録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

規制条例/法は反対されてもゾンビ化する

2010-03-16 23:10:38 | Weblog
死ぬかと思いました。

出だしから物騒ですね。

今日、街を歩いている時に、どうしても工事中(解体中?)のビルの横を通らなければならない道に差し掛かりました。今日は工事は休みなのか、本日はもう終了したのか、ビルには誰もいませんでしたが。多少の風は吹いていましたが、そこに差し掛かるまではたいしたことは無かったのです。ところが、ビルの横に到達した途端、にわか雨とともに強風が襲ってきました。前触れがほとんどなかったので、体がよろけてしまったほどです。その際にバランスをとろうとして顔を上に上げたところ、強風に乗ってビルからドアのような重そうな板が吹き飛ばされて舞っているのが見えまして。あっけに取られていたところ、そのまま垂直に落下!(したように見えた) わたしの目の前数メートルのところに

ドッシーン!

と落ちてきまして。そのままバタリと板は倒れました。こ、こわひ。
実は以前にも似たようなことがあったので、普段から工事現場や老朽化したビルからは少し離れて歩くようにしているのですが、今回は板が風に吹き飛ばされた分距離を稼いでいまして、その注意も役に立ちませんでした。それにしても、前の事故からまだ4年たっていないのか。久々な気がしたのですが、普通に考えたら頻繁ですな。多分わたしの最期はビルから落ちたものの直撃を受けたときなんでしょう。何かに憑かれているのかも。


えー、いまさらですが、例の「東京都青少年の健全な育成に関する条例」を取り上げようかと思います。あくまで"法"ではなく"条例"ですから、東京都民では無いわたしは口をはさむ立場ではないですし、このブログはそっち関係でも無いので無視するつもりでした。が、経緯がどんどんかの"PSE法(あくまで通称)事件"に近づいてきたので、何か意見を残すべきと考えたからです。

かつてのPSE法。それは青天の霹靂でした。PSE法、それは簡単に言えば電機製品メーカーが、特に電源部分の安全性に責任を持つため、その基準を満たした電源にPSEマークを入れるという法律です。その施行ギリギリになって、経済産業省に「そのPSEは、中古の電気製品も入るのですか」と問い合わせた人がいました。それに対し、経済産業省は法律の経緯も知らない中間管理職たった一人の判断で「当然中古品も対象に入る」と発表したのです。中古業界は大騒ぎになり、中古品の対象からの排斥を求めました。が、経済産業省はその訴えを徹底的に無視することに専念しました。PSEのマークの入らない中古電気製品を売る中古屋に、大手電機メーカーと同等の検査義務と責任を負え、と言って来たのです。高額で危険な検査機。それを通すことで製品寿命は確実に縮みますし、専門家でもなく、専用の検査室も持たない個人経営の店にそれを要求するのはあまりに酷でした。そういう訴えに耳をふさぎ続けた経済産業省、強引に施行されたPSE法の中古屋への適用。その結果、よくて多額の損害、そうでないのならば、業務の縮小やリストラ、あるいはとても続けることが出来ずに閉店するなど、職を失う人も少なくありませんでした。しかも、そこまでやっても、自主的に検査した旧製品は売れないのです。強力な電圧をかけたために縮んだ製品寿命に、手製の不恰好なPSEマーク。売れなくて当然です。
多くの苦情が経済産業省に届きました。それに対して経済産業省が打った手は、「中古品の安全性に対して不安に思っている人が大勢いる」という結果になるために作ったアンケートを基にした資料の配布でした。なにせ「中古品は作られてから時間がたっているため、破裂したり火を噴いたりする心配がある」という項目はあっても「中古品は作られてから時間がたっているため、壊れやすくなっている心配がある」という項目の無い解答欄でしたから。
さらに経済産業省は、それを基に検査機を貸し出したり、良質中古店を示すマークを発行するなど、中古屋に対してPSEを要求する道をより強固にしようとするものばかり提案してきました。もちろん、そんな提案に喜ぶ店は一軒もありません。結局、丸一年たって多くの被害を出したあげく、中古品はPSEの対象から外れました。
この件でも、例外はありました。それは有名なミュージシャンである坂本龍一氏を初めとする"日本シンセサイザー・プログラマー協会"が「専門機器を支える中古機器販売、下取り市場も閉鎖せざるを得ない状況になってしまい、これからの日本の音楽と芸術文化の発展に大きな支障をきたすことになる」と署名を集めて苦情を訴えると、経済産業省はその業界に対してのみ反応し、シンセサイザーやアンプのみ、それも"ビンテージもの"に限ってリストを作ってそれに掲載されたものは対象から外す、という愚にも付かない対策を採りました。なにせ、PSE法が「安全のために絶対に必要」という当時の経済産業省の主張が正しいのなら、対象製品は一切関係ないはずです。シンセサイザーだから安全、ということはないですし、ましてビンテージだけは必ず安全、ということもあり得ません。ようするに、役人は、"大勢の個人は職を失おうと路頭に迷おうと知ったことではない"けど、"有名な名声のある人の顔色は伺う"体質であるということを自ら示したわけです(なお、この件を取り上げるときには必ず書いていますが、坂本龍一氏らを非難する気は全くありません、念のため)。

