goo blog サービス終了のお知らせ 

Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

あらた(2733)株主総会

2011年06月28日 | 銘柄研究
 あらた(2733)の株主総会に参加する。本社は千葉県にあるが株主総会は丸ビル7階ホールで開催。近いんで行くことにする。珍しい名前の会社だが、この会社の存在を知ったのは最近だ。しかし、実は社歴は結構長い。あらたは日用品雑貨卸売業を主とした企業で売上高だけで見ると6千億円、経常利益で42億円、従業員3000人もおり、肌で感じる存在感と比較すると大きい。取り扱っているのは化粧品、洗剤、家庭用品、紙・衛生用品、ペット・その他となっている。取引先の小売業としてはやはりドラッグストアが多いが、ツルハ、DCMジャパン、ライフ、オークワ、イオングループ、キリン堂、ニッショードラッグ、スギ薬局、サンドラッグなどである。ビジネスは全国展開しており、6か所の大規模物流センターを持っている。時価総額も一応140億円ある。しかし株価は100円台でなんか丸ビルで株主総会やる会社とのイメージのギャップがある。



 開始前に受付に行くと隣で冷たいお茶をサービスしていた。その時は喉が渇いていたので助かった。会場は個人株主というよりも背広を着た人たちが多く、なんか取引先の人達なんじゃないかという錯覚も。開会とともに社長のあいさつと監査役報告、ビデオプレゼン、社長の中期計画の説明と粛々と進む。社長が質問はありますかと尋ねても、誰からも質問がなかった。なんか異様に静かだ。女性株主もほとんどいない。説明は結構は可もなく不可もなかったが、中期計画の社長の説明は丁寧だった。今期業績予想は横ばいだが、これは岩盤の予想で勿論それより上を狙っているとの説明がある。議案説明が終了まで40分近く費やす。議決は3分で終了。お土産を貰うが、後で見たらハンカチ2枚セット。節電の夏にはありがたい。(上の写真)
 それにしてもなにんとも気の抜けた総会というべきか緊張感があまりなかった。というか、あまりにも静かなんで少し不気味だった。今の時期、最もやりたくない職業と言えば、やはり東電の会長だろう。それと比べると天国ですなあらたの総会は。



 株価はご覧のとおりで今年の3月に東証2部上場を達成。これも知らなかったんだが、平成14年4月から店頭登録されており、平成16年12月にはジャスダック上場となった。結構前からいたんだけど気づかんかった。予想PER10倍、PBR0.31倍、配当利回り3.84%、時価総額は144億円となっている。RoEは直近業績で2.2%、RoAは0.52%、自己資本比率は23.8%。まあ、商社だからね。超小型株という訳でもなく、バリュエーションも安いのだが、存在感のなさはぴか一だったりする。絶対水準の株価レベルとみると過小評価されているようにも見えるが、商社・卸売セクターで考えると実際には割安とは..........言えるような言えないような。なんでだろう。



 あらたの社歴を追うとその理由が納得できる。当社はダイカ、伊藤伊、サンビックの3社が株式移転により設立された会社で、その後徳倉が合流、新生あらたとなったのち平成17年には木曽清と合併した。上の図には載っていないが、細かいのも含めると合併・統合の歴史によって現在の業容になっている。こうしてみると意外にアグレッシブに動いている。もとになった3社の内、伊藤伊というのは名前だけ知っていた。後は聞いたこともない。やはり卸売業というのは裏方なんで、知っている人は少ないよね。それにしても売上高6千億円もあるんだからもう少し存在感があってもいいんじゃないかという疑問があるが、その一つの理由は業績にあるのかもしれない。下の図に営業利益・経常利益の過去4年間の推移を見てみる。これで見ると営業利益が恒常的に赤字になっている。実はグラフでは2007年3月期までだが、2005年3月期から赤字だ。前々期から黒字になっているとは言え、水準ははっきり言ってトントンに近い。一方で経常利益水準はどうかと言えば、さかのぼれる限り(2003年3月期)から赤字になったことはない。



 この仕入割引というのは掛けで買った商品代金の債務を期日前に支払うことで仕入代金を割引くことを指す。何やらリベートに似ているが、リベートは仕入割戻といい、販売奨励金などが該当する。会計の専門家ではないので厳密な定義はご勘弁いただきたいが、仕入割引は期日決済前の債務支払いに対して金利分を割引く行為を指す。企業が商品を買うと大抵の場合は約束手形を振り出す。約束手形は支払期日が決められていることからその間の金利分を含めて約束手形の金額は決められている。決済日前に支払えば、当然その分を割引いてもらうということだ。一方のリベートは一定量以上の商品購入等に対して報奨金を支払うという意味合いがあり、似ていて非なるものと考えられている。仕入割引とリベートの違いは損益計算書に現れる。仕入割戻(リベート)の場合にはリベートを雑収入や営業外収益に計上せず、仕入高を控除することから営業外にならない。一方、仕入割引は営業外収益に計上することになる。リベートが発生しているであろうビックカメラやヤマダ電機などの有価証券報告書を見てみたが、注記も見つからなかった。すでに仕入高を調整しているのかもしれない。但し、ヤマダ電機の有報では仕入割引は営業外に計上されていた。まあ、なんかよく分かりませんな。間違ってないと思うけど、間違ってたらごめん。

 とにかく、卸売業者である当社は商社としての金融機能もあるわけで、扱い高が大きい分、仕入割引は恒常的に大きな額がでると考えるのが妥当だ。したがって、営業赤字がずっと続いているのは確かに見栄えが悪いものの、ビジネスのトータルのパフォーマンスという観点からすれば経常利益で判断するのが正しいだろう。とは言いながら、じゃあ営業利益は赤字でもいいんだということにはならない。過去にさかのぼれば経常利益が最高益を記録した2004年3月期には営業利益は12億94百万円(経常利益は80億円)だった。しかも当時の売上は4205億円と現在よりも2000億円近くも売上が小さかった。当時の仕入割引は34億円と6億円も少なかった。売上高とある程度連動するのでそうなるのだが、やはりトータルのパフォーマンスという点で考えても現在の利益水準は改善の途上であると考えるべきだろう。



