はりぶろぐ

鍼灸師のブログです。東京の国分寺市にて孔和堂鍼灸院を開業しています。
http://kouwado.com

開院12周年を迎えて

2023-06-02 14:26:00 | 鍼灸

本日6月2日で開院12周年を迎えました!

干支でいうとひとまわり、キリの良い数字ではないけれど感慨深いものがあります。

現在0歳から92歳まで、幅広い年齢の患者さんが来られていますが、この1年で患者さんのお子さんを診る機会が増えました。

子どもにも鍼灸治療するというと、子どもに鍼するの?子どもなのにどこか悪いの?と驚かれることがよくあります。

具体的な症状や疾患がある子もいれば、病院で調べても問題ないけれど不調が出ている子もいます。

鍼、と聞くと大人でも怖いというイメージを持つことがあるので、施術する際の雰囲気作りに気を付けています。

怖がらせないように。好奇心を持ってもらえるように。気持ち良いと感じてもらえるように。

当院の場合、10歳頃までの子どもには、皮膚を撫でさすったり、軽めのお灸をしたりします。施術時間はあっという間ですが、ご機嫌良く過ごしてもらえるとそれだけで私も嬉しくなります。

高校生や大学生になると、大人とほぼ変わらないような施術をすることもあります。

鍼灸治療による効果の現れ方は年齢や体質によって様々。若い人や敏感な人は効果が早く現れる傾向にありますが、子どもでも刺激をしっかりした方が良い場合があるし、大人でも刺激を子どもと同じくらい軽めにした方が良い場合があります。

子どもの頃に鍼灸治療を受けておくと、自分の体調の変化に気付きやすくなったり、早めに対処することで症状が軽めで治まったりすることがあります。

年齢が若いほど施術回数は少なくて済みますが、年齢を重ねても、適切なタイミングで施術を受けることで同じ効果が望めます。

あらゆる年代の患者さんがそうなれるよう、13年目も精進します。



 

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鍼灸治療に不安を感じている方へ

2023-03-05 18:54:03 | 鍼灸

鍼灸治療に興味があっても、どのような症状に効果があるのか、実際に鍼灸院でどのような施術をされるのか、患者さんにとって疑問点や不安に感じることはいくつもあると思います。

WHOでは、41疾患を鍼灸の適応症として定めています。

頭痛、偏頭痛、三叉神経痛、顔面神経麻痺、メニエール氏病、白内障、急性結膜炎、近視、中心性網膜炎、急性上顎洞炎、急性鼻炎、感冒、急性扁桃炎、歯痛、抜歯後疼痛、歯肉炎、急性咽頭炎、急性気管支炎、気管支喘息、食道・噴門痙攣、しゃっくり、急性・慢性胃炎、胃酸過多症、胃下垂、麻痺性イレウス、慢性・急性十二指腸潰瘍、急性・慢性腸炎、便秘、下痢、急性細菌性下痢、打撲による麻痺、末梢神経系疾患、多発性筋炎、神経性膀胱障害、肋間神経痛、頚腕症候群、坐骨神経痛、腰痛、関節炎、夜尿症

以上41疾患には入っていませんが、自律神経失調に伴う諸症状、婦人科疾患、痔など、当院で改善が見られた疾患は他にもあります。

施術方法や刺激量は患者さんの症状の程度や体質によって調整しますが、鍼灸師によって調整方法は様々です。

鍼のサイズ(細めか太めか)と刺入する深さ、もぐさの熱量と熱の与え方、使用するツボの数、敏感な人に対しては鍼を刺すか刺さないか、調整するポイントも様々。

これもあくまで私の印象ですが、体力があって痛みにも強い鍼灸師の場合、一つのツボに対して刺激をしっかりと与えるように施術することで、効果を出すことを重要視しているように感じます。何故そのように感じるかというと、私自身が体力があまりなく痛みにも弱いため、自分と異なるタイプの鍼灸師の施術を受けた時に、効果はあったけれどしばらくぐったりして動けなくなった経験があるからです。

そのようなことから、私は患者さんに負荷がかかる施術はできるだけ避けるようにしています。特に、刺激量と刺激する方法を細かく調整することを大切にしています。

当院には敏感な体質の患者さんが比較的多く来院されるため、施術中の緊張感が少しでも少なくなるよう、施術後もできるだけ楽に過ごしてもらえるよう配慮しています。しかし慎重を期しても、施術中に痛みを感じさせてしまったり、施術後にだるさや、施術前に感じていなかった部位の違和感や痛みを感じさせてしまうことがあります。これらは好転反応として出ていることが多いのですが、例えそうであってもその状態を辛く感じてしまう患者さんもいます。

当院では、施術前後での体調の変化や、症状の状態に違和感を感じている場合、なるべく早くご連絡を頂けるようにお話ししています。その時の状態によって、ご自宅でも対応できる方法を考えてお伝えしていますので、些細なことでも気軽にご連絡いただけると助かります。