ここで「東京都青少年の健全な育成に関する条例」に話を戻しましょう。「青少年の健全な育成」、実に反論しにくいお題目です。ゆえに、まさか大勢の漫画家が反対してくるのは、ちょっと予想外でした。

「文化が滅びる」――都条例「非実在青少年」にちばてつやさん、永井豪さんら危機感

まさかの有名な大御所漫画家が名を連ねていますし、「施行の発表」程度では全く取り上げなかった各新聞も、この会見は掲載しています。
正直、永井豪氏くらいだけならば、大きく取り上げられなかったでしょう。これは同氏の漫画家としての各とかではなく、永井豪氏は著書に軽いものから濃厚なものまで性描写のあるものが多く、「結局自分の作品の単行本が売れなくなるから反対しているだけでは」と邪推される可能性が高かったからです。ところが、ちばてつや氏のような、そういうイメージの全く無い人も会見に参加し、反対の声明だけなら藤子不二雄A氏らも名を上げています。
急速に条例が決まったことといい、著名人が反対を表明したことといい、非常にPSE法の時と似ています。おそらく、条例は撤回されるでしょう。ただし、それで終わりということはありません。
PSE法に戻れば、一年の施行の間にそれ以前の中古品の多くは店頭から消え、新たに持ち込まれるものも価値のないものへと姿を変えました。実は、もうPSE以前の中古品など考慮に知れる必要のない体勢に、とっくに移行していたのです。なので、中古品の排除は有名無実のものでした。今回の条例が一度は発表されたことによって、各出版社も「こういう条例が施行されないよう、刺激しないように」自主規制を強めてくることは目に見えています。施行されなくても、将来に渡って大きな影響を残し続けるでしょう。それどころか、「東京では否定されたが、ウチではやろう」と、他県が独自に条例を作ってくる可能性、あるいは国の法律としてあらたに施行させようとこの条例を考えた勢力が動いてくることは、誰にも否定できません。
そもそも、なぜ「青少年の健全な育成のため」なのに、非実在青少年の性描写だけが規制の対象なのでしょうか。もし青少年をビニールハウスに押し込んだような純粋培養してファンタジーな世界に住まわせるのがお望みなのなら、ほかに規制すべき項目はいくらでもあります(特に犯罪関係)。ようするに、「青少年の健全な育成」などはそもそもタテマエで、実際にはこの条例を作った勢力がそういう描写に嫌悪感を持つ人間たちで、自分たちの目の前から排除したいだけなのでしょう。ファンタジーの世界に住まわせたいのは青少年ではなく、自分たち本人のようです。
そして、そのためならば一時的に撤退しても、また手を変え品を変え、同じ規制の復活をもくろむでしょう。大体、法律や条令を作ることが出来る立場の人間は、庶民をバカだと思っていますので、自分たちの作った案に従わないのは、庶民が悪い、自分の考えのほうが正しいので、いずれ教えてやろうと思うものなのです。例えば、中古品のPSE問題も、もうとっくに実効性を失っているにもかかわらず、役人は最近「古い電気製品の危険性」をさまざまな実験(かなり偏っている)の結果から指摘しています。どうしても古い電化製品は危ないということにしたいようですね。まして、非実在青少年の問題は、この手の規制の話が持ち上がるたび出ては消え、またよみがえっています、ゾンビのごとく。反対されにくい主張を武器に、今度は有名漫画家には反対されにくい例外を添えた上でまたよみがえってくるでしょう。その時までに、果たして世論は今のように無力なままなのでしょうか。少なくとも、現在ネット上の世論は簡単に公表できる代わりにほとんど無力(少なくとも権力者は完全に無視している)なのですが。

