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等長変換の特徴づけ。

2011-11-13 00:42:28 | mathematics
等長変換というのは,空間内の2点間の距離を変えないような変換のことである。

それが回転ないしは折り返しを表す1次変換になるということを,1次変換を表す行列の成分が満たすべき条件を導くことで示すという説明の仕方があるが,そもそも等長変換が1次変換であるかどうかは自明なことではない。
少なくとも,併進変換というか,各点を同じだけ平行移動するという変換も等長変換の一種だが,それは1次変換ではない。

この辺のことは昔何かの教科書で学んだような気もするが,はっきりとは思い出せない。

以下では実内積空間について問題を定式化する。
(おそらく複素内積空間でも同様のことが成り立つと思うが,僕は複素にはとんと不慣れなので,ついつい考察対象から除外してしまうのである。(※ この点に関して末尾にコメントを追加した。2011.11.13.15:20))

実内積空間 X の内積を (x,y) のように書き,ノルム(大きさ)||x|| を ||x||2=(x,x) を満たす非負の実数として定義する。

このとき,X から X への写像 T が等距離的であるとは,どんな2つのベクトル x と y に対しても
||Tx-Ty||=||x-y||
が成り立つことを言う。

以上の設定の下で問題を述べよう。

【問題】 X で定義された写像 T が等距離的であるとき,あるベクトル a とある線型作用素 U を用いて,任意の x∈U に対して Tx=a+Ux と表せることを示せ。

この問題で述べられた命題は真であるはずである。ちゃんと証明は考えたので,いずれ書くつもりである。おそらく関数解析の初等的な演習問題の一つである。


(追加コメント)
※ 複素内積空間だと,虚数単位を i とおくとき,T0=0 であるような等距離写像について T(ix)=iTx がなかなか導けずに立ち往生してしまった。
うまくやればなんとかなるのか,それとも致命的で,反例が作れるのか。現時点では不明である。

こういうときこそネットのリソースを頼るというのが現代的なのかもしれない。
手近な関数解析の教科書に関連する記述が見つからないので止むを得ない。

Wikipedia で調べたら,関連する話は見つかった。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AD%89%E9%95%B7%E5%86%99%E5%83%8F
http://en.wikipedia.org/wiki/Isometry

特に,内積空間ではなくて,実ノルム空間における全射な等距離写像はアファインであるという,Mazur-Ulam の定理は初めて知った。
http://en.wikipedia.org/wiki/Mazur-Ulam_theorem
まだ証明は見ていないが,もし写像の全射性が不要ならば,明らかに僕の考えた話は Mazur-Ulam の定理の直接の系になる。
そして Mazur-Ulam の定理が実ノルム空間限定ということは,複素内積空間でも厳しいのではないかという否定的な予想を支持しているように思われてくる。

と,この一文を締めようと思いつつ,ちょっと検索してみたら,Mazur-Ulam の定理の証明を紹介しているPDFファイルが見つかった。詳細は読んでいないが,概要に『全射性の条件を少し緩めるという改良を施した』とある。やはり MU 定理においては全射性はかなり本質的に利いているようだ。
http://www.helsinki.fi/~jvaisala/FSV.pdf

ちなみに,僕の問題において,T は X からそれ自身への写像ではなく,もう一つ実内積空間 Y を登場させて,T が X から Y への等距離写像だとしてもよいかもしれない。

※※ Mazur-Ulam の原論文へのリンクを追加。
http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k31473/f950.tableDesMatieres

※※※ 2011年12月29日にこの問題は一応の解決を見た。その顛末については「等長変換の特徴づけ。(続)」に詳しく述べてある。
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