怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

5月13日鶴舞は雨。こんな時は宮部みゆき「悲嘆の門」を一気読み

2024-05-14 13:51:43 | テニス
前日の夜から低気圧と前線通過と言うことで雨模様。
鶴舞公園テニスコートが確保してあり、参加者もそこそこ見込めるので行く気満々でしたが予報では雨。
果たして朝起きると雨が降っている。
予報では今年一番の大雨と言っていましたが、起きて外を見るとそれほどでもない。

でも雨は上がりそうもありません。
時折小降りになることもあったのですが、雨が上がるのは16時過ぎみたい。

結局この日のテニスは中止にせざるを得ません。
こういう時には長編小説でも一気に読んでみるか。

宮部みゆきの「悲嘆の門」はハードカバー上下で800ページほどの長編。サンデー毎日に連載していたそうですが、一気に読み通すにはなかなか手強い小説でした。
主人公は平凡な19歳の大学生の三島孝太郎。ネットに溢れる情報を監視し、法律や法令に抵触する恐れがあるもの、不健全で危険なもの、犯罪に結びつきそうな内容を見つけ出し、調査し、必要な場合は大作を取る「サイバーパトロール」を行っている会社でアルバイトしている。一時は警視庁の委託を受けていたこともあるそうだが、この仕事でどこから収益を得ているのかがちょっと疑問。都心でオフィスを構えそれなりの人を雇うにはかなりの経費が掛かるのだが。まあ、こんなことは小説の進行には関係なくてとにかくそう言うことを生業にしている会社「クマー」でバイトしていると言うこと。
そして主人公の周りで、次々と事件が起きていく。
先ずは隣の家の娘のいじめ事件を頼まれて仕事柄ネット情報を調べてみる。
そして連続殺人を疑わせる北海道釧路の殺人事件と、秋田の事件、三島の事件。いずれも足の指が切り取られていた。そして起こる第4の殺人事件。
バイトの同僚の森本はホームレスの連続失踪を追っていたのだが、突然行方不明になってしまう。
森本の行方を捜していると新宿のバブルの遺産ともいうべきお茶筒のような4階建ての廃ビルの屋上にあるガーゴイル像にたどり着く。ここで孝太郎の相棒?になる元刑事の都築と出会う。
このガーゴイルこそ言の葉の精霊に仕え、始源の大鐘楼三の柱を守護する戦士、ガラ。
ガラとの出会いから孝太郎は異次元の世界にいざなわれていく。
ここからはまさに観念により作り出された宮部ワールドで頭の中が混乱してしまうと言うかついて行けなくなるのだが、この宮部ワールドにどっぷり漬かって一気に読まないとますます訳が分からなくなる。週刊誌連載だったけど途中から読んだ人はついていけなかったのでは?
「輪(サークル)」とはこの世界を包み込んでいるすべての物語が織りなしている世界のこと。世界に対する解釈の集積。物語は人の数だけ存在するので「輪」は実在する世界よりも、宇宙よりも広大になっている。
「領域(リージョン)」は「輪」の中に内包されている私たちがいる現実も領域の一つ。
全ての物語にはそこから来てそこに還っていく源泉がある。その場所が「無名の地」で、一対の巨大な咎の大輪が回っている。その大輪の回転が物語を繰り出し巻き取る。
「始源の大鐘楼」は言葉が生まれる領域。
ガラは訳あって私たちの生きているこの領域で力を集めている。人間の持つもっとも根源的な力「願望」を。強い願望を抑制することに苦しんでいた心の不均衡を抱えている人を見つけて彼らの願望を集めていた。
う~ん、この展開にはなかなか70歳の老人の硬直した頭ではついて行けない。
孝太郎もガラとはこれ以上会わないつもりだったのだが、密かに思いを寄せていたバイト先の会社の社長山科鮎子が連続殺人事件の被害者として殺されたことにより、ガラを呼び出し、復讐をするために取引を持ち掛ける。
ここから孝太郎はある種の超能力を得て悪を狩る必殺仕掛人のようになるのだが、公権力にまかせるのではなく自ら手を下すことによって葛藤を抱えても自ら後戻りできない立場にどんどん踏み込んでいく。
物語の世界に浸っている時はいいのだがなんだか、現実に戻り殺人事件の展開として読むとちょっと腑に落ちない気分が残ります。
妙に腹に落ちたところは、孝太郎が5歳の女の子に母親の死を納得させるのを悩んでいる時、友里子(誰かは読んでみてください)から言われたこと。
物語と言うものは、人間が「死」と対抗するために生み出したもの。
死は完結した事象、死によって人のせいは終わる。生あるものは必ず死ぬ。そして死者はもうどこにも存在せず戻ってくることもない。でも物語はその事実に抗することを語る。その事実に逆らて、残された者を慰め、励まし、生き続けていくための光と希望を語る。
それこそが、物語が存在する最も大きな、尊ぶべき意義と意味。善政が一度しかないことにあらがう、創造と想像の力。
小説家として物語を紡ぎ続ける宮部さんの決意表明ではないでしょうか。
最後はちゃんと落ち着くことになっていますのでどっぷり宮部ワールドに漬かってこの長編を読み切ってください。.

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