 当然、会社側もそれは理解しているようで、中期計画では経常利益をまず元に戻すことを念頭においていると思われる。その計画の概要だが、(1)間接業務の拠点集約、業務の見直し、人員の削減 (2)物流拠点の統廃合、グループ共同配送などの施策を実施するとしている。間接部門の合理化で4.8億円のプラス、物流拠点の見直しで変動費率0.1ポイントの改善(コスト面では6億円程度カット) それらに加えて売上高を新規に481億円増収をめざすことで3年後の営業利益を37億円のプラス、経常利益を80億円にするとしている。コスト面の施策だけを考えれば実現可能性が高いようにも聞こえる。しかし、問題は売り上げの増収だが、これは正直どうなるか予想がつかない。売上が伸びなくても増益になりそうなんだが、果たしてどうなるであろうか。

web拍手 by FC2
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

角川グループホールディングス(9477)株主総会

2011年06月27日 | 銘柄研究
 株主総会と言えば総会集中日にやる会社が多いが、中にはわざとずらしてくれる会社もある。角川もその一つだ。土曜日開催の企業というのは珍しい。中にはカブドットコム証券のように日曜開催という企業もある。平日にしかも集中日にやる会社というのはある意味、意図的・確信犯的でうるさそうな株主がなるべくこないようにしているような気がするが、実際には平日にくる株主はお土産目当てのリタイア層か、普段偉そうにしている経営者をいびってうさを晴らそうとする不心得者が多かったりする。むしろ、土曜・日曜に来てくれる株主は平日は働いているサラリーマンなどが主体で企業についてちゃんと理解している株主が多かったりする。企業はむしろそういうまじめで真摯な態度の株主に向けて総会を運営すべきではないのか。



 総会は25日土曜10時、東京会館「ローズルーム」で開催。東京会館は何回も行っているので勝手知ったる場所だが、いつもは有楽町駅から地上を歩いて行っていたが、地下で直結していることを今回初めて知った。案内図にはB5出口からと書いてあるが、それだと一度地上に出て東京会館の入り口まで歩く必要がある。実はB4出口で隣の国際ビルヂングの地下に入ると東京会館の地下と直結している。こんな裏技があった。雨が降っているときは東京会館から全く地上に出ずに地下鉄の乗り場まで行ける。うむむ、東京の地下は奥が深い。

 土曜日ということもあって、さすがに結構な株主が来ていた。株主総会後に角川の新作映画「日輪の遺産」の上映試写会があり、希望する株主は観ることができる(先着順)。また、総会終了後に軽食付きの懇親会(東京商工会議所8F)がある。映画も懇親会も興味がないので私はスキップした。人数は盛況だが、このうち何人の株主が映画につられたのか、軽食につられたのかはわからないが、まあそれでも人気なのは確かだ。受付と同時にお土産をもらう。(上の写真) 角川の新作文庫本2冊が入っていた。ハルヒグッズでも貰えるのかと思っていたが、やはり株主の年齢層を考慮して無難な文庫本になったのだろうか。世界的に人気といってもさすがに60代、70代のシニアに「ハルヒ」や「らきすた」は分からんだろう。でも、本好きの人にはたまらんお土産かもしれない。席に着くと隣の株主が早速お土産の文庫本を熱心に読んでいる。会場を見まわしてみると似たような行動をとっている人が多い。単に暇つぶしに読んでいる人もいるかもしれないが、本が好きで角川の株主になったという人も恐らく結構いるだろう。そういう意味でユーザー兼株主の為に土曜開催というのは正解だと思う。貰ったお土産を自分がどうするかと言えば、日本が誇る世界最古の長編小説である源氏物語を読んで知識を深めるのがいいとは分かっているが、なんとなくそのうちブックオフに行ってしまいそうだ。

 総会開会とともに議長挨拶、節電の為に空調の温度を上げていることと、クールビズの為、ネクタイ不着用とわざわざ説明。他の総会ではここは耐震性ですという説明はあったが、こういう説明はなかった。ちょっとだけ好印象。議事進行も何気にうまい。事業報告は20分のビデオを流すが、さすがに映画会社だけあってうまい。悪そうな所は控えめに、良いところは大きく強調。まあ、大抵の株主は騙されますな。いや、終わった期は業績いいんで騙してはいないけど、悪いときにはさらに効果あるビデオプレゼンだ。続いて質疑応答に移る。業績好調でかつ株価も上昇しているせいなのかもしれないが、質問もまともでまじめなものが多かった。



 業績は悪くない。というか上場来最高の当期純利益とRoEを達成。株価も上のグラフを見てもらえばわかるとおり、業績の上方修正とドワンゴとの資本提携により株価が上昇していることから悪くない水準だといえる。予想PER10.6倍、PBR0.95倍、RoE 9.1%とバリュエーションも悪くない。つまり文句のつけようのない水準だ。でも、それじゃつまらないのでなんとか粗捜ししてみる(?)。

