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Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

Monex Vision βを試す

2011年04月11日 | 投資理論
 投資ツールはネット証券をはじめ各社からいろいろなツールが出されており、現在の個人投資家レベルでも結構いろいろなものが使えるようになってきている。私も時折利用するが、スクリーニングツールなどやチャートツールなどは機関投資家の利用しているものとは異なっているが、それでもそれほど劣ったものではない。むしろトレーディングツールに関して言えば機関投資家用とさほど変わらないものもあるほどだ。但し、トレーディングが主体でなく、中長期投資でバイアンドホールドが基本とする一般投資家にとっては、高度なトレーディングツールは面白そうであっても意外に投資判断に寄与していない。デイトレーディングやチャート分析で売買を行う投資家ならいざしらず普通の投資家はそれほどアクティブであるわけではない。 むしろ材料でもって投資判断を下す人が大半だ。一方で資産運用に関しては全体のポートフォリオ管理を行っている人はほとんどいない。直感的にキャッシュポジションを管理していたり、気分でアセットアロケーションをしている人がほとんどだろう。

 私も何社かの証券会社を利用しているがそのうちの1社マネックス証券でポートフォリオ管理ツールが提供されているのでそれを試してみる。このツールの優れているところはマネックスの残高だけでなく、預け入れている他社の投資残高を反映させることができる点だ。登録しておけば、他社に自動ログオンして残高を更新させることができる。Monex Vision βとよばれるプログラムでマネックスの顧客であれば利用することができる。ところが少し困ったことにこのプログラム、マネックス自身があまり宣伝していないのか、マネックス証券の顧客も容易に探せないようになっている。



 ログオンして「投資情報」にあるかと思ったら、ない。上の写真のとおりだが、ログオンして「商品・サービス一覧」を選択するとサービスメニューがずらっと並ぶ。その中にMonex Vision βを見つけることができる。ほとんど宣伝していない理由もよくわからないが、まだベータバージョンだからだろうか。ベータが取れれば本格的に利用できるということなんだろうか。それはともかく利用は極めて簡単だ。ログオンすれば自動的に残高がロードされ分析画面がでてくる。



 上の図がログインした後にでてくるポートフォリオ分析図だ。まず外部資産の自動更新であるが、国内の金融機関の大半は対象になっている。SBI証券、カブドットコム証券、楽天証券などのオンライン証券はもとより、野村、大和、日興証券などの対面型証券の自動ログオンが可能だ。それに主要な銀行も対応できる。問題となるのは海外の金融機関には対応していない点。マネックスが買収したBOOM証券もできない。恐らく海外金融機関を利用しているユーザーはほとんどいないとの見方をしているのだろう。但し、海外金融機関対応はしていないものの、マニュアルで入力する機能があることから問題は起こらないだろう。参考としてアップした写真だが、すべての証券を登録するのも面倒だったので、私が利用している主要な証券の資産残高を更新している。BOOM証券の残高はマニュアル入力を行った。それと銀行口座は除外した。銀行のキャッシュは資産運用対象外なので問題はないだろう。また実物不動産や匿名組合出資なども除外している。パフォーマンスが計測できないといいうのが理由だ。

 ポートフォリオ分析をしてみると面白いことが分かった。ターゲットは積極型のポートフォリオを選択したが、分析結果から得られた最適ポートフォリオは結構異なっている。一方でリスクリターンプロファイルは現状ポートフォリオでも結構近接していることがわかる。REIT資産がオルタナティブ扱いになっていることと、REITのボラティリティが株式のそれと結構にていることがその背景にあるのではないだろうか。適当にやっているわりには意外にいい線言ってんじゃね?



 分析の詳細タブを選ぶと現状と目標ポートフォリオの比較ができる。これによればオルタナティブ投資が多いので株式資産を増やせというのがアドバイスの第一、国内資産が多いので新興国株式を含めた外貨建て資産の増加を促すというのが2番目のアドバイスだ。ひとつ前の写真でもわかるとおり、実は最適化ポートフォリオと現状ポートフォリオとではリスクリターンプロファイルが似通っていることから、リバランスによるリスクあたりのリターンの増加が少ない。リバランスに伴う売買コストを考慮すると本当にリバランスをした方がメリットがあるのかは疑問だ。但し、国内資産を減らして外貨建て資産の増加を図るというのは少し賛成だ。