そうしたやり取りで、鍼灸治療による効果の現れ方にも良い影響が出ると思います。

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記憶に残る患者さん

2022-09-23 21:58:00 | 鍼灸

開業してしばらく経った頃、師匠に質問したことがあります。

「これまで数多くの臨床経験を重ねられてきた中で、特に記憶に残っている患者さんはいますか?」

師匠は、ゆったりとした質問に口調で答えてくれました。

「いるね。治せた患者さんよりも、治せなかった患者さんの方が印象に残っている。」

私にとってその答えは意外なものでした。師匠の鍼灸治療によって改善した多くの症例を実際に見てきたので、てっきり効果が顕著だった患者さんのことを話されると思っていたからです。

しかし、その答えは私の中にスッと入ってきて、まだそんなに臨床経験を重ねられていない私にとってもそうだと感じられて、何人かの患者さんの顔が思い浮かびました。

師匠は続けてこう話されました。

「治療効果が出せなかったのは、力不足だったこともあるし、止むを得ない症状だったこともあるけれど、そうした患者さんから学ばせてもらって鍼灸師として成長していくことができる。必ず次の臨床に生かしていけるようになろうという強い決意につながる。」

その当時ですでに45年ほど鍼灸の道を歩まれていた師匠ですが、そのような思いで精進されてきたのだと、改めて尊敬の念が強くなりました。

同時に私もそれに倣い、常に患者さんから学ばせていただくという思いを持ちつつ精進したいと思いました。

 

あれから数年が経ち、私も様々な症状の患者さんと出会ってきました。

症状が改善して患者さんに喜んで頂けると私も嬉しく、励みになります。

力不足で症状が改善しなかった時は本当に申し訳ない気持ちになります。ただ反省してばかりでは集中して臨床に臨めなくなるので、できるだけ早く気持ちを切り替えて、次に生かすことができるよう再考します。

長年通院してくださったにも関わらず結果に繋がらなかった患者さんのことは、繰り返し思い出されます。その度に申し訳ない気持ちが蘇りますが、少しでも症状が改善されていますようにと願うと共に、もっともっと精進していきたいという思いを新たにしています。

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道具としての「手」

2022-05-15 21:28:39 | 鍼灸

手当てという言葉があります。

痛みのあるところに手を当てるだけで少し痛みが和らぐような経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。

東洋医学では、あらゆるものが気によって形作られていると考えられています。人の心身も気によって存在し、動いているとされています。

気は全身を巡り、時に発散されたり吸収されたりします。また、人と人が触れると互いの気が交流するという性質があります。特に手は気の力が大きく現れており、気分が悪い時に背中をさすってもらったり、腹痛の時にお腹をさすってもらったりするだけで症状が改善することもあります。

 

鍼灸治療においては、治療効果を高めるために「手」が重要になります。

治療を始める前に脈に触れたり、お腹を触ったりするのも手で行い、ツボを探す時にも手でその場所を探していきます。

初めての鍼灸治療で緊張している患者さんに触れる場合には、いかに安心してもらえるように触れるかがポイントになります。私たち鍼灸師とって、手は大切な道具の一つです。

鍼灸学校で、治療するための手を作る訓練をいくつか教わり、自分に合った方法を今でも実践し続けています。

温かさがあることはもちろん、程よく乾いたサラッとした状態であることが理想です。

気候などの影響もあり、常にこの状態を維持するには工夫が必要ですが、臨床経験を重ねるほどに意識せずとも維持できていることが増えてきているように感じています。

 

時折、患者さんから「手が温かくて気持ちがいい」と言ってもらえると、そう感じてもらえたことにほっとして嬉しくなります。

これからもより良い手の状態を保ち、手の力を存分に発揮できるように調えていきたいです。

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心の不調に対する鍼灸治療

2022-01-23 23:07:11 | 鍼灸

近年、様々なメディアで心の不調に対して鍼灸治療が有効であることが紹介されるようになってきました。

 
気持ちを落ち着けたり、不安感からくる息苦しさを和らげたり、精神的に何らかの辛い症状を改善するためのツボは幾つかあります。
指で押すだけでも効果はありますが、皮膚の下にあるツボに直接アプローチできる鍼灸は、さらに効果があると思われます。
 
実際に患者さんに治療していて感じるのは、治療の際に私たち鍼灸師の手が触れるだけでも安心される方が少なくないということです。
心が不安定になっていると、身体に触れられることに抵抗を感じる方もいらっしゃいます。特に背中側の感覚が過敏になっていることが多いようです。
ただ、鍼灸師は患者さんの身体に適切に触れられるような手を作ったり、患者さんが抵抗を感じないような触り方を訓練したりしています。
 
また、治療の度にご自身のことを話してもらうということも、症状を改善する過程において大切なことです。
話をすることで自分自身が気付いていなかったことに気付けたり、苦しさや辛さの原因を認識して受け入れられたりもします。
 
不安感などで苦しくなっている時は身動きが取れないようなこともありますし、反対に衝動的に何にでも手を出そうとしてしまうことがあります。私もそのような時期がありました。
鍼灸治療で心の不調を良くしたいと思われている方は、じっくりゆっくり長期戦で治していくイメージを持つと良いと思います。
 
