気まぐれ翻訳帖

ネットでみつけた興味深い文章を翻訳、紹介します。内容はメディア、ジャーナリズム、政治、経済、ユーモアエッセイなど。

アサンジ氏に対する人権侵害の是正を各国団体が国連に要請

2014年10月08日 | 国際政治

ご無沙汰しました。
夏は毎年体調が思わしくなく、今年は涼しかったにもかかわらずやはりダウンしていました。


今回は久々にウィキリークス関連です。

世界各地の団体が連帯して、アサンジ氏に対する人権侵害の是正を求め、国連に文書を提出しました。
それを伝える短い文章で、3ヶ月以上前のものです。

最近は、アサンジ氏を追及しているのが米国防総省や国務省、司法省であることがはっきりとしてくるにつれて、報道のトーンが冷めてきているように感じます。
米国政府の意向にそむくことを恐れて報道を自粛しているのではないかと疑われます。

今回の件が大手メディアで取り上げられたかどうか。少なくとも大きな話題にはなっていないでしょう。

短いものの資料的な意味で誰かが訳しておいた方がいい、「誰もやらないのであれば、しょうがない、自分が」ということで、時間が開いてしまいましたがここにアップする次第です。


タイトルは
59 International Organizations Call Upon UN to Remedy Human Rights Violations in Pre-Charge Detention of Wikileaks Publisher Julian Assange
(ウィキリークスの代表者ジュリアン・アサンジ氏の未起訴の幽閉状態をめぐる人権侵害の是正を世界各地59の諸団体が国連に要請)

原文はこちら
https://wikileaks.org/59-International-Organizations.html

(原文の掲載期日は6月16日でした)


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59 International Organizations Call Upon UN to Remedy Human Rights Violations in Pre-Charge Detention of Wikileaks Publisher Julian Assange??
ウィキリークスの代表者ジュリアン・アサンジ氏の未起訴の幽閉状態をめぐる人権侵害の是正を世界各地59の諸団体が国連に要請



報道関係各位: 2014年6月16日

複数の団体が、ジュリアン・アサンジ氏に対するスウェーデン政府の人権および法的手続き上の侵害を問い、国連の『普遍的・定期的レビュー』のために報告書を提出

… 報告書の詳細は後段のリンクを参照 …


(スイス、ジュネーブ発)
今週日曜の国連会合を目前に、人権団体、公正な裁判を訴える団体、法曹団体など26の国際的な組織、および、南米の33の市民団体が、ウィキリークスの編集代表者ジュリアン・アサンジ氏の基本的人権に対するスウェーデン政府の侵害を非難した。アサンジ氏はスウェーデン当局の調査に由来する幽閉状態に長く置かれているが、同当局はいまだアサンジ氏に罪状を問うていない。この状態のままほぼ4年が経過している。一方、米国の連邦大陪審はウィキリークスとその幹部らに対して刑事訴訟の手続きを進めている。

米国法律家協会(AAJ)、ナショナル・ロイヤーズ・ギルド(NLG)、国際民主法律家協会(IADL)、インド法律家協会、等々、世界各地の法律家の団体に、スウェーデンの2つの団体も加わり、国連に対して2つの報告書を提出した。1つは英語で、もう1つはスペイン語で書かれている。いずれもアサンジ氏に関する法的手続き上のさまざまな権利侵害に光を当てている。これは、スウェーデンの歴史において、未起訴でありながらもっとも長期に自由が奪われた事例である。

また、3つ目の報告書が、「女性グローバル・マーチ」(Marcha Mundial das Mulheres)を初めとする人権擁護団体、報道機関、市民団体、組合等の33の組織によって署名され、国連人権委員会に提出された。同報告書は、「政治犯」であるジュリアン・アサンジ氏の幽閉状態を解くべく事態に介入することを訴えている。

これらの報告書は国連の『普遍的・定期的レビュー(UPR)』に向けて提出された。UPRは国連の人権調査の中核的な制度であり、4年ごとに各国の人権状況を検証している。報告書では、スウェーデンの公判前の法的手続きにおける数々の制度的不備が指摘されている。例えば、いかなる罪も問われていない人物を慣習的に期限未設定、孤立状態もしくは説明なしに拘禁するといったやり方である。