 追加購入アドバイスというタブを選択すると何を買えばいいのかというアドバイスが個別資産ごとに金額で示してくれる。私の場合には新興国株式をもっと買い、コモディティ関連にも投資しろという内容だ。このツールのよいところは自分の運用ポートフォリオのリスクリターンプロファイルを計算してくれるところが最大の売りだ。一方、難点はいくらでもあるのだが、まあ簡単にいえばクオンツ運用している投資家ならともかく、アクティブ投資家にとって必ずしもアドバイスに従うインセンティブがほとんどないことだ。私のケースでも外貨建て資産の増加というのは傾聴に値するが、新興国株式・コモディティの投資の増加はあまり素直にしたがえない。第一、REIT、高配当株式をメインに投資している投資家に本当に最適なものかという点だ。確かに期待リターンとリスクで最適化すれば、そうなるだろうが投資家にもいろいろなタイプがおり、数値化できないリスク選好を持つ投資家にとっては馬耳東風となろう。

 見た目にもハイテクなツールがでるとなんだかその気になる人が多いのであるが、いくつか注意点を。Monex Vision βは仕様が明らかにされていないが、オプティマイザー(Optimizer)を利用した最適化計算ツールだ。有名どころではパーラモデルが有名だが、それに似たものだと考えていい。問題はオプティマイザーで使用する期待収益率とボラティリティをどのように計算しているかという点だ。通常、簡便なツールであれば、ボラティリティは過去20年とかのヒストリカルボラティリティを利用する。期待収益率も過去の平均リターンを使用する。当モデルでは国内株式の期待収益率が4.8%におき、1980年1月から2010年8月までの30年間の平均リターンで計算しているようだ。しかし、新興国株式とかREITのボラティリティは一体どうやって計算しているのだろうか。最適化プロセスではどの程度のヒストリカルデータを利用するのかという点と、ウェイトづけをするかしないかで最適化結果は大きく変わってくる。

 最適化ツールについては書き出すと本ができてしまうくらい奥が深いのでここでは詳述しないが、ヒストリカルデータの扱い方で「最適」かそうでないか、答えが大きく違うという点を意識する必要がある。例えば、ヒストリカルデータを平均するやり方とヒストリカルデータにウェイトづけするやり方では答えが違う。「平均」とはまさに押しなべて平均的に「事象」が発生することを指すが、株式市場の経験則は大昔よりもより直近の「事象」に左右されると考えれば過去20年のデータなら直近5年のデータに50%とか多めのウェイトをつけて算出するという方法もある。分かりやすく言えば東電の株価の動きは15年前-20年前よりも直近5年の動きの方が未来のボラティリティをうまく説明できるという考え方だ。

 期待収益率の算出についても留意する必要がある。一般的にはこれもヒストリカルデータを利用するが、これは過去に実現したリターンが将来も「平均的に」実現すると予想したものに他ならない。理屈はそうだが、直感的には疑問が残る算出方法だ。アクティブに期待収益率を予想するという方法もあり、マクロ予想からのトップダウン手法、アナリストの予想収益率を集計したボトムアップ手法など、さらにアクティブ予想に複数シナリオを予想して確率で加重するシナリオ加重といった手法など様々な方法がある。期待収益率が1%異なれば、でてくる最適化結果も大きく異なってくる。

 結論からすれば、最適化ツールはあくまでも参考で、「最適化結果」を鵜呑みにして投資判断を下してはならないという当たり前の結論になる。このサービスがあるのはうれしいが、私個人としてはサービスで利用しているオプティマイザーを公開して個人で利用できるようにしてほしい。実はそう思うのは一つ理由があって、最適化ツールであるオプティマイザーにはその機能を利用すると少し変わったことができる。まあ、オプティマイザーの種類やカバーしている機能にもよるが、オプティマイザーで最適ポートフォリオを計算するという一般的な利用方法とは別に、現状ポートフォリオから投資家が期待している資産クラス毎の期待収益率を計算することができる。分かりにくい説明だが、仮にある投資家の現状のアセットアロケーションが「最適」であると仮定した場合、オプティマイザーを利用してその投資家が期待する各資産クラスの期待収益率を計算することができる。これを「逆最適化」と呼ぶ。つまり、仮に現状がベストなポートフォリオと想定するなら自分が保有する国内株式、外国株式等の期待収益率を逆算できることになる。

