Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

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アタリショックならぬiPhoneショック? 焦る後続

2009-08-22 21:15:18 | Thinkings

 かつて、アメリカで発売されたコンシューマーゲーム機に、アタリ社の「Atari 2600」というものがありました。ファミコンより前に発売されたそれは、先進的なROMカセットによるゲーム供給プラットフォームの先駆けであり、コンシューマーゲーム機でありながら内部仕様を広く公開したオープンプラットフォーム環境として自由なサードパーティの参入を許していました。

 Atari 2600は大いに売れ、巨大な市場を形成しましたが、1982年の年末商戦を境に急速な市場の崩壊が始まりました。この現象には諸説ありますが、日本における一般的な認識では、オープンプラットフォームによる自由な参入によって市場に出回るゲームの質が著しく下落したため消費者のゲーム離れがおき、在庫を抱える事になった小売店は大幅なディスカウントを余儀なくされました。それによって新製品の定価が割高となり、ますます市場規模の縮小が加速・・・というスパイラルが起きた、とされています。これを俗に「アタリショック」と呼んでいます。
 1983年に日本発売されたファミコンは、サードパーティの参入を許す際に、アタリショックの二の足を踏まないよう、ランセンスとチェック体制を大幅に強化したことは有名な話です。

 さて、この任天堂が行ったライセンス制度はPCゲーム以外のほぼすべてのハードウェアに継承され、今に至ります。今のところ、PCでゲームを自由に開発・販売できる環境はありません。(XBOX360、PC-FXには一般向けに開発環境が公開されています)

 この動きはiPhoneも同様で、開発は割と自由に出来るものの、販売・配布はアップルのチェックを受け、iTunesを通して行う必要があるなど大きく制限されています。しかしながら、そのような統制下にあるにもかかわらず、今、iPhone向けのソフトウェア市場はアタリショックの再来のような状況にさらされています。決してアプリ離れが進んでいるというわけではないのですが、ソフトウェアの規模が小さい・・・つまりカジュアルゲームやアプリが多いために高い値段を付けられず、そのような低価格路線のソフトウェアが多いため、ある程度規模が大きなソフトでも割高感から価格を下げざるを得ず、結果的に99セント(105円)のアプリが大量に市場を埋め尽くす→利益が出ないという悪循環に陥っているのです。

 「携帯向けアプリでは利益が出ない」という構図をiPhoneが作ってしまうと、困るのは当然後続のプラットフォーマー。具体的にはAndroidを抱えるGoogleと、Windows phoneを擁するマイクロソフトです。

MSよりモバイルアプリ開発者へ「1ドル売りで妥協するな」 engadget

 「値段を決めるのは開発者です。しかし1ドル売りではなく、もっと開発者が稼げるようしっかり促進したいと考えています」とコメントするのは同社モバイル・デベロッパー・エクスペリエンス・チームのLoke Uei氏。「99セントのアプリというのは確かに興味を惹くものです。ユーザは99セントなら買いたがるでしょう。でも99セントですよ......あなたのアプリはそれ以上の価値があるはずです」さすが世界最大のソフトウェア企業、言うことが違います。「1ドルアプリは売るな」なんて本を書いて欲しいところです。

と言うわけで、マイクロソフトもこのようなキャンペーンを打たずにはおられないほど焦っていると言うことでしょう。市場形成前から萎縮が約束されているなんて笑い話にも鳴りませんからね。そのようなイメージを脱却するのに必死というわけです。

 正直な話、携帯電話というプラットフォームの性質上、価格の下落というのは仕方ないと思うのですよ。ライトゲームが多いわけですから、むしろ無料で無くて良かったね、という話だと思うのです。日本の携帯市場だとGREEの躍進が記憶に新しいですしね。しかしながら、この状況が続くのは、今後のモバイルプラットフォーム全体としては非常にマズイ状況だと言うことは間違いないでしょう。
 アップルはすでに手の打ち方を誤ってしまいましたので、マイクロソフトやGoogle、そして、携帯電話外部のモバイルプラットフォーマーである任天堂やソニーに期待・・・するしかないんでしょうかねー。



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