大きく揺れる)

 稲生:「わぷっ!」

 おおっと!稲生、バランスを崩してイリーナの巨乳に顔面ダイブだ!

 稲生:「すすす、すいませ……!」
 イリーナ:「いらっしゃーい♪」

 イリーナ、笑みを浮かべてそのまま稲生をハグ。

 マリア:「何をフザけて……

 マリア、顔を真っ赤にしてやってくる。
 そして……。

 稲生:「ぐえっ……!」
 イリーナ:「!!!」

 マリア、全体重を掛けた体当たりをかましてきた。

 イリーナ:「ちょっと、マリア!単なるジョークでしょ!何をそんなに……!」
 マリア:「うっ……くっ……!」
 イリーナ:「!?」

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ、大宮です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。15番線に到着の電車は……」〕

 稲生:「いっけね!着いちゃった!早く降りましょう!」

 稲生達は慌てて荷物を取り、急いで列車から降りた。

 稲生:「ふう……!」

 ピー!(客終合図)
 プシュー、ガチャガラガラガラガラ………ッ、ガチャン!(E2系0番台の閉扉音はこんな感じ)

 イリーナ:「降り遅れ無くて良かったわね」
 稲生:「危うく上野まで連れて行かれる所でした」

[同日21:45.天候:雨 埼玉県さいたま市中央区 タクシー車内→稲生家]

 大宮駅からタクシーに乗り換えて家に向かう。
 雨はそんなに強いものではないが、道行く人達の殆どが傘を差している。
 タクシーのワイパーも数秒置きに動く程度の雨だ。

 稲生:「さすが先生ですね。予言が当たりましたよ」
 イリーナ:「まあ、このくらいは序の口さね」

 東日本大震災だけは魔界や“魔の者”が関わっていたこともあって、どの魔道師も予知はできなかった。
 “魔の者”と大魔王バァルは全くの面識は無いし、交流も全く無いが、たまたまこの二強魔が偶然同時に行動を起こしたことがあの大災害に繋がったとの見方もある。
 悪魔の考えることを人間に理解することは難しいが、悪魔同士は気が合うのか、そういうことで思わぬタッグを組んで来たりするから鬼以上にタチが悪い。
 今は魔道師達と契約している悪魔も、契約が切れたりすると今度は敵に回ることもあるから物凄く面倒臭い。

 イリーナ:「マリア、どうしたの?」

 マリアはローブを羽織っているが、更にフードも被って俯いていた。

 マリア:「いえ……ちょっと寒くて……」
 運転手:「あ、寒かったですか。どうもすいません」

 運転手はエアコンの暖房を強くした。
 確かに今は外が雨ということもあり、結構肌寒いとは感じる。
 しかし、車に乗った時、稲生は十分に暖房は効いていると思ったのだが……。

 稲生:(まあ、僕とマリアさんじゃ体感温度が違うのかも)

 屋敷の中には機械的なエアコンは見当たらないが、それでも空調が保たれているのは、それが偏に魔法によるものだろう。
 屋敷が魔法で建てられたことが分かる1つの理由である。
 稲生の部屋は夏場、冷房が強めだ。
 これはPCやゲーム機などが置いてあるから、というのを理由にしている。
 で、疑われた。
 そこまで暑くなるものなのか、と。
 マリアに調べられて、その時に見られたのが、PC内に保存していたJKモノやスク水モノもののエロ動画である。

 イリーナ:「…………」
 稲生:「あ、すいません。そこの道、左に入ってください」
 運転手:「はい。ここを左ですね」
 稲生:「はい。……で、あの標識の前で止めてください」
 運転手:「はい」

 タクシーがハザードを点けて止まる。

 運転手:「えー、ちょうど1000円です」
 稲生:「はい。……すいません、カードで」
 運転手:「はい」

 イリーナから渡されたカードで稲生が払っている間、背後で動きがあった。
 もちろん、マリアが先に降りたわけである。

 運転手:「それでは暗証番号を……」
 イリーナ:「マリア!」
 稲生:「!?」

 稲生が驚いて車の外を見ると、マリアが倒れていた。

 稲生:「マリアさん!?」

 イリーナに抱え起こされた。

 マリア:「ちょっと……足がもつれて……」
 イリーナ:「そんなわけないでしょ!」

[同日22:15.天候:雨 稲生家]

