Kitten Heart BLOG -Yunaとザスパと時々放浪-

『きとぅん・はーと』でも、小説を公開している創作ファンタジー小説や、普段の日常などの話を書いているザスパサポーターです。

【小説】「パスク、あの場所で待っている」第44話

2020年05月06日 06時48分13秒 | 小説「パスク」(連載中)
「あいつ、しつこいぞ!」
 またもや煙幕に包まれて、嫌気が差してきた。
 煙幕の中から殺気を感じ、振り抜いた。感触が良かったが、なにか違う。
「ちっ。竹か!」
 深い煙に包まれてしまっては、相手を確認できない。それは相手も同じことだが。どのみち、この中で戦うには勝機が見えない。
 むやみに動くだけだと、体力を無駄に使うだけだ。
 まずは、この煙幕から抜け出そうとするが、竹が邪魔をして思うように抜けられない。
「くそっ!」
 追い打ちをかけようと、ミタチアが襲いかかってきた。応戦するも、勢いに負けて押し込まれてしまう。
 押し負けてしまい煙幕の外に出たが、尚も攻撃が続いた。
 これをチャンスと捉え、反撃に出る。状況が逆転され、ミタチアは間合いを空けた。
「随分と息が上がっているな」
 そう言ってみるが、オレも息が上がり呼吸を整える。
「敵を取るまでだ!」
 しかし、また煙幕攻撃をさせるわけにはいかない。なにか良い手がないかと考えた。
「……そうか! コトミの予想通りだったな」
 ミタチアの呼吸が整う前に、一気に間合いを詰めた。
「させるか!」
 発煙弾を投げ込まれたが、発煙する前に走り抜き、振り抜いた。
「くっ……!」
 応戦するも、オレの方が力で押し込む。そのまま打ち合いになり、ミタチアは後退していく。
 オレは休むことなく、攻め続けた。
 ミタチアの振る力が弱くなるのを感じ、体力が無くなってきたのがよく分かる。
「ちくしょう!」
 再び間合いを空けて、荒い呼吸を続けた。
「そんなに、焦らなくても勝負は決めてやるよ」
 オレも体力を消費してきたが、全力で地面を蹴り、ミタチアに詰めた。煙幕を張られて、一気に視界が暗くなった。
 そして、衝撃音が聞こえた。
「そこか!」
 愛剣を音の方へ、力一杯に振り抜いた——。

 風が弱く、竹林の葉がこすれ合う音が、時折微かに聞こえる。
 煙もなかなか晴れないが、次第に薄くなってきた。
 そして、土壁を背にしたミタチア。その首元ギリギリに刃があり、足下にはミタチアの剣が落ちていた。
「勝負あったな!」
「……うぅ、降参だ!」
 その言葉を聞くと、愛剣を鞘にしまった。
「どんなに煙幕を張っても、後ろに建物があれば進行方向は限られる」
 これだけの大きな庭園、ひとつくらい休憩所があってもおかしくない。
 木々の間から見えた休憩所。ここの外壁の角になっているところに追い込み、相手の行き先を限定させた。
 コトミが言うように、甘いものを食べながら、この庭園を眺めたくなるな。

「テオに会ったら、よろしくな!」
 ミタチアに別れを告げると、庭園を後にして、このまま北を目指すことにした。
 コトミが寄ってこないところをみると、交代したのだろう。
 どこかで甘いものでも、食べているのか。
 コトミには、なにかと助けられている気がする。


≪ 第43話-[目次]-第45話 ≫
------------------------------

↓今後の展開に期待を込めて!
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« GLITTER | トップ | 【小説】「パスク、あの場所... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ひな)
2020-05-06 16:50:45
yunaさん、こんにちは!
パスクの続きを楽しみに待ってました!
yunaさんの書くファンタジーが大好きです。
スピード感があり、その中に優しい感じがします。
キャラクターも様々で惹き付けられます!
今後の展開も楽しみに待ってます。
いつかyunaさんのお話が紙媒体で読めればなぁって思っちゃいます。
これからも応援してます!
Unknown (yuna mee)
2020-05-06 21:03:35
ひなさん、いつもコメントありがとうございます。

パスクも読んでいただき、ありがとうございます。
その当たりは意識して書いています。
応援していだき、これからも来ていただけると幸いです。

コメントを投稿