 
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転倒後の鍼灸治療

2022-01-11 21:32:21 | 鍼灸

先日、久しぶりに積雪となった東京。

積雪当日と翌日に転倒した患者さんが数人おり、転倒による症状に対する治療が続きました。

患者さんがどのように転倒してどこを負傷しているかを確認、優先順位を決めてから施術をしていきますが、局所だけでなく全身の調整を含めて治療をすることで、回復力が高まり痛みなどの辛さに悩まされる時間を短くすることが可能となります。

 

一般的に打撲などで痛みが出た場合、すぐに冷やして安静にすることが推奨されています。

痛みが出ている=炎症が起きている→その部位が熱を持つ・腫れる→その熱や腫れを引かせるために冷やす

以上のような理由から冷やすのですが、東洋医学では、冷やす治療という考えはありません。

鍼で熱を取り去るような施術をするか、灸で温めて熱には熱を持って制すようにするか、どちらかで対応しています。

 

ただ、転倒による症状は、直後に出ているものと、数日以上経過した後に出るものとがあります。そのため当院では、来院した時点の症状に対処するだけでなく、他の症状が出た場合の対処方法も考えてアドバイスするようにしています。

体質に関わらずお伝えしているのは、しっかりと睡眠を摂ること。

転倒によって筋肉や靭帯に負担がかかった部位が幾つもあるということは、炎症が起きている部分が多く、体はそれを修復しようとして頑張ります。その時に必要な体力気力を十分にするためには、質の良い睡眠を摂るのが一番。鍼灸治療を受けた場合は睡眠の質も高まりますので、この点においても転倒後に鍼灸治療を受けることはおすすめです。

治療後に患者さんに起こることを完全に予測することはできませんが、治療によって一時的に痛みや違和感をはっきりと感じてしまう可能性があるため、もしそうなったときにどうすれば良いかも考えてお伝えしています。

すでに当院に来院されている患者さんには機会があればお知らせしていますが、まだ知らなかったという方は今後はお気軽にご相談ください。

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上手な鍼灸治療の受け方

2021-11-12 21:07:38 | 鍼灸

鍼灸治療に興味はあるけれど、なんとなく敷居が高い印象を持っている方が少なくないと思います。

どの治療院がいいかじっくり調べてた上で鍼灸院を予約したとしても、多くの方が最初は緊張して当日を迎えるのではないでしょうか。せっかく勇気を出して鍼灸治療を受けることを決めたのだから、できればリラックスして治療を受けていただきたいところです。

 

そこで今回は、私が考える上手な鍼灸治療の受け方について書きます。

1.症状がいつから発生してどのくらいの頻度で起きているかを明確にすること。

いざ問診票に記入をしたり、鍼灸師に質問された時に、あれ?いつだっけ?となる方は意外と多いです。問診がスムーズに進むとその分施術を丁寧に行うことができますので、来院前にメモを取っておくのもお勧めです。

 

2.鍼灸師から質問されることになるべく素直に答えること。

東洋医学に基づいた診察において、食事や睡眠などの生活習慣について細かく伺う場合があります。中には答えづらいものもあるかもしれませんが、できる限りありのままを教えて頂けると、より良い施術が可能となります。実際とは異なる回答の場合、施術方針を間違ってしまいかねません。

 

3.施術を受けている間に感じたことを我慢せず鍼灸師に伝えること。

診察することで、患者さんが敏感がどうか等ある程度は把握できますが完全にとはいきません。治療中にちょっとした痛みや違和感が出た場合、すぐに教えて頂けると対応しやすくなります。鍼が刺さっていると少しも動かない方がいいかな?と気にされる方も少なくないと思われますので、手足を動かしたい時など、遠慮なくひと声かけて頂けたらと思います。

 

なお、当院の場合は症状によってかなり細かく質問することがあります。また、症状を少しでも早く改善するために、生活習慣の改善点などをアドバイスすることがとても多いです。

鍼灸師ができるのは、患者さん自身の回復力を高めるお手伝いをすること。どんなにたくさん治療を受けたとしても、患者さんご自身が良くしていこうという意識を持たなければ、症状はなかなか変化しづらいです。

(人からいろいろ言われたくない方・気が向いた時に気軽に治療を受けたい方には、当院は向いてないと思います。)

 

私は日々の鍼灸治療で、丁寧さときめ細やかさを大切に、責任を持って患者さんと向き合い、信頼関係を築けるよう努めています。

このブログで書いた3点について、少しでも患者さんが話しやすいように工夫しているつもりですが、至らぬ点もあると思います。

直接話しづらい場合はメールでも構いませんので、どうぞお知らせください。

 

 

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痛いところに刺さない治療

2021-10-06 20:13:23 | 鍼灸

少し前の話になりますが、夫からとあるラジオ番組内での話を聞きました。

ある芸人の方が首を寝違えて鍼治療を受けたそうです。今回だけでなく過去にも鍼治療を受けたことがあり、その際は直接痛いところをやらず、離れたところに鍼を刺されたけれど効かなかったとのこと。今回は直接痛むところを刺してもらい、よく効いたという話でした。
私もタイムフリーで番組を聴いたところ、鍼灸師は離れたところを治療したがる、カッコつけている、という表現がありました。確かにそう取られても不思議ではないし、効果が出ればいいけれど効果がでない場合はただのカッコつけだと思われても仕方のないことなのかなと思います。
 