 ・その1 セグメント情報の廃止



問題と考えられるのはセグメント情報の廃止するとした今期からの情報開示体制だ。セグメントが廃止された理由は会社側によれば、構造改革として実施した、角川書店+角川映画、角川マーケティング+角川SSコミュニケーションズ、エンターブレイン+角川マガジンズ、アスキーメディアワークス+魔法のiらんど、角川コンテンツゲート+ワーズギアのそれぞれの傘下企業の合併によりメディアミックス戦略を進化させることでセグメントが一つになったというのがその理由だ。これはどういう意味かと言えば、例えば「涼宮ハルヒ」というコンテンツでいえば、小説・映画・アニメ・ゲーム・グッズとメディアミックス、要するにクロスマーケティングによってコンテンツ毎の収益最大化を目指しており、映画単体、出版単体というセグメントが尺度として機能しないという主張だ。それはそれでわかるのだが、ではコンテンツ毎の収益開示をするかといえば、しないようだ。コンテンツ自体、年によってボラティリティがあることから、ハルヒだあれば100億円の年もあれば1千万円の時もあるといったように開示にふさわしいかという指摘もある。ただ、だからと言ってセグメントは単一になりましたというのはいささか乱暴ではないか。例えば、アニメと純文学は違うジャンルだし、売上が1000億円を超える大企業でセグメントひとつというのもやはり納得しかねる。因みにバンダイナムコは仮面ライダー、パワーレンジャー、プリキュア、ガンダムなどのコンテンツ毎の売上開示をしている。

 ・その2 サイクル的なピーク?



 角川のプレゼン資料を見ていたらやはり気になったのはヒットのサイクルに左右されるということだ。過去最高益を更新したということで過去のトレンドを見てほしいとおもったんだろうが、こうしてみるとヒット作に恵まれるか、そうでないかで業績が大きく変動するコンテンツ企業の宿命をグラフから読み取ることしかできない。ビジネスモデルの再構築でコンテンツを活用しながら、安定した利益を出すコンテンツと成長を加速させるコンテンツの創造というのが目指すところなんだろうが、いまだその体制にはなっていない。例えばバンダイナムコとの比較で言えば仮面ライダー、ガンダムシリーズなどのすでに30年以上経過している定番コンテンツを保有しており、それが収益の安定に貢献する要素となっている。30年とまでいかないが、プリキュアシリーズ、ワンピースなど長寿になる可能性のある有力コンテンツを保有しているが、角川にはそれがまだない。上のグラフを見ても「リング」「らせん」のヒットした1999年から「着信アリ」がでる2003年まで業績は不振だった。角川にはユーザーを引き付ける長寿コンテンツがいまだ足りない。

 ・その3 商品の陳腐化?


 「らきすた」「涼宮ハルヒ」が定番商品になるかは今の段階では不透明だが、ピーター・ドラッカーの解説本を出している会社にしてはそれを読みこなしていないような気もする。仮面ライダーやガンダムの派生商品がでることはある。例えばガンダムふりかけとか、仮面ライダーウォッチとかでるが、必ずしもコンテンツ保有の企業が商品化するわけでない。人気にあやかりたい他社がライセンスフィーを払って商品化するケースが多い。でも、いくら人気だからとって「ハルヒの英単語」というのは少し笑った。あやかれるものなら学習教材でもというところか。確立したブランドをどう成長させていくのか、どのような方向付けをしていくのかということが、長寿コンテンツになるかどうかの分岐点だと思うが。とりあえず、ドラッガーの解説本をだしている角川には馬の耳に念仏だとは思うけれど、彼の著書「マネジメント」の本から引用すればこれが最も適切な表現だろう。

「イノベーションの戦略の一歩は、古いもの、死につつあるもの、陳腐化したものを計画的かつ体系的に捨てることである。」

 株主のくせにケチばかりつけているが、常に投資先を批判的(かつ客観的・冷静)に分析するのが投資の王道だと思っているのでこんな偏屈な見方しかできない。



web拍手 by FC2
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

サトー(6287)株主総会

2011年06月25日 | 銘柄研究
 場所は東京ミッドタウン ミッドタウン・イーストのホールAで開催。10時スタート。大江戸線から直結と書いてあるので行くと、六本木駅だけ他の大江戸線の駅と異なってなんかおしゃれな作りになっている。六本木はハイソすぎていかないなあ。住みたい街ではないな。会場は結構広い場所を押さえているものの、参加者はまばら。会場入り口ではサトーの製品が展示されていて係員が待機している。近づくと説明をしてくれる。結構親切だな。会場手前でお土産を配っていて見てみるととらやのようかんとボールペンが入っている。ようかんはともかく、ボールペンをいれてくるあたり気配りが細かい。会場は机があってメモが取りやすいようになっている。大企業では株主が多すぎてこういうことはできない。さらに机の上にはミネラルウォーターのボトルがそれぞれの席においてある。フリードリンクコーナーよりもこっちの方が好きだ。なかなか気配りしているじゃないか。お土産の袋にアンケート用紙が入っていて、帰り際にアンケートを渡すと図書カードが貰える仕組みになっている。つまり書かないと貰えない。考えてるじゃないか。



 開始とともに社長の業績報告。スライドを使いながら説明していく。プレゼンはうまいとは言えないが、ポイントは押さえているので悪くない。説明の後で質疑応答。結構まともな質問が多かった。というより、普段会えない偉い人をいびる機会だと思っているような意地悪な株主はいなかった。素直に会社のことを知ろうとする真摯な態度の株主が多かった印象がある。質疑応答で気になったものとして、今期の業績予想(営業利益48億円)と中期計画(来期が最終年度)の予想(60億円)にかい離がありすぎるという指摘だ。実は同じような質問が異なる2人の株主から質問されたが、社長の答えは中期計画の売上はともかく、マージンに関しては達成していくという意気込みが示されたが、あまり納得はできなかった。総会終了後に事業に関する質問会があり、そこでもさらに質問されると思ったのだが、用事があるので参加しなかった。そこで明らかになったのだろうか。



