棋楽庵の九州将棋ふまわり日記

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■「由太郎ノート-早咲将棋に学ぶ!NO.3」(第45回しんぶん赤旗全国将棋大会大分県大会観戦記)

2008年01月19日 | ◆由太郎ノート
★「由太郎ノート-早咲将棋に学ぶ!NO.3」
 (第45回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会観戦記<A級予選リーグ3回戦>:
  平成19年9月16日)


[観戦記:山 由太郎]

※筆者については予選リーグ1回戦の観戦記で詳しく紹介しています。



<予選リーグ3回戦>
▲江田慶一郎
△早咲誠和

=第1譜=


▲7六歩  △3四歩  
▲2六歩(途中図) 
      △9四歩  
▲2五歩  △9五歩(第1図)

[観戦中]
 「ついに、江田さんか。この将棋は
おもしろくなりそうだ。一手損か
な」。

 ▲7六歩△3四歩▲2六歩 「う
ん、一手損だな。」。△9四歩「あれ
れ、もしかして」。▲2五歩△9五歩
「さて、どう指すかな。」

[解説]
 「一手損かな」と書いたのは「一手
損角換わりかな」の意味。4手目で△
3二金ならば、その可能性が高かった
でしょう。第1図は、プロ間では平成
17年から出現し、タイトル戦にも現
れた形。いかにも、「なんでもあり」
の現代っぽい将棋です。後手側の主張
は先手が▲2四歩と簡単には交換で出
来ないことと、後の進行で9筋の位が
大きいというもの。「後の進行ってど
こまで読んでいるんだ?」という感じ
ですが、プロには見えているのでしょ
う。

 ということで、アマチュアにはかな
りの有段者向けの戦法と言えそうで
す。先を見通す力もないのにこの戦法
を使うとかなりの高確率で怪我をする
でしょう。ちなみに僕は使えません。
ただ、上手からやられるとかなり嫌な
戦法ではあります。気づくと「うっ」
っとなっていることが多いですね。
(苦笑)

 そういうこともあり、今回は裏切り
というわけではないですが、少し江田
さんの応援をしたくもなりました。
(笑)



=第2譜=


▲6八玉  △4二飛  
▲7八玉  △6二玉  
▲4八銀  △7二玉  
▲5六歩  △8二玉  
▲5七銀  △7二銀  
▲6六銀(第2図)

[観戦中]
 ▲6八玉「無難」。△4二飛▲7八
玉△6二玉▲4八銀△7二玉▲5六歩
△8二玉▲5七銀△7二銀「さすが
に、交換はしてこないか」。▲6六銀
「は~なるほど。・・・採用」。

[解説]
 第1図からは、アマチュアがまず疑
問に思う▲2四歩。他には▲7八金、
▲6八玉、▲4八銀が考えられそうで
す。要は、いきなり仕掛けるか自陣に
手をかけるかということです。プロの
傾向から行くと、▲2四歩は皆無。▲
7八金をよくみるといった感じです。

 定跡講座ではないので、この理由に
ついては省きますが、「▲2四歩が皆
無」というのは個人的には少々疑問で
はあります。▲6八玉は「まずは王様
固めましょうよ」という手です。

 「交換」というのは「後手側からの
角交換」のことです。一手損するた
め、指しにくいですが、先手がその一
手をどう活かすかというのは難しい問
題だと思います。無理に戦いを起こし
たら、それこそ、9筋の位が活きてき
そうです。基本的に後手は千日手OK
ですから。「採用」というのは「次か
ら僕がパクろう」という意味です。
(笑)

 最近は王様を固める将棋に凝ってい
るため、なんとかして穴熊に組みたい
のです。▲6六銀はその僕の希望を叶
えてくれるものでした。



=第3譜=


      △3三角  
▲7七角  △5二金左 
▲8八玉  △2二飛  
▲6八角  △4二銀  
▲9八香  △5四歩  
▲9九玉  △5三銀  
▲8八銀  △6四歩  
▲5九金右 △7四歩  
▲7九金  △6三金  
▲6九金右 △6五歩  
▲7七銀引 △6四銀  
▲2六飛  △4四角  
▲4六飛  △8四歩  
▲3六歩(第3図)