しかし、実際はカッコつけたくてやっている訳ではありません。離れたところに鍼をする理由があるのです。
 
 
基本的に、特に急性の痛みが出ている部位に対していきなり鍼を刺すことは禁忌です。
(最初から患部に直接刺す方もいるかもしれませんが、私は禁忌と教わりました。)
まずそもそも痛みがある部位のため、鍼の刺激に対しても過敏になっていることが多いです。万が一、鍼の刺激で余計に患者さんの痛みを強くしてしまうと、その後の治療を継続すること自体が難しくなります。
もちろん直接刺すだけで痛みが緩和することもあるのですが、刺してからしばらくの間は効果が続いたとしても、数時間も経てば元に戻るか、元より痛くなってしまうことがあります。
私の経験上のことではありますが、離れたところを刺しても効果が持続しなかったり痛みが強くなってしまうことがあります。ただ痛みのある部位に直接さした場合に比べて一時的なもので治まることが多く、その後次第に楽になっていくことがほとんどです。
 
また、痛みのある部位に最初に鍼をして効果が出なかった場合は、他のツボを使っても効果が出にくくなるというデメリットもあります。
 
 
痛みと関係なさそうなツボを用いるメリットとしては、痛みのある部位から離れたツボを用いる方がじっくり丁寧に調整できて、ゆっくり症状を改善に向かわせられるということ。
また、痛み方や体質を踏まえてより効果の高いツボを選び、適切な刺激を与えることができると、速やかに痛みを取ることも可能です。
ツボを探すには患者さんの身体に触れて探していくわけですが、痛みの出ている部位と関係のある経絡(ツボの通り道)上にツボが出現していることが多いです。もちろんツボが出現していないこともあるし、刺してみたけれどイマイチ効果が現れないこともあります。そういう時は間接的に関連している経絡上でツボを探したり、ツボという概念を一旦置いておいて筋肉の繊維を細かく探って反応のあるところを探したりします。
 
症状を改善させるために次々とツボを刺せばいいわけではなく、やりすぎると必ず症状を悪化させてしまうので、効果が顕著でない場合はある程度で治療を終了とします。
私の場合は、その後患者さんが日常生活をする上で気を付けた方がよいことをアドバイスしたり、痛みがぶり返してきた時の対処方法を幾つかお伝えするようにしています。1回の治療でさっと良くなるのがベストではあるのですが、実際にはなかなかそのようにいかないこともあります。
 
今回この話を聴いて、より少ない回数で改善に向かうよう、患者さんの症状に合わせて最善の治療ができるよう、さらに学んで技術を高められるよう努めていきたいと改めて思いました。
 
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機能性ディスペプシア

2021-09-05 15:18:46 | 鍼灸
 
機能性ディスペプシアという疾患があります。
※NHKテキスト「きょうの健康2021年8月号参照
 
胃の組織自体には異常がなく、他にも疾患が見当たらないのに、胃の機能がうまく働かなくなるという症状です。
(ディスペプシアとは、ギリシャ語で消化不良という意味)
 
胃には3つの機能があります。
1.口から入った食べ物をためる。
2.蠕動運動(波打つように動く)によって食べ物と胃液を混ぜ合わせて粥状にする。
3.粥状にした食べ物を十二指腸に送り出す。
 
胃の機能が低下してうまく働かなくなると、以下のような症状が現れます。
・食べ物をためることができない→早期満腹感
・胃から十二指腸に食べ物を送り出さず、胃内に食べ物が長くとどまる→胃もたれ
・胃の知覚過敏があり、胃酸の分泌や胃の動きを強く感じてしまう→胃の痛み、しゃく熱感
これらの症状が特に食後に起こることが最近分かってきたようです。
 
機能性ディスペプシアは、以前は慢性胃炎、神経性胃炎と言われていました。
胃自体には炎症などはないので、気のせいとされることが多かったようですが、日本では10人に1人の割合で患者さんがいるそうです。
私は10代のほとんどの時期を胃の痛みを抱えながら過ごした経験があります。私自身の強い希望で胃カメラもしましたが、胃の組織には異常が見当たらず。当時のかかりつけ医からは神経性胃炎でしょうと言われていました。もし今だったら、機能性ディスペプシアと診断されていたかもしれません。
 
 
機能性ディスペプシアの原因は自律神経の乱れと考えられています。
自律神経は自分の意思でコントロールできません。また、恐怖や不安や危険などに敏感で、強いストレスがかかると自律神経が乱れて胃の動きは止まったり、胃の知覚が敏感になったりします。
以上のようなことから、自律神経の乱れが機能性ディスペプシアを引き起こすとされています。
命に関わる病気ではないものの、生活の質には大きく関わります。
 