 なにを言いたいかといえば、仮に投資家が自分のポートフォリオに国内株式を30%保有しているとする。そして他の資産クラス、例えば外国株式、債券の比率が分かっており、自分のアセットアロケーションがベストなものであると考えているとする。さらにその投資家が個人的に株式に超強気と考えている。逆最適化により各資産クラスの期待収益率が計算され、仮に国内株式の期待収益率が外国株式のそれを下回ったという結果がでれば、それは本当は自分は国内株式にそれほど強気ではないということが分かるのである。実際のポートフォリオから自分の本当の期待が計算できる。まあ、こんな使い方もできる。


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Intel HD2000によるエンコードスピードの比較

2011年04月09日 | Weblog
 現在書斎にあるPCはメイン、サブにバックアップ用の3台となっているが、先月にメインのPCをリプレースした。インテルの新世代CPUであるSandy Bridge(Core i7 2630)で、動画のハードウェアエンコード支援機能がついている。動画のエンコードはサブ機で行っているのだが、実際にエンコード支援機能がどの程度早いかテストしてみた。



 メイン機ではブログ更新、メール、インターネットなどの軽いものが主体で動画や3DCGなどの重い仕事はやらせていない。メール、トレーディングなどあまりPCがクラッシュしてもらっては困るものでは重いソフトはほとんど入れないようにしている。1台でホビーもトレーディングもメールもといろいろなソフトを走らせているとクラッシュするとかなり困る。これは過去の経験則から得たものだ。PCは高校自体から数えれば20台以上乗り換えてきた。そこで学んだのはPCは必ずクラッシュしたり、壊れる。壊れなくても不具合は必ず起こるということだ。だからPCも重いソフトを走らせるもの、大事な情報を扱うもの、予備のデータ復旧用とまあ3台あれば十分かな。実際にはノートを含めると4台になるけど。但し、すべてのPCを同時に使うというのはまれ。計画停電のせいというわけではなく、3台同時に走らせると暑い。特に夏場は暑いし、エコじゃないし。従って場中は2台稼働してたりするが、場が終わると大抵1台の稼働。だからメイン機は頑丈であること。余計なソフトを入れて不具合を起こさせないことなど結構気を使っている。今回のメインのPCも新世代CPUではあるが、グラフィックカードは搭載していないタイプでグラフィックはCPUに内蔵されているグラフィックエンジンが使われている。これのメリットはグラフィックカードがないので電力消費が低くなる。グラフィックカード用のドライバは不必要でインテルのドライバが使える。ドライバが少なければそれだけ余計なトラブルに巻き込まれる可能性が低くなる。さらにグラフィックカードがないと騒音が小さくなる。従って長時間の稼働でも低消費電力、低トラブル、低騒音が期待できる。

 それで肝心のテストのほうであるが、衛星放送のHD画像を適当に5分録画してエンコードさせてみた。ソース画像はBSなので1920x1080で、16Mbps。リサイズしてエンコード速度を見るのが一般的だが、ここは単純に4MbpsのHD画像に変換するという単純な方法でテストしてみる。これならグラフィックカードをほとんど利用しないので単純にCPUのパフォーマンスが測れると思う。まずは従来のCPUエンコードだが、サブ機が対象となるがcpuはCore i7 960 @3.2GHz。グラフィックカードはHD5870のハイエンドだが、フィルターとか一切使用しないので単純なCPUパワーの比較ができると思う。利用するエンコードソフトはTMPEGEnc Video Mastering Works 5(VMW5)だ。



 ハードウェアエンコードでは1パスなのでそれに対応するためにCPUエンコードではCBRの1パスで行った。これがいいのかどうか、実はよくわからないのだが、VBRの1パスというのが何故か選択できなかった。どうしてだろう。まあ、それでも単純にBSのHD画像を4Mbpsで圧縮するという単純なエンコードなので問題はあまりないだろう。VMW5はエンコードエンジンがx264を利用しており、画質は結構きれいだと思う。今回はハードウェアエンコードによる画質も比較してみようと思う。



 当然のことながらCPUエンコード中はCPUの負荷率は高い。平均しても95%になる。従ってエンコードしながら他のジョブを行うというのはあまり現実的ではないだろう。しかもエンコード中の騒音は結構大きくなる。サブ機のハードウェア自体の問題かもしれないが、ちょっとうるさい。というかかなりうるさい。因みにサブ機はデルのモデルです。