ただ、少々やりすぎな描写が存在することは事実でしょうし、どんな分野でも嫌悪感を持つ人がいることだけは認めなくてはいけません、たとえ少数意見であっても。もっとも、嫌悪感を感じるのならば近づかなければいいと思うんですがねぇ、わたしなんか。


なお、昨日のコメントはとーっても多いので、個別のコメ返しはパス。すまんです。
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16 コメント

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このHNだったかな(笑) (yan)
2010-03-17 00:07:10
この条例、国会で議論された児童ポルノ禁止法?だったと思うけど
その時と同じ表現の自由の侵害の問題をまたやってるんかいな
と思ってみております

だだ有名漫画家が反対表明してるのは驚きました
児童ポルノ禁止法の時は有名漫画家が反対表明しなかったのに
今回は反対するってのは有名漫画家もセコイやっちゃな
児童ポルノって名が付いてる法案だから反対表明しづらいにしても
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Unknown (emanon)
2010-03-17 01:50:36
 なんだかお腹一杯になったようなので簡単にw
過去同じような、と言うか
80年~90年代とテンプレ化した組織内思考をインストールされたかのような、まさにゾンビやクローンを思わせる思考
一言で表現するなら、理解できない子供の趣味・所有物はごみに出し庭で焼き完全管理で思考する自由を奪うですね
90年代同様のことをやった結果バイクの盗難が横行し犯罪は増え自殺問題もやったのですよ
今回は携帯も含めてと言うことなので断言します急に繋がりが無くなったがために自殺者が大幅に出てしまうし
過去の前例では無修正AVでしたが、今ならゲームは自分たちで焼いて売れますし申請書類偽造・有線無線の自主形成によるサーバーネットワーク形成も可能でしょう

ふたをしても火は消えず匂いは洩れる
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Unknown (ATX5000)
2010-03-17 02:26:12
見苦しい見るに耐えない見たくないってなら「わいせつ物公然陳列罪」とか持ち出して販売店に売り方の指導とかするとか、クッションを入れられなかったものなのか・・・いきなりくさい物は元から絶てとばかりにやるから「表現の自由」が声高に上がるわけで、おばちゃん連中らしいやり方だよな。
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Unknown (PfP)
2010-03-17 09:45:03
この条例の本当の目的はマンガの規制ではなく、子供のケータイやネットの使用規制をかけるためのブラフなのではないかという説もあるみたいですね。
世間がこの問題で騒いでいる間に、本当の目的の方は殆ど世間に認知されずに通してしまおうという腹づもりかもしれません。


あとこの件とは関係有りませんが、現在GIGAZINEでDivXのシリアル無料プレゼントをやっている様です。
ネタになりそうでしたらどうぞ。
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Unknown (Unknown)
2010-03-17 09:50:05
>yanさん
児ポ法の時には、基本的に実在のものに対してで、まだ非実在青少年に対しては党内案件くらいしか出ていなかったような・・・
流石に審議に出す段階になれば反対表明したと思いますよ?

>ATX5000さん
今回の条例はそういう条例ですよ
「子供の育成に悪いから、見えないように売れなくしましょう」という
ですから、罰せられるのも書いた方じゃなくて売った方になるんじゃなかったかな?

まぁ、良識を持てば今の青年誌(YUNG誌)に描かれている性表現・暴力表現を子供(小学生以下)が容易に見る事の出来る状況はどうにかしたほうがいいわけでして
落とし所を間違えてるとしか思えない条例ではありますよね
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Unknown (たっくん)
2010-03-17 11:47:38
もぉいい加減食傷なので軽く。

今回の件で一番不可思議なのは、そういう物を売っている販売店側からのアクションが何一つ無かったという事ですね。

あと、作家側の代表に手塚先生がご存命だったらなぁ~とは毎回思う。
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Unknown (aetos)
2010-03-17 12:32:00
個人的には、これはちょっと冷静に見る必要があると思っています。
児童ポルノ禁止法とは性質が異なるものだからです。
どちらも、判断基準が恣意的という問題点を抱えてはいますが、保護対象が異なります。