 株価のパフォーマンスは横ばいが続いている。バリュエーションは予想PERで13.9倍、連結PBRで0.96倍、配当利回り3.25%、時価総額は333億円。バリュエーションは安い。「バーコードのサトー」というのが有名だが、バーコードを利用するアプリケーションは幅広く、製造業、非製造業を問わず多くの業種で利用されており、物流には欠かせないものとなっている。業績は堅調と言いたいところだが、はっきりいって回復途上がせいぜいか。


 売上高は直近業績で見ると8年3月期をピークに減少しており、営業利益は2009年3月期に景気後退の影響と為替の影響で大幅な減益となった。当期利益のグラフを載せていないが、2010年3月期の税引き後利益は35%の大幅な減益となった。減益の理由は23億円の特別損失を計上した厚生年金基金脱退拠出金23億円が大きく影響している。この脱退拠出金が何故損失になるのかということだが、サトーはサラリーマンの上乗せ年金である厚生年金基金を単独で設立せずに総合型基金と呼ばれる年金に加入していた。年金関係に詳しくないと分からないので少しだけ説明すると、年金は基礎年金、厚生年金という2階構造になっており、さらにそれに企業独自が上乗せして年金を支給する厚生年金基金というのがある。厚生年金と厚生年金基金は別ものなので間際らしく年金システムが理解されない一つの要因となっている。つまり、企業に勤めるサラリーマンの場合、年金は3階建てになっている。

 但し、零細企業はないと思っていい。大企業の場合、単独で厚生年金基金を設立するケースが多い(例えばNEC、ソニー、東芝などは自社の年金基金がある)、一方で中堅・中小の場合には規模が小さいので掛け金が少ないので有効なポートフォリオを作ることができない。十分に分散されたポートフォリオを構築する場合にはやはり100億円以上の資金が望ましい。そこで複数の企業で基金を作る。総合型基金というのがそれだ。サトーは総合型から脱退するために23億円の手切れ金を支払ったということだ。どうしてこんなことが起こるかと言えば、それは加入していた総合型基金の年金設計が甘いからだ。企業年金というのは国の年金と違って世代間扶養という思想がない。従業員と企業が年金の掛け金を半分ずつ負担して、リタイアしたら年金を払う。だからちゃんと制度設計していれば、企業年金は破たんしないようになっている。

 一方で企業年金の掛け金はどうやって決められるかと言えば、従業員・企業の支払う掛け金額と支払うまでの運用利回りを加えた予想される金額を割引いて決める。例えば、年金基金に100万円の資産があり、運用収益が年間10%で回る場合と年間1%しか回らない場合、20年後の資産総額は大きく異なる。高い利回りで運用できるなら従業員・企業の支払う掛け金は少なくても資産は大きくなる。一方、運用収益が低いと予想される場合、掛け金を大きくしないと予定された年金額を支給できない。企業が負担する分はコストであるから、当然損益に反映される。運用収益が低いと掛け金が大きくなり困る企業経営者は多い。従って総合型のような中堅・中小企業の集まる年金基金は運用収益は高くなると「信じて」掛け金を低くする(予想運用利回りは逆に高い)。ところが現実が後から追ってきて、実際の年金資産は予定を大きく下回る。この場合には何が起こるかと言えば、不足分を企業から徴収する。一度で済めば御の字だが、掛け金を低くしたまま、また時間がたつと再度、現実が追ってくる。不足分の徴収->時間の経過->不足分の徴収...........予定利率を改定しない限り永遠に繰り返す。では変更したらどうか。業績が苦しくてこれ以上、掛け金を増やせない。人員削減も限界だ。...ではしばらく今の予定利率で様子を見ましょうということになり、また地獄がめぐるまでの煉獄の日々を過ごす。企業年金の問題とは簡単にいえばこんな感じ。なお、大企業の単独型の年金はそのようなことはないかと言えば、そうでもない。実際、NTTの年金訴訟に見られるように、にっちもさっちもいかなくなって最後に年金減額となってしまうのは年金の設計に無理があり、それを是正しなかったツケが回ってきた証拠だ。サトーの場合、このまま今の総合型基金に加入し続けていると企業業績に多大な影響を被ると判断してペナルティを払ってでも脱退を決断したようだ。ペナルティすらも払えず、相場の上昇を祈り続ける中堅・中小の経営者は多いだろう。今後、年金受給者が増加して、いきなり業績下方修正という企業が出てくる可能性は高い。

 あんまり関係ない話を続けるのもあれなんで、もとに戻すと、サトーは大企業ではないが、結構グローバルに事業を展開していて海外子会社は30社ある。セグメントで見ると国内売上が76%、海外が24%となっている。



 投資家としては海外の展開に期待したいところだが、これがうまくいっていない。終わった期でみれば、米州、欧州、アジアの売り上げは60億円前後とほとんど同じような売上になっているが、セグメント利益でみると米州が1.25億円、欧州が▲2.9億円、アジアが5.0億円となっている。海外の利益がどの程度の水準で推移しているのか、サトーのプレゼン資料から抜粋しようと思ったら、アナリスト説明会は開いているようだが、プレゼン資料アップロードされてなく、かろうじてアナリスト協会での説明要旨(文章)だけがアップされていた。いかんな。過去の投資家への説明資料はアーカイブすべきだろう。ないので短信ベースで作ってみた。


 短信から単に数字を抜いただけだが、地域別のセグメント利益を見ると終わった期では米州以外は改善している。特に国内とアジアでのマージンの回復と欧州の損失の縮小が見られている。これだけで見るとよくやったと言いたいところだが、もう少し時系列でみた場合、違う風景が見えてくる。例えば、利益面で言えば国内の2007年3月期の営業利益は53億72百万円だった。(比較対象として2007年3月を選んでいるのは直近の利益のピークだから) しかも売上は2010年3月期も2007年3月期もほぼ同じ。即ち、利益率が落ちている。しかも大幅に。海外で言えば、同じく北米の2007年3月期の利益率は6.34億円。欧州は問題含みで儲かっていた2007年3月期の段階でさえ、営業損失が1.73億円。また海外の売上を見ると同じ期間での比較では北米が94億円から61.9億円、欧州が108億円から62億円と両地域とも売上を大きく下げている。海外事業は固定費を回収するためにはやはりある程度の売上を確保しなくてはならず、今後も不採算受注を回避しながら売上の拡大といったかなり難しい目標に挑戦しなくてはならない。

