手話通訳者のブログ

田舎の登録手話通訳者のブログです。

手話通訳者とお礼の言葉

2016-09-25 10:02:04 | 手話
ろう者のSさんは礼儀正しい人。
通訳が終わると、必ず、
「通訳ありがとうございました。お疲れ様でした」
と声をかけてくれる。

こちらこそ、ありがとうございました。お疲れ様でした。
「たいしさん、そりゃおかしい」
は?
「たいしさんは通訳してくれた。私は通訳してもらった。お礼を言うのは私。たいしさんがありがとう、と言うのはおかしいやろ」
いやいや、そんなことはないで。手話がうまくなるためには、ろう者とたくさん話をせなあかん。今日、Sさんのおかげで少し手話うまくなったと思う。だからお礼言ったんや。

真剣に議論しているというわけではなく、お互いに軽い感じ。
そのせいか、Sさんの通訳に行って、終わると、恒例行事のように、こんな会話をする。


「たいし」を批判する人の視点

2016-09-24 10:13:54 | 手話
前回のブログに書いた内容は、地元の手話通訳者の集まりで話した。

主流派通訳者Bから批判された。

「たいしさん、ほらね、そうやって、ルールを守らないから、たいしさんは嫌われるんよ」
ルールとは?
「U先生から連絡先を聞かれたでしょ? その時、自分の、個人の連絡先を教えるんやなくて、派遣者の連絡先を教える。これがルール。知ってるでしょ?」
知ってるよ。
「どうしてルールを守らないの?」
U先生は市の手話通訳者派遣制度のことはご存知なんや。
「・・・・・」
それなのに、俺の連絡先を聞いてきた。何故だと思う?
「顔見知りだからでしょ?」
その通り。医者にも守秘義務がある。手話通訳者なら誰でもいい、というわけやない。
「たいしさんみたいな人がいるから、制度がよくならないんよ」
どういうこと?
「手話通訳者の指名を認めたら、同じ人ばかり指名されるでしょ? 新しく登録した人たちの出番がないじゃない。これじゃ、新人通訳者の出番がなくて、いつまでたっても人材が育たないじゃない」
そうだろうか。市の登録試験の受験者たちは、試験を受けるまでに、手話奉仕員として数年の間、通訳経験を積む。この間にろう者の顔見知りもたくさんできる。ここでろう者との信頼関係ができれば、必ず、指名されると思う。むしろ、数年の間、手話通訳活動をした上で資格をもらった人が、全くろう者から指名されないということは、反省する必要があるんちゃうか?
「・・・・・」



批判してくる人の視点は、わかりやすく言えば派遣者の視点。
「ルールありき」の考え方をする人から見れば、確かに俺はルール無視のとんでもない手話通訳者やろ。
しかし・・・
いつも不安になる。
こういう視点でしか物事を見ない手話通訳者たち、大丈夫なのか?
派遣者がいつも正しいなら、それで問題ないだろう。
しかし、人間なら誰でも間違いをするし、勘違いもする。
派遣者が間違えたり勘違いした時、誰がそれを指摘するのだろうか。

わしらの地元の派遣者はひどく偏った考え方をする。大問題だと思っている。
しかし、反省することを知らない派遣者になってしまったことについては、派遣者が何を言っても全く批判してこなかった手話通訳者たちの責任だと思う。




U先生に再会

2016-09-23 12:10:19 | 手話
手話通訳の現場は病院が多い。
ある日、小児科専門病院へ。申請者はRさん。幼い息子さんのター君を連れてきていた。

医者は尊大な爺さんだった。
「ただの風邪。この程度の病気で連れてきちゃいかんよ」
長い時間待たされて、5分もかからずに診察終了。

Rさんは不安な様子。
「昨日から何回も吐いてる。あんな簡単な診察でいいのか・・・」

こんなヤブ医者、やめとき。ちょっと遠いけど、U子供クリニックに連れていくべきや。
(思わず、言ってしまった・・・)

Rさん、「たいしさんが勧めるなら」と翌日にター君を連れてUクリニックに行くことにした。

翌日。
Rさんとター君のあとに診察室に入っていくと、懐かしいU先生と目が合った。
U先生「あれ? たいしさん・・・???」

今日は手話通訳者として来ました。
「え!? たいしさん、手話通訳者だったの? へー!」

診察修了。
親切で丁寧な診察を受け、Rさんも一安心。

帰ろうとした時、診察室からU先生が出てこられて、
「たいしさん、名刺を数枚、置いていってくれないかな」
名刺・・・
「聾の患者さんが来られた時、助けを求めるかもしれないから」
わかりました。今日は名刺を持っていませんから、明日、持参します。
「ありがとう。仲間の小児科医にも配りたいから、数枚欲しい」
了解です!



わしらの地元では、手話通訳者は名刺を持つことを禁止されている。
「手話通訳者 たいし」という名刺をつくることも禁止。
しかし、U先生から名刺を求められて、ルールを破ることにした。
翌日、早速名刺を作って、持参した。
この時から、「手話通訳者 たいし」という名刺を持ち歩いている。



親友の一言にへこむ

2016-09-22 08:57:37 | 手話
親友のK(ろう者)は優秀な奴で、大企業の中でどんどん出世し、若い頃から遠方に転勤してしまい、数年に1回しか会えない。
だから会える時は嬉しいが、再会すると必ずKが言うセリフに、いつも落ち込む。

「たいし、手話、うまくなったな」

ろう者の視線は鋭い。Kはすぐに気づいて、「たいし、どうした? 腹でも痛いか?」

手話通訳者は、ろう者から「手話がうまい」と言われたらおしまいなんや。

Kは呆れて、「あのなあ、俺たち、何年つきあってるんや。お世辞やおべんちゃら言い合う仲ちゃうやろ。素直に褒めてるんや」



まあ、Kの言う通りやな。素直に喜んでおくか。


U先生のこと

2016-09-21 00:23:41 | 手話
むかし昔そのまた昔、息子がよちよち歩きだった頃、夜、突然発熱。
ぐったりして、息も弱々しい。
「これはいかん!」と近所の子供クリニックへ。
住む場所を決める時、地元で評判のいい「Uこどもクリニックの近く」という条件を最優先したから、クリニックへは徒歩で行ける。
初めて待合室に入った。
壁に貼り紙。
「お子様の急病の際は、診療時間外でも、遠慮なくお電話ください」
素晴らしい・・・

診察室に呼ばれた。
優しい雰囲気のU先生。
恐怖に顔をひきつらせている息子に顔を近づけて、
「あーん、してごらん」
わずかな時間の間に、息子の緊張がとけていった。
素晴らしい・・・

これが「プロ」というものだ。
つくづく、そう思った。

U先生に会うだけで、患者である子供も、その親も安心する。


手話通訳者として、U先生のようにありたい、と思う。
申請者さんが、「たいしに会うだけで」安心する。
そういう手話通訳者になりたいものだ。