 イリーナ:「熱は38度5分。典型的な風邪ね」
 稲生:「そうでしたか。全然、咳をしていなかったので気がつきませんでした」
 イリーナ:「くしゃみとかはしてたけどね。ユウタ君も感染(うつ)されていないか、気をつけた方がいいよ」
 稲生:「今からイソジンでうがいしてきます」

 そこへ稲生の母親の佳子がやってきた。

 佳子:「あのー、パブロンで宜しかったらどうぞ」

 家の救急箱にあった風邪薬を持って来た。

 イリーナ:「どうも、ありがとうございます」
 佳子:「明日になれば近くのクリニックが開いてますよ」
 稲生:「それにしても、僕も魔道師になってから全く風邪なんか引かなかったものだからそういうものだと思ってましたけど、そうでもないんですね」
 イリーナ:「そりゃそうよ。怪我だったら回復魔法で治せるけど、病気は魔法で治せないからね。『不老不死の魔道師を殺すには、病を流行らせろ』ってね。だから風邪でも油断はできないのよ」
 稲生:「へえ……」
 イリーナ:「それじゃ、お言葉に甘えて頂きます」
 佳子:「どうぞどうぞ」

 イリーナは薬を持って客間に入った。

 佳子:「あの人達、保険とか入ってるのかしら?」
 稲生:「えっ?」
 佳子:「ほら、保険入ってないと全額負担になるからね」
 稲生:「そう言えば日本に住む外国人達は、こういう時どうしてるんだろう???」
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“大魔道師の弟子” 「前回のようなヤンデレラは実在しない」

2017-11-27 19:18:43 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月5日19:58.天候:曇 JR仙台駅新幹線ホーム→東北新幹線“やまびこ”56号9号車内]

〔13番線に、20時ちょうど発、“やまびこ”56号、東京行きが10両編成で参ります。この電車は途中、福島、郡山、宇都宮、大宮、上野に止まります。グリーン車は9号車、自由席は1号車から5号車です。まもなく13番線に、“やまびこ”56号、東京行きが参ります。黄色い線まで、お下がりください〕

 夕食と土産物を買い終えた魔道師達は新幹線ホームに移動した。
 車両の規格が統一されている東海道新幹線では全駅に可動式安全柵が設置されているが、そうではない東北新幹線では設置されていたりしなかったりだ。
 仙台駅には付いていない。
 尚、東海道新幹線では16両編成1323席の法則というものがある。
 JR西日本500系が追い出されたのはこの為。
 まあ、バリエーションが無くなってつまらなくはなったが。
 東北新幹線では安全柵は設置できないものの、バリエーションに富んでいる所が良い。

〔「13番線、ご注意ください。“やまびこ”56号、東京行きが到着致します。黄色い線の内側まで、お下がりください」〕

 やってきたのは古参のE2系。
 黄色いヘッドライトが稲生達に接近してくる。

 稲生:「そう言えば、冥鉄に新幹線は無いですね」
 イリーナ:「無いね。ヘタすりゃ、未だに蒸気機関車が走っているような鉄道会社だからね」
 稲生:「0系や200系がいたら面白いのに」
 イリーナ:「『怨念で走る彼岸鉄道』というコンセプトだから、夢の超特急は冥鉄の方針に合わないんだろうね」
 稲生:「国労や動労の闘争にすら、新幹線は使われなかったそうですからねぇ……」

 尚、未だに上尾事件でブッ壊された165系は冥鉄で鋭意運行中です。
 深夜の上尾駅や大宮駅で見かけたら要注意!

