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●漫画・・ 「怪談」・「オール怪談」..(3)

  

 つばめ出版が「怪談」を創刊したのが、1958年2月。ひばり書房が「オール怪談」を創刊した年月がちょっと解りませんが、どちらも1967年まで発刊され続けました。67年最終巻が、「怪談」が101号、「オール怪談」が87号。この両怪奇短編集漫画単行本は、どちらもほぼ月1号刊行でしたから、「オール怪談」の方が14号数分後発だったのでしょうね。一年くらい遅れて、ひばりが出したのだろうか?つばめもひばりも同じ会社だという説もありますが、ポプラ社の「貸本漫画リターンズ」には関連会社とありますから、つばめで出してヒットしたから同種の編集本をひばりでも出したんでしょうね。他にも両刊とも、別冊扱いの特集号というのを、だいたい季刊で発行していました。「貸本漫画リターンズ」のこの項(貸本怪奇漫画らん)の著者は、両刊の執筆陣の中で、観賞に堪えるのは小島剛夕の作品のみ、と手厳しい批評ですけど、僕の幼少時、子供時代、貸本屋でこの両誌を借りるお目当ては小島剛夕でなく、浜慎二と古賀新一の漫画でした。前にも書いたけど、僕が貸本屋に通っていたのは、10歳(~11歳)頃までだったので、多分、小島剛夕の時代劇は難し過ぎたのだろうと思います。その点、絵柄も好きだった、古賀新一や浜慎二の作品は、お話が比較的単純で、ストレートに恐さに行き着いてたのじゃないかな、と思います。現代劇で解りやすく、ポンッと子供の幼稚な恐怖感覚に直接訴えていた、のではないかと。

 前回でも書いたけど、何しろ幼い子供時分で、しかも一泊二日の借り読み時間で読み返しが効かず、絵柄イメージ以外ははっきりした記憶を全然持てないという、数十年前の僕の思い出世界だから、この「怪談」「オール怪談」の中の短編作品のどれ一つ、詳しい内容を紹介できません。小島剛夕の時代劇恋愛ロマン漫画の短編は、当時好みでなく、読んではいないけれど、両誌のカバー表紙絵と巻頭カラーを時々飾っていたし、やはり当時の漫画陣の中では抜群に絵がうまかった作家でした。だから絵柄イメージが記憶に残っている。古賀新一も浜慎二も時々、巻頭カラーを飾り、絵もうまく、また絵柄が好きで、その怪奇短編のストーリーも、ある程度の年齢以上の読者達には荒唐無稽で陳腐に思え、とても観賞に堪えられぬようなお話内容であっても、小学生低中学年であった幼稚な僕の理解や嗜好には、当時、直接訴える何か面白さがあったのだと思います。浜慎二は両誌のカバー表紙絵を描いていて、これが本当に恐いリアル画な、イメージイラストをとてもうまく描いていた。一度、文藝春秋社から文春ビジュアル文庫として、往年の貸本劇画の短編アンソロジーを文庫本として出しており、これが確か80年代末頃の刊行だったか、この漫画アンソロジー文庫本の中に、当時の「怪談」の巻頭カラー掲載の、浜慎二先生の短編作「8階の客」が再録掲載されていた。これは少なくとも十数年前に読み直ししているので、これだけは内容もよく覚えています。ここでは詳しいお話内容ははぶきますが、悪人と子供幽霊が絡む掌編でした。尚、「怪談」「オール怪談」共に、100巻くらいの号数まで発刊されているくらいですから、さすがに関わった作家陣も数多く、掲載作品数は少ないとはいえ、さいとうたかを、楳図かずお、江波譲二といった、当時としては売れっ子の有名作家も作品を提供していました。また両誌末期頃には、山上たつひこも短編を描いています。

