日経新聞は「経済教室」で神戸大学 加護野教授の「顧客創造の原点に戻れ」と題した論文を掲載している。<2009,12,30>
氏は、経営学者、ピーター・ドラッカーの言葉を振り返りながら企業経営を考察。
企業経営のみならず、われわれの経済生活、考え方に大きな示唆を与えるものと思い、ここにその抜粋をメモする。
<利益は後からついてくる>
バブル崩壊以降企業経営者は熱心に利益を追及せざるを得なくなったが、その結果、かえって利益は得られなくなった。利益とは追いかけていくと逃げていく蜃気楼のようなものと思い知らされた経営者も少なくないだろう。良いことをすれば利益は後からついてくるという基本は、ドラッカーを読み直すことで学ぶことができる。
<企業の目的は利益を追及することではない>
利益は、将来への将来への投資の重要な原資である。それだけではない。株主以外の多様な利害関係者への支払義務を果たした後の残余であり、利益が出ているということは支払い義務が果たせていることを意味する。この意味で利益は重要なのである。
しかし、それは企業の目的ではない。
実際に日本を代表する偉大な経営者の多くは、利益よりももっと大切な目的があると言い続けてきた。松下氏の「社会への貢献」稲盛氏の「従業員の物心両面の幸福」など・・・。
<目的は、顧客の創造>
利益より大切な目的は何か。ドラッカー自身は、「企業の目的の定義は一つしかない。それは顧客の創造である」とはっきり述べている。
利益よりも大切な目的があると言い続けた企業家・経営者ほど多くの利益を上げている。利益にとらわれてしまうと見えなくなってしまうものがあるからだ。短期の利益に目を奪われて長期投資や長期の成果に結びつく投資が忘れられてしまうという現象がその典型である。
企業の目的は顧客の創造だというドラッカーの言葉に従えば、不況下でも成長戦略構想できる。成長機会は見つけるものではなく、創造するものだからである。
(2009,12,30記)