運動機能の異常と知覚過敏を改善する治療として、以下のような薬が用いられます。
・運動機能改善薬:アコチアミド
・漢方薬:六君子湯
・胃酸分泌抑制薬
 
また、生活習慣の改善も欠かせないとされています。
機能性ディスペプシアの患者さんはストレスを強く感じていたり、睡眠不足、胃の不調のため朝食を食べらないといったことも問題になります。
・夜更かしせず十分な睡眠を摂る。
・決まった時間に起きる。
・胃そのものに異常がないため好きなものを食べていいが、食べ過ぎや早食いは避ける。
・温度差は自律神経を乱すため、冷房などで体を冷やさないようにする。
・タバコは交感神経を高ぶらせるため、喫煙を控える。
以上のような対策を取ることが大切になります。
 
治療のポイントとしては信頼できる先生を見つけることが大切で、患者さんの話を聞いてきちんと説明してくれる医師を見つけることが治療の第一歩とも言われています。
 
 
機能性ディスペプシアについて調べていると、この疾患には鍼灸がよく効くのではないかと思いました。その疾患名を患者さんから伺って治療したことはまだありませんが、胃の痛みや胃もたれなど、機能性ディスペプシアに見られる症状を治療する機会は多いです。
特に当院で行っているような全身の状態を診た上で鍼灸治療の場合、患者さんのお話を細かく伺うことでより良い治療をすることが可能となります。
投薬に関しては病院にかかることが必要になりますが、生活習慣の改善に関しては鍼灸治療でお手伝いできることがたくさんあります。鍼灸治療は自律神経の調整を得意とするため、生活習慣の改善をすることすらままならないような方でも、それが自分の力で行えるような身体づくりをしていくことができます。
 
私自身も症状が出ていた頃は毎日胃の痛みに悩まされて本当に辛かったです。
かかりつけ医からは服薬の必要がないと言われていたので、症状に対してなす術がなく、それ自体がストレスになっていたような気もします。
 
当時の自分を今の自分が治療するなんてことはもちろんできないですが、かつて自分が経験したような痛みに対してどのような治療がより有効となるか、そんな視点でも治療方法を考えています。
 
胃の不調を感じる度に市販の胃薬を飲んでいる方、医師の診察を受けても特に原因が見当たらなかった方には、ぜひ一度鍼灸治療を検討して頂けたらと思います。
 
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5回目の勉強会

2021-06-08 21:41:27 | 鍼灸

2019年6月から私が発起人として始めた勉強会。

最初から無理し過ぎない方がいいということで、メンバーで相談して半年ごとに開催することに決めています。

実際に集まって開催できたのは最初の2回で、後の3回はオンラインでした。

オンラインでも開催できるのは素晴らしいことですが、できれば以前のように対面でやりとりができたらいいなと思いつつ、3回目ということもありオンラインでのやり取りの仕方にも少し慣れてはきました。

 

今回は各自が行っている感染症対策について話をしました。みんな同じように気を付けてはいますが、使用している道具や機器がそれぞれ違っているのでとても参考になりました。

お勧めの書籍を紹介し合い、情報交換ができたのも良かったです。気軽に会って話ができなくなった状況下で、一人一人がどのように過ごしているかを垣間見れるだけでもモチベーションが上がります。

私は少し前から東洋医学の基礎となる古典の再読を始めたのですが、会の中で報告したことで簡単にはやめられなくなったと、良い意味でのプレッシャーを感じて一層頑張れる気がしてきました。

このイラストは今勉強し直している書籍の中に登場します。

古典文献のイラストは味わいがあって可愛いものが多く、それも魅力的に感じます。

「尺膚診」といって、腕の内側の皮膚の状態で患者さんの状態を確認します。

たまにしかやらなくなっていましたが、勉強し直しすことでもう少し積極的に治療に取り込みたいと思うようになりました。

 

 

認知症の患者さんへの対応の仕方と、鍼灸治療以外の療法を受けている患者さんへの対応策を話し合えたのも勉強になりました。

一人で臨床していると、状況に応じた判断は自分自身でやるしかないのですが、時折これで良かったのかと迷うことがあります。すでに終わったケースであっても、他の人の意見を聞けるのはかなり参考になります。また、一人で働いていると独りよがりにもなりがちなので、こうした機会を持つことの大切さを感じます。

 

次回は半年後の12月に開催予定。その時に会える状況になっているかは何とも言えませんが、それまでにそれぞれの場所で学びながら臨床経験を重ねていけたらと思います。

この勉強会のメンバーは鍼灸師になった時期が近いので、気さくに話せることが本当にありがたいです。次回を楽しみに、私は自分がやると決めた勉強を継続しつつ臨床に臨みます。

 

 

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患者さんからの相談を受けて考えたこと

2021-05-19 22:07:30 | 鍼灸

先日、患者さんから一人暮らしのご自身のお母さんのことで相談を受けました。

お母さんは病気自体は完治したものの後遺症に悩まされていました。少しでも楽になれたらと、近所の鍼灸院の往診治療を開始。週3回のペースで治療を受けて1年ほど経ちましたが、治療後は毎回だるくて数時間は動けなくなってしまうそうです。お母さんは担当の鍼灸師に治療回数を減らしたいと伝えましたが、現在の症状には必要な回数であり、このままのペースで治療を継続することを勧められました。このことを相談された患者さんは、お母さんの治療に立ち会われたそうですが、施術時間は1時間から1時間半ほどだったそうです。
 
