そう。平日なら「夜更け」と表現するような時間。
紅白は白組が勝ったからといって、でもみんながんばったね的な大団円を
迎えていた。そこまでTVにつきあう必要がなく、KYOKOさんとNonは寝て
しまっていた。Rinは寝るときのくせで親指をちゅぱちゅぱさせながら眠り
そうだっただろうか。
TVはひと足先に新年を迎え、さだまさしのまったりしたラジオみたいな番組が
両国国技館で始まっていた。時差があるこちらは、いまは年明け前の
真空地帯のように、しかも外と遮断されて音のしないような時間で
ひとりで窓の外をみてみると…
濱江大道とホテルの下の道のあいだにある公園に人が集まってきた 
ぼくもワイン 
を呑んだからだろうか、もともと普通のデジカメでは夜景が
撮りにくいけれど、だんだん焦点があわなくなっている 
それでも空に星ではない動くものが、ふわふわ浮かんでいるのを見つけた
赤い風船みたいな…台湾でいう「ランタン」だろうか。
旧正月じゃなくっても、飛ばすんだ 
Mariah Carey 'I WantTo Know What Love Is'
公園の中では何人か気の早い人がふわりと…あげはじめた。
年明けてからとかいうお作法ではないんだろうか？除夜の鐘みたいに
時間をまたがりながら次々とあげていくのだろうか？
いつかみたTVでは、台湾の田舎町であげていた。いつかそこに行きたいと
思っていたけれど、外灘の景色をバックに同じものが見れるとは思わなかった
ゆっくりどんどん、ふわふわあがる。
ランタンは熱気球の要領で、熱気を内側にうけてどんどんあがる。
濱江大道の水辺でも準備が始まりだす
公園でもみんなまちまちに準備がはじまる。そのころには家族をみんな
起こして・・4人で窓辺で覗き込んでいた。
ランタンがいっぱいできれいだろ？
べつに。風船があがるだけでしょ？寝てたのに…（Rin）
ううん。すごくきれいだねえ（Non）
あ…やっぱりきれい…
起こされて見たわりには風船かいな、とばかりに強がるRin。
すなおにきれいなものには反応するNon。主体性にやや欠けるので
結局すぐにそれに追随するRin。
今年も、そして年があけてもそれはきっと、しばらくは変わらない
のだろう。どうせふだんは逆にRinがしっかりしているのだから
このコンビで問題はいまのところ見つからない 
ランタンにはなにか文字が書いている場合もある。家族の健康やら
仕事の野望やら、生臭いものから ささやかでちっぽけなお願いまで。
中にはお願いが大きすぎたのか、まだぼくたちの居るフロアまでも上がり
きらないで急速に落下していくものもある。
みあげたら、なんともう高層ビルよりもずっとずっと高くあがっているものも
たくさんあって。きっと受け取る神様も量が多くて大変だろうなと思うほど。
そして星のようでありながら、ふわふわと動く この赤い空のくらげは
じっと見上げているだけでぼくのお願いももっていってくれるような
お正月って、様式はそれぞれだけれど
なにかたとえようもない大きなものに、お祈りすることで
新しい年が、いい年であるように。あるいはだれかのその年も
いい年であるように。
おごそかに考える、願い、そしてお祈りする。
そんな時間なんだと、それが誰かのための時間なのであれば
ただそれだけでもう、新年からHappyなんだと
気づく場面なんだろうなと思った次第 
真夜中を前に、遊覧船や渡し船みんな光もので着飾ってダイヤも通行規則も
虫したように黄浦江に並び、その瞬間を待ちかまえる。
いろの統一がぜんぜんないのも上海風
公園ではさっきに倍する、赤いくらげが待ち構え
コンサート会場の大きなビジョンにはカウントダウンの数字が１ケタに
A Happy New Year 
黄浦江をはさんで、陸家嘴の新市街と外灘の旧市街で一斉に花火が
あがり、ふわふわしたくらげの下できれいな絵を描く。
手前の別の場所でも花火。
花火とともに煙があがりすぎて、明るさと煙で花火がみえないくらいになるころ
公園でもいっせいにくらげがあがり、もどかしいほどの遅さで 
でもそのほうがいいんだと思いなおす、新年最初のイベントは
こうやって待ち切れずに道路からあげちゃう人もいたりなんかして。
ぼくらの部屋の窓のすぐ横を通るランタンも１つ２つあったことで
この迷子のようなランタンに
今年もいいことがあるようにお願いして、ちゃっかり便乗することから
はじまったのでした。
