日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

日本は独立国といえますか

2005-05-13 17:53:29 | 社会・政治
昨日今日と朝日新聞夕刊に「戦後60年を生きる 白川 静の心」と題した白川静氏の人物紹介が掲載された。漢字研究の第一人者で昨年文化勲章を受章された方である。何かの折りにお生まれが私の亡母と同じく明治43年と知ってそれだけでも親しみを覚えていた。氏の本領は漢字研究にあり、漢字に興味を持つものなら『字統』『字訓』『字通』の三部作の存在を知らないでは済まされないであろう。

最後の『字通』はいわば漢和辞典のようなもので、出版時に即購入して以来何かあれば必ず繙くようにしている。氏はこの『字通』において知的教養の世界を回復するために《語彙の文例に、表現として完全な、文意を把握しうる文章や詩句を用意》することに重点を置かれた。

例えば「憲法」は《国家の規定。[国語、晋語九]善を賞し姦を罰するは国の憲法なり》とあり、その雰囲気が素直に伝わってくる。

『字通』について、「回思九十年」(平凡社)のなかで、氏はこのように述べておられる。《徹底的に字の素性を洗って、文字は孤立しておるのでなしに、縦の系統とか横のつながりとか、いろんな広がりをもっていると考えて、そういう流儀で『字通』を書いた。だから、あれは必要なときに必要なとこだけ見て、パタンと閉じてしまうんでなしに、遊んでほしいと思ったのです》(366ページ)まさに連想の赴くままに次々と語句を追っていくとひとりでに時間が過ぎてしまうのである。

ところで実はこの稿で私が取り上げたかったのは、本日夕刊記事の中の氏の発言である。「首都圏にアメリカの飛行場も軍港もある。それで独立国といえますか。事実上、今も占領下といっしょ。同盟国なんてのは同等の条件で付きあっての話です。自衛隊のイラク派遣もアメリカの命令に従っているだけ

今年の2月28日に私は「今もアメリカの『占領下』にあるわが祖国日本」と題する一文を草した。今この碩学が同じ見解をお持ちであることを知り、私がただ狷介ならざるを喜ぶと同時に、あらためて憂いを共にするのである。