 一方のメイン機は富士通製でCPUはCore i7-2600 @3.4GHz。グラフィックカードはなく、Intel HD2000がグラフィックを担当する。VMW5でのハードウェアエンコードはとても簡単でエンコーダー選択タブをクリックすると選べるようになっている。なお、パフォーマンスはCPU、ハードウェアエンコードともに「やや速い」にしてある。HD2000では4MbpsのVBRで、ピーク8Mbps。1パス。可能な限り条件をそろえたつもりだが、これであってるよね。



 エンコード中のCPU使用率は平均すると4割弱。結構さくさくエンコードするんで少し驚いた。しかもこのCPU使用率ならば、他のジョブを並行させて実行することも可能だ。しかも、騒音がかなり少ない。



 実際の結果が上の写真の通りだCPUエンコードが5分54秒、それに対してハードウェアエンコードは2分49秒。インテルの宣伝通りではないとしてもやはり速い。リサイズもフィルターもかけていないので単純な比較でみれば倍の速度であることがわかる。今回はVMW5のパフォーマンス設定を「やや速い」にしているが「標準」でも同様な結果がでるだろう。それで、問題となるのはやはり画質がどうなったのかという点だ。それは次の写真。



 この写真を見て優劣が判断できる人は相当画質にうるさい人だ。というか、そこまで気にしなくても...とも言える。画質に関して言えば、かなり細かく見ないと分からない。当然、画質がきれいなのはCPUエンコードの方だが、ハードウェアエンコードも結構いい線いっている。但し...それは動きの少ない映像の場合。動きの速い映像だとやはり違いが判る。というか、気になる人は増えると思う。アニメなど動きの激しくない映像には向いているかもしれないが、最近のアニメは結構こっているし、アニメおたくは結構うるさいのでやはりハードウェアエンコードはそれほどはやらないんじゃないかという気がする。映像をコレクションする人に恐らく受け入れられないだろう。ニュースとかどうでもいいのならいいかもしれないが、第一、どうでもいいような映像は映像コレクションなんかしない。というわけでIntel SDK(ハードウェアエンコードのこと)は話題としては面白いが、はやらないんじゃないかというのが結論。エンコードする人はやはりCPUパワーを求めるだろう。現在のSandy BridgeがIvy Bridge(インテルの次世代CPUで来年初頭に登場)にに代わって、グラフィック機能が強化されてもやはりハードウェアエンコードはそれほどはやらないと思う。


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近況と最近の投資(3) - ブラジル株投資

2011年04月06日 | グローバル投資
 ブラジルの通信業界を簡単にレビューしてみよう。なお、正確性に努めたつもりだが、それを保証できないことをあらかじめお断りしておく。また記事で銘柄に言及したとしても当該銘柄の投資を推奨するものでは決してありません。そんな方がいるとは到底思えないが、これを投資判断に利用して損失が発生しても当方では責任は負いかねます。単なる参考として考えてください。というか私のブログの記事はすべてそうです。

 まずは簡単なところから押さえておこう。マクロ的には新興国と言われるブラジルだが、そのイメージと実態がどの程度になっているのかを見ておく必要がある。当たり前だが携帯などの通信インフラを利用するには中産階級などの比較的高めの所得階層の成長が必要である。ブラジルの今の所得階級別グラフは下のようなグラフになる。



 図は所得階層をAからEまでの5段階に分けてその比率を表したものだ。なんでAとB、DとEを合算しているのかよくわからないが、富裕層、中間層、低所得者層の3つに分けられているとみることができる。それでいけば2005年時点では低所得者層が51%に対して中間層が34%と国民の半数が低所得であったのに対して、2009年時点では中間層が49%とほぼ半分弱まで増加している。これは国民全体の購買力が増加していると単純に解釈してもよいだろう。家計の平均所得の数字だが、中間層が1277レアルとなっており、単純に50円をかけると61350円。これが年間なのか月間なのかよくわからない。注釈を見ても書いていない。仮に月間ベースで考えると766,000円。なんだかなあ、こんな所得が低いとは思えないのだが。千単位なのかと思ったが、かりに年間で千単位とすれば127万7千レアルとなって63百万円。これは高すぎだろう。もしかしたら、週単位の数字じゃないかと思うんだが。そうすると年間332万円となるが、日本人的にはいい線いっているように思えるが、国民所得考えたらやっぱ高すぎ。調べてみたらブラジルの2010年の1人当たりのGDPは7566レアルとなっており、やはり76万円が正解だと思う。ブラジルに行ったとき感じたのは物価水準は日本よりは確かに安いけれど、べらぼうに安いという印象は全然なかった。現地の人に聞いた話ではブラジルでは実際に給与は円ベースで考えるとかなり安いのだが、雇用主は従業員に生活のための食費を別途補助する仕組みがあって、給与が低くてもやっていけるという話をきいた。(真偽のほどは不明) 仮に食費が補助されているのならインカムが低いことも納得。

