はりぶろぐ

鍼灸師のブログです。東京の国分寺市にて孔和堂鍼灸院を開業しています。
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ツボの探し方、効果効能について

2022-07-18 20:58:25 | 養生
最近、以前に増して「ツボ」というワードを目にしたり耳にしたりするようになりました。
コロナ禍において、感染予防としての免疫力維持や、心身の不調に対するアプローチとして、ツボ押しはセルフケアにとして手軽に取り入れやすいからなのかもしれません。
 
このツボが効く!などと銘打ったネット記事や書籍がたくさん存在しますが、中には、正しくツボのことを学んでいない人が、安易な情報発信していると思われるものがあります。
特に、このツボを押すだけでこんなに効果がある、と断言しているものについては、鵜呑みにしないように気を付けた方が良いと思います。
 
私は鍼灸師を目指す前、整体を学び練習している頃、ツボは簡単に学べるし押せるものだと考えていました。実際にやってみると、気持ち良さは与えられても、症状の改善はそう簡単にできませんでした。
 
確かに、ある程度学べばツボの位置や効果効能を知ることはできます。自分の体や家族の体に触れてツボ押しをしたりする分には問題ありません。
しかし、確実に症状を改善させていくためには、東洋医学的な診察所見の元に、どのツボを使うのかを判断し、より正しくツボの位置を探し、適切な刺激量を見極めてから刺激することが大切です。(ツボは東洋医学の考え方ですが、西洋医学の解剖学や生理学の知識も必要です。)
 
鍼灸師、あん摩・指圧・マッサージ師は、専門学校で基本的な知識を学んだ上で、実際に体に触れてツボを探す訓練をしていきます。私が通っていた学校ではツボを正しく見つけるための授業数が多く、しっかりとした技術を身に付けることができたのはとても大きかったと思います。
それでも、経験を重ねれば重ねるほど、ツボを正しく探りあてることの難しさを実感しています。
 

効果効能については、1つのツボにおいて幾つもあることがほとんどです。どのように刺激するか、他のツボも組み合わせるのか、等々、用い方によって変わります。何に一番効くのか分からない方もいると思いますが、セルフケアの場合は探しやすいツボに軽めに触れていくのが良いと思います。

いわゆる迷信のようなものの一つとして、「百会」という頭のてっぺんにあるツボが下痢になるという話があります。私も子どもの頃に、押すと下痢になるとお互いの百会を押し合ったことがありますが、私の場合は下痢になったことはありませんでした。もしかしたら下痢になった人もいるのかもしれませんが、「百会」のツボの状態と、そこへの刺激量によって起きたのではないかと思われます。
 
「百会」は単独で用いても様々な症状を改善できるツボです。
「百会」のツボの状態把握した上で施術しますが、私の場合は不眠症、更年期症状、頭痛などをメインに使用します。中でも一番効果が顕著なのは痔です。
「百会」と肛門周辺の部位と関係があるからです。
※鍼灸師によって解釈は様々ですが、私個人としては指圧や鍼よりもお灸が特によく効くと感じます。
 
 
鍼灸師によってツボの解釈や使用目的が異なるため、これだという正解があるわけではありません。また、1つのツボだけ用いることは少なく、幾つかのツボの組み合わせると効き方も様々なのが、本当に奥深く、面白いところです。
だからこそ、安易に押しすぎたり、適当にあちこち押したりすると、症状を改善するどころか悪化することもあり得ます。そういったリスクを知らない人が情報を発信しているケースがあるということを踏まえて、慎重に情報に接して頂けたらと思います。
 
 
最後に、ネットや本にはあまり書かれていない、ツボを見つける際のコツを書いておきます。(あくまで私の考えなので、ご参考までに。)
どのツボにおいても、指先を使って触れていきますが、できれば触り始めはツボの周囲を指全体を使って、そっと撫でるように触るのが良いと思います。何度か撫でさするようにしていると、少し冷えていたり、フニャッと柔らかい感じがしたり、あるポイントだけ周囲の状態と異なる部分を見つけられるはずです。なかなか見つけられない場合は、手に力が入っていることが多いので、肩の力を抜いて再度触れてみてください。
同じツボでも、その日の体調や気候によって変化することが多いので、そうした変化を見つけるのを楽しみながら、セルフケアにツボ押しを取り入れて見てくださいね。
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東洋医学的な体質の考え方

