出すことのない手紙

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미생(ミセン)

2019-03-11 23:22:59 | 映画

  『미생』(未生)は韓国の囲碁用語で、まだ生きていない石を意味している。対照語は『완생』(完生)。囲碁を打ち始めて40年も経つがこの言葉は知らなかった。ひょっとしたら韓国独自の用語かもしれない。ただ、言葉の意味は単純かつ明快で、囲碁を打つものにとってはとても重要な概念である。多くの場合、石が生きるか死ぬかによって勝敗が決する。囲碁の用語や格言は人生の例えや教訓として使われることもある。『未生』(ミセン)も、未熟で発展途上にある人たちを指していう。

  話は変わる。数は多くないが、韓国ドラマは何本か見た。印象に残っているドラマを挙げると、『冬のソナタ』、『ホ・ジュン』、『大長今』など。ただ、韓国ドラマを見始めると困る点がひとつある。1話の終わりがいかにも思わせぶりで、次の話を見たくなってしまう。そのテクニックは大したもので、単純な私などつい夜更かしする羽目になる。おまけに韓国ドラマは長尺物が多い。調べたら『ホ・ジュン』で64話、最近見た『モンスター』が50話である。休日ならいいが平日では翌日眠い目をこすりながら会社に行くことになる。

  話は戻る。アマゾン・プライム会員になると多くの映画やテレビドラマを無料で見ることができる。その中にはクラシックと呼べるようないい映画もある。例えば、私にとっては『雨に唄えば』や『42』などがそれに当たる。韓国のテレビドラマも見ることができて、その中に『미생』というタイトルがあった。実をいうと、ドラマを見て初めて『미생』(未生)の意味を知った。ドラマの内容は、囲碁のプロ棋士を目指した若者がその道を断念し、一流の貿易会社に2年間の契約社員として入社するという話である。このドラマは評判になり日本でも『HOPE』というタイトルでリメークされた。

  題名の意味も知らず、期待もしないまま見始めたのだが、3話目くらいから完全に話に引き込まれた。サラリーマン生活を経験した者は、『미생』に登場する社員が絵空事ではなく、現実に存在する同僚や上司の誰かを投影しているように見えるのではないだろうか。パワハラ・セクハラをする部長、そんな上司におもねる課長、そして新人をいじめる先輩、多少誇張されているようにも見えるが現実はそれ以上かもしれない。一方、誇りを持ち仕事でも自分の倫理観を崩さない、出世と無縁の課長もいる。囲碁しか知らない若者が社員という組織人になり、表向きは冷たく厳しいが、彼の将来を真剣に案じている課長の下に配属される。契約が終わった後契約社員の彼がどうなるのか、派閥に属さず敢えて厳しい道を歩む課長がどうなるのか、その課長の下にいるため会社から冷遇される代理がどう行動するのか、それぞれが現実にあり得る人間のドラマとして描かれていた。

  ところでこのドラマは全20話である。これに限っては全25話でも良かったと思っている。


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