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ラスト、コーション

2008-02-18 20:37:26 | 映画2008
 上海の麻雀!といってもペアで切り崩していくゲームではない・・・

 レジスタンスが敵と目される人物を暗殺するといった内容の映画は数多くあるけど、中国映画となるとなかなかお目にかかれない。最近見た映画では『パープル・バタフライ』なんてのがあった。しかし、今作では暗殺のターゲットは同じ中国人イー(トニー・レオン)。戦時下でもあり、日本政府の犬と噂されるほどの人物だが、特務機関の仕事は抗日運動する中国人を捕え葬ることにあった・・・

 “抗日”といっても、戦時下ではどこでも湧きおこる“反戦”と同義だと思う。列強の帝国主義による中国分割の時代からずっと虐げられる生活が続いていたと想像できるだけに、常に被占領の意識があったことでしょう。それでも直接侵略軍とゲリラ戦を行うのではなく、自国内の裏切り者を暗殺するという、どちらかというと愛国右翼的な行動のような雰囲気でした。

 とにかく標的はイー一人。香港の大学で知り合った6人の劇団員は稚拙ながらもチアチー(タン・ウェイ)を上流夫人に仕立て上げて、慎重で隙がない彼に近づいてゆく。やがて愛人になれそうな雰囲気になったとき、性体験がないと不自然なため仲間うちで無理矢理セックスしてしまう。信条のためとはいえ、ここまで機械的に女スパイに徹する若者たちに悲しくなってしまう。ただ、計画前の劇団公演における「中国を滅ぼすな」コールで気分高揚してしまったので、こんな悲しさもすんなり受け入れられた・・・

 R18指定だけあって激しいセックス描写。男の愛欲も真剣であるはずなのに、殺せるほどの隙がない。チアチーがフックにかかっている拳銃を見つける。イーはその彼女の表情をチラリと見る。するとチアチーは枕でイーの目を隠す・・・このときすでに殺害を諦めていたのか、愛し始めていたのか・・・などと、ベッドシーンにおける心理のやりとりも見どころのひとつ。

 アン・リー監督は何度も登場する麻雀シーンにこだわったと答えていたけど、切り返しという点ではさほどのアイデアもなかったような。日本では11PMでの実況中継や、『麻雀放浪記』といった撮り方に工夫した映像があるためかもしれない。そういえば、タン・ウェイの腋毛も印象的ですが、『麻雀放浪記』の加賀まり子もフサフサだったような記憶がある・・・けど、確信はもてない。

 わかりやすく完成度も高い作品だった。しかし、イーとチアチーが宝石店で顔を見合わせたシーンはなぜか唐突感が残ってしまいました。それまでに仲間の姿を確認していたけど、どこで決断したのか・・・表情だけでは読み取れなかった。

★★★★・

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18 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
思ったよりも・・・ (kisen)
2008-02-19 09:23:43
夢中で見てしまいました。

kossyさん、こんにちは。

上映時間も長かったし、なんとなく「飽きずに見れるかな~」って自信がなかったのですが、いやいや、なかなかおもしろかったです。

話題の性描写は、あまりにアクロバティックで全然いやらしさがなかったですね。男性のみなさんはどう思われたのでしょうか?

しかし、強い意志があるにせよ、一介の女学生がああもすきのない上流婦人になりきれるものでしょうか?

相手は海千山千のご夫婦。ちょっとした話題を振られても、そつなく答えを返すことがそうそうできたのでしょうか・・・。まぁ、少々とんちんかんなことを答えても、若いからと夫人も大目に見たのかものしれませんが・・・。

kossyさんもおっしゃっているように、ラスト近くの宝石店は唐突でしたね。あれだけ露骨に仲間があちこち立っているのに、用心深いイーがなぜ気づかないか・・・。その前に、あんな目立つプレゼントを贈るだろうか・・・とかね、考え始めると不思議なことがたくさんあるような気もしますが、そこはやはり人間なのでしょうね。

最後の最後に「女」に戻ってしまったタンが悲しかったですね。これは「シュリ」を見たときも、「プロのアサシンが、なんでそんな簡単に普通の女の子になるのよ!何のための訓練?」って思ったものですが、今回の場合は、もともと素人ですから仕方がありませんね。

それにしても、非情な世界に生きつづけたトニー、つらかったでしょうね・・・。
kossyさん☆ (mig)
2008-02-19 22:44:56
kossyさんも高評価ですね~♪

わたしこの映画は気にいりました
ブロークバックマウンテンよりも断然良かったです。
既に今年のベスト3に入るスタンバイです(笑)