[観戦中]
 △3三角「さて。銀をどう使うか、
飛車、角の配置、……う~ん、さすが
にもぐられるよな。どこでポイントを
……。う~ん」。

 ▲7七角△5二金左▲8八玉△2二
飛「は~、△2二飛。なるほど」。▲
6八角△4二銀▲9八香△5四歩▲9
九玉△5三銀▲8八銀△6四歩▲5九
金右△7四歩▲7九金△6三金▲6九
金右△6五歩▲7七銀引△6四銀「吐
き気がする、固すぎだろ」。

 ▲2六飛「嫌な手」。△4四角「う
~ん」。▲4六飛「さすがに、こっち
か、いや~、でも、嫌だな~四枚だも
んな」。△8四歩▲3六歩「桂馬か、
さて、どうしよう」

[解説]
 今まで、後手は▲2四歩には角交換
して△2二飛があったため、2筋を受
けずにいましたが、▲6六銀で角交換
ができなくなったので、△3三角は一
手当てるだけならそんな難しいことで
はありません。しかし、その後の展開
が難しい。

 先手はおそらく穴熊に組むつもり、
後手は美濃囲いと囲いは決めているの
で、堅さでは劣ります。つまり、何か
他の場所で得をもとめなくては不利に
陥ってしまいます。展開が難しいとい
うのはその得をどのように得るのかが
難しいということです。

 9筋の位はたしかに大きい。しか
し、それだけで十分か?おそらく、十
分ではないでしょう。「銀をどう使う
か」というのは後手の△3一の銀のこ
と。本来の四間飛車の通り進めると、
3二~4三でしょうが、どうも不満で
す。

 不満というのは、先手が▲6六銀型
の穴熊に組めることです。現在の四間
飛車は藤井システムもありますが、穴
熊に組ませるにしても居飛車側に▲6
六歩を強制します。▲6六銀と▲6六
歩の形は果てしなく大きいのです。で
きれば、銀は中央にもっていきたい。
また、角の配置も難しい。筋としては
5一~7三のような使い方。しかし、
それでよくなるのか。と「う~ん」の
間にいろいろなことを考えるわけで
す。

 考えている中、早咲さんの指し手は
△2二飛。指された瞬間「なるほど」
と思いました。さっき、僕が思考の中
で、「囲い以外で有利な場所を得た
い」「銀は中央に使いたい」と書きま
したが、△2二飛は僕の思考の全てを
叶えてくれます。

 まず、△4二の飛車がいなくなった
ことで、△3一の銀が4二~5三~6
四と中央に使えますし、7三までもっ
ていき、穴熊の堅さにも対抗できそう
です。

 また、手順を進めてみると、これ
は、コーヤン流に似た形。しかも、△
4四~4五歩を省けています。コーヤ
ン流で、振り飛車が穴熊に対し戦える
ことは知られていますし、△4四~4
五歩を省けているので、駒組み勝ちが
望めそうです。

 さて、ここで話はそれますが、「四
段の人はどれくらい手を読んでいるの
か」ということに自分なりの解答を示
しましょう。解答は今回の場合だと
「ゼロ手です」。「上記で思考を披露
してるじゃないか」と言う方がいるか
もしれませんが、確かに、読みはして
ますが、意味のない読みなんです。別
に、相手の手全てを当てなきゃ読みと
は言わないといっているのではありま
せん。方向性があった読みをしようと
いうことです。

 今回の方向性というのは銀を中央に
使い駒組勝ちをするといった感じでし
ょうか。確かに、僕は、その目標を目
指し、考えてはいますが、実現はでき
ていません。まったく、意味のない思
考なんです。

 「どれくらい手を読んでいるか」と
下手の人から聞かれることがあります
が、これが結構難題なのです。質問す
る側は「駒を進める=読む」と思って
聞いているのでしょうが、こちらは
「方向性のあった読み=読み」と考え
ているわけですから。

 さて、「方向性」ってなんでわかる
のでしょう。今回の読みは「銀を中央
に使い駒組勝ちをする」という方向性
が「正しい」という前提の下行われて
います。なぜ、正しいのか。おそらく
これは誰も証明はできないことだと
思っています。結果論でしかわからな
いことでしょう。

 結果が出てないのになぜ、結果論か
ということですが、こういう方向性を
知るために、棋譜並べや、強い人の将
棋を観戦するわけです。つまり、結果
論というのは未来の結果ではなく過去
の結果からくるものです。当然、過去
のものですから覆ることもあるわけで
すが、ほとんどの場合あってると思っ
ています。僕が、早咲さんの棋譜採り
をする最大の理由はここにあるので
す。読みの方向性を学び、自分の読み
を「ゼロ手から1手にする」。

