徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

短刀拵

2010-10-10 13:12:16 | 拵工作
漆黒の短刀拵が完成!

年末にご依頼いただいていた短刀の拵が完成しました。
ご依頼時の拵えは、江戸時代後期の以下の拵えでした。
非常に状態が良く、鞘には目はじき仕上げの螺鈿塗りが施されており、江戸時代の高度な工芸技術を見ることができます。刀装具も一作の物が用いられています。







ご依頼により、居合の添え差しとしてお使いになるために、当該拵えを製作したわけですが・・・。
当該拵えは、実は数ヶ月前に一度は完成していました。

しかしながら、鞘の塗りがイマイチ気に入らず、何度も塗師に塗り替えを依頼する結果となってしまいました。
当初、鞘の裏面(体と接する側)及び栗型周辺の部分と、帯刀した時に鞘の見える部分との塗り方に工夫を持たせて、微妙に違う塗り方をしてもらったのですが、出来上がった鞘を見てみると見方によっては塗り斑のように見えてしまいました。
気になって気になってしょうがなく、改めて全面同じ塗り方に変えてもらったところ…。
仕上がった鞘を手に取ると、今度はノッペラとして強弱感がなくなった様な気がしてしまい、結局元の塗りに戻してもらうという職人泣かせな指示を自ら行ってしましました。

実に長い時間をかけて製作しましたが、一度「完成」と決めてしまうと手がつけられなくなってしまうので、納得いくまで手元に置かせていただいた次第です。毎回お待たせしてしまい申し訳ございません。

主な特徴は、なんと言っても全身黒尽くめの拵ということ!以前製作した寸延短刀拵と同様の作りこみです。
荒石目鞘の鯉口、栗型、コジリには水牛の角を用い、鞘の形状は腰に長時間指しても疲れないように形状を表裏で違う形に加工しました。
また、日々の使用を考え、鯉口が滑らない様に通常よりも鯉口を硬く作るなど、鞘の随所に特別な加工を施してあります。
柄は、オーナー様の手のサイズに合わせた加工と、刀身とのストーリー性を持たせた目抜を選択し、依頼通りの仕上がりに完成しました。



後は、納品を待つばかり!
この瞬間が一番の楽しみであり、悲しみでもあります。

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (SASURA)
2011-05-30 15:40:10
すばらしいですねえ!
ああ、プロの仕事!
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コメントの御礼 (拵師)
2011-05-31 13:07:33
SASURAさん、ありがとうございます。
納得のいく拵えを作るには、とても時間がかかります。
この拵えも非常に時間がかかったので、私自身お気に入りの一振りです。
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Unknown (sasura)
2011-06-03 11:54:54
参考にお聞きしたいのですが、どのくらい時間がかかるものなのですか?
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拵え工作の時間 (拵師)
2011-06-03 23:05:17
sasuraさん、こんにちは!

拵え製作に要する時間は、約3ヶ月です。
材料の下ごしらえまでを含めると、実に10年以上かかります。

この拵えの場合の詳細は、ザッと以下のような感じです(1日の仕事時間を、8時間とします)。

・下地(ホウの木)の選別(使用するまで材料は約10年間乾燥させます)

・下地の加工(1日~)

・鮫皮の選別&加工(2日~)

・柄糸の染色(2日~)

・柄巻きの準備&柄巻き(1日~)

・角(鯉口、栗型、コジリ)の加工(1日~)

・鞘の塗装(数ヶ月)

鞘の漆塗り以外は、拵師の仕事です。
拵師の手による部分は、最短1週間ということになりますが、一日に出来る仕事量は集中力や仕事の準備、後片付けなどを差っぴくと、さほど多くの仕事がこなせるわけではありません。

ご参考になりましたでしょうか?
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拵師さま (sasura)
2011-06-06 19:48:30
早々にして丁寧なるご返答、誠にありがとうございました。
鯉口、栗型、コジリの加工に1日とは!
さすがでございます。
また、こうでないと採算も合わないのでしょうね。
私ら素人はいたずらに時間ばかりかけすぎるクセがある・・・工夫がない。
新たな御作品の発表を楽しみにお待ちしております。
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鯉口、栗型、コジリの加工 (拵師)
2011-06-08 20:22:11
たびたび、すみません。

鯉口、栗型、コジリの加工ですが、実際には事前に大体の形に水牛の角を加工しておきます。
また、非常に繊細な作業になりますので、集中力が持って1時間くらいなので、仕事をこなす時間が8時間ぐらいと考えると、8日間かかることもあります。
ぶっ続けでこなせれば、仕事も速くなるのでしょうが、なかなか厳しいものがあります。

採算が合わないという意味では、刀剣工作はどの工程においても採算が合わないと思います(笑)。
好きじゃないと続かない、それが伝統工芸の世界かもしれませんね。
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