録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

8年越しの悲願達成、"戦慄!プルトニウム人間"

2012-01-25 21:28:40 | 特撮・モンスター映画
いま、わたしは少々興奮気味であり、いまほど予定とおりこのブログを昨年中に終了しなくてよかったと思っている瞬間はない。あるいはやめていたとしても、今日だけの限定で記事の更新をしたかもしれない。それほどこのDVDの記事を書ける日が訪れたことがうれしく、何よりこの映画のDVDが発売されたことを喜んでいる。

その映画のタイトルは"戦慄!プルトニウム人間(1957年度作品)" これを見ることはわたしの長年の悲願だった。

戦慄!プルトニウム人間 [DVD]
グレン・ランガン,キャシー・ダウンズ,ウィリアム・ハドソン,ジェームズ・シーイ,ラス・ベンダー
ランコーポレーション


なぜなら、この"戦慄!プルトニウム人間"には"巨人獣 プルトニウム人間の逆襲"という続編が存在するが、いままで日本語版のDVDは、その続編しか発売されていなかったからである。ちなみに"巨人獣"の発売は2004年3月。わたしは発売直後に買ったから、実に8年かかっての念願達成となったのである。

監督は「巨大もの」を得意とするミスターBIGことバート・I・ゴードン。と、書くと「あの監督の映画だからどうせ強引な合成の巨大生物が暴れまわるだけのおバカ映画だろ」と思われるかも知れない。実際、前に紹介した"世界終末の序曲"はそのとおりだった。が、この"戦慄!プルトニウム人間"は一味違う。

"ゴジラ"や"放射能X"を例にとるまでもなく、核兵器の恐ろしさをその影響で巨大化した生物に置き換えて表現するのはモンスター映画の常套手段である。"プルトニウム人間"もその例には漏れないが、ただ巨大化するだけでなく、主人公・マニング中佐(一般には大佐であり、パッケージにも大佐とあるが、本編の字幕では一貫して中佐。ただ、登場人物は"Lieutenant colonel(中佐)"ではなく、単に"Colonel"と呼んでいるようにしか聞こえないので、大佐な気がするが)の精神的な葛藤を描くことにより、巨大化という異形の姿に変わっていくことへの恐怖の表現を狙っている。特に前半部分は非常に丁寧に演出されており、マニング中佐の正義感ゆえに起こった悲劇が緊張感たっぷりに描かれる。核爆発までの間をワンクッションおいて、「助かった?」と見るものに一瞬安堵感を抱かせてからの爆発など、編集のつなぎやミニチュアワークのうまさも相成ってつい引き込まれる演出が随所になされる。さすがに巨大ものばかりでその名をとどろかせるミスターBIG。なんだかんだ言って演出はうまい監督さんなのである。それだけに、終盤の作りの荒さが残念。合成は向こうが透けて見える、立体感を感じない人物処理を含めて荒っぽく、急に質が落ちて見える。展開も急にご都合主義的展開(報われないが)になり、前半と後半で監督が違うのではないかとすら思えるほどだ。

なお、続編"巨人獣 プルトニウム人間の逆襲"はこの"戦慄!プルトニウム人間"のヒットを受けて急遽製作された映画。ゆえに、キャストが確保できなかったのか、ヒロインが婚約者から妹に交代("戦慄!~"には「親戚は(婚約者の)わたし以外にいない」というセリフがあり、それと矛盾する)。また、マニング大佐役の俳優も前作のグレン・ランガン(ンを一つとってはいけない)からディーン・パーキンへ交代、別人であることをごまかすために顔の右半分には骸骨が露出したようなメイクがほどこされている。
もっとも、グレン・ランガンは続編に出なくてよかったかも知れない。もし出ていたら、50年近くもたって