 今期の予想はともかく、やはり来期の計画(営業利益60億円)の達成は無理なんじゃないかと思うが。どうなんだろう。今回の議案書に関しては特に問題がありそうなものはなかったのだが、少し気になったのは社外取締役の選任案に関してだ。社外取締役は5名いるが、5年以上就任している人が4名いる。取締役会の牽制機能が期待される社外取締役で長期にわたり役職についているのはいささか疑問だ。大学教授の小野隆彦氏が12年、鈴木賢氏が9年、弁護士の山田秀雄氏が7年、よくテレビに出ている大学教授の田中優子氏が7年。5年以上も社外取締役に就任しているとすでに社内といっていいほどの長さではないのか? という感想を持った。


web拍手 by FC2
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ソフトクリエイト(3371)株主総会

2011年06月23日 | 銘柄研究
 ソフトクリエイト(3371)の株主総会に出席。会場は九段下ホテルグランドパレス。最初は双日の総会に出ようかと思ったが、メジャー企業だと会場がお土産目当ての株主で芋を洗う状態になってうざいんでそれは避けた。静かな雰囲気(閑古鳥が鳴いているとも言う)で総会に出たいと考えた。半蔵門線で降りて7番出口を探すと出口が6番までしかない。あれれ。後で分かったが、東西線の7番出口らしい。ということで少し迷う。



 株価はまずまず堅調だ。上場から見ると右肩上がりにはなっている。今年の2月14日には1405円の上場来高値を付けたが、その後調整現在に至る。予想PER9.6倍、PBR1.23倍、配当利回り3.5%。優待で株数によってクオカードがもらえるので実質配当はもう少し高い。単位株である100株投資では4.38%、500株だと3.86%、1000株なら3.77%なる。時価総額51億円の小型株で機関投資家はまず買わないだろう。総会は予想した通り、こじんまりしている。でも良い点は机があり、そこでメモが取れる。開始とともに社長の開会のあいさつ。社長が若い。会長の息子か?事業報告はビデオによるプレゼン。まあ、悪くないんだが、バンダイの時みたいなわかりやすさははなかった。やはりコンテンツ企業との差は大きいか。

 10分程度で説明が終わり、質疑応答。最初に立った株主が「3つ質問があります」。ここでもか......予想した通り前置きが長く、いったい何を質問したいのかよく分からない。なにやら不満げの様子で、大阪でIRしたときにいいと思って買って知り合いにも勧めた。2月から株価が下がっている。なんだ高値掴みをしたってことか。聞いていると関西なまりがある。大阪からわざわざ来たのか? いったいいくらでどのくらい買ったんだ。あまり長いので社長に制されてとりあえず1問目は事なきをえる。2番目の質問もよく分からない。ブローカーの推奨される銘柄になるくらい一生懸命やれという話。いやあんたに言われなくても。3番目は傑作で、今年の上場記念配を気にしていて来年には減配になるではないか。優待のクオカードやめて減配するなという話。社長は個人株主を増やしたいので優待はやめるつもりはありませんと答えると会場から拍手がわく。零細個人投資家をなめるなよ。クオカード欲しさで投資しているおバカな個人投資家は多いんだぞ。って、俺か? 



 高値をつかんで損しているその人には悪いけど、そんなに問題があるのか? 上場来かのチャートを見ると上昇しているし、高値つけたのは今年の2月だ。自分が投資して損がでると買ってから半年でも文句いわなくちゃならんのか? あんまり見てない銘柄だったんで、その時はそんなに悪いのかと思った。家に帰りチェックすると昨年度に減益になって回復途上。バリュエーションは悪くないし、週足、月足の長期のチャートでみるとかろうじて右肩上がりになっている。自分のコストはいくらかチェックすると900円だった。なんだ儲かっているじゃないか。ところでいつ買ったんだっけ? うむむ。思い出せん。関連ニュースを検索すると今年の2月21日に株式の売り出しをしている。東証一部昇格に伴う株主数を確保するために一族の資産管理会社が売り出したと思うが、売り出し価格が1242円。もしかしたら、これかもしれない。今日の株価と比較すると8%程度下がっているが、そんなに怒ることか? 優待のクオカードをやめるというよりも保有している自己株式の償却をして1株当たりの純資産を高めたらどうか。そちらの方が長期的に株主にプラスだろう。総会のお土産は皮肉にもクオカード2000円。事業説明会がこの後あったのだが、冒頭の株主の活躍が期待されることから説明会はスキップした。



 業績は回復している。当社の事業内容はECサイト構築のパッケージソフトであるecbeingの販売などが42%、システムインテグレーション事業24%、物品販売で33%となっている。利益構成で見るとECソリューションが957百万円に対してシステムインテグレーションが673百万円。機器販売はサービスなのでマージンはほとんどない。過去の業績はずっと右肩上がりといいたいとろだが、前々期に減益に陥る。インターネット通販の特価COMの業績悪化と事業譲渡の影響が大きかったと考えられる。その後はハード販売から撤退してパッケージソフト、SIに集中することで成長軌道に再び乗ることができたと考えられる。マージン率を比較すればecblingが27.4%、システムインテグレーションが33.2%、システムインテグレーションの方がマージン率が高いものの成長率や売り上げ規模を考慮すればECサイト構築事業がコアの事業であるといえる。