 さて、話を実戦に戻しましょう。
「吐き気がする、固すぎだろ」と思っ
たのは四枚穴熊のことです。僕は早咲
さん側から将棋を見てますからどうし
てもそう思ってしまいます。

 ▲2六飛「嫌な手」。というのは、
もう基本的に穴熊は戦いにしてしまえ
ばなんとかなるのです。戦いになって
負けたら相手が強すぎたみたいな感覚
です。▲2六飛は戦いを起こそうとし
ている手なので嫌な手ということで
す。そして、▲3六歩は▲2九の桂馬
を使おうという手、さてどうします
か。



=第4譜=


      △7三銀引 
▲8六銀  △4二飛  
▲2四歩  △同 歩  
▲7八金右 △8五歩  
▲7七銀引 △5三角  
▲3五歩  △同 歩  
▲2六飛  △2二飛  
▲3七桂  △4四角  
▲5七角  △5五歩  
▲同 歩  △5八歩(第4図)

[解説]
 どうも、ここから何を考えていたの
か忘れてしまったので、[解説]のみ
にします。

 △7三銀引は後手がやりたかった手
です。盤上この一手のようです。僕は
△7三桂なども読んでいたため、まだ
感覚が追いついていませんでした。

 江田さんは▲8六銀。これは、次に
▲7七角とぶつける狙いです。そして
早咲さんは△4二飛。一秒も読んでな
い手でした。でも、見ればみるほどい
い手のような気がします。▲4六飛が
狭いために▲7七角とぶつけにくくし
ています。こういう、自分からは動か
ずに相手にプレッシャーを与える手と
いうのを会得したものです。

 ▲7八金右△8五歩▲7七銀引△5
三角。「自分からは動かずに相手にプ
レッシャーを与える手」第2弾といっ
たところでしょうか。

 しかし、早咲さんは無理やり相手を
動かすのがうまいのです。▲3五歩△
同歩▲2六飛△2二飛▲3七桂△4四
角▲5七角△5五歩▲同歩△5八歩。

 相手に動いてもらい駒が入ったとこ
ろで反撃。△5八歩は早咲さんの必勝
パターンのような歩。この歩がと金に
換わり、最後は相手の(桂・香)→金
・銀→王様へと変わっていくのです。

 桂・香を( )に入れたのには理由
があります。基本的には早咲さんのと
金は相手の金銀を狙っているわけです
が、相手が強くなると被害を最小限に
するために桂・香を犠牲にして手をか
せいでくるという意味です。たしか、
アマ名人三度目を獲得した決勝の天野
さんとの将棋がそんな感じだったと思
います。



=最終譜=


▲5四歩  △5九歩成 
▲4六飛  △5二飛  
▲4四飛  △同 歩  
▲4三角  △5一飛  
▲3五角  △3九飛  
▲2四角  △6九と  
▲5一角成 △同 金  
▲3一飛  △6二金上 
▲2一飛成 △5七角  
▲6八銀  △同 と  
▲同金寄  △7九飛成 
▲同 銀  △6八角成 
▲同 銀  △7八金  
▲7七角  △8六歩  
▲8五飛  △8四銀打 
まで、92手で早咲さん勝ち

[解説]
 さて、今回はと金と銀の交換になり
ました。こうなった早咲さんは相手が
神様でも止まりません。最後の△7九
竜~8六歩も鮮やか。△8四銀打を見
て江田さんの投了となりました。

 江田さんの感想戦中の「どっちが穴
熊かわからない」と言った言葉が印象
に残っています。





 

 


◆関連リンク
「由太郎ノート-早咲将棋に学ぶ!NO.1」(第45回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会観戦記<A級予選リーグ1回戦>:平成19年9月16日)
「由太郎ノート-早咲将棋に学ぶ!NO.2」(第45回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会観戦記<A級予選リーグ2回戦>:平成19年9月16日)
「第45回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会」結果-NO.1(平成19年9月16日:大分市「稙田公民館」)
 ・入賞者
 ・A級~C級成績詳細
「第45回しんぶん赤旗全国囲碁・将棋大会大分県大会」結果-NO.2(平成19年9月16日:大分市「稙田公民館」)
 ・改元大会成績詳細
 ・熱戦譜 [A級決勝]▲早咲誠和 対 △泉翔太
 ・ミニミニ写真館




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