この条例はエロマンガを見てしまう実在青少年を保護するのが目的ですが、児ポ禁法は本来、ポルノの被写体となる児童の保護が目的です。
この条例は非実在青少年自体は保護対象ではありませんが、児ポ禁法は非実在児童も保護しようとしているのがおかしいわけです。
この2つを短絡的に同一視すべきではないと思います。

さらに言えば、既に18禁指定されているゲーム、漫画、映像作品等は数多くあり、また、全年齢対象を謳っていても目に余るエロ作品も少なからずあります。
性描写が青少年に悪影響を与えないと言うなら既存の規制も再考する必要があると思いますし、既存の規制を維持する必要があるのに今回の規制は全面反対というのは納得がいきません。

要は規制すべきか否かの判断基準が恣意的でなく客観的に妥当なものになれば問題はないと思っているわけで、そこに向けて議論を進めていってほしいと思っています。
そのためには、推進派が理性的であることが絶対条件で、「エロマンガwwキメェww」みたいなノリでやられていないことを願うばかりです。
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Unknown (krmmk3)
2010-03-17 20:43:11
ただいま、なぜかgooにログインしようとすると「安全性を確保できません」のメッセージが出て入ることができません。たぶんウイルスバスターが過剰反応しているだけだと思うのですが、そういうわけで今日は更新できません。DivXネタ書こうと思っていたのに。

>yanさん
児ポ法では明確に外されましたから、今度は影響力の大きい東京の条例から広げていこうとする腹なのでしょうね。
あれだけの大物漫画家がそろって反対を表明すると、簡単には施行できないでしょうね。とりあえず先送りということのようですが。

>emanonさん
逆にアングラになる分には連中は大して問題にしないと思いますよ。「自分たちの目の届く範囲からなくなってしまえばいい」程度の考えにしか見えないですから。

>ATX5000さん
そういう指導を条例で決めて強制的にしようというのが目的のようです。「東京だけで」出版物をやる雑誌・書籍はあっても、「東京以外だけで」やる雑誌・書籍は考えられないのが出版社の思考ですから、条例という圧力があれば一掃できるというセコい考えなのでしょう。

>PfPさん
携帯電話は事実上フィルタが必須になりましたから、やはりマンガ潰しでしょう。携帯電話の規制はわたしは反対しませんし。
GIGAZINEのDivX、ネタに使いたかったんですけど、今ログインできないんで、更新が・・・。

>2010-03-17 09:50:05さん
読んだことはないのですが、ヤング誌以上に過激なのが少女誌らしいですから、そっちだけでは効果薄と考えたのでは。

>たっくんさん
すいません。PSE法と似てきたので、遅ればせながらのエントリーになっちゃいました。
手塚氏の死後ですよね、もっぱらマンガに規制が入るようになったのは。あの人存命中は、事実上の基準になっていたので漫画家も心理的ブレーキがかかっていたのかも。

>aetosさん
あまり推進派が理性的で思えないですね。法律で明確に否定されたから条例でやってしまえ、というのは法律軽視、あるいは無視ということですから、それだけでも感情的な動きでしかないように思えてなりません。
返信する
年齢ではなく内容が問題なのでは (aki)
2010-03-17 21:22:33
私は子供の頃に何度か痴女に性的な虐待をうけたことがあったりします。
ですので個人的には少年を性的にあつかった漫画などを楽しそうに語る女性たちは、見るのも嫌です。
レイプの被害者などはAVの棚に並ぶパッケージを見たくないでしょうし、そういうものを借りていく人にも恐怖を覚えるでしょう。
嫌なら見なければいいじゃないか、というのは非常に無神経な話のような気がします。
ただ、表現をいたずらに萎縮させるのも問題だというのはわかります。
問題は描かれている対象の年齢ではなく、犯罪性がある性描写を肯定的に描いている物語があることではないでしょうか。
対象が大人であれこどもであれ、レイプや痴漢を肯定するような物語は規制されるべきだと思います。
あくまで肯定的に描いている場合に限り、ですが。
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予想的中 (913d)
2010-03-17 22:28:07
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100316_355032.html

ま、こちらはフィルタリングのみらしいですが「他県が独自に条例を作ってくる可能性」という予想が見事に当たってしまいました。
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