あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

ウォルフガング・ペーターゼン監督の「ネバー・エンディング・ストーリー」を見て

2012-12-02 10:01:52 | Weblog


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.354

「夢見る力」が衰えると現実にボロボロと穴が空いて「虚無」が忍び込み、世界を荒廃させるという原作者のミヒャエル・エンデの思想を元にして、潜水艦物の得意なペーターゼン監督が勝手に映画にしたものである。

 巨岩の妖怪や空飛ぶ竜や御姫様などがワンサカ登場して特撮てんこもりの面白さだが、この途方もない清らかな夢や希望がじつは汚泥に満ちた現実をその基底で支えている、という認識はいっけん独創性がなく、平凡な思いつきのように見えて、実はかなり物事の正鵠を射ているのではなかろうか。

 例えばどこかの国がどこかの強国に押しつけられた憲法を改めて読んでみると「国際平和を誠実に希求し、戦争と威嚇、暴力の行使は国際紛争を解決する手段としては永久に放棄する」とか「陸海空軍は保持せず交戦もしない」などと、じつに単純明快で子供でも大人でもウンウンと頷いてしまう夢まぼろしのようなヴィジョンがいっぱい並べてある。

 わたしは不勉強なので世界中の憲法を読んだわけではないが、たとえアホ馬鹿と言われようがどこか一つくらいこういうドンキホーテ的な国があって、「たしかに非現実的ではあるが普遍的にまっとうな正論」というものを(たとえそのために国が滅び民が全滅するような不運に遭遇するとしても!)末代まで永遠の崇高な理想として掲げ続けることが、かえってその国民の安全と生存に逆説的に利するのではなかろうか、ということを、このお子様向けの幻想映画を見ながら思ったことであった。

生きながら葬られしと聞く遍照金剛弘法大師空海眠れる奥都城参りたり 蝶人

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