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裁判対策? "「ダビ10」解除ソフト販売、東芝社員を逮捕"の意図は

2009-11-25 19:08:04 | B-CAS&規制撤廃運動
2ちゃんねるのDTV関係の多くのスレッドでコピペが貼られているので多くの方がご存知だと思いますが、こちらでもarpusさんからのコメントで教えていただきましたし、興味深い出来事なので取り上げます。

「ダビング10」解除ソフト販売、東芝社員を逮捕


この見出しだけで、わたしがこの後何を書くか、ピンと来る方もいるのでは。そう思えるほどあからさまな見出しである、と言わざるを得ないでしょう。
第一に「東芝社員」を取り上げていることに、第二に、「ダビング10」解除ソフトとはなんのことか、この読売の記事はもちろん、他のサイトの記事を取り上げてもなかなか見えてこないことです。

ダビング10解除ソフト販売容疑で男逮捕 初の摘発(ITmedia)

ダビング10解除ソフト販売容疑 東芝社員を逮捕(朝日)

ダビング10:解除ソフト販売容疑で東芝社員逮捕 全国初(毎日)

ダビング10解除ソフト初摘発 東芝社員を販売容疑で逮捕(日経)

多少ダビ10についての解説があればいいほうで、あとは全く似たり寄ったり。おそらく警察か何かの発表を垂れ流しているだけでしょう。唯一、Impressの報道のみが、中身の見えてくる報道となっています。

愛媛県警、CPRM解除ソフト販売で東芝社員を逮捕

ここだけが「ダビング10解除ソフト」ではなく、「CPRM解除ソフト」とはっきり書いています。事件の全容はここを読むのが一番でしょう。さすがIT系。それにくらべてITmediaは何やってんだ!? ってな感じですが。
もし、「ダビ10解除ソフト」を本当に文字通り読み取るとしたら、それはPCの所謂合法チューナーの添付ソフトを改造したもの(一からユーザーが作ったものは全く別の話)か、あるいはレコーダーにインストールして、ダビ10化されることなく使えるようになるもの、としか取れないのではないでしょうか。ダビ10はレコーダー内あるいはPCソフト内で処理されて始めてダビ10だからです。それら、特に東芝のレコーダーにインストールして使える規制解除ソフトがが販売されているのならば、正直お金を払ってでも欲しいかなと思ってしまいますが。

前の記事のコメントでaetosさんからも疑問の声が寄せられていますが、単なるCPRM解除ソフトとなると、これは全く別の話です。CPRM解除ソフトは現在単なる暗号解読によるアクセスコントロール解除ソフトであり、著作権法三十条第二号

二 技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

には相当しないというのが、ほぼ正しい解釈として浸透しており、これを持って逮捕されたというのは、明らかにおかしな話です。
逮捕=犯罪成立ではありません。誤認逮捕によって無実の罪を着せられ、例え裁判で無罪になったとしても、容疑者となった本人から見れば拘束期間が短くなったくらいで、実名を報道され、社会的制裁を受けることには何の違いもありません。また、多くの場合容疑者の逮捕が大きく報道されることはあっても、同人物が無罪となったことはマスコミで報道されることは滅多にありません。容疑を掛けられた時点で、ほぼ犯罪者と変わらない社会的扱いを、その人物は受けることになるわけです。だからこそ、逮捕状を申請することに、警察は慎重でなければいけません。まさか裁判で否定された「著作権保護違反幇助罪」をいまさら出してくるとも思えません。ですが、どの報道を見ても、はっきり「逮捕」とかかれており、任意同行ではないことが伺えます。
ここから想像するに、この事件で扱われている「著作権法違反の疑い」とは、記事を読んで一番最初に頭に思い浮かぶ「規制を解除した疑い」ではないのではないか、と思われてなりません。記事内には「容疑者は容疑を認めている」と書かれているので、本人は納得しているのかも知れませんが、そもそも自分で開発したわけでもないソフト(Impressの記事では"複製物"と書かれている")をオークションで売るような人間ですから、著作権法を多少なりとも理解しているとは思えませんが。