 そのコアのECサイト構築事業だが、導入実績のある企業は550社に上り、結構大手のサイトにも導入されている。やはり使い勝手の良いパッケージがあれば、一から作る特命受注だとコストが高くなることから人気だと言える。要はコストパフォーマンスの良さが決め手になるわけだ。



 ではどの程度市場占有率があるのかを見たのが下の図だ。会社側の説明によればパッケージ市場の4割を占めている。確かに大手なんだが、それではECサイト構築市場そのものの市場はどうなんだろうかという疑問がわく。とりあえず調べてみると矢野経済研究所からレポートが出ている。興味深いのは全体の市場はパッケージ市場の3.7倍あり、コストが安いといってもパッケージソフトでなく、ソフト会社に外注する企業がまだ沢山あるということだ。またパッケージソフトを導入するよりも安価で受注している中小ソフト会社の存在があるのかもしれない。導入企業の一覧を見ても結構大手の名前があるが、そのような大手ならサイトにかける予算が結構大きくなるのでパッケージソフト導入のインセンティブが働くかもしれない。一方で低予算でサイト運営を強いられている中小企業はやはり低予算で受注するソフト会社に発注しているとも考えられる。どちらにせよ、ユーザーをいかにパッケージに呼び込むかが今後の成長率を予想するうえで重要だろう。



 最後にバランスシートだが、極めて健全だ。借金ゼロ。自己資本比率66.8%、ROE13.1%、とりたてて問題になるような点はない。因みに発行済株式の7%当たる自己株式を所有している。キャッシュリッチな会社なんだから消却してほしい。


web拍手 by FC2
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

NEC(6701)株主総会

2011年06月22日 | 銘柄研究
NECの株主総会に初参加。私を含めて99%位のNEC株主は多分こう思っているだろう。「何故、こうなった......... !?」 NECといえば一昔前はエレクトロニクス業界で飛ぶ鳥を落とす勢いであった。メモリ分野、通信機器、パソコンなど最先端を行っているというイメージがあり、株価もプレミアムがついていた。今はみる影もない状態で株価の下落によって100円台の株に。なんかシステム障害を懲りずに何回も起こしたどこかの金融機関に似ている。個人的には私はNECのことを「エレクトロニクス業界のみずほ」と呼んでいる。



 どうしてそんな株を保有しているか? 何故ならNECパソコンのユーザーだから。NECのパソコンはパソコン黎明期から付き合っているので思い入れがないわけではない。これまでパソコンは20台以上乗り換えてきたが、そのうち4割近くはNEC製パソコンだったと思う。とはいっても昔は常に最先端のとがった機種を出してきたのに、最近は微妙な機種しか出てこない。ノートPCを最近買い換えたが、NEC製を選んだ。実は最初はパフォーマンスの良い機種を探すとDELL、HP、富士通とかNECが引っかからない。インテルの第二世代であるSandyBridgeが発表されて、早速2630QM搭載製品が発表されているのにかかわらず、NECからでてきたのは2620M。ん..............微妙。富士通にするかと思い、いろいろ検討するとFHD(フルHD)じゃない、DELL、HPはSSD+HDの構成が選べない。リビングで使用するのでグラボが刺さっているとうるさいのでグラボなしを探すと対象とならない。しかし、NECはCPUは微妙だが、FHDで内蔵グラフィックでSSD+HDが選択できる。但し、SSDの容量は62GB。......................微妙。CドライブにはOSだけ入れとけということだろうが、それにしても容量がしょぼい。というわけで(?)NECの春モデルを購入した。まあ、それだけの理由で株式を購入したわけではないが、NECという会社、実に微妙な企業だ。(因みに夏モデルで2630QM搭載モデルを発売。要するにグローバルな台数シェアが小さいのでインテルから優先供給して貰えなかったと考えるのが妥当か?)



 株主総会は22日午前10時、ザ・プリンスパークタワー東京地下2階今コンベンションホールで開催。場所も微妙だなあ。まあ、本社の近くなんだから仕方ないけれど、微妙に遠いというか近いというか。都内に長く住んでいるけれど都営三田線なんかほとんど利用しないよね。乗り継ぎにとまどい開始5分前に会場につく。入場受付前でいきなりお土産を配っている。大抵総会終了後に渡すもんだと思っていたので少しだけ驚き。とにかく受付を済ませようと並ぶとなにやら、何人かお土産の袋を持った人が帰っていく。あれれ.....総会まだ始まってませんよ...。議決権行使書をお土産引換券と勘違いしている人もいるんだなあ。それとも総会前にお土産を配るのでNECで貰って別の株主総会に参加するとか。総会開始とともに議長あいさつ、社長の業績説明に入る。エレクトロニクスの大手だからプレゼンテーションも凝ったものにと思ったが、棒読みとまではいかないが事業報告書をなぞるような社長の説明にいささか失望。まだバンダイナムコのの方がわかりやすかった。しかも簡潔・明瞭・要領よくというには程遠く、言っていることがあまりよくわからない。しいて言えば「言語明瞭意味不明」といったところか。社長の説明は30分間続く。バンダイナムコはビデオプレゼンが10分程度であったが、長さは3分の1だが、理解しやすさは3倍だ。