このようなフィギュアにされるところだったのだから(笑)。これがわたしが8年前に買った"巨人獣 プルトニウム人間の逆襲"のパッケージ。厳密に言えば、それを含む4本の同クラスの映画を詰め込んだボックス販売品である。フィギュアはその購入特典というやつか、あまりうれしくないけど。これ以外に現在まで"巨人獣"のDVDは発売されていない。ちなみにお値段2万円のところを1万8千円で買ったはず。B級映画のDVDが今ほど安くなかったころとはいえ、無謀な値段であった。買ったことに一片の後悔もないけど。
ちなみにこの続編は途中の回想シーンで前作のシーンが多く流用されており、大体のストーリーはわかるようになっている。第2作だけ販売して第1作のパッケージが用意されなかったのはそこらへんも原因の一つだろう。公開当時も日本では"巨人獣"のほうの短縮版が上映されただけで"戦慄!"はテレビで放送されたか有志による上映会が行われたのみ。スカパーの今は無きチャンネル・ホラーTVでも"巨人獣"だけが放送されたことがある。
第2作でのマニングは終始怪物状態であり、全く理性は残っていない。これは露出した骸骨とも相成って前作で顔に攻撃を受けた影響、が定説となっている。が、"戦慄!"を見る限り、己の巨大化という事実に理性が耐えられず、自らの生命を守るために発狂したものと考えられる。妹やかつての仲間たちはまずそんなマニングの理性を取り戻させようと努力し、クライマックスでマニングは心を取り戻すが、それはもはや人間ではないという己の姿を思い立たせるだけの、残酷な結末に過ぎなかった。それゆえ、マニングは高圧電流を両手でつかみ、自ら死を選ぶ(なぜかここだけカラー、いわゆるパート・カラーというやつだ)のである。単体でも見られるよう作ってある続編ではあるが、少々矛盾点はあってもやはり第1作を見ないことには第2作は理解できない。それを改めて再認識させられたDVDだった。
ただ、画質はあきらかにVHSからのダビングによるもので、その中ではマシではあるもののあまり褒められたものではない。他にソースがないのならば仕方ないが、販売元のRUNコーポレーションは以前に「人類危機一髪!巨大怪鳥の爪」で16:9のデジタルソースが存在するにもかかわらず、VHSをソースにしたサイドカット低画質版を発売したことがあるので、今回も努力が足りなかった可能性は否定できない。"巨人獣"はちゃんとフィルムからデジタル化した、比較的高画質なソースを使っていたのだから。

最後に疑問。"戦慄!プルトニウム人間"が出たからにはすぐにでも"巨人獣 プルトニウム人間の逆襲"の単品販売に着手してほしいところだが、難しいかも知れない。先のパッケージでは他にも"海獣の霊を呼ぶ女"、"女黄金鬼"、"吸血原子蜘蛛"の計4本が収録されているが、いずれも単品販売はされていない。また、ほぼ同時に発売された同じボックスシリーズに収録された"原子怪獣と裸女"、"悪魔と魔女の世界"、"女バイキングと大海獣"、"恐怖の獣人"の4本も単品販売されていないのだ。つまり、このボックスを企画販売したバップに、これらの作品の販売権が今もって存在するのではないか、と思われる。まさかボックスの再販はないだろうし、最近のバップのやり方からこの手の1500円が相場になった映画の単品販売も考えにくい。RUNコーポレーションは、なんとか販売権を会得し、続編を望むファンの手元に届けてほしいものである。

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2 コメント

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Unknown (emanon)
2012-01-26 23:54:55
 売れたら デジタル 売れたら リマスタ 再販は置くが深い
観たい 見たい と言い続けてみるものですね他の作品も言い続けたら出るのかな? 

そうそう昔の映画で スキンヘッドは皆 大佐w

>グレン・ランガン,キャシー・ダウンズ・・・・・
…、天元突破・・・ ネタ元はこれなのだろうなとかは老いといて

私はNHKさんの太陽の子エステバンが観てみたいかな 出来れば本放送の音声で 録画できる年代の作品なんだし残っていてもよさそうなのだが 
戦隊ヒーロー物も古いの再放送すれば需要あると思う

高齢化社会で古いものが逆に需要が出てきてる面もあるので録画したものを版権元に送れば丁寧にリマスタされて帰ってくる 版元はそれで儲ける だめかな

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Unknown (krmmk3)
2012-01-27 00:52:36
>emanonさん
昔だったら絶対に出ないマイナー作が発売される世の中になってきましたからね。「出して!」って言い続けていれば大抵のマイナー作品は出そうです。
いまや地上波のテレビ局から昔のアニメや特撮の再放送という枠はなくなりましたからね、それやるくらいなら他の番組やるという。その分をBSやCSが穴を埋めているのが現状ですから、ますます地上波は古番組離れが続く・・・かも。
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