そう、それがわたしのこの事件の真実に対する疑いです。この容疑者は「規制を解除するソフトを売ったことで、著作権違反のソフトを広めた」のではなく、「他者の開発したソフトを、許可もなく複製して販売し、利益を出した」ことで逮捕されたのではないでしょうか。それも立派な「著作権法違反」ですし、逮捕状も出ます。容疑者もあっさりと容疑を認めるのも当然です。もちろん確定ではありませんが、そう取られてもおかしくない文面に、どの記事もなっています。普通"著作権保護違反"は申告制ですが、今回は「著作権法違反」ですし、解釈なんかそもそもどうにでもなります。Impress以外の報道はすべて「違法ソフト」と書いてはいますが、「ダビング10解除ソフト」とも書いてあり、ほとんど同じ文面です。よく分かっていないか、あるいは意図的に悪意を持った情報を流したい人間が中間に入ったことは間違いないでしょう。

もちろん、いまどきネットでこの手の情報を収集している人がこの程度の書き方で疑いを持たないわけがありませんが、問題は各新聞ともこぞってWEBに掲載していること。少なくともSARVHによる東芝訴訟事件より、はるかに足並みがそろっています。そもそもこの程度の罪、新聞がこぞって伝えるほど大きなものとはとても言えません。ただのセコイ犯罪です。普段なら無視されるでしょう。
もし、明日の新聞の紙面でも取り上げられるのならば、わたしの疑いは強くなります。疑いを持たない人が普通に読めば「ダビ10解除ソフトを使うことは罪なんだな」と読んでしまいますから。
この記事がある種の「見せしめ」であることは間違いありません。東芝という電機メーカーの名を大きく取り上げているのも、例の裁判にどう関係してくるかは読めませんが、「著作権法」の示すところを誘導しようという悪意が感じられます。
なお、この話はあくまでわたしの推理に基づくものなので、確実な証拠はありません。可能性の問題にとどめておいてください。

SARVHなどの著作権管理団体は、テレビ番組のダビング・保存を、市販ソフトの複製・配布と同じくらい「悪いこと」に昇格させたがっています。その「悪いこと」によって被害がおきているとし、その分のお金を無制限に徴収できる権利を欲しがっています。そのためなら、紛らわしい表現も平気でする連中です。我々はそれを十分考慮に入れなければなりません。しょせん情報を伝えるマスコミは中立の立場ではなく、ただの企業/営利団体でしかありませんから。
大量に伝えられる情報。実はそれには意図的に世論を狙った方向へ持っていこうとする意志が裏にある。わたしたちはそれを読んだ上で情報を活用しなければならない。ややこしい時代になっていることだけは、確かなようです。

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27 コメント

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Unknown (SARVHきらい)
2009-11-25 20:22:23
文化審議会の著作権分科会法制問題小委員会の見解としては、CPRM解除は違法としているようです。
判例がないので警察はこの見解を根拠に回避専用装置等の「譲渡等」に当たるとして刑事罰のある著作権法で逮捕したのではないでしょうか。
参考URL
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/05072901/002-4.htm

現時点で文化審議会が黒といっているだけで、この行為が黒が白なのかは起訴されれば今後の裁判で決まることになりますが、ダビング10を楯に補償金を支払わない東芝の社員を選んだのは、裁判を有利にするための印象操作のためだと思います。
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Unknown (通りすがりの三十路)
2009-11-25 20:36:49
そもそもこの手のものを売る人間はこれまでいくらでも居た訳で(DVDコピーガード解除など)
しかも、「営利目的での幇助・拡大」と言うことであれば、雑誌社なんか典型ですよね

こういうものを態々「東芝社員」を選んだ時点で意図的としか言い様がありませんね

問題は、この容疑者がなぜ東芝社員だとわかったかですよねぇ・・
まさか警察もグル?
それともたまたま捕まった中に東芝社員がいただけ?
疑おうと思えばいくらでも疑えてしまいますね
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Unknown (正弦)
2009-11-25 20:42:05
コピーコントロール解除ならその法律に該当しますよ。該当しないのはアクセスコントロールの解除です。それらの違いとCPRMがどちらに該当するかは私にはわかりませんが、調べてみるとどちらにも該当するような感じらしいです。
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Unknown (wyrm)
2009-11-25 20:44:15
自分もほぼ同じような印象を受けました。
この時期に「東芝社員」が「著作権違反」をするというイメージ操作と誤認をさせるためなのではないかと
こんな時期に脇が甘いというか愚かな社員の当たり前の罪はともかくとしまして、
何に対する著作権侵害なのかを各メディアはぼかした記事の書き方をしています
本来であれば「ソフトウェアを複製し販売した容疑」など書かれると思われますが
発表もとの定型文などあるんでしょうね

