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荘子:人間世第四(4) 是以火救火,以水救水,名之曰益多

2011年07月23日 00時58分07秒 | 漢籍
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荘子:人間世第四(4)

 且苟為賢而惡不肖,惡用而求有以異?若唯無詔,王公必將乘人而鬭其捷。而目將熒之,而色將平之,口將營之,容將形之,心且成之。是以火救火,以水救水,名之曰益多。順始無窮,若殆以不信厚言,必死於暴人之前矣!

 且(か)つ苟(いやし)くも賢を悦びて不肖(フショウ)を悪(にく)むことを為さば、悪(いずく)んぞ而(なんじ)を用いて以て異あることを求めんや。

 若(なんじ)は唯(た)だ詔(つ)ぐること無なかれ。王公必ず將(まさ)に人に乗じて其の捷(か)ちを闘わさんとす。而(なんじ)の目は將(まさ)に之に熒(まどわ)されんとし、而(なんじ)の色は將(まさ)に之に平(かわ)らんとし、口は將(まさ)に之に營(あげつら)わんとし,容(かたち)は將(まさ)に之に形づくらんとし、心は且(まさ)に之に成らんとす。是(こ)れ火を以て火を救い、水を以て水を救うなり。之を名づけて益多(エキタ)と曰(い)う。始めに順(したがいて・ゆずれば)窮まり無し。

 若(なんじ)は殆(おそ)らく、信ぜられざるを以て厚言(コウゲン・おもいきりいさめ)せば。必ず暴人の前に死せん!


 それに、もし衛の君主が心から賢者を好んで愚者を憎むような人間だとすれば、今さらお前を任用して目先の変わったことをしようなどと思うはずもあるまい。

 だから、お前は何も言わぬがよい。何か言えば王公の権勢でのしかかってきて(王公の権力をかさにきて)、お前を言い負かそうといどんでくるだろう。こうなれば、お前はたじたじとなり目の色は落ち着きを失い、顔色は変わり、口はもぐもぐと何か言いわけをしようとし、態度は表面ばかりをとりつくろい(へなへなとおとなしくなって)、心は相手の言いなりになってしまうであろう。(そうなるとお前の説得も逆効果で)まるで火を消すために火を加え、水を止めるために水をそそぐ羽目になる。いわゆる「益多(エキタ)」─ 輪をかける(多いうえに多くする) ─ というのがこれだ。最初にこちらが一歩を譲ると、その譲歩は果てしない譲歩となって、遂には取り返しのつかぬことになるものだ。

 もし、お前が相手の信用も得ていないのに、あの乱暴者の前でずけずけものを言えば殺されるにきまっている。

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 =告
 【漢音・呉音】ショウ
 【訓読み】みことのり, つげる
 【意味】
  (1)みことのり。上位の者が下位の者を召して告げることば。
   また特に、天子の命令。
   秦(シン)代以後は天子だけについていう。
  (2)つげる(つぐ)。上位者が下位者につげる。
   「夫為人父者必能詔其子=それ人の父為る者は必ず能く其の子に詔ぐ」〔盗跖篇〕
 【解字】
  会意兼形声。
  「言+音符召(人を召し集める)」。
  人を召し出してつげさとすことば。


 =惑


 =変



 弁解すること。
 ▼「口將營之」




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