 で、問題のブラジルの通信業界に関するファンダメンタルズは下の図。



 まずは事業セグメント毎に国際比較を行った図だが、最初の固定通信でみるとブラジルは日本の半分程度。なお、単位が書いてないがユーザー数でみた数字だ。ブラジルの人口を考えたらずいぶんと少ない数字に感じられるが、実は移動体通信は192百万人となっており、要するに国民のほとんどが携帯を持っている。固定電話を保有しているひとはむしろ少数派であることがわかる。ブロードバンドサービスでみると13百万人となっており、こちらはまだかなり規模が小さい。ここから読み取れるのは一つ。ブラジルの携帯市場は成熟しているということ。新興国などと聞くと、所得が低く、電話の普及率が低いイメージを持たれがちだが、実際にはかなり普及している。むしろ、固定の普及率が低い。新興国だからと言ってあまり馬鹿にしてはいけませんな。さらにこれらから解釈すればブラジルでの携帯事業の成長率は鈍化しており、人口成長程度のポテンシャルしかないということだ。また、成熟しているからキャリア同士での競争激化が起こり得る、もしくは起こっていると考えるのが妥当だろう。即ち、ビジネスは簡単ではないということだ。因みに移動体通信はロシアの普及率もかなり高いし、インド、中国も意外に高い。グローバルに移動体通信会社株のバリュエーションが安いのはこういった理由がある。新興国だから成長という概念は捨て去ったほうがよいだろう。



 さらに問題含みなのは上の図だ。これはブラジルの通信市場のアクセス数をセグメント別にみたもので、全体のアクセスシェアの75%を携帯が占めている。固定通信、ブロードバンドは合計しても5%以下のシェアしかない。これは一体何を意味しているのかというと携帯以外のセグメントは市場規模が小さいということ。即ち、成熟している携帯が最も市場規模が大きく、成長していると思われるブロードバンドサービスは無視できるほど市場の規模が小さいということだ。従って、他のセグメントが成長していても利益貢献度が小さく、むしろ携帯部門の動向によって利益は大きく左右されることを示している。円グラフの下にCAGRと書かれてあって、セグメント毎に数字が書いてあるが、これはCompound Annual Growth Rate(年間成長率)の略で2002年から2010年までの平均成長率を示したものだ。携帯が25%となっているが急成長した過去の分を反映しており、直近での数字は16%まで鈍化しており、今年は一桁前半くらいまで減速する可能性が高い。Wirelessに至っては過去平均1%であるし、ブロードバンドは高い成長となっても比率がかなり小さい。結論からすれば、ブラジルの通信業界に成長ポテンシャルを求めてはいけないということだ。では魅力がないかといえば、必ずしもそうとは言い切れない。最大の魅力はキャッシュフローの安定性、マージンの安定性だろう。それは配当の安定性にもつながっていく。



 上の図はブラジル通信業界での市場占有率を業者別にみたものだ。調べきれていないので大体のことしか言えないが、ブラジルでは規制当局によってエリア分割されていてそれぞれRegion I、II、IIIの3つに分かれている。Region Iはリオデジャネイロ、アマゾンを含む北部、IIは西部地域、IIIはサンパウロ州を含む地域に分割されており、それぞれにライセンスが与えられている。この3つの地域の内、おいしいのは何と言ってもRegion IIIだ。面積は小さいがサンパウロを含む大都市が入っている。ブラジル市場では日本と同じく寡占状態になっている。オペレーターは5社あるが、実質的には大手3社で市場を分け合っていると考えてよいだろう。前回、紹介したTNEは「Oi」というブランドを展開している。TSP(サンパウロテレコム)はTelefonicaの中の固定部門だ。Oi、Telefonica、Telmax/AMXの3社で85%のシェアを持つ。日本と同じだ。携帯ではテレフォニカが強く、一方で固定・ブロードバンドではOiが強い。携帯だけで考えればTIMを含め4社寡占となっている。詳しく調べられなかったが、4社も強い会社があるのは少し微妙かも。