 古賀新一さんは最初、古賀しんさく名義で作品を描いていましたが、どーも、こっちの古賀しんさくの方が本名のようです。当時、ほとんど、ひばり書房が活躍の場で、ひばりから、長編の個人作品シリーズを出していました。確か全10巻まで行ったように記憶してます。作者名義の方が記憶があやふやなのですが、多分、古賀新一シリーズでなくて、古賀しんさくシリーズだったように思えますけど。はっきりしなくて申し訳ありません。当時の貸本単行本はだいたい1冊130ページくらいだったのですが(無論中には例外的に分厚い『影』みたいなのも数種類ありましたけど、白土『忍者武芸帳』ももっと厚かったと思う)、その130ページ前後で一話完結させる作品が多かった。とても100ページまでも行かず、中篇で終わる場合は、他作家の短編をカップリングさせたりしていた。古賀しんさくシリーズも長編1作1冊構成だったように思います。「怪談」「オール怪談」などの怪奇短編誌で活躍していた古賀さんでしたけど、このシリーズは長編で、しかもアクション劇画だったと思います。済みません、はっきりしなくて。何しろ、資料を持っている訳ではなく、数十年前のしかも児童期のとてもあやふやな記憶を辿り、思い出し書いているものですから。このシリーズにも、当時の貸本劇画作家たちがみんな擁していた自分だけのヒーロー探偵たち、例えば、さいとうたかをならば「台風五郎」、江波譲二であれば「トップ屋ジョー」、横山まさみち「独眼探偵」みたいに、古賀新一さんにも独自のヒーロー探偵が居りました。誠に申し訳ないんですけど、その古賀新一さん創作の古賀さんの愛すべきヒーローの名探偵、僕は名前を憶えておりません。確か全10巻まで続いたその個人シリーズの何作かは、この名探偵の活躍する活劇推理物語だったように思います。記憶があやふやですけど。

 僕は、ひばり書房という会社は、貸本消滅と共になくなった出版社だとばかり、大変失礼にも、思っていましたが、そうではなく、70年代80年代とコミック等を出版して来ていたようです。今現在、ひばり書房という会社がどうなのか、現状を僕は知りません。ひばり書房発刊のコミックスが80年代まであるのは解るのですが、その後90年代の出版がどうなのか、僕には解りません。申し訳ないです。確かな調べがついていませんです。僕は、古賀新一さんのことは、貸本衰退時に、雑誌に移り、少年画報社の週刊少年キングなどで、長編怪奇怪獣もの「人間怪獣トラコドン」とか、怪奇味のサスペンス短編などを描いていたのは、オンタイムで掲載を読んでいたので知っていたのですが、そうでした、思い出しました、楳図かずおさんと作品味がかぶるような少女怪奇ものを描いていました。絵柄も60年代後半ブレイクした楳図かずお少女怪奇ものとすごくよく似ていた。楳図かずおが、へび少女くも少女というような長編怪奇少女漫画を連載していたのは講談社の少女フレンドでしたが、古賀新一は同系の怪奇少女漫画を何に描いていたのだろう?というのが、僕はだいたいが本来、少女漫画を読まない、読んで来なかった人なので、少女漫画史はものすごく弱いんですよねえ。でも古賀新一さんにもあるんですよ、へび少女くも少女漫画はいっぱい。それは多分、貸本の頃から描いているものだと思う。貸本消滅以後、古賀新一のこういう傾向の少女怪奇漫画は、70年代80年代にひばり書房からコミックスとして、たくさん出版されているんだけれど、これらの作品はいったい何処の出版社の何という雑誌に初出掲載されたものなのだろうか?古い男性の描き手であれ、僕は少女漫画史に全く弱いので、さっぱり解りません。ただ、当時の、楳図、古賀という、怪奇漫画の両雄の描く少女怪奇漫画はそっくりな程、よく似ていました(もっともよく見ればタッチは全然違いますけどね)。でも70年代に入ってからの、少年青年向けコミックの絵柄は明らかに違います。作風も全然違います。
※(『人間怪獣トラコドン』は週刊少年キング1966年第47号から50号まで掲載の短期集中連載作品でした。)

