かつては黄金色であっただろう古びた額の中に、強い風に荒々しくなびく木々たち。
昭和4年に描かれた絵の前に立ち、しばし向き合う。
褐色を帯びた古い一枚の絵を学芸員は選び、そこに掛けたのだ。
重要な一室の一枚の価値ある画として。
そして、じっくりと向き合ううちに、当時のその風景を肉眼で見、作者が描きたかっただろう
燦々と降りそそぐ太陽の光を受けて、新緑の高原が見えてきたのだ。
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前田寛治の絵だった・・・・
※(1896~1930 日本の洋画家 人物写実画の名手と言われた)
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じっくりと時間をかけて、そこにある絵の情報を受け取ろうとしなければ
見えてこなかっただろう。
せっかちな性分なので、時間がたっぷりとある以外では
さささっと通り過ぎることが常なのだから。
その絵は、一見すごく地味で、どこに良さがあるのかな、そんなことを思っていた。
部屋全体にあった数十枚のピックアップされたそれぞれの日本人の描いた洋画が
選ばれた理由は何なのか
そう思った時に、見方が変わった。
世界は知らないことばかりだけれど
知ろうとして努力して仕事にしている人たちから
少しだけれど(私なんかは)気づかされることがある。
絵を見る、芸術を感じる
面白くて仕方がないと思う近頃なのだ。