 キャッシュフローの状況を見るためにTNEを例にとってみてみるとEBITDAマージンは34.9%と昨年よりは改善。一方でネットインカムが大幅な減益となっているがIFRS適用による減益であり一過性である可能性が高い。こうしてみると特に変なことやらなければ安定してキャッシュフローを出すことは可能だろう。但し、成長という意味では問題多数。因みに配当だが、これがよくわからない。TNEのケースでみると公約配当性向は25%となっているが、過去11年間に実際に支払った配当性向は127%になっている。要するに、大幅な減配も高配当利回りもどちらもありうるということ。というかTNEの場合、ブラジルテレコムの償却負担が少なくとも5年は続くので減配の可能性大ではないかと個人的に思っている。あっ、でも買ってしまった。まあ、いいか。

(終わり)


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近況と最近の投資(2) - ブラジル株投資

2011年04月05日 | グローバル投資
 ブラジルへの投資に関してはいくらでも参考となる書籍・ブログなどがあることから、重複するのもあれだし第一大したリサーチをしていない段階で知ったかぶりするのも問題だろう。それに私のブログの目的とも違う。「新興国株式投資で大儲け」というのが趣旨ではなく、このブログはREIT、高配当株式などのキャッシュフローに注目した投資家がメインだと思うので、むしろ一般的なブラジル株投資論は避けよう。とはいったものの、ごく基礎的なことは押さえておくことにする。ブラジルの株式市場は他の新興国同様、資本規制がかけられていることから直接投資がしにくいのは前回も書いたとおりだ。特にFRBによるQE2発動から新興国へのホットマネー流入で、ブラジル政府も金融取引税を課して過度な資本流入を規制している。従って投資の主流となりえるのはニューヨーク上場のADRなどが考えられる。まずベンチマークのパフォーマンスを見てみよう。Bovestaなどのローカルベンチマークはあるが、ここではMSCIブラジルを見てみる。実際にSBI証券などでMSCIブラジルのETFが投資家可能なのでそちらのほうが参考になるだろう。投資家の熱い期待があることは知っていたが実際にパフォーマンスをみてみると...確かにびっくりするぐらいのパフォーマンスだ。

 下図は過去10年のMSCIブラジルインデックスのパフォーマンスだが、年率17.6%(円ベース)のめちゃくちゃな高パフォーマンス。年率だからね。10年間の複利ベースで考えたら100万円投資したら500万になってましたという話だから、驚く。5年間でのパフォーマンスも年率9%、しかも円ベースだ。9%の複利で計算すれば資産は1.54倍になるわけだから、中期的にもすごい数字だ。



 2番目のグラフは無駄なことだとわかりつつ敢えてTOPIXとの相対パフォーマンスのグラフを見てみたが....そうだよね。そうなるよね。日本株に投資して資産減らす一方、ブラジル株なら400%。まあ投資家の視線が熱くなるのもうなずける。但し、気をつけなくてはならないのは2006年から2008年にかけてだ。リーマンショックの影響で株価が暴落している。長期での投資家ならともかく、あわてて参戦した投資家はいまだにやられている可能性が高い。付け加えるのなら、恐らく日本の投資家がその対象なんじゃないかという懸念があるわけだ。そういえばブラジルがどうのと人気化したのはそのころだったような気がする。何事も長期での投資でなければ報われないという典型だ。でも、こうしてパフォーマンスを見てみると少し不安が。もしかして遅すぎる? いや、実はそうでもない。REITや高配当株式などの投資期間中のキャッシュフローにこだわる投資家にとっては実はそれほど問題にならない。自分のことだと分かった上で思うのだがトータルリターンが高ければそれでよいはずなのに、キャッシュフローにこだわってしまう少し間抜けな投資家はちょっと救いがたい。しかも理論も理屈もわかっており、キャッシュフローだけにこだわる合理的な理由はなくトータルリターンで考えるのがより合理的だとわかっているのにである。



