録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

脱CPUエンコードの価値と日本の価値

2011-05-22 23:02:03 | 次世代ビデオへの懸念
CUDAやSpursEngineが出てきたあたりから、わたしはこういった通常のOSやアプリを起動する以外のプロセッサの力を使って動画を圧縮する方式のことを「脱CPUエンコード」と呼んでPC動画の一つの未来と位置づけてきました。その時はまさかCPUにエンコード専用回路が搭載されるとは思ってもいませんでしたのでこう名付けましたが、現在のIntelの第2世代Coreiに入っているエンコーダーも「脱CPUエンコード」の一種と考えていいかと思います。ですが、Corei自体の性能の高さもあって、この脱CPUエンコードもすでに陰りが見えてきています。実際に測ってみると分かるのですが・・・。条件をそろえるために、QSV用としては速くはないことは分かっていますが、TMPGEnc Video Mastering Works 5を使って速度を測ってみましょう。

CPU:Corei5 2500K
MEM:DDR3-1333 4GB
OS :Windows7 64 Pro
M/B:Intel純正H67
ソフトエンコード(x264)の設定:最速
Intel Media SDK HARDWARE(QSV)の設定:標準
エンコードもと:1440x1080 MPEG2-TS 30分
出力1(サイズ維持):1440x1080 インターレース保持のH.264/AVC
出力2(リサイズ) :720x480 インターレース解除&24fps化のH.264/AVC

比較参考用として、同PCに挿したGeForce9800GTによるCUDAエンコード、さらにはCPUにPhenomIIx6 1055T+OSにVista32 HomePremiumを搭載したPCでもx264でエンコード(1440x1080のみ)してみました。

・QSV
出力1:11分53秒
出力2:20分22秒

・x264
出力1:11分14秒
出力2:16分38秒

・CUDA
出力1:15分31秒
出力2:19分44秒

・x264(PhenomIIx6)
出力1:19分22秒

QSVが本来の実力を発揮しているとは言い難いとはいえ、x264を最速にすればソフトエンコードでも十分速い・・・というよりQSVより速くエンコードが終わってしまうのです。ただ、さすがに圧縮率は若干悪くなり、QSVより画質面で見劣りしますが・・・。と、言っても差はわずかなものでほとんど無いと言ってもいいですし、CUDAとの比較なら確実に上を言っています。他に同時に作業を行うのならともかく、エンコードにある程度専念させるのならソフトエンコードの速度調整だけでも十分と言えるのです。「脱CPUエンコード」にダメ出ししてしまっているようですが、事実ですから仕方ありません。CUDAはもちろん9800GTより性能が上のGeForceはいくらでもありますのでもっと速度が出る可能性はありますが、十分なビットレートが無いと画質面でどうにもこうにも。個人的にはGPGPUにはまだまだ期待しているのですが。
と、言う感じでCoreiの上級のモデルは必ずしもQSVにこだわることはない~もちろんCPU負担の大きくなるフィルタなどをたくさん使えば別ですが、そこまでするのにじっくりと時間をかけてソフトエンコードを行わない人もいないかな~と思いますので。下位CPUなら価値は高いのですが、出たばかりの低価格SandyBridgeCPU、PentiumブランドのCPUは、なぜかエンコーダーがカットされているらしいのです。Intelっていつもこうですよね。付加価値のあるGPUはなぜか上級CPUとセットで下位CPUは能力の低てくて「描画だけ」なGPUを割り当てる方針。AtomとかCULVもそうでしたが、SandyBridgeも同じですか。「CPUの性能を絞っているからこそ多機能なGPUによる補助が必要。上級CPUユーザーは別の高性能GPUボードを買ってつけるだろうから」というAMDの方針の方がわたしは好きですが。別GPUを販売しているメーカーとそうでないメーカーの考え方の違いと言えばそこまでですが、Intelのやり方はなんか勿体ないです。