〔「ご乗車ありがとうございました。仙台、仙台です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。13番線に到着の電車は……」〕

 稲生:「0番台だ、0番台」

 稲生がそう言いながら乗り込んだ。
 E5系などでは普通車も電球色の照明だが、E2系ではグリーン車だけ。
 1000番台はアクリル製のカバーに覆われた直接照明だが、0番台は間接照明である。
 後者の方がムーディーアポ山さんな雰囲気だが、照度が低いという難点があったが、気になるほどのものではない……と思う。

 稲生:「えーと、ここが僕とマリアさんの席。その後ろが……先生の席です」
 イリーナ:「あら?いいの、ここで?」
 稲生:「ええ」

 イリーナの席は車いす対応の1人席だった。
 恐らく対象となる車椅子使用の乗客がいなかったので、一般販売されたと思われる。
 その前に、稲生とマリアが座る。

 稲生:「毛布使います?」
 イリーナ:「ブランケットあったんだ。使う使う」
 マリア:「中国人みたいに持ち帰っちゃダメですよ」
 イリーナ:「いや、しないから」

 中韓人のマナーの悪さは、他国の外国人観光客にも不評!

 ホームからオリジナルの発車メロディが鳴り響く。
 壮大さは旧バージョンの方が良かったと思うが、現行バージョンは生演奏を録音したものだという。

〔「13番線、ドアが閉まります。無理なご乗車はおやめください」〕

 稲生:「(発車メロディの)無理な変更はおやめください」

 ボソッと呟く稲生。

 マリア:「ん、何?」
 稲生:「いえ、何でも無いです」

 ドアが閉まって、列車はVVVFインバータの音を響かせて走り出した。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、東北新幹線“やまびこ”号、東京行きです。次は、福島に止まります〕
〔Ladies & Gentlemen.Welcone aboard the Tohoku Shinkansen.This is the Yamabiko superexpress bound for Tokyo...〕

 稲生:「そうだ、マリアさん」
 マリア:「なに?」
 稲生:「all aboardってどういう意味?」
 マリア:「……『発車します。ご注意ください』」
 稲生:「それでいいんですか?」
 マリア:「それでいいと思う」

 確か、新幹線だったかと思う。
 ホームの発車案内電光掲示板に、当該列車が発車する際に、『All aboard』という表示が出るの。
 最初は都営地下鉄だったかもしれないと思ったのだが、作者が都営大江戸線で見たところ、そういう表示は無かった。

 稲生:「あと、これは『アルカディアタイムス』に載っていたんですが、『ニューヨークの地下鉄で「Ladies & Gentlemen」と言わないようにする計画か?』ですって」
 マリア:「は?」
 稲生:「『LGBTの利用者に「Ladies & Gentlemen」と呼び掛けるのは不適切だからとの判断か?』とのことです」
 マリア:「……アメリカ人、アホだ」
 稲生:「それが、その……」
 マリア:「ん?」
 稲生:「7月にはロンドンの地下鉄で、既にそうした動きがあったようです」
 マリア:「……バカばっか。しばらく日本にいていいかな?」
 稲生:「是非いてください」
 マリア:「ていうか、日本の地下鉄は?英語放送では言ってない?」
 稲生:「いやー、日本の地下鉄で『Ladies & Gentlemen』は聞いたことないですねぇ……」
 マリア:「日本語では?」
 稲生:「元から『お客様』で殆ど統一されてるから大丈夫です」
 マリア:「……もう少し私も日本語を勉強してみよう」
 稲生:「マリアさん、素でだいぶ上手くなったじゃないですか」
 マリア:「いや、もう少し滑らかに喋れるようにしておきたい」
 稲生:「そうですか?」
 マリア:「自動翻訳魔法での私の日本語、かなり硬い表現なんだって?それじゃダメだと思う」
 稲生:「僕は別にいいと思いますけどねぇ……」

 稲生は後ろの1人席に座るイリーナを振り向いた。

 稲生:「先生、ロシア語ではどうですか……って」
 イリーナ:「クカー……」
 稲生:「あ、ダメだこりゃ」
 マリア:「多分、ロシア語も英語と似たような言い回しなんじゃない?」
 稲生:「なるほどねぇ……」

 尚、LGBTに配慮するが故の『Ladies & Gentlemen』禁止令は、米英国民からも疑問の声は上がっているという。
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“大魔道師の弟子” 「顕正じゃ 宗門・創価じゃ 身延派じゃ どうじゃこうじゃと というが愚かじゃ」

2017-11-27 12:22:18 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月5日17:36.天候:地下なので不明 地下鉄仙台駅→JR仙台駅]

