神戸の空の下で。~街角の歴史発見~

足かけ8年、150万PV突破。「近畿の史跡めぐり」のサブタイトルも、範囲が広がったために少し変更しました。

大阪・南宗寺(堺市)。

2008年05月21日 | ◆大阪府


龍興山南宗寺

(りゅうこうざん なんしゅうじ)
大阪府堺市堺区南旅篭町3丁1-2



1647(正保4)年に建立された山門である「甘露門」。国の重要文化財に指定されています。


〔宗派〕
臨済宗大徳寺派

〔御本尊〕
釈迦三尊像
(しゃかさんぞんぞう)



 南北朝時代の頃から南朝方の交易港として整備され、室町時代には日明貿易の拠点のひとつとして栄えた港湾都市・。戦国時代には国内に比類なき莫大な経済力を誇る国際自由貿易都市として、イエズス会の宣教師ガスパル・ヴィレラルイス・フロイスらが揃って「東洋のヴェニス」と評するほどの繁栄を見せましたが、織田信長公や豊臣秀吉公などの統治の時代を経て幾度かの兵火に巻き込まれるうちに次第にその輝きを失っていきました。

 今では、長い年月の間に進んだ埋立てや都市開発のために当時の海岸線や町並みはほとんど失われてしまいましたが、そんな中でも当時の繁栄の残り香を湛える史跡がいくつか残されています。堺第一の禅宗寺院として、また茶の湯の道を深める道場として、数多くの武将や茶人に愛された南宗寺もそういった史跡のひとつです。



 
境内最古の建物である坐雲亭(左)と、喜多見若狭守勝重公の位牌堂である夢界堂(右)。


 1526(大永2)年のこと。京都・大徳寺の76世住職を務めていた古嶽宗亘上人が、堺の南ノ庄にあった小さな坊院を訪れて南宗庵と名付けました。ここで古嶽宗亘上人の教えを受け、のちに大徳寺の住職にまでなった大林宗套上人は、1548(天文17)年に亡き師の遺言に従って堺へと戻り、この南宗庵に入りました。その大林宗套上人に帰依していた三好長慶公は、父の菩提を弔うための寺院を建立しようと発願し、1557年(弘治3年)に南宗庵を移転させて大規模な伽藍を整備し、大林宗套上人を開基とする禅刹・南宗寺を創建しました。



 
千利休をはじめとする千家一門の墓(左)と、三好長慶公をはじめとする三好一族の墓(右)。


 南宗寺は1574(天正2)年の松永久秀公による争乱や1615(慶長20)年に起きた大阪夏の陣の戦火に巻き込まれて悉く灰燼に帰してしまいましたが、南宗寺の12世住職を務めていた沢庵宗彭和尚や堺奉行所の喜多見若狭守勝重公が復興に尽力し、1619(元和5)年に無事に現在地に再建されました。その後13世住職となった清巌宗渭和尚は1647(正保4)年に「甘露門」と呼ばれる山門を造営、1652(承応元)年には仏殿の建立に着手するなど伽藍の整備に努めました。現在の境内はこの頃に整えられたといわれています。さきの大戦の際に受けた空襲によって伽藍の一部を焼失してしまいましたが、茶室や方丈は無事再建されました。



 
枯山水の方丈庭園(左)と千利休好みの茶室「実相庵」(右)。


 南宗寺には枯山水の方丈庭園があります。この庭は、戦国時代の武将で茶人としても有名だった古田織部公好みの作風といわれており、1983(昭和58)年に国の名勝庭園に指定されています。その奥には見事な石組みの「曹渓の庭」がありますが、ここに敷き詰められた那智黒石に竹筒を近付けて耳を澄ませると、地中にて水滴が織り成す美しい音色を愉しむことが出来ます。曹渓の庭に隣接して建つのが千利休好みの茶室として1963(昭和38)年に再建された「実相庵」です。



 
東照宮跡碑(左)と、大坂夏の陣で討死した際に葬られた徳川家康公の墓碑だという伝説のある墓石(右)。


 南宗寺には、徳川家康公をめぐる不思議な伝説が残されています。大阪夏の陣の折に真田幸村公の軍勢に本陣近くまで猛烈に攻め込まれた徳川家康公は、大坂方の猛将・後藤又兵衛公の槍に突かれて重症を負い、敗走する途中にこの南宗寺で力尽きて落命したといわれています。この時には側近のごく少数の家臣のみが雨中の境内にて密かに葬儀を行い、小さな墓碑を建てて菩提を弔ったという話も残されています。東照宮跡碑の西にある開山堂跡地に建てられている小さな墓石がその伝説の墓標だといわれていますが、1623(元和9)年に第2代将軍・徳川秀忠公や第3代将軍・徳川家光公がわざわざ南宗寺まで参詣したという史実を聞くと、この伝説を荒唐無稽な話と一笑に付すのではなく、ついつい少し信じてみたい気になってしまいます。



 
国の重要指定文化財に指定された仏殿(左)には御本尊・釈迦三尊像が祀られ、
天井には狩野信政の筆による見事な「八方睨みの龍」(右)が描かれています。




アクセス
・阪堺電気軌道阪堺線「御陵前駅」下車、東へ徒歩5分
 南宗寺地図 Copyright (C) 2000-2008 ZENRIN DataCom CO.,LTD. All Rights Reserved.

拝観料
・大人400円(中高生300円・小学生以下200円)

拝観時間
・9時~16時



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