病気見舞いのときは話題に神経を使う。重い病気のときはなおさらで、そんなとき共通の趣味があれば助かる。趣味の話をするのがいちばんあたりさわりのないところで、そういう意味では、相手が本を読む人だとこちらも気が楽になる。 友人が枕元に「坂の上の雲」を置いていたので司馬さんの話をすると、あまり読んでいないということだった。彼の愛読する作家は吉村昭だった。好きな作家を聞いてその人に対する認識が微妙に変 . . . 本文を読む
この年になると近しい人が逝ったり、知り合いの訃報を聞くことが増えてくる。
その友人が亡くなってもう8年過ぎた。がんだった。彼はもともと頑健なからだ持ちランニングや山歩きが趣味でいつも健康そうに見えた。だから彼が入院したと聞いた時はほんとうに驚いた。手術後見舞いに行ったときも病人とは思えないくらい元気な様子だった。体力を回復させるために病院の階段を汗が流れるまで歩き回っていた。
ベッドの横 . . . 本文を読む