 説明が終わると質疑応答に入る。事前に文書で質問してきた株主がいたらしく、最初にその回答をする。ところが、質問の概要を簡単に触れるだけで実際にどんな質問をしてきたのか説明しないものだから、答えもこれまた当たり障りのない回答で実際に何を質問されて、どう回答したのかわからない。要するに「のれんに腕押し、ぬかに釘」状態。長文の質問をすべて紹介する必要はないが、質問内容をはしょりすぎてないか。続いて直接の質問に入り、最初の株主が「NECはいろいろな製品を展開しているのはわかるがどの製品のシェアが高く、そのうちどの製品が売れれば大きくもうかるとかそういうイメージがない。その辺を説明してほしい」といきなり核心をつく質問。答えを期待したが、これもよくわからない答え。自分の会社のことを理解してないのではないか? 2番目の人は1人一問、簡潔にお願いしますと言われているにも関わらず、「質問が2つあります」 ああ、株主もやはり微妙だなあ。しかも質問が長い。要するに経営陣批判だけど。ようやく質問が終わったと思うと、「2番目の質問ですが...」 我慢も限界なんで退出。



 業績も少しだけレビューしてみるとこれがまたよくわからない。というよりわからなくしているんじゃないかと作為的なものまで感じてしまう。上図を見てもらうと理解できるようにNECの売上は大きく減少している。2008年3月期が載っていないが、その時の売上高は4兆6172億円。因みにさらに前年の2007年3月が4兆6千526億円と年を追うごとに売上が減少している。無論、理由はあるのだが、終わった期の業績では震災でも有名になったルネサスを非連結化したことで4千億円程度の売上の減少になっている。会社側の説明によればルネサスの入っていた「その他」部門での売り上げは6614億円から2447億円と4167億円減少している。



 上図は「その他」部門の過去3年の業績推移を表しており、前年度はルネサスと統合する前のNECエレクトロニクスの業績を含む。旧NECエレクトロニクスは2010年3月期ベースで売上高4519億円、営業損失492億円とまさにNECのお荷物だった。民生用LSIで1614億円、震災で脚光を浴びた自動車用マイコンで1491億円。切り離しが本当に良かったのかは時間が証明するだろう。むしろ、ユーザーの細かい注文を採算度外視で作っていたことにメスを入れられなかったNEC経営陣に問題があるような気もする。世界シェア4割と謳ってもコスト度外視で作っているから新規参入がなかったということのような気もするが。因みに2011年3月期は当期損失こそ1千億円を超える赤字だが、営業利益145億円の黒字に転換。2010年3月期に2社合算ベースで1133億円の赤字が1200億円以上改善した。仮にNECに捨てられた旧NECエレクトロニクスの人達の怒りが原動力になってえらく儲かる会社に変身したら、これはまさに歴史の皮肉というしかないだろう。



 とはいったものの、旧NECエレクトロニクスがお荷物であったことは厳然たる事実。非連結化前の2010年3月期で営業損失492億円。さらにその前の年は664億円の損失。このまま抱え続けたら親までこけると考えるのもごく自然の成り行きであることも確かだった。しかしながらNECの問題点を挙げるとすれば、半導体事業の赤字もさることながら、儲かる事業があまりないということが問題だ。



 NECのセグメントは上図の通りだが、「その他」のセグメントを除く5つのセグメントの内、利益の出ているのは4セグメント。最も利益の高いのがキャリアネットワーク事業の6.7%、最も低いのはプラットフォーム事業の2.4%。4つのセグメントの合計の売上高は2兆1042億円、全売り上げの67.5%を占めている。営業利益率は4.06%。これを高いとみるか低いとみるとか意見の分かれるところだが、突出してマージンの高いセグメントがないというのも事実だろう。当社はその前の期の2010年3月期に3209億円の合理化を実施し、2011年3月期には営業利益1000億円を目指すと宣言した。ふたを開けてみると、営業利益は578億円だったわけだから、これはやはりいただけない。突っ込みついでに指摘すれば、合理化前の営業利益(2009年3月期)が62億円の赤字で、3209億円の合理化をして509億円にしかならないのは何故................というのは聞かないでおこう。ソニーのケースを見てもわかるが数千億円の合理化をしても帳尻が合わないのはどこも同じだ。単純な足し算をしてはいけないことは分かっているけど、あえて堂々とそのままプレゼンテーション資料に載せるのもどうかと。



あまり突っ込むのもかわいそうなんでこの辺でやめておくが、NECがよく理解できないもう一つの理由は情報開示の姿勢にもあるのかもしれない。前期、すなわち2011年3月期にNECは事業セグメントを変更して今日のセグメント開示の体制になった。NECエレクトロニクスの切り出しという点も考慮すればやむを得ない処置とも考えられるわけだが、実はその前の年(2010年3月期)にもセグメントの変更を行っている。



 難点を指摘すれば多くあるのだが、もともとのセグメント(いつだったか忘れた)もよく分からなかった。「IT/NW(IT・ネットワーク)ソリューション」事業と数多くの事業を一括でセグメントしていたのもいただけない。それをITサービス、ITプロダクト、ネットワークシステム、社会インフラの5分野に分割したまでは良かったが、ITプロダクトとネットワークシステムの一部を合わせて「プラットフォーム」と呼び、残りのネットワークシステムをキャリアネットワークと名称変更。もともとのソリューションという言葉やプラットフォームとか、キャリアネットワークとかなんかその時に流行ったIT専門用語を貼り付けているような気がしてならない。事業ポートフォリオの再編・見直しが起こるのが当然だが、看板の架け替えでビジネス環境がよくなるわけではない。むしろ、懸念されるのはNECの方たちには悪いが、非常に古い言葉で言えば「CI(コーポレート・アイデンティティ)」がない。CIというのはブランド戦略のことではなく、文字通り企業としてのアイデンティティのことを指す。自分たちが何をやっている会社なのか、何に向かっているのか、コア事業とは何か。顧客は誰か。コア事業のシナジーが持てる周辺事業だからこの事業を手掛けているといった、自分自身への理解がないからソリューションだ、プラットフォームだ、クラウドだとその年のIT流行語がビジネスのセグメント名になってしまう。今、ピーター・ドラッガーの本をネタにした「もしドラ」が流行っているが、経営陣は読んで理解する必要があるんじゃないか。