 一方、浜慎二さんの方は‥。これも、貸本衰退時に雑誌で描き始めていますが、僕は、古賀新一さん以上に貸本以後を知りません。雑誌に移り、確か、60年代後半、60年代末頃か、週刊少年マガジンに「悪霊車」という長編怪奇漫画を連載しています。真っ黒い歴史ありそうな自動車が無人で走り、惨事を起こして回る、といったストーリーだったように記憶していますけど、読み返したことが無いので、詳細は忘却のままです。浜慎二さんの貸本以降の去就をよく知らないのですけど、何でも、ひばり書房や秋田書店から70年代80年代、コミックス単行本で作品が出ているようですね。多分、貸本時代も、ひばりなどから個人単独作品本も出しているのでしょうけど、僕には、古賀新一さんのシリーズ本みたいな、読んだとかあったとかいう記憶はありません。ただ、僕は、古賀新一さんの方が絵柄は好きでしたが、浜慎二さんのものの方が、より恐かったように記憶している。うまい絵でしたが、当時としてはリアルな、恐がらせる絵だった。僕が思うに、70年代以降の、80年代入って盛んになったのかな、「サスペリア」や「ハロウィン」等に代表される、少女怪奇コミック専門誌、怪奇レディコミ専門誌に、浜慎二さんも古賀新一さんのように作品を描いていたのかも知れません。ああいう雑誌も、僕は時折しか読んだことなくて、よく知らなくて、どうも済みません。

 古賀新一さんというと、もう代表作は言わずと知れた、魔女黒井ミサ、秋田書店週刊少年チャンピオンに長期に渡って連載された、「エコエコアザラク」ですね。本人がこの作品をどう思っているのかは存じませんが、古賀作品では当然のように一番有名でしょう。「エコエコアザラク」は、TVドラマ化や、何度も映画化され、魔女黒井ミサに当時の美少女タレント達が扮しました。漫画の方のお話は回が進むごとに単純化して、毎回短編1回読み切りで、黒魔術ものの小悪党懲らしめちょい話になって連載が続きました。「エコエコアザラク」は、僕はチャンピオン連載時も読んで来てますが、後に秋田コミックワイド版で1、2冊読み返しています。
 後ねえ、「怪談」「オール怪談」執筆陣の中で、印象に残っている描き手漫画家さんは、いばら美喜さんがいます。いばら美喜さんの漫画はどっちかっつうと、当時の貸本劇画の絵でした。さいとうたかを、園田光慶、南波健二、江波譲二、沢田竜二、朝丘光志、といった貸本時代の、無国籍アクション劇画でならした諸劇画作家先生たちと同類の、荒々しくて力強いタッチの絵柄でした。正に当時の劇画の絵ですね。その作風も都会的でドライなものだった。登場人物たちは容赦無くすぐに死んで行ったし、一応怪奇漫画とはいえ、作品に乾いた風が吹いてましたね。子供時代の僕は、けっこう好きだったんですけどね。

 いばら美喜さんはもう、貸本以後は全く知りません。最近になって、文庫などの昔の怪奇漫画のアンソロジーなどで、時折、貸本時代の短編が一つ二つ紹介されて見掛けることがありますけど、当時のその荒唐無稽な作風とか、今の常識から見ればムチャクチャな設定とかが、どちらかというと馬鹿にした風な視点で評され、紹介されているようですね。こんなんありかあ~!みたいな。子供の時の僕は、いばら美喜さんのこの作風が好きで、「怪談」や「オール怪談」でけっこう愛読していたと思います。
 今回は、僕の幽霊感とかを書き込んでみよう、とか思っていたのですが、結局、古賀新一と浜慎二といばら美喜のことだけで終わっちゃいました。では。どーも、失礼しました。

◆(2006-08/13)漫画・・ 「怪談」・「オール怪談」..(1)
◆(2006-08/14)漫画・・ 「怪談」・「オール怪談」..(2)
◆(2006-08/23)漫画・・ 「怪談」・「オール怪談」..(3)

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