今回は計測しませんでしたが、SpursEngineはもう超解像処理が欲しい時以外は使うことはなさそうです。画質では条件次第でまだまだ他の方式に負けるわけではありませんが、肝心の速度で負けてしまっているので価値が薄くなってしまっています。せめて内蔵エンコーダー以外の、Cellと同じチップを使ったプロセッサを活用出来るのならまだまだ使い道はあるのですが、録画規制や利権監視下でしかテレビ系製品を作ることが出来ない今の日本ではどうにもならないでしょう。
日本で「世界初」を謳う製品が東芝くらいからしか出なくなって大分たちますが、東芝はHD DVDにせよ、SpursEngineにせよ、まず日本で製品展開を狙う道を選び、どちらも玉砕しました。ほどほど注目を浴びているのは裸眼3Dテレビくらいでしょうか。おそらく「日本で世界初の商品を発売し、世界に展開」という路線には懲りてしまい、もうやらないでしょう。他のメーカーに至っては「もはや日本市場には実験的製品を投入する価値ない」と判断しているのか、たとえばテレビは日本では液晶だけ、のように日本を一段低く見ているようにすら見えます。もちろん不況や災害の影響もあるのでしょうが、ことテレビ分野に限ってはは録画規制がきわめて強い足枷となり、身動きがとれなくなっていることが大きな原因なのは明白です。

MicroSoftがWindows Home Server 2011を発売しましたが、記念イベントでどこか歯切れの悪い発言が見られたようです。

「このへんで売られている、非常に親和性が高いチューナー」「スマートフォンやSilverlightで外部から視聴する際も解像度やフォーマットを気にしなくてよくなるなど、利便性が高まる」「そこらへんで売ってる“いけない製品”で抜いた、本来できちゃいけないファイル(なんたらTSファイル?)も、サムネイルが表示されるようになっている」

誰がどう考えてもこのチューナーはPT2のことでしょう。つまり、PT2でなければWHS23011はDLNA性能を発揮出来ないと言うことなのです。WHS2011は天候のせいもありましたが、先代の2008よりも深夜販売に大勢の人が集まったようです。これはPT2が入手しやすくなっていることと無関係ではないでしょう。個人ユーザーがWindows7ではなく、WHS2011を選ぶ理由の中でPT2の存在が占める割合は決して小さくないはずです。もちろんこういうのを一番ほしがるのは日本人でしょうが、その一方でその性能を発揮するための条件をわざわざごまかして言わなくてはいけないのも日本だけ。いつまで我々はこのような矛盾の中で生き、無数にあるメーカーさんのアイディアや技術が使えない市場を維持しなければいけないのでしょうか。
未来のことは誰にも分かりませんが、ことテレビ界に限れば録画規制と利権監視が続く限り、日本の市場が限りなくゼロへ向けて衰えていくことだけは確かなようです。



そういえば、WHS2011ってWindows7sp1のWMPにある一部TSファイルを再生すると音が出なくなる問題って、大丈夫なんでしょうか?

コメント (21)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« SK-MHD264久々の更新&アイオ... | トップ | 知らなかった・・・災害速報... »

21 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2011-05-22 23:12:19
GPUエンコードで困る点は負荷が高まるとメインの描画に支障をきたしてしまう点ですね.これではCPUエンコードのほうが快適になってしまいますし,他の操作をしなくて放置エンコならやはりCPUで事足ります.
これを解消するには専用バスを設けて利用帯域に影響を出さないようにするかGPUコアをマルチコア化しないとダメでしょう.