〔仙台、仙台。出入り口付近の方は、広くドアにご注意ください〕

 電車がホームに滑り込む。
 副駅名があるのが東西線の特徴だが、仙台駅にだけは無い。

〔「ご乗車ありがとうございました。仙台です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕

 たまに肉声放送があるが、ワンマン運転の為、これは運転士が行っている。

 稲生:「先生、降りますよ」
 イリーナ:「んおっ……?日本の電車は寝れるねぇ……」
 マリア:「この治安の良さは地味に羨ましい」
 稲生:「国民性です」

〔仙台、仙台。南北線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 ここで電車を降りる。

 稲生:「それでは……夕食は牛タンで」
 イリーナ:「うん、行こう行こう」

 地下深い場所にある東西線ホームからJR仙台駅の3階まで。
 これだけでアクションやRPGなら、一ステージ並みである。

 稲生:「東西線が開通したことで、少し仙台駅構内のマップの難易度が上がりましたね」
 イリーナ:「そう。じゃ、私も屋敷の難易度を上げようかしら?」
 稲生:「あれ以上、即死トラップを仕掛けられても困ります」

 因みに東口も再開発が進んでいるので、そちらも難易度が上がりそうである。
 構造は比較的シンプルなのに、人の多さのせいで難易度高めの大宮駅東口の再開発は何時?

[同日18:00.天候:曇 JR仙台駅3F牛タン通り]

 テーブル席に案内されて、まずは飲み物。

 稲生:「僕はビールですが、先生達はワインですか」
 イリーナ:「そう。ウォッカ無いし」
 稲生:「……無いですね」
 マリア:「ここでウォッカ飲む方もどうかと思いますが……」

 定番は定食であるが、他には牛タンシチューやカレーもある。
 詳しくはぐるなび辺りでも参照願いたい。

 稲生:「シチューも美味しそうですね」
 イリーナ:「確かに。ユウタ君はシチューも好きだったね」
 稲生:「ええ」

 マリアの屋敷では、基本的にイリーナやマリアの好みに合わせた料理しか出てこない。
 その為、こういう旅行の時には稲生は日本食を狙うことが多々ある。
 シチューやハンバーグなど、日本でも当たり前になっているものが出てくるとホッとするのだ。
 カレーが出てくることもあった。
 何もこれは稲生に合わせてくれたわけではなく、イギリス人のマリアに合わせたものだ。
 長い間インドを植民地としていたイギリスに、インドからカレーが入り、それがイギリス国内でアレンジされ(特にカレールーを投入する所)、そこから日本に入った来たものだ。
 表向きはそういうことになっているが、やっぱり少しは稲生に合わせてくれたのだと思う。

 イリーナ:「うん、この牛タンやわらかい。こういう魔法を使っていても、やっぱり硬い物はねぇ……」
 マリア:「顎の力までは維持できませんか」
 イリーナ:「うん……まあね」

 屋敷に出てくる料理の中でステーキが出てくる際、イリーナだけレアになっているのはその為か。

 イリーナ:「いいねぇ。屋敷でも普通にディナーに出そうか?」
 マリア:「食材の調達が難しいんじゃないですか」
 稲生:「通販なら買えますけど、やっぱり単価が高いからなぁ……」

[同日19:00.天候:曇 JR仙台駅2F]

 夕食に牛タンを食べた後は、土産物を扱っているエリアに向かった。

 稲生:「お土産に萩の月でも買って行くか。大石寺に行ったはずなのに、何故かお土産が仙台の萩の月ってのもインパクトあるかな」
 イリーナ:「おっ、それいいね」

 稲生は萩の月を買ったのだが……。

 イリーナ:「『地方発送承ります』か。なるほど」

 イリーナが買ったのは冷凍の牛タンと、缶詰やレトルトパック入りの牛タンシチューなど。

 イリーナ:「これらは宅急便ね。フフフ……」
 稲生:「あの、大宮でミク人形達の着物も買うんですよね?」

 エレーナがホウキでフラフラと飛びながら運んで来る姿が目に付いた。

 稲生:(絶対運んできた時、追加料金請求してくるパターンだな……)

 稲生は口を歪めた。
 マリアは何をしているかというと……。
 頭にゆるキャラ“むすび丸”の付いたボールペンで、何やら試し書きをしている。
 それも、一心不乱に何かを……。

 マリア:「ハァ、ハァ……!どう!?ユウタ!」

 ワイン3杯を平らげて、白い肌が赤く染まっているマリア。
 そのテンションは高めだ。
 試し書き用のメモ用紙に書いたのは……。

『IユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタIユウタ』(以下、無限ループ)

 稲生:(怖っ!嬉しいけど怖っ!!)