16の組織が署名した上記の英語の報告書によれば、「アサンジ氏の事例を担当する検察官の用いた手法は同氏の基本的人権を明白に侵害している。にもかかわらず、それらは司法審査の対象になっていない」。

2つ目の報告書-----こちらには国際的な人権団体や公正な裁判を求める団体、法曹団体など10の組織が署名している-----では、以下のように書かれている。
「スウェーデン当局は事情聴取のためにアサンジ氏が同国に戻ることを要求しているが …… それは、[米国との関連で同氏の亡命によって付与される保護]に関する固有の権利を放棄することを意味するであろうし、さらには、実質的に、同氏が自身の生命と身体上の健全性を危険にさらすことをも意味する」。

3つ目の報告書はブラジルやアルゼンチン、メキシコ、エクアドルの人権団体、報道機関、市民団体、組合など33の組織によって署名され、国連人権委員会がアサンジ氏の幽閉状態からの即時の解放を求めてスウェーデン当局に働きかけるよう嘆願している。

「国際社会はアサンジ氏に対する恣意的に加工されたさまざまな非難を目にして来ました。これは同氏の評判を損ない、同氏の政治的なふるまいの自由と能力を抑止しようとの試みです。この前代未聞の状況は、スウェーデンで行われたとされる行為の帰結ではなくして、アサンジ氏の報道行為と政治的活動に対抗する、強力な利害関係者らの露骨な政治的干渉によるものであることが判然としています。かかるがゆえに、アサンジ氏は政治犯の資格を得ることとなりました。同氏は現在、なんら罪を問われず、正当な法的手続き上の権利を奪われたまま、実質的に軟禁状態を余儀なくされています」

2014年の6月19日の時点で、アサンジ氏は、ロンドンのエクアドル大使館にこもって2年が経過したことになる(イギリスで活動の自由が制限された状態になってから数えるとほぼ4年である)。同氏は、ウィキリークスの代表者として米国が訴追する動きに関連して政治亡命者の資格を認められている。しかし、スウェーデン政府はアサンジ氏を米国に移送しないと確約することを拒んだ。同国の検察官は予備調査を開始してから4年近くになるが、アサンジ氏に対していかなる罪状も問えていない。また、同氏をロンドンで事情聴取するという選択肢も拒絶している。そのために現在の膠着状態が生じた。検察側にはこれまでアサンジ氏をロンドンで直接もしくは文書、電話、テレビ会議システムなどを介して事情聴取する案が少なくとも4度正式に提示された。これらはいずれも拒否された。この膠着状態のおかげで、英国だけでも1000万ドル以上の費用がかかっている。同国では、エクアドル大使館、そして、アサンジ氏に会うすべての人間を、警察の別働隊が24時間体制で見張っている。


・『普遍的・定期的レビュー(UPR)』に向けた英語の報告書はこちら
(訳注: 原文サイトのHEREの部分をクリックしてください)

・スペイン語の報告書はこちら
(訳注: 原文サイトのHEREの部分をクリックしてください)

・同じく『普遍的・定期的レビュー(UPR)』に向けた、市民団体による提出文書(スペイン語)はこちら
(訳注: 原文サイトのHEREの部分をクリックしてください)


以下に、文書に署名した全組織の名称をかかげる。

1.連帯して英語の報告書に署名した人権団体、公正な裁判を求める団体、法曹団体は以下の通り

・American Association of Jurists(AAJ)(米国法律家協会)

・Arab Lawyers Union(ALU) 

・Association des Avocats Africains Antillais et Autres de France(5AF) 

・Association Droit Solidarite 

・Bangladesh Democratic Lawyers Association 

・CAGECHARTA 2008 

・European Association of Lawyers for Democracy and World Human Rights(ELDH)(民主主義と世界人権のためのヨーロッパ法
律家協会)

・Eva Joly Institute for Justice & Democracy(EJI) 

・Giuristi Democratici Italy(Italian Democratic Lawyers Association) 

・International Association of Democratic Lawyers(IADL)(国際民主法律家協会)

・Indian Association of Lawyers 

・Movimento dos Trabalhadores Rurais sem Terra(MST)(土地なし農村労働者運動)

・National Lawyers Guild(NLG)(ナショナル・ロイヤーズ・ギルド)

・National Union of People’s Lawyers of the Philippines 


2.連帯してスペイン語の報告書に署名した10の人権団体、公正な裁判を求める団体、法曹団体は以下の通り

・ILOCAD 

・Asociacion Latinoamericana de Derecho Penal y Criminologia

・The Center for Justice & Accountability 

・Asociacion Pro Derechos Humanos de Espana 

・Comite de Apoyo al Tibet 

・Fundacion Internacional Baltasar Garzon 

・Instituto Mexicano de Derechos Humanos y Democracia A.C. 