sandyのように統合CPUでエンコしメインの描画は外付けで・・・と言う選択もありえるかもしれませんけど,これでは本末転倒な気がしますし.
返信する
Unknown (krmmk3)
2011-05-22 23:27:51
>2011-05-22 23:12:19さん
前にチップセットのGeForce9400でCUDA使ったときに、Windowsの動作が異常に遅くなったことがあります。9800GTでもBDとか再生すると同時エンコードは厳しいですね。もっともそこまでやったらOS自体不安定になっちゃうので、GPUのことまで気にしなくてもいいかも?
返信する
Unknown (Unknown)
2011-05-23 00:04:11
CUDAベンチ(lucuda)だと、CUDA世代間の性能差は歴然で9800GTは性能で劣るはずのGT430あたりに惨敗します
TVMWだとどうなるかはわかりませんけど
返信する
Unknown (さとみ飯店)
2011-05-23 11:32:12
GeForce9400でCUDAとかですと、いまだとローエンドクラス(C2D,Q/AthlonX4あたり)のCPUでも
GPU使わずCPU優先されませんか?今は絶対にGPU側使うように出来るんでしたっけ。
>Windowsが重くなる
返信する
Unknown (Unknown)
2011-05-23 15:37:13
今回実験したエンコードの元ファイルは
何分ぐらいの動画ファイルなんでしょうか?
参考までに教えていただければ幸いです。
返信する
Unknown (GPU支援)
2011-05-23 16:18:41
できたインタレ保持動画をH67で再生して、きっちりGPU支援のインタレ解除されますか?
当方の環境だと、RADEONHD6950、HD4670できっちりGPU支援インタレ解除される動画が、H67、Z68だと解除されません。MediaPlayer、PowerDVD10、VLC、どれもだめでした。もし解除されているのならば、設定を教えていただけないでしょうか
返信する
Unknown (krmmk3)
2011-05-23 20:46:37
>2011-05-23 00:04:11さん
今回のCUDAはあくまで参考という扱いですから。それに、速度はアップされても画質はエンジンが変わらない限り、同じですしね。

>さとみ飯店さん
9400でやったのはTMPGではなく、Badaboomの体験版だったんですよ。エンコード速度は遅いし、ほか作業はメモ帳すら重いしでさんざんでした。

>さとみ飯店)さん
うわー、書いてませんでしたね。役に立たない実験結果でした。直しておきます。ちなみに、ジャスト30分です。

>GPU支援さん
ハードデコードだとインターレース解除出来る項目はないようですが、VLCのようなソフトデコード専用ソフトだと普通に解除できませんか? ツールバーからビデオ→デインターレース→オンもしくは自動を選ぶだけです。ウチは出来てますよ。
返信する
Unknown (emanon)
2011-05-23 20:51:14
 QSVはメモリーのレテンシ数短い物を使えばまだ伸びるはずなのですがx264との差は変わらないかな? 
CUDA4.0が使えるようになるともっと効率よくなるので期待したいですね、薄型水冷 静穏水冷 水冷ならワンスロットにならないかなw
返信する
Unknown (krmmk3)
2011-05-23 21:00:37
>emanonさん
QSVを進化させる間にCPUも速度アップしてしまいそうなので、結局差は変わらないかも。
せめてMediaEspressoがビットレートを調整出来るようになればいいんですが、1440x1080が最低6Mbpsだからなぁ。
CUDAは画質のエンジンも改善を望みたいです。それなら高性能GeForceの導入も考えるのに。
返信する
Unknown (Unknown)
2011-05-24 09:25:31
インタレ解除に関してはATIが飛び抜けて優秀ですね.
一番ひどいのはnVidiaで相当な割合で誤爆します.
その関係でパンもガタガタになってしまいますし,ブレンドではボケボケになってしまうのは周知ですね.

これはATI Stream(AVIVOやAVIVO HD)も同じでエンコをしてもかなりの割合で綺麗に解除してくれますので画質に大きな影響があります.

テスト動画で白黒のインターレースMPEGの時計の振り子を見てみると一目瞭然なんですね.Win7のMSドライバだと残像は残ってますがジャギも少なく割と綺麗です.ATIは残像もなくジャギもでず文句なしです.nVidiaだとジャギが出ている上に解除に失敗しているので振り子の動き自体がガタガタになります.
返信する

コメントを投稿

次世代ビデオへの懸念」カテゴリの最新記事