しかし逆に思うのは、毎度毎度こういう事件で逮捕されるのは何十万も稼いでいた人のところに
いきなり850円の人を逮捕…
被害額が罪の重さのすべてでは無いですが
こうも露骨ですと逆に不謹慎ながら笑ってしまいますね…
こういうニュースに注目する人なんざほとんどその手のマニアだけだって言うのに
逆効果にしかなりえないというか…
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Unknown (aetos)
2009-11-25 20:49:58
ちょっと、これが「自分が著作権を持っていないソフトを勝手に売った」以上の罪ではないこと、つまり、技術的保護手段がうんぬんの罪ではないということについて教えて頂きたいと思います。

著作権法第30条2項では、「技術的保護手段を回避して複製をおこなうこと」が禁止されているので、「技術的保護手段を回避するためのツールを売った」だけでは該当しないと思います。
しかし、同法120条の2の1項では、このようなツールの譲渡は違法になるように思えます。

CPRMは「技術的保護手段」に該当しないとか、120条は「公衆」と書かれているところ、今回は公衆でないとかいった理由でしょうか?
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Unknown (ATX5000)
2009-11-25 20:51:07
ホント、いいタイミングで出てきたネタだな。それに釣られるマスコミもな~
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Unknown (Unknown)
2009-11-25 21:15:10
朝日新聞は今日の夕刊でデカデカと扱ってましたよ
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Unknown (krmmk3)
2009-11-25 21:20:10
風呂に入っている間にコメントがこんなに。どうもありがとうございます。

>SARVHきらいさん
あくまで文化審議会の判断ですし、特に法律の専門家も入れずに会議すれば、気に入らないやり方は全部違法扱いで当たり前です。今回は、慎重になるべき逮捕状があまりに簡単に出たことに疑問を持ってやってみました。

>通りすがりの三十路さん
東芝社員というのはそもそも偶然だったという気がしますし、もともと高校生を捕まえたら芋弦式にたどり着いた人間が、たまたま東芝の社員だった(レコーダーや著作物とは何の関係もない部署ないしグループ会社のようですが)ことで、情報の仲介者が面白がったのか、裁判を左右する材料とするために出したのか、というところではないでしょうか。

>正弦さん
すみません、アクセスコントロールが正解ですね。直しておきます。

>wyrmさん
探せば、どの会社でも一人や二人、なにかやっていそうな人はいると思います。当初は単に「大手電機メーカーの社員」という報告だったという話もありますし、東芝を大きくとりあげるのが目的のひとつではあったようですね。
ネットでいくらでも落とせるソフトをオークションで売っているような人間を逮捕するのに異論はありませんが、新聞が取り上げるにはあまりにセコ過ぎてかえって目立ちますね。

>aetosさん
あくまでわたしの予想が正しければ、の解釈ですが、今回の件に関して、CPRM解除ソフトそのものは全く関係ないと考えています。たまたま、無料で手に入るけど、書き方次第では売れるソフトとしてCPRMを選び、それを「ダビ10が解除できるソフト」と銘打ってオークションに出しただけではないでしょうか。著作権法違反というのは、そういう「販売者に販売権がないもの、誰でも手に入るものを半ば騙して売った」ことをとりしまるための手段として著作権法を持ち出しただけ、と読んでいます。

>ATX5000さん
釣られたというより、わざと大きく取り上げたんじゃないですかね~。

>2009-11-25 21:15:10さん
夕刊ってところがセコいのか狡猾なのか・・・。やっぱりなんかあやしいです。
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Unknown (aetos)
2009-11-25 22:18:45
返信ありがとうございます。
はい。CPRMが今回の件に関してこじつけであろうことは承知しています。
で、それはそれとして、krmmk3 さんが本文中で書かれている

CPRM解除ソフトは現在単なる暗号解読によるアクセスコントロール解除ソフトであり、著作権法三十条第二号(中略)には相当しないというのが、ほぼ正しい解釈

というのについてお伺いしたいのです。
それは「CPRMはアクセスコントロール技術であり、著作権法が言う『技術的保護手段』には該当しないから」ということでよろしいのでしょうか?
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Unknown (Unknown)
2009-11-25 22:34:28
もし解除ソフトの販売自体で逮捕されたとするなら
同類のソフトを紹介しまくってたPC雑誌等も著作権保護法違反幇助に問われなければおかしいと思いますがどうでしょうか?
ところで作者不明のソフトの無断販売で訴えなしで逮捕ってできるものなのでしょうか?
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