徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

特殊加工の長寸柄

2013-05-15 18:40:19 | 拵工作
拵一式の新規作成にてお預り中のお刀の柄巻きを終え、柄前が先に完成しました!



このお刀は、大小拵のご依頼にて以前に制作した脇差と対になるお刀です。
脇差拵完成時の投稿は、こちら!→「大小拵(脇差し)」(2012/12/04)

柄糸の色は、脇差の柄糸を染色した際に一緒に染めていたため、大小で同じ色に仕上げています。(時期を変えて染色をすると、どうしても微妙な色の違いがでてしまうため。)
巻き方も、脇差と同じ片摘み巻きを施しました。
違いは、先にお納めしている脇差の柄糸より若干幅の広い柄糸を用いていること。これにより、大小で合わせた時にバランスを強調できるように計算しています。



茎(ナカゴ)が極端に短いため、ジョイントを内蔵した柄前になります。


合成写真によるイメージ図

刀装具(縁頭、目貫)は、全て江戸時代の物をご用意いたしました。鍔はご指定の品。
武道家の中には、現代製の鋳物金具を大切にされている方もいますが、現代鋳物を用いた拵えは、どうしても刀剣の品格を下げます。
昨今の傾向として、高望みをしなければ現代鋳物とほぼ同価格帯で、時代金具が手に入ります。

これから拵えをお作りになる方は、ぜひ江戸時代の金具をお使いになることを選択肢にお加えになってみてはいかがでしょうか?

一尺柄拵の下地

2013-05-10 01:57:03 | 拵工作
制作中の拵え下地です(栗型、コジリ未着手)。
こちらのブログで途中経過を掲載することは稀ですが、この段階で記録を残しておきたいと思い立ち、アップいたします。



この拵え下地をご覧になって、皆様はどのようにお感じになりますでしょうか?
刀身は2尺2寸、茎(なかご)が極端に短く、柄に収まる部分は14cm程しかありません。

ご依頼内容は、1尺近い柄前を作ると言うもので、強度と安全性を考えると脇差の柄前よりも一回り短いくらいのものしか作ることができません。しかも、武道にお使いになるということで、安全性を考えると随所に補強を施さなければなりません。





このような継ぎ茎(ナカゴ)を柄下地の中に埋め込むことで、極端に短い茎(ナカゴ)を柄の内側から補強する技法を用います。



↑このような状態で柄の中で固定されます!

やけに柄前が長く、バランス的に不自然な拵えになるため、どのような用途に使用されるのか皆目見当が付きません。そこで、あらゆる用途に対応できるよう鞘下地も次のように補強しました。
一応私自身、剣道・居合・抜刀では指導的立場にあるため、一般的な流派の特徴・刀の操作法・このみ?は理解しているつもりです(これがわからないと仕事になりません)が、今回のご依頼は飛び抜けて特殊な部類に入ります。





鯉口周辺の刃方には、唐木継ぎ手技法を用いることで、鞘の耐久性を補強しました。



最後に鯉口金具を作り、水牛の角では実現できない強固な鯉口の完成です!
更に水牛を用いてもよいのですが、実は逆に鯉口部が弱くなることがあるため、注意が必要です。

拵え工作の途中ですが、ここまでで通常の拵え一式を作るだけの労力を費やしてしまいました。
さすがに、これだけ特殊な刀身にこれだけ特殊な外装の依頼というのは稀ですが、一振り一振り妥協せずにお刀に合った拵えを作らせていただいております。
少しでも、拵工作という伝統工芸にご興味いただけましたら幸いです。

後半戦も、気合を入れて取り掛かりたいと思います。

鯉口の補強

2013-05-06 16:22:58 | 拵工作
居合用に新しい鞘が完成し、手元に届きました。

残念ながら、塗装を安価な塗りで依頼したためか、仕上がりと拵えのバランスが気に入らず、やむなく鯉口金具を新規で制作しました。



刀装具に合わせた金属素材を選択し、板材から切り出して形を整形、ロウ付けをおこなって筒状の金具に仕立てます。
新しい鞘を加工するのは気が引けますが、鯉口周辺の塗装を剥がして下地を鯉口金具がちょうど収まる分、削り込みます。
鯉口金具を装着した後に表面の微調整を行ない、最後に色づけをして完成です。


特殊加工を施した鞘の鯉口を切ったところ

武骨な印象の鞘に生まれ変わりました!