 因みに稲生が正式に弟子入りする前、この魔女はユウタのぬいぐるみを多数作り、自分のベッド周りに飾っていた描写が当作品内で公表されている。
 稲生が震え上がっていると、イリーナが後ろからそっと耳打ちする。

 イリーナ:「ユウタ君、魔女に惚れるっていうことは、こういうことなのよ」
 稲生:「は、はは……」(引きつった笑みを浮かべている)
 イリーナ:「これでもまだマリアはマシな方だからね?」
 稲生:「ええ。既に2人程知っています」

 稲生の頭の中に、アナスタシア組のアンナとポーリン組のリリアンヌの顔が浮かび上がった。
 尚、マリアは他に魔法陣を試し書きしていた。
 何でも、『恋の願いが叶うおまじない』とのことだが、それが何故魔法陣なのかは聞かない方が良いだろう。
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“大魔道師の弟子” 「魔道師達の南帰行」

2017-11-26 20:32:24 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月5日17:04.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区 仙台市営バス鶴巻バス停→仙台市営バスR16系統車内]

 夕闇迫る産業道路。
 夏ならまだまだ明るい時間帯なのだが、晩秋の時季とあっては暗くなるのは早い。
 片側三車線の道路を走る車の殆どがヘッドライトを点けて走っているほどだ。
 最寄りのバス停は、往路に乗ったミヤコーバスの物と仙台市交通局の物とポールが2つに分かれている。
 休日ダイヤのミヤコーバスは、既に今日の運行を終えていた。
 バス用の待避所があるわけでも、バス停の枠がペイントされているわけでもない。
 ベンチや屋根が付いているわけでもない。
 ただポールが立っているだけのバス停でバスを待つ。

 稲生:「これでは仙台駅で夕食ですかね」
 イリーナ:「いいんじゃない、それで」
 稲生:「何食べますか?」
 イリーナ:「この前はお寿司を食べたんだっけ。あれは美味しかったけど、マリアが食べにくいからね」
 マリア:「私は別に……」

 マリアは生魚が苦手である。
 アレルギー体質とか、そういうことではない。
 人間時代のトラウマによる。
 そこへバスがやってきた。
 東京の都営バスでは無くなったワンステップバスである。
 平日なら工業地帯を通るバスは夕方ラッシュで賑わっているのだろうが、3連休最後の日とあっては車内はガラガラだった。
 後ろの席に座った。
 乗車客は稲生達だけ。
 彼らを乗せると、バスはヘッドライトの流れに混ざった。

〔このバスは東部工場団地、若林体育館前経由、荒井駅行きでございます。次は賀茂皇神社前、賀茂皇神社前でございます。お降りの際は、お近くのボタンを押してお知らせ願います〕

 イリーナ:「あっ、牛タン!牛タンがいい」
 稲生:「牛タンですか?」

 イリーナがどうしてそんなことを思いついたのか稲生は首を傾げたが、イリーナの視線の先には牛タン屋の広告があった。

 稲生:「分かりました。じゃあ、夕食はそれを食べて帰りましょう」
 イリーナ:「マリア、それでいい?beef tongueなら大丈夫でしょう?」
 マリア:「はい」

 野菜のオクラが英語であるのと同様、牛タンのタンも実は英語である。
 もちろん、意味はそのまま。舌である。

[同日17:14.天候:晴 地下鉄荒井駅前→駅構内]

 バスが駅前のバスプールに到着する。

 稲生:「大人3人で」
 運転手:「はい、ありがとうございます」

 稲生はピピッとSuicaを読取機に当てた。
 稲生達が乗ったワンステップバスは日野自動車のブルーリボンシティ。
 ノンステップなら都営バスでもよく見かけるが、ワンステップだと埼玉では東武バス系くらいでしか無いかも。

