照る日曇る日第943回
親愛なる全国の学友諸君。今日から3日間、ミスタ・ロングテールこと長尾高弘さんの3冊の詩集の感想文をお届けしたいと存じます。
冒頭の「蚯蚓」という詩を読んで、私は思わずアッと声が出てしまいましたよ。
この詩で作者は「蚯蚓のように地面を這って歩く練習をしていた」というのですが、こないだ作者の「頭の名前」という第一詩集を読んで、「この人は画家の熊谷守一さんが地面を這うアリを気長に観察して造化の秘密を解明したように、地上すれすれの低姿勢で物事を見つめている」と評したことが、はしなくも裏付けられたような気になったからなんです。
でもその詩は、
蚯蚓のように地面を這って歩く練習をしていたら
丁度向うから女が這ってきたので交接した。
女は子供を産んだ。
子供はごむ製だった
と、いうようにリズミカルに続き、枯淡の境地に安住した画檀の仙人とはかなり違うポップな地点に鮮やかに着地するのですが。
1995年6月に出版されたこの詩集には、著者が18歳から23歳の時点で書かれた、いわば若書きの作品が採録されていますが、どれをとっても著者の早熟の才を雄弁に物語っていると思ったことでした。
毎日1個庭の夏ミカンを取って来て食後にむしゃむしゃ食べている 蝶人