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【高校数学のツボ】 指数と対数。

2012-07-20 23:43:38 | mathematics
三角関数の単元と比べると,同じく高校で新しく出会う関数であっても,指数関数と対数関数については覚えるべき公式はそれほど多くはない。

今回は,底 a と対数の記号 loga が「約せる」という現象をテーマに,いくつかの事実を述べることにする。

正の数 a を b 乗したら正の数 c になる,という3つの数 a,b,c の三つ巴の関係は

ab=c

という等式で表現される。それぞれの数の担っている役割の名称で書けば

指数=真数

となる。

ここで,指数を主役にした式に書き換えると,新たな記号 log を導入して

b=logac

という等式になる。

この式を頭から読むと「指数 b は a を底とする真数 c の対数である」となる。

ここで,指数と対数は同じものなのか,違うものなのかが気になる人も出てくるかもしれないが,なんというか,人間社会でいえば,「課長」と「上司」といった呼び方の違いというようなもので,そんなに気に病むものではない。

「X さんは私の上司です。」という表現と,「2 は指数です。」という表現は似たところがある。「私」の職位がわからないと,X さんの職位もわからない。2 がどのような底の肩に乗った指数なのかわからなければ,真数はわからない。

ところが,「X さんは平社員である私の上司です。」と言えば,X さんは主任とか,課長クラスかな,などとわかる。2 が底 3 の肩に乗っている指数であることがわかれば真数は 32,つまり 9 だとわかる。あまり良いたとえではなかったかもしれないが,ともかく,「対数」という言葉は底が何かという情報と共に使われるものであり,漠然と何かの数の肩に乗っている数を表す用語である「指数」よりも詳しい話をするときに指数の代わりに用いられる用語だと思えばよい。

三角関数の単元においては逆関数という視点はほとんど現れないが,指数関数と対数関数とは互いに逆関数の関係にあるので,これらの関数の性質について学ぶときは,そのような観点を意識することが大切である。

まず,指数法則にせよ,対数の性質にせよ,「底がそろっている場合」が一番の基本である。

したがって,指数計算や対数計算をするときには「まず底をそろえる」というのが鉄則となる。

あともう一つ,さまざまな公式を証明する際に威力を発揮するのが「指数関数は単調に増加するか,または単調に減少する」という,指数関数の単調性である。これは,真数同士の間に成り立つ等式 ax=ay が,肩の数(つまり対数)同士の等式 x=y に言い換えることができることの根拠となる。なお,ax=ay という真数同士の関係式を x=y という対数同士の関係式に置き換える操作を,「ax=ay の両辺の,a を底とする対数を取る」と言い表すことがある。この言い回しは一般には p=q という等式の両辺に loga を書き加えて logap=logaq という新たな等式を作り出すことを指すことが多いが,先に述べたことと少し見かけが異なるだけで,意味に違いはない。

以上のことをふまえて,指数と対数の間に成り立つ基本的な公式をいくつか見ておこう。

まず,ab=c と b=logac という,a,b,c という3つの数の間の同じ関係を表す2つの等式を組み合わせて,2つの重要な基本公式を導こう。

c を消去すると,a と b の間の等式 b=logaab が得られる。
ここで,記号の書き換えという観点からこの等式を眺めると,右辺において loga と a という記号が「打ち消しあって」,b だけが残る,というように解釈することができる。この現象を「底と対数を約す」と言い表すことにしよう。

今度は b を消去してみよう。すると,alogac=c という a と c だけの関係式が得られる。 ここでも,意味を考えずに記号だけに着目すると,aloga という「底と対数」が約された結果,c だけが残る,と解釈できることに注意しよう。

このような打ち消しあいの最たる応用は,底の変換公式である。底の変換公式は通常分数の形の式で述べられることが多いが,その積バージョンともいうべきものは

logab・logbc=logac

であり,ちょうど左辺の中央の b・logb が打ち消しあって,左端の loga と右端の c のみが残って右辺になる,と解釈することができる。このような打ち消しあいの規則に着目すると,

log35・log57・log79=log39=2

という計算があっという間にできる。これは,5・log5 と 7・log7 が連鎖を起こして打ち消しあっているという感じである(正確には,落ちゲーの連鎖とはちょっと違うが)。


このように,底と,同じ数を底とする対数の記号が隣り合わせに並ぶと,それらは打ち消しあうという現象が指数・対数の計算の大きな特徴である。


では,底の変換公式を導いてみよう。その過程において,この文章の初めに述べた重要事項がふんだんに使われていることをよく味わってほしい。また,逆に,それらの重要事項だけを用いて底の変換公式が導かれるということにも気づいてもらいたい。指数関数と対数関数の性質を余すところなく理解するために必要最小限の知識は何か,ということを正しく把握しておくことは,これらの関数の性質を理解する上でとても大切なことである。他に自分の知らない知識が使われていたら公式を自力で再現するのは難しいが,重要事項だけを身につけておけば,それらを組み合わせることで他の公式はすべて導けるのである。

まず ax=b という等式から出発することにしよう。

左辺の底 a と,右辺の真数 b を,第3の数 c を底とする指数表示に統一する。

a=clogca,b=clogcb であるから,これらを ax=b に代入し,その結果において左辺を指数法則を用いて書き換えると

cxlogca=clogcb

となる。この等式を肩の数同士の等式に置き換えると

xlogca=logcb

となるが,そもそも ax=b であったから,x=logab なのであった。よって

logca・logab=logcb

という,積バージョンの底の変換公式が得られた。

この両辺を logca で割り,新しく導入された底 c を用いた対数を右辺に集めると,いわゆる底の変換公式

logab=logcb/logca

が得られる。

なお,この式の覚え方として,「底は恥ずかしがり屋なので下に隠れる」というフレーズを数年前に編み出した。分数の分母と分子を分ける横棒を「地面」,分子のある側を「地上」,分母のある側を「地下」にたとえているのである。ちなみに,なぜ底は恥ずかしがり屋なのかはよくわからないが,対数を表す記号 logab において,底 a を log の右下に小さくひっそりと書く慣わしなので,底 a は恥ずかしがり屋なのではないかと思われるのである。それと対照的なのが大きく堂々と書かれる真数 b であり,真数はやましいところが何もないので,底を変換した後も堂々と「地上」(=分子)に姿をさらしているのである。

ちなみに,真数が累乗のとき,その指数を対数の前に出すことを「肩の荷を降ろす」と言い表すことも最近考え付いた。この考え方で行くと,逆に対数の前にかかっている係数を真数の指数として対数の中に取り込むことは「荷をよいしょと肩に背負う」ことになる。

理屈は理屈としてきちんと理解した上で,計算で公式を運用する際には,こじつけでもよいから計算規則を思い出しやすいようなフレーズを関連付けると思い出しやすくてよいのではないだろうか。それは語呂合わせでもよいが,僕は語呂合わせが得意でないし,語呂合わせ自体を覚えるのが苦手なので,自分でフレーズを開発するように心がけている。その方が楽しめるし,自分で思いついたものは愛着があってなかなか忘れないものだから。
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