 稲生:「風が止みましたね」
 イリーナ:「やれやれ。今度は雨か……」
 稲生:「雨……?雨降るんですか!?」
 イリーナ:「アタシの予知だとね。バスを待っている間に降らなくて良かったね」

 一応、傘が無くても魔道師のローブが雨を弾いてくれるのだ。
 が、さすがに荷物まで濡れるのは防げない。

 稲生:「あっ、ちょっと待ってください。チャージします」

 稲生は改札口を通る前に、券売機に立ち寄った。

 イリーナ:「いくら入れる?」
 稲生:「クレジットカードが使えない部分は、僕が出しますよ?」
 イリーナ:「いいからいいから」

 イリーナは稲生がSuicaを入れると、そこで1万円札を突っ込んだ。

 稲生:「すいません。ありがとうございます」
 イリーナ:「じゃ、アタシ達のキップもお願いね」
 稲生:「はい」

 ゲームセンターなどでは幼女形態をしていたミク人形やハク人形も、今では完全に人形形態としてマリアのバッグの中に収まっている。
 なので、人形達の交通費は掛からない。
 何とも便利な人形達であるが、幼女形態にあっては、可愛さよりも不気味さがどことなくある。
 稲生は最初座敷童のようだと思ったものだが、日本の妖怪であるそれを西洋風にするとミク人形達みたいになるのだろうと思われる。

 改札口を通って、ホームに降りる。
 地上にキップ売り場と改札口があって、ホームは地下という形態は意外と無い。
 東京メトロでも、日比谷線の入谷駅くらいしか思いつかない。
 乗車ホームに行くと、ちょうど電車が入線してきた所だった。
 引き上げ線からの折り返しなので、既に乗客が中にいるということは無い。

 

 

〔お知らせします。この電車は、八木山動物公園行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕
〔「17時22分に発車致します。荒井を出ますと、六丁の目、卸町、薬師堂、連坊、宮城野通、仙台、青葉通一番町、大町西公園、国際センター、川内、青葉山、終点八木山動物公園の順に止まります。発車まで、しばらくお待ちください」〕

 ブルーの座席に座った。
 網棚は座席の真ん中辺りの上に、申し訳程度にしか付いていない。
 これはミニ地下鉄の規格で建設された為、車両もフル規格の南北線よりも小さく、圧迫感を与えない為であるという。
 その網棚の上には新聞が置いてあり、拾ってみるとアルカディアタイムス日本語版だった。

 稲生:「本当に強かですね」
 イリーナ:「何か面白いニュースでもある?」
 稲生:「特に無いですね。……あ、なんだこりゃ?『“私立探偵 愛原学”の続編なるか?』『宮城県仙台市内において、お忍び取材をしている雲羽監督目撃さる!』」
 イリーナ:「ま、何というか……好きにさせておいたら?」
 稲生:「は、はい。(何か、嫌な予感しかしないなぁ……)」

[同日17:22.天候:地下なので不明 地下鉄荒井駅→仙台市地下鉄東西線2000系先頭車内]

〔「お待たせ致しました。17時22分発、八木山動物公園行き、まもなく発車致します」〕
〔2番線から、八木山動物公園行きが発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 チャイムともメロディとも判別のつかぬ発車サイン音がホームに鳴り響いた。

〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 大きなドアチャイムの音と共にドアが閉まる。
 そして、電車がゆっくり走り出した。

〔次は六丁の目、六丁の目、サンピア仙台前です〕
〔The next stop is Rokuchonome station.〕
〔本日も地下鉄をご利用頂き、ありがとうございます。お客様に、お願い致します。……〕

 稲生:「……『「ラクーンシティの地下鉄も終点が動物園駅なんですよね」と語る雲羽氏』ですって」
 イリーナ:「それ、本当?」
 稲生:「いや、多分ウソだと思います」
 マリア:「私は映画ができたら、是非とも見てみたい」
 イリーナ:「マリアは映画とか好きだもんね」
 マリア:「ユウタと観るのが好きなんです」
 イリーナ:「そうなの。(前にホラーを観て、手を握っていたのはユウタ君の方だったって聞いたけど……)」
コメント (2)
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