・Colectivo de Abogados "Jose Alvear Restrepo" 

・Vortex 

・Union de Juristas Independientes de Andalucia 


3.連帯してスペイン語の提出文書に署名した33の市民団体は以下の通り

・Articulacao de Empregados Rurais do estado de MG(ADERE-MG)

・Asamblea Nacional de Afectados Ambientales - Mexico 

・Associacao de Radios Publicas do Brasil(ARPUB) 

・Comissao Pastoral da Terra(CPT)  

・Confederacion de Trabajadores de la Economia Popular - Argentina  

・Consulta Popular - Brasil  

・Executiva Nacional dos Estudantes de Biologia(ENEBIO)

・Federacao dos Estudantes de Agronomia do Brasil(FEAB)  

・Fora do Eixo  

・Forum Nacional pela Democratizacao da Comunicacao(FNDC)  
・Frente Popular Dario Santillan(FPDS - Argentina)  

・Fundacion Pueblo Indio del Ecuador  

・Grupo Tortura Nunca Mais - Rio de Janeiro  

・Intersindical Central da Classe Trabalhadora

・Jovenes ante la Emergencia Nacional - Mexico  

・Coletivo Juntos! - Por outro futuro  

・Levante Popular da Juventude  

・Marcha Mundial das Mulheres(MMM)

・Movimento dos Atingidos por Barragens(MAB)

・Movimento Nacional de Radios Comunitarias(MNRC)

・Movimento de Mulheres Camponesas(MMC)  

・Movimento dos Pequenos Agricultores(MPA)

・Movimento dos Trabalhadores Rurais Sem Terra(MST)(土地なし農村労働者運動)

・Movimiento de Liberacion Nacional - Mexico  

・Movimiento de Trabajadores Excluidos - Argentina

・Organizacion de Solidaridad de los Pueblos de Africa, Asia
y America Latina(OSPAAAL)

・Pastoral da Juventude Rural(PJR)

・Red Nacional Communia  

・Rede Ecumenica da Juventude(REJU)

・Uniao Nacional dos Estudantes(UNE)

・Uniao da Juventude Socialista(UJS)  

・Uniao da Juventude Rebeliao(UJR)  

・Sindicato Unificado dos Petroleiros de Sao Paulo


問い合わせ先: アンディ・ステパニアン 
631.291.3010 andy@fitzgibbonmedia.com


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[その他の訳注と補足など]

■組織・団体名は、ネットで検索しても日本語の定訳がほとんど見つかりませんでした。
少数の例外を除いてやむを得ず原語のままです。

また、その正確な表記については原文サイトで確認してください。
テキスト形式でコピーしているために表記が正確に反映されていません。


■訳文中の
「さらには、実質的に、同氏が自身の生命と身体上の健全性を危険にさらすことをも意味する」
の「身体上の健全性を危険にさらす」は、もちろん「拷問を受ける」の意でしょう。



今回の件を理解するのに役立つ文章を以前のブログで訳出しています。
特に
・スウェーデン政府が米国からの圧力に弱いこと
・ウィキリークスを圧殺する動きは米国防総省が発端であるように思われること
について興味深い記述があります。
こちらもぜひ一読を。

気まぐれ翻訳帖・ウィキリークス壊滅作戦?
http://cocologshu.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-ba4d.html


また、アサンジ氏追及がジャーナリズムその他におよぼす影響については、

マイケル・ムーア、オリバー・ストーン両監督による声明
http://cocologshu.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-925b.html

など。

その他、ウィキリークスをめぐるメディアの偏向報道については以前のブログで何度も取り上げています。時間のある方はぜひお読みください。



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