 開示姿勢に関してはの難点はあるが、IRのインフラ自体は悪くない。ちゃんと時系列にIR資料がダウンロードできるようになっており、それに関しては及第点だ。ここまでぼろくそに書いておいてなんだが、じゃあ株式を売却するかと言えば、多分売らない。何故ならNECのユーザーだから。とはいったものの、NECのパソコンもレノボに売ったんで、五星紅旗のシールが付いたりするかもしれないなぁ。その時は富士通にスイッチ。来年の株主総会はといえば..................多分行かない。


web拍手 by FC2
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バンダイナムコホールディングス(7832)株主総会

2011年06月20日 | 銘柄研究
 株主総会シーズンがやってきた。昨年はほとんど行かなかったが、今年はなるべく参加しようと思う。とはいったものの、総会日が重複しているのが結構多いのですべて行けるものではない。また、開始時間が何故か一律に午前10時スタートが多い。たまに午後スタートの会社もあるのだが、なんで午前中なんだろう。午後もやってくれれば参加できる会社が増えるのに。昔と違って総会屋とかほとんどいないのでむしろ株主とのコミュニケーションを重視するという意味で総会スタート時間をずらすという動きがでてもよいと思うのだが。それと超メジャーな会社なのに僻地で開催する会社がある。例えばTDKなんか株主多いと思うのだが、何故に千葉で開催? 当然参加しません。そして今回参加の会社はバンダイナムコホールディングス。もともとバンダイの子会社の株を保有していたのだが、吸収されてバンダイの株になってしまった。はっきり言って不満だ。バンダイになって業績の向上が見込めるのか不安だったが、その不安は見事的中。株価は長期の低落傾向を続けている。



 総会場のロビー前でフリードリンクのサービスがあり、長蛇の列。コーヒー、コーラ、お茶などが飲めるのだが、確かに親切だなあと思う反面、長蛇の列をなしている人達...そんなに喉が渇いているのか。ただなら貰わないと損だと考えているのだろうが。まあ、別にいいけど。特に喉が乾いてないのでフリードンクコーナーはスルー。社長の開会のあいさつの後、ビデオでの業績説明。招集通知をそのまま棒読みする会社より、説明ビデオを流す方が効率的でわかりやすかった。質問時間になり少し驚いたのは、バンダイのユーザーと思わしき株主の人が個別の細かいサービス内容について質問していたこと。ファミコンなどの旧作タイトルを携帯サービスを展開したらどうかとか、オンラインゲームの月額課金でなく、アイテム課金にするべきではという質問がでていた。他は株価の低迷の原因とか一般的な問題の他に、なんかpickyな人がいて特別損失の中身についてしつこく聞いていた株主がいた。なんかうざそうなんで途中で退席した。出るときにお土産を貰う。中身はミニタオル、入浴剤、チケットのセットでまあ、こんなものか。個人的にはガンダムのプラモでも貰えるのではと思ったが、お土産も業績並みということか。



 業績に関して少しだけ詳しく見てみよう。バンダイのセグメント利益を見たのが下の図だ。トイホビー事業も減益傾向が続いているもののコンテンツ事業の利益のボラティリティをに注目してほしい。これを見る限り当社の利益動向はコンテンツ事業の利益変動によってほぼ決まっていると考えてよいだろう。コンテンツ事業は昨年度から映像事業と合算の数字となっており、ゲームコンテンツ単独での利益の開示をしなくなった。例えば、昨年度2010年3月期には前年度116億円の黒字から76億円の赤字に転落しているがゲームコンテンツだけを取り出すと116億円の黒字から68億円の赤字とほとんどがゲームコンテンツから来ている。(2010年3月決算補足参照)



 コンテンツ事業のゲーム関連コンテンツは1372億円の売り上げがあるが、さらに業務用ゲーム機、家庭用ゲームソフトに分かれる。業務用は当初予想の540億円を20億円上回る560億円になったのに対して家庭用は880億円予想に対して812億円と未達になっている。



 問題は未達になったことではなく、マージンが何故低いのかという点だ。セグメント利益の表でもわかるとおりコンテンツ事業のマージンは1.7%しかない。例えば2008年3月の同事業利益は218億円となっており、マージンは11.2%だった。2008年3月期は147億円と減少するがそれでもマージン率は10.15%だった。業務用と家庭用のサブセグメントの利益の開示がないが、家庭用ゲーム機の発売本数を見るとある程度の推測ができる。2007年3月、2008年3月の発売本数はそれぞれ2421万本、2333万本。そして赤字に転落した2010年3月は2273万本。2011年3月には2090万本とさらに減少していることからさらにマージンが悪化してもよさそうだが、同部門では人員削減などのコストカットを実施したことでマージンが改善したと考えられる。すなわち、ここで言えることは家庭用ゲーム部門は固定費比率が高く、ヒット作がでなかったりするとマージンが大幅に悪化することが考えられることだ。前期に関しては本数は未達になったものの途中でリストラを追加したことで、マージンの大幅な悪化を食い止めたとも読める。但し、それでもコンテンツ部門の期初予想45億円に対して30.9億円と下方修正になったことはには違いがないが。

 (今期予想)

 今期の利益予想に関してはどうだろうか。売上1.5%増加、粗利は0.4%増加、営業利益、経常利益とも横ばいを予想している。セグメントで見てもトイホビーで25%減益に対してコンテンツで70億円と倍増。このコンテンツでの利益倍増だが、販売本数を横ばいに見ており、グループ合計で2100万本(前期2090万)とまず保守的な予想のようにも見える。但し、震災後のアミューズメント業界の動向など普通に考えたらマイナスになる可能性を考慮するとまだ予断を許さない状況にあることは確かだ。そろそろ増益基調に転換してほしい。



web拍手 by FC2
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする