浜松町の世界貿易センタービルの2階、「明治パーラー マロンド」はアメリカっぽいコーヒースタンドだ。時間に余裕のある貴婦人が来るお店ではなく、気忙しいサラリーマンらが、ちょっと時間を潰したり、ちょっと小腹を満たす、そんな小さな店である。若い時分から、よくこの店の前を通った。けれど、一度も店に入ったことはない。
だが、魅力的なメニューばかり取り揃えていた。コーヒー、カレー、ホットドッグなどなど。店はガラスばりだから、店内でサラリーマンが、カレーを急いでかっこんでいる様子がよく見えた。カレーは6種類。金額は550円とリーズナブルだ。
うらやましい。
いや、カレーだけではない。喫茶店の定番、「ナポリタン」もある。あのケチャップたっぷりの喫茶店の「ナポリタン」だ。これがコーヒーor紅茶をつけて僅か600円。信じられない値段である。
ボクはこの日、コーヒーとホットドッグをいただいた。もう20年以上も前から、この店のホットドッグに憧れていた。
だって、スタンドっぽい店でホットドッグって古いアメリカ映画みたいでいいじゃない?
「オニオンたっぷりにして、マスタードはほどほどに」。アメリカ映画の主人公は、いつもスタンドコーヒーで、ホットドッグをガスタンクしてたっけ。日本人はいつも、「そんな頼み方あり?」って思ったもんね。
「マロンド」に入って、そんなオーダーできないけど、ちょっとした雰囲気なら味わえるかもと思って。
オーダーする瞬間。ボクはアメリカ映画の登場人物になった。ホットドッグとコーヒー。
オーダーするときにきっと胸が熱くなるよ。