鍼灸師ごとに治療方法が異なりますので、他の鍼灸師の詳しい治療内容は分からないことが多いのですが、この話を聞いて複雑な気持ちになったと共に、いろいろと考えさせられました。
 
 
慢性的な症状の場合、自分が見立てた方針で計画的に治療しますが、その人に合った治療をする上で特に大切なのは、治療による刺激量の調整だと私は考えています。刺激量は患者さんの脈や舌やお腹の状態に加えて、皮膚の状態を診て調整しています。刺激に強い人は皮膚にしっかりと張りがあって、さらっとした感じ。刺激に弱い人は皮膚が薄くて柔らかく、しっとりしている感じです。刺激に弱いと判断した場合、私はできる限り患者さんへの負担がないように気を付けながら施術しています。
 
治療後に起きる反応も人それぞれです。
・眠気が強くなる。寝たらなかなか目が覚めなくなる。
・全身がだるくなる。
・それまで気になっていなかったところに違和感が出る。
・トイレが近くなる。
以上がよくあるものになりますが、挙げればキリがないほど個人差があります。
また、反応が起きるまでの時間が早い人や遅い人、反応の持続時間が数時間から数日間続く人もいます。
 
治療後のちょっとした変化や違和感が気になったら、まずは施術した鍼灸師に相談して下さい。身体に起きた変化を具体的に教えて頂けると、鍼灸師はそれが様子を見ていたら落ち着くものなのか、対処が必要なのか判断できます。良くないのは、これは何なのだろうと一人で悩むこと。身体に起きている感覚は患者さん本人にしか分かりませんので、遠慮せずに話して下さい。
 
鍼灸師は適正な刺激量を心がけて治療しても、刺激量の調整がうまくいかないこともあります。その場合、鍼灸師は誠実に対応する責任がありますし、そもそも患者さんがそういった相談をしやすい関係を築くことも大切です。また、患者さんの感覚を優先するのが何よりも大事です。
 
今回相談を受けたケースは、おそらく刺激量が多すぎることによってかえって患者さんが辛い思いをしているのではないかと推測されます。もう一度、担当の鍼灸師に相談して、ちょうど良い刺激量の治療が受けられるようになることを願います。
 
そして、私自身も他人事とせず、今一度気を引き締めて治療していきたいと思います。
 
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鍼灸治療院の選び方 その2

2021-04-24 08:36:00 | 鍼灸

前回のブログでは、鍼灸治療を行うために必要な資格のことや治療院の種類について書きました。

今回は、東洋医学的な鍼灸治療について説明したいと思います。

 

東洋医学的な鍼灸治療と書きましたが、鍼灸ってそもそも東洋医学じゃないの?と思う方がいるかもしれません。

鍼灸が東洋医学であることは間違いないのですが、西洋医学的な概念に基づいて行う鍼灸治療もあります。コリや痛みのある部分に直接刺したり、症状の出ている筋肉の起始・停止部に施術を行ったりする治療です。超音波(エコー)で患部の状態を把握しながら治療を行う鍼灸院も増えてきているようで、筋肉疲労等による痛みに対する治療としては効果が高いと思われます。

(以前このブログで書いた記事もありますので、興味のある方はこちらをご覧ください。)

※ちなみに、柔道整復師による治療は東洋医学ではありません。柔道整復師に加えて、はり師・きゅう師の国家資格を取得している方の治療は東洋医学に基づいた場合もありますが、どちらかというと西洋医学的な解釈に基づく治療が多いようです。

 

対して、東洋医学的な鍼灸治療では、東洋医学的な概念に基づき施術部位を検討します。経穴(ツボ)を選ぶために脈・舌・お腹等を診るのが特徴です。治療にあたり、症状の出ている部位に関係している経絡(ツボの通り道)と経穴(ツボ)に施術することが多いのですが、一見関係ないような経絡・経穴を用いて治療することもあります。もしろこの方が著効をもたらすことが多々あります。

 

当院は東洋医学的な鍼灸治療を行っています。

関節や筋肉の痛みであれば、東洋西洋どちらの鍼灸治療でも効果がありますが、東洋医学的な鍼灸治療は、体全部を診て全身のツボを使って治療していくので、メインの症状プラスアルファの効果も望めます。

ところで、東洋医学的な鍼灸治療を行なってるからといっても、同じ治療をするとは限りません。たとえ同じ流派であっても全く同じ経穴を選ぶことはないです。鍼灸師ごとに経穴(ツボ)を探る時の手の感覚も異なるので、患者さんから得られる情報にも違いが出ます。特に、脈は触れた瞬間に変化が始まることもあるので、共通認識を持ちづらい側面があります。
 