2022-07-05 22:38:23 | 養生

体質改善という言葉をよく耳にしますが、より健康な状態で生活するためにも、まず自分の体質を知ることが大切です。

東洋医学においては、体は「気(き)・血(けつ)・水(すい)」の3つで構成され、それらが適切な量と質を保ち、体内を巡ることで健康な状態を維持できると考えます。

「気」はエネルギーのようなもので、身体を動かしたり温めたりします。

「血」は身体中にエネルギーや栄養を運び潤いを与えるもので、精神を安定させる働きもあります。

「水」は血液以外の水分のことです。

 

最近はネットなどでも簡単に体質チェックができるようになりました。

 

◇気虚(ききょ)

活動するためのエネルギー源である「気」の量が不足した状態です。だるい・疲れやすい・気力がない等の症状が現れます。そのため胃腸の消化吸収力も低下し、飲食によってエネルギーを補いづらい状態にもなり、さらに気が不足する事態にもなります。

対策として、生ものなど冷たいものを避け、温かく消化の良いものをよく噛んで食べるようにします。睡眠をしっかりとることも大切です。

 

◇気滞(きたい)

「気」は本来のびのびと全身を巡るものですが、体が疲労したり精神的なストレスがかかったりすると、「気」の巡りが悪くなり、滞ってしまった状態です。喉が詰まったような感じになる・お腹が張る・イライラする等の症状が現れます。

対策として、楽しいことを考える、ストレッチやウォーキングなど全身を使って運動するようにします。運動が難しい場合、深呼吸するだけでも効果があります。

 

◇血虚(けっきょ)

「血」の量が不足し、体に必要な栄養を与えられなくなっている状態です。抜け毛が増える・皮膚が乾燥する・足がつる等の症状が現れます。同時に「気」も不足し「気血両虚」の状態に陥っている人も少なくありません。

対策として、「血」を補う食材(ほうれん草、にんじん、小松菜、レバー、黒豆、ナツメなど)を摂るようにします。お灸も血を元気にする効果があるためおすすめです。

 

◇瘀血(おけつ)

「血」の量の不足や、ストレスや冷えなどによって「血」の巡りが悪くなり滞った状態です。手術や転倒による打撲によっても引き起こされます。肌荒れ、目の周りのクマ、頭痛、生理痛などの症状が現れます。

対策として、冷えないよう体を温めるようにし、睡眠を普段より多めにとるようにします。「血」の巡りを良くする食材(にら、玉ねぎ、シナモンなど)を摂るのもおすすめです。

 

◇水毒(すいどく)/水滞(すいたい)

汗や尿などで体外に排出されるはずの水が体内に残っている、水はけが悪くなっている状態です。重だるい・むくみ・めまい・頭重感などの症状が現れます。進行すると水毒(すいどく)となります。花粉症や気管支喘息などの疾患とも関係が深いとされています。

対策として、食べ過ぎ飲み過ぎに気を付け、腹八分目を心がけます。ウォーキングや水泳などの全身運動で適度に汗をかくのもおすすめです。

 

◇陰虚(いんきょ)

体にとって必要な量の水が不足した状態です。潤いが足りないために、熱が盛んになり、手足のほてり・のぼせ・口渇感・寝汗をかくなどの症状が現れます。

体を潤す食材(れんこん、トマト、豆腐、山芋など)を摂るようにします。過労、喫煙、性生活の過多なども水分不足の原因となるため、注意が必要です。

 

以上が東洋医学的な体質の分類です。

 

これらのうち、1つだけ当てはまるという人は少なく、幾つか当てはまっている人がほとんどです。体質というのは生まれつきのものですが、生活環境によっても変動するものです。元々の体質は変わらないけれど、その時々の状態で元々ではない体質が強く現れることもあります。

年齢によっても変化することが多いので、自分はこの体質だと決めつけず、気になる症状がある時にチェックリストを再確認して、その時に必要な対策(生活習慣の見直しや食生活の改善)を行うことが大切です。

東洋医学の考え方は、さまざまな角度から身体を診て判断するため、一言で言い表せない難しさがあるのも事実。興味のある方は、漢方外来、漢方薬局、鍼灸院などで聞いてみるのもおすすめです。

 

 

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