 まあ、そんなことをいっても仕方がないので、とりあえずブラジル市場をみてみる。ベンチマーク構成比は以下のグラフのとおりである。これでみると素材、エネルギー、銀行でインデックスの7割を占めている。むむ...よく見るとペトロブラスが重複して入っているではないか。優先株と普通株の違いはあるがペトロブラスで2割弱。さらにItau(銀行)も重複している。この2銘柄でインデックスの3割を占めている。あれっ、ヴァーレも重複している。なんじゃこりゃ。結局、この高パフォーマンスはペトロブラス、ヴァーレ、Itauの3銘柄もっていたらよかったということか? かなり偏ってるなあ。ということで結論としてはブラジル市場に投資するインデックスETFは結構偏っており、特定銘柄のリスクを結構負うことがこれから読み取れる。確かに過去10年の高パフォーマンスはあったものの、それはこの極端に偏った銘柄偏重リスクの結果であると判断することができる。



 いま米国と日本がバブル政策を推し進めている中で資源株を買い進めるのはリスクが高い。(と思う)また、キャッシュフロー重視の困ったちゃんの投資家にとってもおいしくないので見送る。キャッシュフローが安定していて利回りが高そうなのと言えば、大概のケースで通信会社と相場が決まっている。日本でもそうだし、米国でもアジアでもそうなっている。例えば、豪州でいったらTELSTRAやNZ TELECOMなどが代表例だ。両方とも配当利回りでみたら10%程度になっている。但し、業績は芳しくない。というわけで調べてみるとあったあった。以下の2銘柄がターゲットになりそうだ。



 最初の銘柄はなになに、Telecomunicacoes de Sao Paulo SA (ADR)。日本名がわからないが強引に訳せばサンパウロテレコムとなる。当社はサンパウロ州の固定通信サービスを手掛ける会社で国際通話、州間通話てがける。2010年12月現在で1130万の回線サービスと330万のブロードバンドサービス、50万のペイTV顧客を有する。顧客の7割は個人で24%が企業などの商業向け、2%が公衆電話サービスとなっている。なお、当社はスペインの大手通信会社であるテレフォニカの傘下にある。直近の業績は営業利益率22.5%、EBITDAマージン34.08%、ROE20.89%、ROA11.81%。配当利回り17.79%となっている。うむ。まあいいんじゃないか。とりあえず買っておこう...てっ、おい!



 次の銘柄がTele Norte Leste Participacoes SA (ADR)、日本語名が全く想像つかないのでティッカーと同じでTNEでいいや。当社はブラジルにおいて通信サービス事業を展開する企業で、固定通信、データ通信、ISPサービスおよび移動体通信を手掛ける。2009年1月に子会社のTelemar Norte Leste SAを通じてブラジルテレコム(Brasil Telecom Participacoes SA)を傘下に収める。2009年12月末現在、Region Iで地域固定通信の顧客1360万人にサービスを展開、Region IIにおいては770万人の顧客を持ち、合計で2130万人の固定通信顧客を持つ。(Region I、Region IIに関しては後述) 移動体通信に関してはRegion Iで2360万人、Region IIで720万人、Region IIIで540万人の合計3620万人の顧客にサービスを展開している。データ通信サービスに関してはADSLがメインとなっており、「Oi Velox」のブランドでサービス展開。420万人の顧客を持つ。営業利益率21.47%、ROE 21.55%、配当利回り9.76%。
 なるほど、じゃあこれも...てっ、いいのかそれで...

 あまりにも乱暴だが、とりあえずブラジル株がほしくなったので少しだけ。買ってみる。よい子はまねないでね。ちゃんと調べてから買おう。それともう一つ、通信会社の業績はグローバルに悪い。これは各国共通で、急成長して普及率がそれなりになっており、ブラジルも例外ではない。昨年に大幅に減益になっている会社がある(上のTNEなど)。理由は様々だが、IFRS適用による大幅な減益というケースも見られており、配当に関しては過去の実績が全く当てにならない。2つ上げた株価チャートでも見えにくいが横軸に「D」という文字がいくつか見られるが、これが配当が支払われた時期をさしている。見てわかるとおり、何故だかよくわからないが決まった時期に配当をしていない。年によっては配当支払いの頻度が大幅に増えたり、逆に減ったりしておりその理由もよくわからない。これは調べてみるが実績配当だけ見て投資すると痛い目にあいそうである。個別銘柄の資料をあさってみたがなんかいいのがない。というわけでそれは今後の課題としてせめてブラジルの通信業界をレビューだけでも試みる。

続いたりして....

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