治療する際にも、鍼治療では施術者の経験や技術によって刺激量(鍼の太さや刺し方等)が人それぞれ変わります。灸治療では、もぐさの種類(すぐに熱くなるかゆっくり熱くなるか等)や用い方(沢山すえるか少しだけすえるか、直接すえるか間接的に据えるか等)が変わります。
 
鍼灸師によって患者さんの体質の見極めや治療方法が異なるため、自分に合った鍼灸院を見つけるのは大変です。今の自分の症状と今後どのように体と向き合っていくかを考えた上で、鍼灸院を選んで頂くのが良いかと思います。
 
それでも鍼灸は敷居が高いと感じるならば、気になる鍼灸院にまず症状を相談してみてはいかがでしょうか。誠実な対応をしてくれるかどうかで判断するのも良いかと思います。
急性期の症状であれば一度で完治することもありますが、多くは数回治療が必要になりますので、自分に合った長く通える鍼灸院を見つけて頂きたいです。
 
以上、鍼灸院の選び方について、ご参考になれば幸いです。
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鍼灸院の選び方 その1

2021-04-23 08:45:56 | 鍼灸
最近患者さんと話していて感じるのは、コロナ禍になって不調を感じても病院に行きづらいと思っている方が多いことです。そのような状況もあってか、鍼灸治療に興味を持ち始めた方もいるようです。
年々鍼灸治療院の数も増えてきていますし、どこの治療院に行けば良いか悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 

鍼灸治療を行うには国家資格が必要です。鍼治療には「はり師」、灸治療には「きゅう師」のそれぞれの国家資格が必要です。

似ている国家資格としては「あん摩マッサージ指圧師」「柔道整復師」があります。マッサージという言葉はよく耳にすると思いますが、治療としてのマッサージを名乗るためには「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格が必要です。

※国家資格を取得していないと「治療」という名称は使用できません。来院する人のことを「患者」と言うのにも国家資格が必要です。「整体」「リフレソクロジー」「カイロプラクティック」等の名前がついた店舗がありますが、これらは国家資格が必要ではありません。「〇〇セラピー」「認定セラピスト」等というような名称もありますが、多くはその団体独自の資格ですので、気になる方は問い合わせてみてはいかがでしょうか。

 

鍼灸治療を受けることができる場所は概ね下記の3種類で、必要な資格は以下の通りです。

1.「鍼灸治療院」→鍼灸のみで施術→「はり師」+「きゅう師」の国家資格が必要。

2.「鍼灸マッサージ(指圧)治療院」→鍼灸・マッサージで施術→「はり師」+「きゅう師」+「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格が必要。

3.「鍼灸整骨院」柔道整復に関する施術が基本、症状によっては鍼灸で施術→「はり師」+「きゅう師」+(あん摩マッサージ指圧師←無くても良いのですが、この資格も一緒に取る方もいます)+「柔道整復師」の国家資格が必要。

当院は1に該当します。

1.「鍼灸治療院」と2.「鍼灸マッサージ(あん摩/指圧)治療院」は保険診療が可能ですが、保険による治療を受けるには医師の同意書が必要です。また、治療院によって保険が使えたり使えなかったりします。

3.「鍼灸整骨院」は原則保険診療が使えますが、対象となる症状は骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷のみ。それ以外は自費となります。整骨の病名で診療を受けた場合、鍼灸治療を併用すると鍼灸治療は自費となるので注意が必要です。

治療スタイルは各治療院によって大幅に異なるため一概には言えませんが、1と2はどちらかというと東洋医学的な考えに基づいて施術を行うところが多いと思われます。

3はどちらかというと西洋医学的な考えに基づき、スポット的に鍼灸を用いることが多いようです。(私は柔道整復師の資格を持っていないので詳しくは分かりませんが、整骨院で働いていた時の印象です。)

今困っている症状以外も含め、長期戦で体質そのものを調整していきたい方には1か2がいいと思います。

※国家資格を取得しているからと言って、全ての国家資格保有者が治療に必要な知識・技術があるとは限りません。国家資格を持っていなくても、症状を改善させる力を持っている方がいることも事実です。但し、国家資格を取得するために3年間基礎的な医療全般を学んだ人とそうでない人の差はかなりあります。私自身、整体師として働いていた頃に知識・技術の無さを痛感したことが、国家資格を取得しようと思った理由の一つでした。実際に鍼灸専門学校では、決して独学では学びきれない質と量の知識をしっかりと学習することができたと感じています。現行の日本の制度ではこの辺りが非常に曖昧で、分かりづらくなっています。国家資格の有無を含めて、自分の体を安心して任せられる施術者かどうか、しっかりと確認した上で予約を検討されるのが良いかと思います。

 

その2に続く…

 

 

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心身一如

2021-04-04 09:32:34 | 鍼灸
心身一如」という言葉があります。
「身心一如」と書かれることもあります。
どちらの漢字が先にきたとしても、心と身体は分けることのできない一つもであり、一つのものの両面であるという考え方です。
仏教の考えですが、東洋思想の一つとして鍼灸治療においても重要視している考え方です。
 
