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荘子:人間世第四(3) 且厚信矼,未達人氣,名聞不爭,未達人心。而彊以仁義繩墨之言,術暴人之前者,是以人惡有其美也,命之曰菑人。菑人者,人必反菑之,若殆為人菑夫! |
且つ徳は厚く信は矼(かた)きも未だ人の気に達せず、名聞は争わざるも、未だ人の心に達せず、而(しか)も彊(し)いて仁義繩墨(ジンギジョウボク)の言を以て,暴人の前に術(の)ぶる者は、是れ人の悪を以て其の美を有(ほこ)るなり。
これを命(なづ)けて菑人(サイジン)と曰う。菑人なる者は、人必ず反(かえ)ってこれに菑(わざわい)せん。若(なんじ)は殆(おそ)らくは人に菑(わざわい)せら為(ら)れん夫(かな)!
それに、お前の徳が十分厚く、お前の誠実さが堅固であっても(自己が誠実であり、純粋でありさえすれば、それだけで事が足りると考えるならば大間違いだ)、まだ相手の気心もわからないうちに、仁義道徳のお題目を暴君の前でまくしたてるというのは、他人の悪事を種にして自己の正しさを相手に押売りすることになる。つまり、人の弱点を食い物にして自分の長所をひけらかすというやつだ。
このように、おせっかいで他人に迷惑をおよぼす人間を、菑人(サイジン)─ いつも周囲の人間を傷つけてまわる男─ という。
他人を傷つけてまわって自分だけ無事でありおおせるわけがない。他人に災いを及ぼすような者には、他人のほうでも、必ずあべこべに災いのお返しをするものだ。お前もその独善と、善意の押売りを用心しないと、きっと他人から災いを受けることだろう。
※矼・・・固と同義。
【漢音・呉音】コウ
【訓読み】とびいし, いしばし, かたい
【意味】
(1)とびいし。いしばし。
水中に少しずつ離して並べて、水面上に出ている部分を伝わってわたれるようにした石。
(2)かたい(かたし)。かたいさま。気まじめなさま。
【解字】
会意兼形声。
「石+音符工(こちらからむこうまで通す)」。
※繩墨
大工が用いて木の曲直を正すすみなわのこと。転じて法則規範の意に用いられる。
「其大本擁腫而不中縄墨=其の大本は擁腫して縄墨に中たらず」 →【逍遥遊篇】
※菑
葘の異体字。
【漢音・呉音】サイ
【意味】わざわい。進行をとめてさしさわりをおこす、じゃまなできごと。
【解字】会意兼形声。
真中の部分は川の流れを止めるせきを描いた象形文字で音は(シ)・(サイ)。
葘は「艸+田+(音符)サイ」で、作物の生長をとめた荒れ田をあらわす。
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