空手道へっぽこ稽古日誌 An ordinary person's karate practice diary

いい歳こいて空手を学ぶおっさんの備忘録。
23年7月2日に二段になりました。
まだ続けるのこれ?

『部族虐殺』―夜明けの新聞の匂い(新潮文庫)

2017年02月08日 | 【紹介】書籍
部族虐殺―夜明けの新聞の匂い(新潮文庫)
曽野 綾子 (著)
文庫: 419ページ
出版社: 新潮社 (2002/07)
ISBN-10: 4101146381
ISBN-13: 978-4101146386
発売日: 2002/07

人間がどれほど、どのような理由で、残酷になりうるか。
700万前後の人口のうち、100日間で実に139万人が
部族虐殺の被害者とそれに伴う難民となったルワンダの悲劇。

「世界的な貧困を知る旅」で虐殺の地を訪れた著者は、なお臭気の漂う現場で
人間の弱さを痛感し、宗教とは何かを再考する。目を背けてはならない大きな
問いを発する表題作をはじめ、教育、政治、介護保険など、
いま日本で起きている事態を作家の目で鋭く観察した33本のエッセイ。
(出版社/著者からの内容紹介 より引用)




カソリック信者としても知られる作家 曽野 綾子さんの著作です。
1995年から2005年まで日本財団会長職を務め、
2009年10月からは日本郵政取締役でもあります。

多くの慈善事業に携わり、世界の貧困と荒廃を見てきた方の、力強い著作です。

「アフリカで暴動・虐殺」とくれば
「民族対立による過激派が煽動した武力衝突だろう。」
「武器も"悪魔の銃"=カラシニコフAK47が使われたのだろう。」

そんな風に安易に想像してしまいますが、この1994年に起きたルワンダの悲劇を
綴った「部族虐殺」では、もっと恐ろしい事実―実際には市井のあらゆる人々―官吏
・学者・教師・医師・看護婦・裁判官・神父・修道女まであらゆる層のしかもインテ
リやホワイトカラーが参加したと記されています。

武器も銃や手榴弾どころか、草刈り鎌や手製の槍、山刀、"マス"とよばれる民族的な
武器=先端に爪の付いた棍棒まで使われており、検死の結果を見るにいかに執拗に
"虐殺"が行われたのかがわかるのだそうです。

人が人を殺そうとおもったら、武器も心得もいらない。
そして、その抑制に、スポーツも武道も、いわんや信仰でさえも、文化的なもの一切
がまったく役に立たない、という事実に戦慄します。

本書では上記以外にも、1996年に起きたテロリスト「トゥパク・アマル」による
ペルー日本大使公邸人質事件を綴った「アンバサダーホテルの最後の日々」があります。
この人質篭城事件は、1996年(平成8年)12月17日(現地時間)から翌19
97年(平成9年)4月22日まで、ペルー警察の突入とテロリスト全員の射殺によって
よって事件が解決するまで、実に4ヶ月間以上かかりました。

テロリストたちは、素朴な貧しい農村出身が多く、学校にもいっていない。
彼らのリーダー、セルパから「2週間くらいで占拠がうまく終わって目的を達したら、
ジャングルに戻って報奨金をもらえる」と素朴に信じていたようです。
その報奨金でコーヒー園を買ったり、小型バスを買って運転手になることを夢見ていたり。
中には人質となった人々に「これ(篭城)が終わったら、軍隊に入りたいがどうしたら
(軍隊に)はいれるのか?」といささかあきれるようなことを聞いているものもいたとか。

またホテルの浴室で熱いシャワーを生まれて初めて浴びて驚いたり。
人質に差し入れられるベントー(弁当)を「こんなにうまいものがあるのか」と貪り食って
10Kg近く太ったり、テレビの昼メロドラマにはまったり…
そうしたとき、機関銃は床におかれていたそうです。

だからといって、無知であった彼らの罪が許される訳ではなく、全員が射殺されたという
結末は覆しようもありません。



「ただでさえ毎日、うっとうしい日常を過ごしているのによくもそんな本を読むな?」と
いわれることもあるんですが…この手の本、記事やルポタージュ、エッセイを読むと暗澹
とした気持ちもなりますが、できるだけ読むように心がけています。

世界にはこんなこともあるのだ、と知ること。

こういうことがありえるのだ、と受け止めることにしています。

その一方で「日本はこんなに豊かなのに…」「こんな悲惨な人々もいるのに日本は…」とは
考えないようにしています。安易に考えたとしても、TVのコメンテーターや深夜の討論番組
の出演者の真似事でおわってしまうからです。

安っぽい浅慮より先に、まずは知ること、次にはできるだけ深くそのことを知ること。
それが大事だと思っています。

オススメというには暗くて重い内容ですが、もし興味を持った方がいればそれだけでも幸いです。
"夜明けの新聞の匂い" と題されたエッセイ集は、まだあります。
ほかにも「近ごろ好きな言葉」「沈船検死」「戦争を知っていてよかった」など数冊が文庫になっています。



追記

住民321人殺害か=キリスト教原理主義勢力 - コンゴ
2010年3月29日(月)06:03 時事通信社

 アフリカ中部コンゴ民主共和国(旧ザイール)北東部の村々が2009年12月、隣国ウガンダのキリスト教原理主義勢力「神の抵抗軍(LRA)」に襲撃され、少なくとも321人が殺害されたとみられている。英BBC放送(電子版)が28日伝えた。多数の子供が誘拐されており、少年兵や性的奴隷にされたとみられている。 


Update 2010.04.07
Update 2017.02.08