 
心が疲れていると身体も疲れ、身体が疲れていると心も疲れます。
どちらか一方だけが元気、ということはありません。心と身体、どちらが先に疲れを感じ始めるかはその時々によりますが、一方の調子がおかしくなると、もう一方もつられていきます。
不調に気付いたら、休息やバランスの良い食事を摂ることで本調子に戻ります。
しかし、気付くのが遅れたり、気付いていても無理をしてしまったりすると、自分の力では元に戻れなくなることがあります。
 
 
そんな時に力になれるのが、鍼灸治療です。
 
鍼灸治療ではまず身体の方を調えます。みなさん「ツボ」という言葉をご存知と思いますが、この「ツボ」は身体が元気な時は現れません。不調の時に「ツボ」は出現し、元気になってくると「ツボ」は消えます。
私たち鍼灸師は、患者さんの身体に現れた「ツボ」を出来る限り正確に把握し、必要な刺激を与えるのが仕事です。
 
 鍼を用いる場合は、どの程度刺すか、あるいは刺さないか、等を適宜判断しながら施術します。
灸を用いる場合は、どの程度温めるか、もぐさの種類を含めて判断しながら施術します。
元気のない「ツボ」には気を補充して元気な状態になるように、逆に元気が過剰になったり滞っている「ツボ」からは取り去るようにします。
そうして「ツボ」の状態が調って現れていた反応が小さくなったら消えたりしたら、治療は終了です。
 
こうして身体は少しずつでも回復に向かっていく力を取り戻していきます。身体が安定するに従って、心の疲れも次第に回復に向かいます。
あとは、適切な食事と運動を習慣とすることで、さらに順調に回復することが可能となります。
 
どのくらい食べれば良いのか、どのくらい運動すれば良いのか、頭で考えても分かるものではありませんが、じっくり自分の心身に向き合っていると次第に分かるようになります。
その向き合う力も鍼灸治療によって着実についていきます。
もちろん休息をとることも大切。どのタイミングで休息を取れば良いかも次第に分かるようになっていきます。
 
ただし、鍼灸治療ができるのはここまで。
 
 実際に食事を摂るのも、運動をするのも、患者さんご自身にしかできないことです。
初めはうまくいかないこともありますし、うまくいく時といかない時の波があるかもしれません。
それでも諦めずに自分の心身に耳を傾けて、なんとなくこうかな?という感じで構わないので向き合い続けていると、その時々の最善の方法が分かるようになるはずです。
「今日は脂っこいものを食べない方がいいかも」「少し外を歩いた方がいいかな?」等、なんとなくでも気づいたことがあれば、まずそれをやってみてください。一気に全てを調整していくのは難しくても、一つずつなら案外簡単に実践できます。
小さなことの積み重ねで、心身ともに本来あるべきバランスの良い状態に持っていけるようになると思います。
 
 
コロナ禍になって一年以上となり、来院される患者さんの疲労も少しずつ蓄積されているように感じます。また、長引く閉塞感の影響が顕著になっている方もみられるようになりました。
この状況下で新しいことに挑戦するのはこれまで以上に勇気がいることだと思いますが、新たに当院に来られ始めた方もいます。
 
大きな不安や身体的苦痛を抱えた患者さんが増えたことで、これまで以上に私自身の心身を調え続けることが重要だと感じています。
常にベストを尽くせるように、適切な食事・運動・休息を心がけていきたいと思います。
 
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基本を学び直す

2020-12-27 21:53:34 | 鍼灸

今月上旬、弟子仲間とオンラインでの勉強会をしました。

夏に引き続き、実際に会う事が難しい状況が続いているため、今回で2回目のオンラインとなりました。

前回からの状況の変化を伝え合い、悩みを相談し合ったりと、こうした集まりを持つことの大切さを実感しました。

 

今回は私のリクエストで、各自が普段よく読む書籍について教えてもらいました。

その中で出てきた一冊が、『ツボ単』です。


カバーを外したデザインが素敵です。
 
『ツボ単』は2011年に刊行されている本で、存在は知っていたものの、ツボに関する本はすでに数冊持っていたので購入するまでに至っていませんでした。しかし今回話をする中でかなり充実した内容である事が分かったので、今更ですが購入しました。
 
ツボ=経穴は東洋医学独自の概念ですが、どの筋肉上にあるのか、どの神経が関わっているのか、西洋医学的な面からもしっかり理解しておく必要があります。鍼灸学生の時は国家資格試験対策として必須な事もあり、ひたすら暗記してしっかりと頭に入っていましたが、臨床するうちによく使う経穴以外は忘れていってしまうのが実状です…
忘れた時が本当の卒業とも言われる、と、学生時代に先輩から聞いていたことをふと思い出したりしますが、経穴は鍼灸師として基本中の基本。より正確に経穴を探り当てる事で治療の精度も上がるので、慢心せず日々弛まず学び続ける事が必要です。
 
今月は仕事も手作り関係も忙しいので、まだ少ししか読めていませんが、思っていた以上に分かりやすく復習に役立ちそうです。連休に入ったらじっくり読みたいと思います。
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