マグノリアおじさん(笑)はいまひとつでしたね~
宝石 (kossy)
2008-02-20 17:00:22
>kisen様
俺もこの長尺にはついていけるか心配だったのですが、全く眠気を感じることなく・・・それだけ演出力が優れていたんでしょうね~

性描写は現実の戦争とかけ離れたところに存在しているだけに、そうした構成も面白いかな~などと感じています。アクロバティックなカットを強調するのなら、リアルさは要らなかったような気もしますが・・・

素人集団からプロのスパイへ・・・大学時代は未熟さが面白かったし、上海に戻ってからは使命と愛情の狭間で心が揺れるところがよかった。女スパイの悲哀を描いたものは多いけど、最後には女として生きていくほうが魅力的ですよね~

>mig様
俺も「ブロークバック」よりは好きかも。
新人女優だけにあまり多くを望んではいけないのでしょうけど、宝石店のシークエンスが完璧だったら間違いなく満点!

マグノリアは・・・比べちゃいけません(笑)
結構好評価ですね (かめ)
2008-02-21 09:43:05
久々に動く王力宏が見れる!!と思いつつ、内容がどうなんだろうと、躊躇してましたが、行ってくることにしましょう
一番色っぽく感じたのは・・・ (しんちゃん)
2008-02-21 13:41:55
 冒頭の麻雀シーンだったかも・・・

みんなきれいだったもんなぁ・・・

で、誰がヒロインかが分から無かった私(笑)
トニー・レオン (kossy)
2008-02-22 19:47:45
>かめ様
ヴェネチア映画祭で大絶賛なのも納得の出来。
俺も観る前は眠くなる映画だと思っていたのに、違ってました。R18なんて考えないほうがいいのかもしれませんね。

>しんちゃん様
もしかしてチャイナドレスフェチですか~?

俺も同じく最初の麻雀では誰がヒロインかわかりませんでした。トニー・レオンに目くばせするまでは・・・
久々に (RIN)
2008-02-24 20:24:28
TB飛ばさせていただきましたっ!(敬礼!)

>誰がヒロインかわかりませんでした。トニー・レオンに目くばせするまでは・・・

監督演出の思う壺なんじゃないですか?(笑)
私は、誰がトニーさんの奥さんなんだろう?と探してました。(苦笑)

>どちらかというと愛国右翼的な行動
アン・リー監督自体、台湾というびみょーな国の方ですから、
こういう同国人同士の愛国右翼的行動に対して、非常にいたたまれない思いがつよいんじゃないでしょーか。
宝石店はイマイチの盛り上がりでしたね。原作はあそこがクライマックスなんだけど
映画では料亭がクライマックスになってた気がします。

>するとチアチーは枕でイーの目を隠す・・・
この後トニーさんが見せた恐怖心が凄かったですね。
恐怖心を共有する関係・・・でお互い惹かれあったのかもしれないです。


思うつぼ (kossy)
2008-02-25 22:24:37
>RIN様
思うつぼだったのかぁ~~(汗)
いや、それでもいいんです。観客を騙そうという意図にもすんなり引っかかることが多い俺ですので・・・

中国史はすでにおぼろげながら覚えてる程度なのですが、台湾は抗日派ではなく親日派ですよね?たぶん、アン・リーとしても微妙な立場。日本の描写にしても一歩引いて描いたという雰囲気があったように思います。

男女の恋愛と暗殺の挟間で心理的な駆け引きは面白かったです。そうかぁ~恐怖心を共有!なかなかそこまでは読めません・・・RIN姐さん、さすが。
我愛人 (エージ)
2008-03-06 00:33:12
妖女は男を狂わせ、ダイヤは女性を狂わせる。
アン・リー監督のジャンルの広さには驚かされます。しかもどのシーンも格調高いです。
ただ「恋人達の食卓」の頃まであったほのぼの感も好きなんですよね。
百戦錬磨のトニーレオンと戦い抜いた新人のタン・ウェイの鬼気迫る演技にはヒース・レジャーの影が・・・でもコン・リーの様になってほしい。
アン・リーもリドリー・スコットもタバコのシーンにこだわってますね。現代への皮肉かも。
アンリー (kossy)
2008-03-18 12:30:06
>エージ様
アン・リー監督のジャンルの広さ。ほんと、知らないで観たら彼の作品だとは思わなかったくらいです。
かくいう俺は、かつてはアン・リーを女性だと思い込んでいた映画音痴でした・・・・汗

ヒース・レジャーもつい思い出してしまいましたが、新人のタン・ウェイには今後の活躍に期待したいですね。

そういや、鬱陶しいほどタバコばかり吸ってましたなぁ。

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