ニセブランドの専門家なんていない

昨日テレビのニュースでやってましたこの事件、今更ながら取り上げておきましょうか。

大手５デパート 偽ブランド品販売か


日本放送協会の公開しているニュースなんで多分テレビで読まれたものと一緒だと思います。よく読むと、「デパートが偽ブランド商品を納入して売っていた、あるいはデパート内に出店しているブランド専門店で売られていた」のではなく「デパートで行われた企画催し物の会場に偽ブランドものが持ち込んで売られていた」のが分かるんですが、見出しとか前者に取れるようになっています。まぁそっちの方が刺激的だからでしょう。
よってデパートはどちらかと言えば被害者の側であると言えます。もちろんそんな業者に一時的とはいえ出店させたデパート側も相応の責任を取る必要があるわけですが、ニセブランド品と分かって(ここを証明するのが難しいところではありますが)持ち込んだ業者でしょう。が少なくとも日本放送協会のニュースではそこを指摘する声はありません。よってデパート側の責任を追及する声が少なからずあるようです。なんで偽者と見抜けなかったのかと。でも、、ニセブランド品を判別する専門家なんてそもそもこの世に居ません。「判別できる」人はいますよ？　わたしも手探り状態ながらやってますし。でもそれと「判別に責任を持つ」専門家は別の話。ニセブランドを判別しなければならないのは失敗した場合の責任が全て自分への金銭的被害という形で及ぶから、商売上仕方なく判別しているだけの人で、それが本来の仕事ではないんです。本来の仕事はあくまで品物に値段を付けること。ブランドがニセモノかどうかを見抜くより品物を見て値段がすぐ出てくるかどうか、の方がはるかに重要で難しいんです。あえてニセモノを見抜く専門家が存在するとしたらそれは古美術品や考古学の分野でしょう。でも、彼らは美術や遺跡からの出土品に詳しい知識を持つ人間であって、逆に無銘のものに値段を付ける鑑定眼をもっているわけではないんです。そりゃどっちにしても素人よりははるかに詳しいですが、それ以上ではないはずです。まして、真偽両方の品を見たわけでもないデパートの人間では一目で見抜けったってそりゃ無理です。
ついでにいいますと、今回のニセブランドは多分すぐ忘れられるランクのもので、そもそもニセモノを売りつけようとする悪徳業者がいるという発想すらなかった人がほとんどでしょう。実際並べればまるで別物でしたしね。リンク先の記事の後半に書かれている「偽ブランド品などを巡る被害相談は去年１年間に２３００件余りと、おととしの３倍以上」というのは大半がもっと有名なブランドの商品のはずです。しかも、これらは現在ネットで平気な顔で常時販売され、一部メジャーブランドでは正規品販売店より検索で表示される順位が上なものもあるくらいです。報道してくれるのはいいんですけど、「デパートでニセブランド品が売られていた」「デパートがおわびした」の間に挟む形で記載するのは正直ひどい構成の仕方だなぁと。「デパートはニセブランド品が売られる場所だ。全部デパートが悪い」って書いているように読めてしまいますから。